ナイチンゲールに捧ぐ勝利を
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グラウンドβの観覧エリア。相澤のオッサンやB組のブラド、そして1-Aの面々が画面を見つめる中、第4試合の火蓋が落とされた。
対戦相手はB組の取陰たち。
「爆豪は単独で突進して自爆する」という高をくくったB組の狙いを、俺は初手から完膚なきまでに砕いてやった。
「俺についてこい!!」
耳郎や瀬呂、佐藤を従え、俺は前線に躍り出る。
突進しながらも、俺の目と耳は周囲の空間を広角に捉えていた。
(——力で押し切るんじゃねぇ。相手の力と視線を利用して崩す)
頭の裏で再生されるのは、夕暮れの演習場で泥まみれになりながら俺を叩き伏せたクソバフ女の声と、あの両腕に巻かれた包帯(捕縛布)の軌道だ。
自分にバフがかからねぇ身体で、相手の重心を盗み、最小限の動きで死角を突いて戦い抜いてきたフローラの対人戦術。
放課後の泥臭い特訓で俺の身体に叩き込まれたその『癖』と『視野の広さ』は、今や俺の圧倒的な爆発力と完全に融合していた。
背後からの奇襲を紙一重でかわし、味方へのサポートへ即座に回る。
ピンチの味方を救い、隙ができた敵を俺の爆破で一網打尽にする。
「助けて勝つ」「勝って助ける」——
そして、あの女が命がけで証明してきた「仲間の後ろに立ち、前線で共に勝つ」スタイル。
(ドゴォォォォンッ!!!!)
試合終了の合図が響く。
結果は、A組チームの完全圧勝(0対4の完封勝ち)だった。
「す、凄すぎる爆豪……! 完璧なチームプレイだ……!」
「あいつ、マジで仲間を利用して助けて勝ちやがった……!」
観客席へ戻ると、デクや切島たちが騒ぎ立てる。
だが、そんな雑音はどうでもよかった。
俺の視線が向けられたのは、腕を組んでこちらを見つめていたフローラの姿だ。
クソバフ女は、どこか感動したような、誇らしげな微笑みを浮かべて俺を出迎えた。
「……お見事だったわ、爆豪くん。完璧な判断と、仲間を活かす素晴らしい立ち回りだったわね」
相澤のオッサンも「フン……成長したな」と短く呟く。
周りの連中の称賛には一切口を開かなかった俺だが、フローラのその言葉を聞いた瞬間、フッと口角を不敵に吊り上げた。
すれ違いざま、俺は他の奴らには聞こえねぇような低い声で、ドヤ顔のまま吐き捨てた。
「……当たり前だろ。誰の体術盗んだと思ってんだ、クソバフ女」
フローラが小さく目を見張り、それから「ふふっ」と嬉しそうに目を細めた。
「ええ、教えた甲斐があったわ。……私の自慢の教え子ね、爆豪くん」
(——チッ、まだ『教え子』気取りかよ)
「教え子」という言葉に密かに眉をひそめつつも、俺は胸の奥でフンと鼻で笑った。
神野のアジトで、死柄木に触られて涙を浮かべていたあの夜。
あの時俺が誓った「強さ」の証明は、確実に形になり始めている。
(言っとくがな、クソバフ女。俺はお前の技を盗んで満足するような器じゃねぇ。
俺がプロになったら……今度はお前が俺の隣から離れられねぇくらい、圧倒的なてっぺんまで引っ張り上げてやるから覚悟しとけ……!)
背中で感じるフローラの温かい視線を振り払うように、俺は爆炎を小さく散らしながら、一歩を踏み出したのだった。
