相異相愛のはてに
「父さま」
「楽しいって何?」
「嬉しいって何?」
「悲しいとか苦しいとか」
「どんな感じなの?」
「笑う時ってどんな気持ちになるの?」
「みんな、何が面白いの?」
「なんで、あんなに表情が変わるの?」
「なんで、みんな泣いたり笑ったりするの?」
「……夜雲」
「誰かを好きになりなさい」
「誰でもいいから、本気で好きになりなさい」
「頭でただ単に好きって思うんじゃなくって、心の底から好きになるんだ」
「心の底から好きになるってのはな。意識せずともその人のことを考えるようになるんだ」
「どんな時でも、目の前にいなくても、その人の存在が自分の中にいるんだ」
「そしてその人のことを考えると、たくさんの感情が次から次へとわき上がってくるんだ。嬉しいも楽しいも、苦しいも悲しいも……」
「だからな、夜雲」
「誰かを好きになるんだ」
「そしたらきっとわかるはずさ」
「夜雲が不思議に思っていること、全部」
***
千染は動揺していた。
らしくもなく。
いや、ここずっと彼らしくない状態だ。
独影との会話を経て、胸のもやつきを晴らすために夜雲に再度会ってみる気になったのはいいものの、やはりあんな思いをさせられて大人しく姿を見せるのは癪だった。
少しは痛い目に遭わせないと気が済まない。
だから気配を消して、ちょうど家に帰ってきた夜雲の後ろに着地して、棒手裏剣で体の数ヶ所刺すつもりだった。
けど、着地した時点で夜雲は反応した。
そして、勢いよく後ろを振り返ってきた。
気配は消していたはずだった。
でも、夜雲は気づいた。
その事実に、千染は驚きが隠せなかった。
勘が鋭いとは思っていたが、まさか気配を消している自分にまで気づくとは。
夜雲と目が合い、千染は息が詰まるような感覚に襲われる。
約束をずっと破っていた上に、自分が夜雲に何しようとしていたのか。
自分の手にある棒手裏剣を見れば明白だ。
どうする。
相手は帯刀している。
ここで夜雲が刀を抜いてもおかしくない。
そう来たら……。
と、夜雲の反応を予想して先手を打とうと考えていた千染だったが。
(!)
それよりも早く夜雲が駆け出して。
持っていた棒手裏剣を構える間もなく、
抱きしめてきた。
千染は一瞬だけ身構えた。
抜刀はしてないが、小刀か何かを隠し持っているのではないかと。
だけと、何もなかった。
何も起こらなかった。
夜雲はただ、抱きしめていた。
千染の背中に回している手に力を入れて。
彼の肩に顔を埋めて。
千染はわからなかった。
夜雲が何をしたいのか。
どうして、抱きしめるだけで何もしてこないのか。
自分は約束を破ったのに。
更には攻撃しようとしていたのに。
これは一旦離れた方がいいのだろうか。
だけど、夜雲の力が強くて簡単に彼の腕を振りほどけそうにもない。
彼の腕が回っている部分から、少しの痛みを感じるくらいに。
まさか、絞め殺そうとしてるのか。
と、思いかけたが、その疑念もすぐ消えた。
「……千染くん……」
夜雲から、名前を呼ばれる。
「千染くん……、千染くん……」
何度も。
肩に埋めてる頭を擦りつけて。
縋るように、求めるように。
夜雲は千染の名前を呼ぶ。
いつになく切なさの滲み出たその声に、静かでありながらもどこか必死さを感じさせるその動きに、千染は意外そうな表情をし、思考と共に固まる。
「ごめん……、ごめんね……」
そして、次に出てきたのは謝罪の言葉。
「きみの全部を知りたいからって……、嫌なことをしてしまって……」
夜雲の手が、腕が、体が……微かに震えているのを感じる。
口先だけではない。
布越しに伝わってくるその微かな震動が、そう確信させる。
だからこそ、千染は戸惑いを感じた。
だって。
「ごめん……、本当にごめん……」
怒っていると思っていたから。
仮に怒ってなかったとしても、文句の一つや二つ、それか仕置きと称して何かされると思っていたから。
大抵はそういうものだ。
失敗した時やヘマした時、何かをしくじれば、何かに背けば、罰がある。
それ以外に何があるというのか。
……だから。
だから、千染はどうすればいいのかわからなかった。
反応に困ってしまった。
柄にもなく。
「もう……あんなことしないから……」
夜雲の腕に力が入る。
「二度としない……、……だから……」
そして、
「いなくならないで……、お願い………っ」
必死にしがみつくような、泣きそうな、恐れているような、そんな声で、夜雲は千染に言った。
己の切実な願いを。
それを聞いた瞬間、千染は目を大きくした。
静寂が漂う。
空に浮かぶ月だけが、青白い光を注ぎながら二人を見下ろす。
千染を力強く抱きしめる夜雲と、呆然としているような様子の千染。
しばらくして、無意識に手の力が抜けていったのか、千染の手から棒手裏剣がするりと離れていく。
そして、棒手裏剣が地面に落ちた音を耳にした瞬間、千染はハッと我に返ったような反応をした。
千染の赤い瞳が戸惑いに揺れる。
どうすればいいのか、どう反応するのが正しいのか、迷う。
同時に、胸がざわつく。
ぞわぞわした感覚が、胸から全身を駆け巡る。
巡って、巡って、巡って、逃げたい衝動に駆られる。
これは何なのか。
……なんて、冷静に考える余裕なんてなく、千染は咄嗟に口を開く。
「い……、痛い……」
とりあえず。
離れて欲しくて、そのきっかけになるであろう言葉を漏らす。
すると、夜雲の腕がそれに反応するようにぴくっと動く。
そして、ゆっくりと、静かな動きで、千染の体から腕を解いていった。
夜雲の腕の力が緩んだのを感じて、今だと言わんばかりに千染は足に力を入れ、後ろに飛び退こうとする。
が。
「!」
その寸前で夜雲に手首を掴まれ、距離をとるのに失敗してしまう。
少しぐらついたものの、なんとか踏み留まり、千染は反射的に険しい表情をして夜雲を睨む。
「……何をするんですか」
「だって……逃げようとするから……」
千染の低い声をものともせず、夜雲は静かな声で応じる。
こちらの威嚇に動揺すら見せない夜雲の様子に苛立った千染は、彼の手を乱暴に振りほどこうとする。
だが、夜雲の手が離れるどころか、掴まれてる手首自体思ったように動かせない。
引っ張ってみてもあまり動かない。
まるで手枷だ。
千染は不快そうに眉間に皺を寄せて、再び夜雲を見る。
「離してくれませんか?」
「………」
夜雲の手が離れる気配はない。
当の本人は視線を下に向けたまま黙り込んでいる。
その様子を見て、千染は更に苛立ちを感じたが、なんとか冷静さを取り繕う。
「あなた……わたしに悪いことをしたと思っているのですよね?だから謝ったのですよね?」
「……」
「でしたら、わたしの言うことを聞くのが筋ではありませんか?」
「無理」
やっと口を開いたかと思えば、単刀直入な拒絶。
あまりにも無駄がなさ過ぎるその発言に、千染は落ち着いた表情を保ちながらも、こめかみにぴきっと青筋が浮かぶのを感じる。
なんだこいつ。
申し訳なく思ってるんじゃなかったのか。
「無理、とは?」
先ほどよりも圧のある声で、千染は短く問う。
千染が苛立った時によくする問い方だ。
巣隠れ衆の下忍・中忍はもちろん、大抵の者は千染のその圧に萎縮して、その短い内容に彼の感情を色々と想像してしまって、必死に彼の機嫌を直そうとするのだが……。
「離したくない」
夜雲は例外だった。
まぁ今までの言動からして当然といえば当然である。
千染の機嫌を直そうとするどころか、窺う気配すらもなく、言いたいことを言う。
夜雲の態度は正にそんな感じだった。
「………」
そして、当然の如く千染は千染で苛立ち越えて腹立たしさを感じる。
夜雲にちょっとした圧をかけたところで通用しないのはうっすらわかっていたが、実際そうとなると癇に障るものがあった。
もはや離す離さない以前に、なめているのかと千染は思ってしまう。
だが、
「……だって……」
千染の感情をよそに。
「きみが……、また……いなくなるんじゃないかって……」
夜雲は口を開いて、言う。
「そう思うと……胸が、ぎゅっとして……苦しくて……」
微かな震えを帯びた声で。
「怖いから……。きみが……またいなくなるのが……、……怖い……」
彼から手を離さない理由を口にした。
それに伴って、彼の手首を掴んでる手に力が入る。
どこにも行かないで、と言わんばかりに。
その一方で、手首から僅かな痛みを感じながらも、夜雲の発言を聞いた千染は、怪訝さと驚きが入り混じった表情で夜雲を見ていた。
“怖い”。
彼の口から出た言葉。
確かに言った。
確かにこの耳で聞いた。
言うことを聞かない夜雲にやきもきしていた千染だったが、ここに来たことを少し後悔しかけていたが、まさか彼の口から出るとは思ってもいなかった単語に、その全てがふっ飛んだ。
怖い。
恐怖。
この能面男でも、それを感じる情緒があったのか。
いや、そのことにも驚きだが、何よりもそれを感じている理由だ。
(わたしがいなくなると……怖い……?)
千染はわからなかった。
ただただ疑問だった。
自分がいて恐怖されることはあれど、自分がいなくて恐怖されたことはない。
今まで生きてきて、一度も。
そもそも、そういうことがあること自体知らなかった。
自分がいなくなることに、何の恐れを感じるのか。
むしろ、攻撃される心配がなくて安心なのでは。
否、そもそも、いようがいまいが同じなのでは……。
忍とはそういうものだ。
必要以外は存在しなくていい。
必要な時だけいればいい。
だから………。
ーーーー若医者くん、お前を待ってるぜ?
ーーーーお前が来なくなってから、夜になると外を見ている。ずっと。
不意に、独影に言われた言葉が脳裏を過る。
ーーーーなんかさ。大吉を通して様子を見に行く度に落ち込んでる感じだから、さすがにちょっと可哀想っつーか……。
ーーーー言っただろ。若医者くんはお前に本気で惚れてるって。
ーーーー好きな人が自分とこ来なくなったら……まぁ普通は悲しいだろ。
千染の思考が一瞬止まる。
そして、
ーーーー……若医者くんは、お前の全部を受け入れたいんじゃねぇか?
最後に過ったその言葉。
受け入れたい。
わたしの全てを。
それはわたしが好きだから。
好きだから。
好きだから、そうなっているということ。
そういう気持ちになっているということ。
………ということは。
わたしがいなくなるのが怖いというのも、好きだから。
好きだから、わたしがいなくて怖くなる……というのか。
千染は独影に言われた言葉を助けに、なんとか答えらしい答えを見出す。
そして、ここに戻ってきた本来の目的を思い出す。
自分は自分が感じてる疑問の全てに、少しでも納得のいく答えを見出すため戻ってきたのだと。
胸の中にあるしこりをなくすために。
(………)
ついさっきまで感じていた苛立ちも腹立たしさも消え失せ、千染は冷静に夜雲を見る。
未だに顔をうつ向かせている夜雲。
その表情は、どことなく苦しそうに見える。
目に見える表情の変化としては微々たるものだが、それでも夜雲の顔を何度も見てきた千染からして見れば、気づくには十分な変化だった。
千染は視線を落とし、今度は自分の手首を握っている夜雲の手を見る。
未だに力が弱まることなく、逃す意思を全く感じさせない夜雲の手。
それを見つめながら、千染はまた思い出す。
ーーーーぼくの言ってること、わかる?……わからないよね。
ーーーーきみは……誰かを好きになったことないんだ。
ーーーー恋したことないんだ。
ーーーーだからわからないんだ。
今度は、夜雲に言われた言葉を。
それを思い出して、千染は考えるように目を細める。
(………わからない。当然だ)
誰かを好きになったところで、恋したところで、何になる。
何の足しになる。
忍なのに。
影に生きて影で死ぬ存在なのに。
何をしたって何も残らないのに。
少なくとも、自分には不要な感情だ。
好意なんて、恋心なんて。
……今まではそう思っていた。
けど。
(こいつのことを知れば……、わかるかもしれない……)
誰かを好きになるということを。
そして、そこから生じる不可解な言動を。
そしたら、少しは納得いく答えが出てくるかもしれない。
夜雲に感じてる疑問も、あのぞわぞわする感覚の正体も。
確信はないが、そんな気がする。
だから。
「………夜雲さん」
改めて意思を固めた千染は、視線を上げて、夜雲を見据えて、彼の名前を呼ぶ。
何時もの落ち着いた声で。
それにすぐ反応して、夜雲は顔を上げる。
表情……に変わりはないものの、その目には少しの驚きとどこか浮き立っているような色が見え隠れしていた。
名前を呼ばれて嬉しかったのか。
どういった感情の表れなのか、それは夜雲にしかわからないが、千染はとりあえず言葉を続ける。
「一応、わたしからも謝っておきましょうか。しばらく姿を見せなくて申し訳ありませんでした。理由は……まぁあなたが想像しているとおりです」
この流れで追い打ちをかけるように悪態をつきたかったが、もう自分がどれだけ不愉快な気持ちになったか夜雲に十分伝わっているだろうと判断して、敢えて省くことにする。
それよりも言わなければならないことがあるから。
「……本当は、あなたの顔なんてもう見たくなかったのですけど……」
「………」
「少し……気になることがありまして」
「気になること……?」
「夜雲さん。あなた、前に言いましたよね?」
「……?」
「わたしが誰かを好きになったことがないから、恋したことないから、あなたの言っていることがわからないと……」
「……」
「今もそうです。あなたの言ってることがわかりません。わたしがいなくなることに何故恐怖するのか、苦しくなるのか……」
「………」
「どうして、あんなことをしてまで……わたしの全てを知りたいのか………」
千染は言う。
思っていることを、そのまま。
こちらを見ている夜雲の目から、先ほどまであった微々たる感情が消えていくのを感じる。
夜雲がどういう気持ちになっているのか、読めなくなる。
「……だから、わたしも……知ってみようかと」
それでも千染は言う。
言ってみる。
「あなたのことを。そしたら、その“好きになる”ということが自ずとわかるかもしれないので」
そして、たまに迫りくる胸のざわつきの正体も。
逃げたくなる衝動の原因も。
と、胸の中でそれを付け加える。
千染は口を一旦止めて、夜雲の反応を見る。
観察する。
表情に変化はない。
けど、目が。
目が……少しだけ揺れた気がする。
これは驚きからなのか、それとも……。
と、千染が考えている途中で、夜雲の口が開いた。
「そう……」
短い返事。
だけど、それには微かにだが感情が乗っているように感じた。
どう言い表せばいいのかわからないが、とにかく決して暗くはない感情。
「そっか……」
千染の手首を掴んでいる夜雲の手の力が、だんだんと抜けていく。
「ぼくのこと……知ろうとしてくれるなんて……」
そして、
「嬉しい……」
熱のこもった目で千染を見つめ、頬を仄かに赤らめて、今正に口にした感情のこもった声で夜雲は呟いた。
その瞬間、千染は胸がざわついてくるのを感じる。
咄嗟に夜雲の手を振り払いたくなる。
だけど、なんとかその衝動を堪えて、冷静に夜雲を見据える。
ここで逃げたら、来た意味がないから。
「ということは、また前のように来てくれるんだね?」
「……ええ」
「よかった……。もうあんなことしないから、安心してね」
「そうですね。またしたら今度は首と体がお別れになると思っててください」
「うん」
「………」
脅しのつもりで言ったのだが、あまりにも平然とした様子であっさりと返事する夜雲に、千染は少しもやついた気持ちになる。
なんだか余裕さを感じて鼻につくというか。
一方で、そんな千染の心境なんて知るわけもない夜雲は、何か考えるように視線を落としてしばらくした後、躊躇いがちに千染を再度見る。
そして、
「……千染くん」
「なんです?」
「接吻……していい?」
「はい?」
何を言い出すかと思えば、接吻とは。
一応、あの時のわだかまりが解消されたとはいえ、性急過ぎなのでは。
別にこのまま夜雲のやりたいようにさせても構わないのだが、なんだか一言何か言わないと気が済まない。
「あなた、ちょっと性欲が旺盛過ぎじゃないですか?」
千染は思ったことを率直に言う。
そのまんま、軽蔑を込めた声で。
「……そうかもしれない」
そして、夜雲は夜雲で否定せずに答える。
かもじゃなくてそうなんだよ、と千染は心の中で言い捨てる。
「でもきみをいっぱい感じたくて……、きみにたくさん触れたいから……」
「はぁ……」
これも好きという感情から生じるものなのか。
と、夜雲の言い分を聞きながらなんとなく思っていた千染だが。
「それに……嫌なこと思い出しちゃって……。だから、余計に……きみに触れたい……」
そう言ってきた夜雲の表情に陰りが落ち、それを見た千染は思わず口を止める。
夜雲の言う嫌なこと、とは。
具体的にはわからないが、千染が知っている範囲で思い浮かぶのは親のこと。
殺された親のことを思い出してしまったのか。
と、千染は推測する。
もしかしたらそれ以外のことかもしれないが、とにかく夜雲がただ欲に駆られてそういうことしたいというわけではないとわかり、少し考え直す。
そして、
「………まぁ、いいですよ」
千染は返事をする。
今度は静かな声で。
承諾を意味するその言葉に、夜雲は顔を上げて反応する。
「いいの……?」
「ええ。別に拒否する理由はないので」
「……ありがとう」
「………」
お礼を言うほどのことなのか。
千染は少し疑問に思う。
けど、夜雲の声色や雰囲気からして嬉しそうな気配を感じ、その言葉を呑み込む。
言葉よりも先に、夜雲を見る。
彼の目を、彼の顔を、彼の行動を、それらの微々たる変化を見逃さないために。
好きを……夜雲をわかるために。
千染の手首を掴んでいた夜雲の手が、そっと離れていく。
そしてそのまま、千染の頬へと移動する。
夜雲のひんやりとした手が、千染の頬に触れ、撫でるように顎へと移動する。
それに伴って、夜雲は千染のすぐ目の前まで歩み寄り、彼の顎を少しだけ上に向ける。
二人は互いを見る。
見つめ合う。
片方は観察するように、もう片方は………。
夜雲の唇が近づき、そして千染の唇に重なる。
重なって、ゆっくりと、じっくりと、味わうように食らいつく。
求めるように、縋るように。
夜雲のもう片方の手が、千染の背中に回る。
彼を再び抱き寄せる。
千染に触れて、千染を感じて。
夜雲は溶けるような感覚に呑まれる。
不安も、恐れも、黒ずんだ塊も、とろり、とろりと溶け落ちていく。
それと入れ代わるように、満たされていく。
胸の中が小さな光であふれるような心地よい感覚に包まれる。
それに身を委ねるかのように、それを堪能するように……夜雲は静かに目を閉じた。
ひどく安心しきった様子で……。