第1章 賢者の石
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ノットは、フェリシティとの会話よりも読書に耽る方が好ましい様子なので、フェリシティも無理に話題を探すことはせず、彼女はただ本のページをめくる音を聞きながら、外の流れ行く景色を窓から眺めていた。
煉瓦造りの建物が立ち並んだ街から遠ざかり、ホグワーツ特急が広大な農地の広がる田舎町に入ったところで、フェリシティはガラガラとカートを引く音に気づいて通路に顔を向けた。
車内販売だ。
「何か欲しいものはないですか。」
年配の魔女が笑顔を浮かべて尋ねる。
「これを1つ。」
一通り品揃えを見た後、フェリシティはパンプキンジュースを指差した。
そしてノットの方を向いて、何か欲しいものはあるか尋ねた。
彼は首を横に振ったので、フェリシティは彼女にありがとうと言いながらシックル硬貨を数枚手渡してパンプキンジュースを受け取った。
蓋を開けて口に含めば、口の中一面にかぼちゃの優しい甘さが広がった。
パンプキンジュースはフェリシティの好物である。
自然と頬が緩む。
ゆっくりと味わうように飲んでいると、扉をノックする音が聞こえた。
フェリシティが扉に顔を向けると、ガラス窓の向こうには女の子とその子の後ろに泣きべそをかいている男の子がいた。
コンパートメントの扉が開く。
「失礼するわ。貴方達ヒキガエルを見ていないかしら。ネビル・ロングボトムのカエルなの。」
口を開くと彼女は早口で尋ねてきた。
ネビル・ロングボトムとは彼女の後ろにいる男の子のことだろう。
「きっとトレバーは僕のことが嫌いになったんだよ。」
彼は弱音を吐いて涙を流している。
「いいえ。見ていないわ。」
フェリシティは首を振る。
ノットに目を向けると「俺も見ていない。」
と同じように首を横に振った。
「そう。」
彼女はノット達の返事に肩を落とし、ロングボトムはますますうなだれてしまった。
「ネビルのカエル、見つかることを願ってるわ。」
「うん。……ありがとう。」
フェリシティの言葉にロングボトムは弱々しく返す。
心配そうな表情で背中をさすってくれている少
女に連れられて彼は去っていった。
2人の背中を見送り、フェリシティは再び外の景色に目を戻すと、いつのまにかホグワーツ特急は見晴らしの良い田舎道を抜けており、木々が生い茂って幽幽たる森の中を走っているところであった。
「そろそろ着替えた方がいいだろうね。」
そう言ってノットが出て行ったコンパートメントの中で、フェリシティはラックからトランクを降ろし制服を引き出した。
上着を脱いでシャツとスカートに着替えた後、足首まで隠れる黒いローブを上から羽織った。
そしてノットをコンパートメントに呼んで、入れ替わるように通路に出た。
その時、フェリシティ達のコンパートメントより後ろから歩いてきていた人にぶつかり、彼女は後ろの壁に肩を強かにぶつけることになった。
そしてフェリシティにぶつかってきた3人組の男の子の内1人が「済まないね。」とフェリシティに軽く謝罪したきり、彼らはそのまま足早に去ってしまった。
なにやら彼らは焦っている様子だったので、フェリシティも引き止めることはしなかったが、彼らに対して悪い心証を持ったのは確かだ。
なぜなら、謝罪は誠意を持って行うべきものだと、フェリシティは考えているからである。
鈍い痛みを放つ肩をさする。
フェリシティはコンパートメントの中にいるノットが彼女に声をかけるまでしばらく、嫌な気持ちを抱えていたが、コンパートメントに入ると気持ちを切り替えることにした。
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