相異相愛のはてに 番外編





ある日の休日、巣隠寮に住んでいる四人はカラオケに行くことになった。
言い出したのは独影で、それにノリノリでノッたのは心ノ羽で、千染は独影に無理矢理、芙雪は心ノ羽が行くから渋々、といった感じである。


心ノ羽
「わーカラオケとか久しぶりですー!何歌おうかな〜?芙雪さん、一緒に歌いませんか!?」

芙雪
「え……、ま、まぁ……心ノ羽と一緒なら……」

千染
「……」

独影
「千染ぇ、せっかくカラオケ来たんだからスマホいじってばっかしないで歌おーぜ〜?」

千染
「お前が無理矢理連れてきたんでしょうが。わたしは歌いませんよ」

独影
「え〜」

心ノ羽
「独影さん!わたし歌うの決めたんで先に入れていいですか!?」

独影
「いいよいいよ〜」

千染
「相変わらず厚かましい女ですね。こういうのって普通遠慮して年上に譲るもんじゃありませんか?これだから周りにちやほやと甘やかされてきたガキは……」

独影
「お前本当に心ノ羽ちゃんだけには当たりがきついよな。まぁ聞こえてないからいいけど」


こうして心ノ羽の歌唱が始まった。


心ノ羽
「かみのけ〜をそよかぜに〜!なび〜かせ〜て〜、さわやかに〜!ほほ〜えむ〜き〜みをあいし〜て〜る〜!だーけーど、あおn」


ガンッ!!


心ノ羽
「ぎゃあ!」

芙雪
「心ノ羽!」


だが、歌ってる途中で急に飛んできたジンジャエール入りのグラスが見事に頭にヒットした。
もちろん投げたのは千染である。
その隣で独影は、「あ〜……」とだけ言った。
頭を抱えてしゃがみ込む心ノ羽に駆け寄った芙雪は、彼女の頭を撫でながらキッと千染を睨みつける。


芙雪
「貴様!いきなり何をする!?」

千染
「失礼。わたし、その歌不愉快で嫌い(※一個人の意見です)なんですよね。あまりにも耳障りでしたから、つい投げてしまいました」

芙雪
「苦手な歌ならお前が部屋から出ていけばいいだけの話ではないか!」

千染
「おや、どうしてわたしがわざわざ腰を上げないといけないのですか?嫌嫌連れてこられた身だというのに……」

独影
(だからこそ出ていって然るべきでは?)

芙雪
「なんて身勝手で傲慢なヤツなんだ……!これだから男というのは……!!」

独影
(あんまり男であること関係ないような……)


未だ流れる青●りのメロディーをBGMに、千染と芙雪は険悪な空気を醸し出す。


芙雪
「……どうやら、お前とはいよいよ決着をつけないといけないみたいだな」


そう言って、どこからともなく釘バットを取り出す芙雪。


千染
「おやおや、穏やかではありませんねぇ。もう一度、地べた這いずらせてあげましょうか?」


そして、それに続くように裁ちばさみを取り出す千染。
その様子を見ていた独影は「わ〜」と声をもらし、頭を抱えていた心ノ羽はあわあわとする。


独影
「二人ともやめなってぇ」

心ノ羽
「そ、そうですよ!せっかくカラオケに来たんですから楽しみましょうよ!ケンカはダメですよ!」


芙雪
「表に出ろ。その無駄に綺麗な顔、お前の心と同じようにしてやる」

千染
「それはそれは。どんな顔にされるか楽しみですねぇ」


心ノ羽
「わーー!!聞いてない!!!」


こうして芙雪と千染は、殺意バリバリに醸し出しながらカラオケルームを出ていった。


バタンッ


心ノ羽
「うわあぁあああああ!どうしよどうしよ!?わたしが青●りを歌ってしまったばっかりにぃ!」

独影
「心ノ羽ちゃん落ち着きなって。とりあえず青●りもう一回歌ったら?」

心ノ羽
「何故事の発端ソングをもう一度!?というか止めにいかなくていいんですか!?」

独影
「ん〜〜まぁあの二人だし大丈夫でしょ。さっき櫻世(寮長)さんにも連絡入れたし、大事にはならないって」

心ノ羽
「そ、そうでしょうか……?」

独影
「それより服濡れたんじゃない?拭いたら?」

心ノ羽
「あっ、ありがとうございます」


独影から受け取ったハンカチで、ジンジャエールがかかった部分を拭く心ノ羽。
本当に、千染と芙雪は大丈夫なのか。
血祭り沙汰になってないだろうか。
二人の行く末をモヤモヤと考えている心ノ羽をよそに、独影は歌を入れる。


独影
「そんじゃあ、千染と芙雪の分も歌ってやっか」

心ノ羽
(えぇ、歌うんだ……。なんていうか、独影さんって本当にマイペースだなぁ……。わたしはとても歌う気分には……)

独影
「夢ならばど〜れほどよかったでしょう。未だにあなたのことを夢にみる〜」

心ノ羽
「ウワァまさかの米●!!?しかも歌超絶ウメェッ!!!次KICKBACK歌ってくださぁい!!!パプリカも!!!」


こうして独影と心ノ羽はカラオケを存分に楽しみ、千染と芙雪は喧嘩の両成敗という形で櫻世により病院送りにされた。





〜おまけ〜


どこかの公園。


夜雲(高校生)
「千染くん、この前寮の人たちとカラオケ行ってたよね?」

千染
「なんで知っているんです?」

夜雲
「たまたま見かけて後をつけたから」

千染
「………」

夜雲
「でもきみ歌うどころか、すぐに寮の人と部屋から出て裏路地でシバき合ってたね」

千染
「……」

夜雲
「きみの歌……聞きたかったな」

千染
「……わたし、上手くありませんけど」

夜雲
「上手くなくても聞きたいよ、きみの歌声は」

千染
「はぁ……」

夜雲
「だからぼくとカラオケ行こうよ」

千染
「今から?」

夜雲
「うん」

千染
「あなた高校生ですよね?もう夜来ますよ?遅くなると家の方が心配するんじゃないんですか?」

夜雲
「きみと歌いたい歌もあるんだ」

千染
「わたしの話聞いてます?」

夜雲
「明日●くるならをぼくと歌って欲しい」

千染
(……何だそれ)


後にその歌を調べて、これを夜雲と一緒に歌うとか色んな意味で無理と思った千染であった。



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