ナイチンゲールの杞憂
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「―――『壁(かべ)』じゃない、ピザだ!!」
ドォン!!という凄まじい衝撃音と共にアジトの壁が崩落し、煙の中から飛び込んでくるプロヒーローたち。
その先頭、鋭い眼光で真っ先に教え子たちの無事を確認しようとした相澤消太の動きが、一瞬でピタリと止まる。
煙の奥で、死柄木がフローレンスの髪に愛おしそうに触れ、その頬に口づけを落としていた。
フローレンスは縛られたまま、死柄木のあまりの孤独さに哀しみの涙を流している。
死柄木は邪魔が入ったことに忌々しそうに振り返り、歪んだ笑みを浮かべる。
「……チッ、邪魔が入ったか……。だが見ただろイレイザーヘッド…。フローレンスはもう、俺を受け入れた。お前たちの元にはもう帰らない……俺だけのものだ」
次の瞬間、アジト内の温度が数十度下がったかのような、死よりも重い殺気が部屋を支配した。
「………………おい、ヴィラン」
髪が逆立ち、捕縛布がまるで生き物のように跳ね上がる。
これまでのどんな戦いでも見せたことのない、「大切な教え子に怪我させられ、尊厳を踏みにじられた」ことへの静かなる激怒。
オールマイトもいつもなら朗らかな声で叫ぶはずの男が、完全な『怒りの鬼』の相貌で
「 よくも……教え子に……よくも彼女にそんな真似を……ッ!!」
「先生!! オールマイト!! こいつを……このカサカサ野郎を今すぐブッ殺せ!!」
拘束されてる爆豪が吠えます
相澤の赤く光る眼光(抹消)が死柄木を捉え、個性を完全に封じる。
そして目にも留まらぬ速度で繰り出された捕縛布が、死柄木の首と両腕を死に物狂いの力で締め上げ、フローレンスから引き剥がす!
「……二度と……その汚い手でナイチンゲールに触れるな……ッ!!」
引き剥がされた死柄木は、個性を消されながらも「フローレンス!! 俺のフローレンス!!」と狂ったように叫び、手を伸ばす。
相澤は一瞬でフローレンスの元へ駆けつけると、縛られていた縄を素早く切り裂き、ショックと涙で震えるフローラの肩をしっかりと引き寄せ、自分の背中に隠すように抱きしめた。
相澤の胸の中で、ぽろぽろと涙をこぼして
「あ、相澤先生……! わたし……私……っ」
ポン、と優しく頭に手を置き、低く温かい声で
「……喋るな。もういい。よく耐えたな、ナイチンゲール……。あとは俺たちに任せろ」
