ナイチンゲールに捧ぐ勝利を
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プロヒーローとして結ばれ、パートナーとなった爆豪勝己とナイチンゲールフローラ。
二人は時に別々に、時にタッグを組んで数々の難事件を解決し、世間からも「最強のヒーローカップル」として注目を集めていた。
だが、長年染みついた「癖」というのは、そう簡単には抜けないものだった。
ある大規模な自然災害とヴィランが重なった現場。
崩落する建造物から何十人もの市民と若手ヒーローを救い出すため、フローラは限界を超えて個性【治癒(ドーピング)】を連続発動させた。自分にバフがかからない過酷な身体で、血を吐きながら全員の命を繋ぎ止め、現場を完封へと導いた直後——彼女の意識はぷつりと途切れ、その場に倒れ込んだ。
病院のベッドの上。
ゆっくりと目を覚ましたフローラの視界に入ってきたのは、腕を組み、死んだような目でこちらを凝視している爆豪の姿だった。
「……勝己……くん……?」
かすれた声で呼ぶと、爆豪は静かに立ち上がり、ベッドの脇へと歩み寄ってきた。
いつものように「クソバフ女が!!」と怒鳴り散らすかと思っていたが、彼の顔に浮かんでいたのは、静かすぎる怒りと、胸を締め付けられるような『悲しみ』だった。
「……勝己くん……? ごめんなさい、ちょっと無理をしちゃって……でも、おかげで誰一人死者を出さずに勝てたわ……」
フローラが苦笑いを浮かべながら言った、その瞬間。
(ドンッ!!)
爆豪がベッドのサイドテーブルを激しく叩いた。
見ると、彼の握りしめた拳は、悔しさと怒りで震えていた。
「……ふざけんな」
低く、擦り切れた声。
「……俺の勝利を……信じられねぇのか?」
「え……?」
爆豪は真っ赤な瞳を血走らせ、逃げ場を無くすようにフローラの肩を強く掴み込んだ。その瞳には、かつて全面戦争の病室で見せた時と同じ、彼女を失うことへの痛々しいほどの恐怖が滲んでいた。
「お前が命削って……死にそうになりながら掴み取る勝利が……俺の望む『完全勝利』だとでも思ってんのか!!?」
喉をちぎらんばかりの叫びが、病室に響き渡る。
「俺が欲しいのはなぁ!! 敵を叩き潰して、全員助けて……お前も、俺も、全員が無傷で笑って帰る『圧倒的な一番』なんだよ!!」
「……っ……」
「お前が血吐いて倒れるたび……俺の胸がどんだけ引き裂かれそうになってるか分かってんのかアホが!! お前が命懸けなきゃ勝てねぇような情けねぇ男に……俺を見立ててんじゃねぇよ……!!」
爆豪の目元から、ポロリと一筋の涙が零れ落ちた。
いつも誰よりも強く、圧倒的で、俺様だった彼が、フローラが自分を庇って命を削るたびに、どれほど傷つき、自分の無力さを責めていたか。
「俺のために命削るな……。俺と一緒に勝つために……生きて側にいろよ……!!」
掴まれた肩から伝わってくる、彼の手の震えと熱量。
その瞬間、フローラはハッと息を呑んだ。
(私は……『ヒーローとして誰かを救うため』『相澤先生や勝己くんの役に立つため』と思って命を削っていたけれど……
本当は……彼にこんなに哀しい思いをさせて、彼の目指す『最高の完全勝利』を、私自身が汚していたんだ……)
「自分を粗末にする危うさ」をずっと抱えていたフローラの中に、本当の意味での変革が訪れた瞬間だった。
「……ごめんなさい、勝己くん……」
フローラは震える手を伸ばし、爆豪の大きな頬を包み込んだ。
溢れ出る自分の涙を隠すこともせず、心からの謝罪と、生涯の誓いを込めて微笑んだ。
「そうね……私、間違っていたわ。……あなたの言う通りね」
彼女は彼の額に自分の額をそっと重ねあわせ、温かい体温を感じながら囁いた。
「これからは……絶対に無理な過剰使用はしないわ。……あなたの誇る『完全勝利』のために、私も笑顔で無事に、あなたの隣に居続けるわ」
「当たり前だクソバフ女……。約束破ったら……絶対に許さねぇからな……」
爆豪は乱暴に彼女を抱き寄せ、二度と離さないと言わんばかりにその華奢な背中に腕を回した。
それ以来。
プロヒーロー『Ms.フローレンス』は、どれほど過酷な現場であっても、二度と「己の命を削る過剰使用」を行わなくなった。
限界が来る前に、彼女は自信を持ってパートナーの名を叫ぶ。
「お願い、勝己くん!!」
「おう!! 任せとけ!!」
爆豪勝己という圧倒的な盾と剣が前線を薙ぎ払い、フローラは命を削ることなく、完璧な精度で彼と周囲をサポートする。
「全員無事に救け出し、圧倒的に勝つ」——。
爆豪勝己が望んだ『完全勝利』の隣には、いつも無事で、誇らしげに微笑むフローラの姿があったのだった。
プロヒーローとして結ばれ、パートナーとなった爆豪勝己とナイチンゲールフローラ。
二人は時に別々に、時にタッグを組んで数々の難事件を解決し、世間からも「最強のヒーローカップル」として注目を集めていた。
だが、長年染みついた「癖」というのは、そう簡単には抜けないものだった。
ある大規模な自然災害とヴィランが重なった現場。
崩落する建造物から何十人もの市民と若手ヒーローを救い出すため、フローラは限界を超えて個性【治癒(ドーピング)】を連続発動させた。自分にバフがかからない過酷な身体で、血を吐きながら全員の命を繋ぎ止め、現場を完封へと導いた直後——彼女の意識はぷつりと途切れ、その場に倒れ込んだ。
病院のベッドの上。
ゆっくりと目を覚ましたフローラの視界に入ってきたのは、腕を組み、死んだような目でこちらを凝視している爆豪の姿だった。
「……勝己……くん……?」
かすれた声で呼ぶと、爆豪は静かに立ち上がり、ベッドの脇へと歩み寄ってきた。
いつものように「クソバフ女が!!」と怒鳴り散らすかと思っていたが、彼の顔に浮かんでいたのは、静かすぎる怒りと、胸を締め付けられるような『悲しみ』だった。
「……勝己くん……? ごめんなさい、ちょっと無理をしちゃって……でも、おかげで誰一人死者を出さずに勝てたわ……」
フローラが苦笑いを浮かべながら言った、その瞬間。
(ドンッ!!)
爆豪がベッドのサイドテーブルを激しく叩いた。
見ると、彼の握りしめた拳は、悔しさと怒りで震えていた。
「……ふざけんな」
低く、擦り切れた声。
「……俺の勝利を……信じられねぇのか?」
「え……?」
爆豪は真っ赤な瞳を血走らせ、逃げ場を無くすようにフローラの肩を強く掴み込んだ。その瞳には、かつて全面戦争の病室で見せた時と同じ、彼女を失うことへの痛々しいほどの恐怖が滲んでいた。
「お前が命削って……死にそうになりながら掴み取る勝利が……俺の望む『完全勝利』だとでも思ってんのか!!?」
喉をちぎらんばかりの叫びが、病室に響き渡る。
「俺が欲しいのはなぁ!! 敵を叩き潰して、全員助けて……お前も、俺も、全員が無傷で笑って帰る『圧倒的な一番』なんだよ!!」
「……っ……」
「お前が血吐いて倒れるたび……俺の胸がどんだけ引き裂かれそうになってるか分かってんのかアホが!! お前が命懸けなきゃ勝てねぇような情けねぇ男に……俺を見立ててんじゃねぇよ……!!」
爆豪の目元から、ポロリと一筋の涙が零れ落ちた。
いつも誰よりも強く、圧倒的で、俺様だった彼が、フローラが自分を庇って命を削るたびに、どれほど傷つき、自分の無力さを責めていたか。
「俺のために命削るな……。俺と一緒に勝つために……生きて側にいろよ……!!」
掴まれた肩から伝わってくる、彼の手の震えと熱量。
その瞬間、フローラはハッと息を呑んだ。
(私は……『ヒーローとして誰かを救うため』『相澤先生や勝己くんの役に立つため』と思って命を削っていたけれど……
本当は……彼にこんなに哀しい思いをさせて、彼の目指す『最高の完全勝利』を、私自身が汚していたんだ……)
「自分を粗末にする危うさ」をずっと抱えていたフローラの中に、本当の意味での変革が訪れた瞬間だった。
「……ごめんなさい、勝己くん……」
フローラは震える手を伸ばし、爆豪の大きな頬を包み込んだ。
溢れ出る自分の涙を隠すこともせず、心からの謝罪と、生涯の誓いを込めて微笑んだ。
「そうね……私、間違っていたわ。……あなたの言う通りね」
彼女は彼の額に自分の額をそっと重ねあわせ、温かい体温を感じながら囁いた。
「これからは……絶対に無理な過剰使用はしないわ。……あなたの誇る『完全勝利』のために、私も笑顔で無事に、あなたの隣に居続けるわ」
「当たり前だクソバフ女……。約束破ったら……絶対に許さねぇからな……」
爆豪は乱暴に彼女を抱き寄せ、二度と離さないと言わんばかりにその華奢な背中に腕を回した。
それ以来。
プロヒーロー『Ms.フローレンス』は、どれほど過酷な現場であっても、二度と「己の命を削る過剰使用」を行わなくなった。
限界が来る前に、彼女は自信を持ってパートナーの名を叫ぶ。
「お願い、勝己くん!!」
「おう!! 任せとけ!!」
爆豪勝己という圧倒的な盾と剣が前線を薙ぎ払い、フローラは命を削ることなく、完璧な精度で彼と周囲をサポートする。
「全員無事に救け出し、圧倒的に勝つ」——。
爆豪勝己が望んだ『完全勝利』の隣には、いつも無事で、誇らしげに微笑むフローラの姿があったのだった。
