このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

詩 2022/07/04〜

やっと


ゆるされるなら、あの海に孵ろう。
鮮明な色が君を殺すなら、いっそ淡いところでほどけてしまおう。
君はただピアノの音を聴いていればいい。
きっと神様は許してくれるよ。
私はひとりぼっち。どうすればいいの?
痩せ細ったからだ。いつ許しが来るというの?
じゅう数えたら天使が迎えにきてくれるの?
準備はできてる。昨日のうちにバッグに詰めた、必要な物は全部。
だけど動けないんだね。
そうよ、私はしがみついている、重力に。
ぼくが知りたいのはHow Toではないんだ。
そうよ、私もそう。
人はよく、今すぐにやれと言うけれど。
そうよ、それができたらどんなに楽?
さて。誰のために?
そうよ、至極単純な個人的理由で。
彼は英和辞典を読むのが好きだったんだろ?
そうよ、だから私は真似した。
そうすれば何かわかる気がしたの。でも今思えば、それはただの、ただの憧れ。
彼女は壊した。水槽も照明も。寝台も神座も。
シンプルにしたかったの。破壊衝動と共に。
そして僕らは海に帰ってきた!
点状の海がとろけるように僕らの体を撫でた。
飛び込んだ音が彼女の心をようやく癒したのだ。


2022/11/12
26/32ページ
スキ