精「今日から３日、俺と弦一郎で部室を整備するから部室には入らないように。」

弦「とは言っても、鍵はかけるから入れないだろうが。」

『へぇ、どんな風にするの？』

精「それは終わってからのお楽しみにしておくよ。」

『うん、分かった！』


部活が終わり、皆が帰るという頃そんな話があった。


蓮「ユエ。」

『どうしたの？』

蓮「晩ご飯は決まっているだろうか。」

『ううん、特に決まってないよ。』

蓮「なら俺と一緒に晩ご飯を食わないか？駅の方に美味しいと噂されているオムライスの専門店が出来たらしい。」

『へぇ、オムライス？いいね。ブン太も誘おうよ。』

蓮「…あ、ああ。分かった。」

『(２人でデートでもしたかったのかな、なーんて。)ブン太ー。』

ブ「どうした？」

『蓮二と晩ご飯食べに行くんだけど、ブン太も一緒にどう？(ブン太はどんなご飯も美味しそうに食べるからつい誘いたくなるんだよね。)』

ブ「あー…悪い、俺用事があってよ。」

『えっ、こんな時間から？』


時計は既に18時半をしめしていた。


ブ「え、えーっと。そう、家族で飯に行くんだぜぃ！」

『(…嘘っぽい。なんで隠すんだろう。)そっかー…分かった。蓮二行こ。』

蓮「ああ。駅の方に行くとしよう。」

赤「……。」

『(赤也も普段だったら蓮二に奢ってーとか言うのに、なんだろう。今日みんな雰囲気悪いなぁ…。)』


蓮二のいうオムライスの店へ向かっている途中、蓮二は普段通りだった。


『なんか、みんな様子変じゃなかった？』

蓮「そうか？」

『うん。なんか…私に対してよそよそしいというか…。』

蓮「俺は全くそうは感じないが。」

『そうかなぁ…赤也とか今日は全然話しかけてこないし。私、なんかしちゃったのかなぁ…。』

蓮「そんな事はないとだろう。ユエはいつも通りだった。」

『…んー…よく考えたら蓮二がその日にいきなりご飯に誘ってくるのも珍しいよね。』

蓮「そうか？俺はユエを誘いたいから誘っただけなんだが。」


ふ、と微笑む柳。


『…その言い方はちょっとかっこいいけど。』

蓮「本心だ。」

『わ、分かったよ。照れるからやめよ。』

蓮「ふ…分かった分かった。」


レストランについて、注文を終える。


『蓮二もやたら褒めてきたしやっぱ今日のみんな変だよ。』

蓮「そう変と言ってくれるな。思春期の男がマネージャーの女の子と２人きりで出掛けて緊張しない方が変だ。」

『…う、うん。(いや、そういう所が変なんだって。う、嬉しいけどさ。)』


柳はご飯を食べている途中、しきりに何度も時計を確認していた。


『時間ない？』

蓮「いや、そうじゃない。遅くなりすぎても俺の家族に心配をかけさせてしまうからな。だが、ユエとも長く居たいからつい見てしまうんだ。不快だったか？」

『い、いや…そういう事なら別にいいよ。』


ご飯も食べ終わり、柳はユエを寮まで送る。


『ご飯美味しかったよ。誘ってくれてありがとう、蓮二。』

蓮「ああ、お安い御用だ。ユエ、また明日。」

『うん！また明日ね、蓮二。』


柳はユエが部屋に入るのを確認すると、家に向かって帰っていった。






次の日の部活終わり。


雅「ユエ。」

『んー？』

雅「俺と飯に行くぜよ。」

『うん、いいよ。あ、ブン太も誘おう？』

雅「…誘ってみんしゃい。」

『うん。ブン太ー。』

ブ「あ、悪ぃ、ユエ！俺今日弟達と遊ぶ約束してるんだ！またな！」

『あ、うん…。』

雅「２日連続で断られたぐらいでそう落ち込むことじゃないなり。ブン太もたまたま２日連続で用事があっただけぜよ。」

『そっか…。あ、じゃあ蓮二。昨日蓮二と一緒に行ったし誘っていい？』

雅「ま、誰誘っても構わん。誰もこんと思うが。」

『なんでよ。蓮二ー！』

蓮「悪い、ユエ。今日は俺が用事あるんだ。」

『…そっか。じゃあ、雅治、一緒に行こうか。』

雅「プリッ。」

ブ「……。」


丸井は今にもヨダレをたらしそうな目でユエを見ていた。
仁王とユエは、街の方へ歩き飲食店を探す。


『やっぱり変だ…。』

雅「何がだ？」

『皆の反応。』

雅「ま、ブン太の様子はなんかおかしいの。」

『昨日の雅治もなんか変だったよ。』

雅「俺は昨日はちゃんと訳があったぜよ。」

『訳って何さ？』

雅「はて、なんじゃろな。」

『私、嫌われてんのかなぁ…。』

雅「ま、それはないじゃろ。俺も立海テニス部の全員も。」

『そっかなぁ…。』




ご飯を食べ終え、仁王はユエを寮へ送る。


また次の日の部活終わり。



赤「ユエちゃーん！」

『赤也、どうしたの？』

赤「今日俺とでぃなーしない？」

『ディナー…晩ご飯って言えばいいのに。』

赤「へへっ、英語出来るように見えるっしょ？」

『ふふ、そうかな。でもいいね、晩ご飯食べに行こうか。ねぇ、ブｎ』

ブ「悪ぃ！！俺用事があって！」

『う、うん。そんな食い気味に言わなくても…。雅治も……いっか。赤也行こ。』

赤「おう！」

雅「…。」


切原はユエの手を引いて強引に連れ出す。


『赤也、何食べたい？』

赤「んえ、決めてなかったな。えーっと…安くて美味いもん！」

『んー…じゃあ、ファーストフードとかでいっか。』

赤「賛成！」

『所で、赤也がお金持ってるの珍しいね。いつも３年の誰かに奢ってもらってたのに。』

赤「え…あ、ああ…たまにはユエちゃんと２人でご飯食べたいじゃん？」

『ふふ、そうね。』


ユエはだんだん足取りが重くなっていた。


『……(なんなんだろう…私、何かしたのかな…。ご飯誘ったら、ブン太いつも来てくれてたのに…。)』

赤「ユエちゃん、なんか元気ない？」

『…ん？あ、大丈夫だよ。』

赤「そんな事ないじゃん？なんかぼーっとしてるし。」

『最近、皆で遊ぶこと減ったなぁって思って…。』

赤「あー…俺はその、お金無かったからさ…。」

『ふふ…うん、それは知ってる。』

赤「他の人たちもたまたまだって！皆ユエちゃんの事本当に大好きだって！」

『なんか、最近部活の時もやたらこそこそと話してるし、気になっちゃうなぁ…。』

赤「絶対違うって！俺が保証するって！」

『…そっか。赤也ありがとう。』


ファーストフードの前についた時、ユエのスマホに幸村から電話がかかってくる。


『もしもし？』

精「ユエ、早く来て！」

『え、精市？どうしたの？』

精「ブン太が、勝手に整備中の部室に入って大変な事になったんだ！早く学校に帰ってきて！」

『わ、分かった！』


ユエは電話を切り、学校に向けて走り出す。


赤「ユエちゃん！？」

『あ、赤也、走って！』

赤「お、おう！」


ユエと切原は走って学校へ戻る。


『…はあ、はあ……。』

赤「ユエちゃん、無理すんなよ！」

『だって、ブン太が…！』

赤「丸井先輩がなんだってんだよ？」

『…とにかく、部室へ行かなきゃ…！』

赤「わ、分かった。」


部室の前につき、勢いよくユエがドアを開ける。


すると、急にパンッとクラッカーの音がなる。


『は、え…？』


目の前には豪華な食事が並んでいた。


精「ユエ、誕生日おめでとう。」

比「おめでとうございます、ユエさん。」

『え、誕生日…？わ、私の…？』

弦「部活の終わりに、３日間少しずつ準備をしていたんだ。」

桑「俺達、愛想なかっただろ？悪かったな。」

『あ…そ、そっか…。』


ユエはポロポロと涙を零す。すると、全員がぎょっとする。


桑「お、おい…何も泣かなくていいだろ。」

『…わ、私…その…ごめん…。』

赤「な、泣くなって！ユエちゃんを交代で連れ出して準備してたんだって！」

『その…私、皆に嫌われたって、…なんか、思っちゃって…。』

赤「確かに付き合い悪くなったって思われても仕方なかったって！ユエちゃんは悪くないからさ！」

ブ「柳も、仁王も、ユエと飯行くのを俺と交代してくれれば少しはユエの勘違いも無くなってただろぃ。」

蓮「じゃんけんで負けたお前が悪い。」

『…変な勘違いしてごめん。皆、私の為にこんなに準備してくれてると、思わなくて…。』

弦「な、泣くなと言ってるであろう！」

『嬉し涙ぐらい、良いじゃん。』


ユエがにへっと笑うと真田は照れておもわず目をそらす。


比「ユエさん、これをお使いください。」

『比呂士…ありがと。』


ユエはハンカチを柳生から受け取る。





桑「料理はブン太が用意してくれたんだぜ。」

ブ「へへ。どうよ。」

雅「俺とジャッカルも手伝ったなり。」

『そうなんだ…美味しそう。』

精「俺と弦一郎は飾り付けをしたんだ。どう？」

『ふふ…誕生日おめでとうって文字書いたの弦一郎でしょ、達筆すぎるもん。装飾は精市？すごく可愛らしい。器用なんだね。』

弦「む…見て分かるのか。」

『うん、弦一郎は字が綺麗だもん。』

蓮「俺と柳生はケーキを選んだんだ。流石にブン太の負担がでかいと思ったんでな。」

比「ええ。１週間以上前からどんなケーキを買うか相談していたのですよ。昨日漸く選び終わって、今日取りに行ったのです。」

『そんなに前から参謀と紳士が考えてくれてたなんて、思わなかった…素敵なケーキ…。嬉しい。』

ブ「さ。飯が冷めちまう前に食おうぜ。俺の作る料理は美味いぜぃ。」


全員は食事を楽しむ。


『美味しい…すっごく美味しい。』

ブ「おいおい、美味しすぎるからってまた泣きそうになるなよ！」

桑「ユエはそんな泣き虫だったか？」

『だって、こんな素敵な仲間がいるんだって思ったら…なんだか泣けてきちゃって。』

赤「へへ、パーティはまだ始まったばかりだぜ？」

『ん、うん…そうだね。』

比「主役なんですから、大いに楽しんでください。」

赤「そうそう！片付けなんかも全部俺達がやるからさ！」

『ふふ…片付けの心配なんてしてないよ。』

雅「じゃ、ユエは食いすぎないよう気を付けんしゃい。」

『ケーキの分残しとかなきゃね。』


食事を楽しみ終わると、柳と柳生がケーキにロウソクをたて、火をつける。


赤「誕生日おめでと、ユエちゃん！」

精「ユエが居てくれて本当に良かったよ。」

弦「…氷帝ではなく、立海を選んでくれてよかった、と素直に言おう。」

ブ「ユエがきて華が出てきて毎日たのしいぜぃ！」

桑「お前のおかげで毎日がだいぶ刺激的になったな。」

比「ユエさんは私たち立海のテニス部に掛け替えのない存在です。」

雅「ま、もうユエがいないのは考えれないの。」

蓮「うまれてきてくれてありがとう、ユエ。」

全「「誕生日おめでとう！」」


ユエは嬉しさに涙を流しながらロウソクの火を消す。


『ありがとう、皆。…大好き。』


歓声と共に皆は拍手をする。


赤「ユエちゃん、実は俺達今日は泊まるって言ってるんだ！朝まで食って飲んで遊ぼうぜ！」

『いいの？貴重な土曜日なのに。』

精「何のために土曜日の部活を無くしたと思ってるんだい？」

『…えへへ…常勝立海大が、落ちたもんだね。』

精「なんとでもいいなよ。俺には今日という日がそれ程に大事なんだ。」

弦「………日曜からまた気合を入れ直せばいい。」

ブ「そうそう、だから硬いこと言いっ子なしだぜぃ。」

赤「俺も真田副部長にちゃんと日曜日は練習するって約束してるからさ！変な心配しないで！」

『…うん。ありがとう、皆。私、立海の皆大好き。これからも…卒業してもずっと仲良くしてね。』

精「当然だよ。ユエ、俺達の方こそよろしく。」







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