ナイチンゲールに捧ぐ勝利を
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「起きて……お願いだから目を覚まして……爆豪くん……っっ!!! 私を……置いて行かないで……っっ!!!」
血の味が広がる口内で、喉がちぎれんばかりに叫び続ける。
全身の細胞がギシギシと悲鳴をあげ、視界が真っ赤に染まっていく。自分自身には一切バフがかけられない。そんな身体の限界上限なんて、もうどうでもよかった。
伸ばした捕縛布を通じて、私の命そのものを注ぎ込む。
(嫌……嫌よ……!! 爆豪くん……!!)
「自慢の教え子」として見守ってきた彼。
夕暮れのグラウンドで私を全肯定してくれた彼。
病室で手を震わせ、私を失う恐怖を剥き出しにしたあの愛おしい一人の男。
彼をこの冷たい要塞の上で死なせるなんて、絶対に嫌だった。
涙と血でぐちゃぐちゃになった視界の中、エッジショットの命をかけた心臓補修と、私の【治癒】の生命力が、ついに彼の停止していた胸の奥へと届く。
ドックン……!!
静まり返っていた胸腔で、力強い跳動が一つ、打ち鳴らされた。
「……ッ!?」
手に伝わる生命の脈動。
途切れていた命の共鳴が、急速に熱を帯びて蘇っていく。
「あ……ぁ……っ」
冷たかった彼の肌に赤みが差し、塞がれていたまぶたが、ゆっくりと……けれど力強く押し開かれた。
夕空よりもなお鮮烈で、鋭い赤の瞳。
そこには、死の淵から舞い戻ってきた男の、不敵で、圧倒的な光が宿っていた。
涙で濡れた私の顔が、彼の瞳に映り込む。
ボロボロになりながら、教員としての顔すら保てずに泣きじゃくる私の姿を見上げた爆豪くんは、かすかに口端を吊り上げ、泥と血に汚れた唇を動かした。
「……置いていくわけ、ねえだろうが……アホが」
掠れた、けれどどこまでも力強いその声。
「……っ……!!」
「……俺の勝ちも……疑ってんじゃねぇ……」
その一言が出た瞬間、私の胸の奥から溢れ出たのは、言葉にならない安心感と圧倒的な愛おしさだった。
「爆豪……くん……っ……!!」
「……泣いてんじゃねぇ、クソバフ女……。立つぞ……俺はまだ……勝ってねぇ……!!」
止まっていた時間が、再び動き出す。
命の芽吹きとともに立ち上がる爆豪勝己の背中は、世界で一番頼もしく、そして私がすべてをかけて愛した男の姿そのものだった。
