短編
私の名前は、園崎れいか。
チョー可愛くてイケイケな大学二年生!
「お、そこのねーちゃん超(×一億)可愛いじゃん〜」
「オレらとポルシェキメて海辺でランデブーしねぇ?」
「うるせーシネシネッ」
今日も今日とて、ナンパ野郎に中指を立てて巧妙なお断りトークをかまして、私は待ち合わせ場所に向かう。
そう、この度園崎れいかは彼氏が出来たのだ!
池上ジュン。
同じサークルの先輩で、超優しくて爽やかなイケメンだ。
何度も何度も、何十と付き合っては別れるの繰り返しをしてきた私だけど、今回は違うって言いきれる。
だって、ジュンくん、本当に優しいんだもん。
初めてのデートで私がうっかり片方スリッパ、片方下駄ってあり得ない靴の間違った履き方した時もドン引きするどころか笑って許してくれたし。
ヘアピンと間違えてプルコギをつけていた時も笑って取り除いてくれたし。
シャーペンの代わりにちくわを持ってきて先生に怒られた時もすかさず私を庇ってくれたし。
急に幸せな家族の空気を壊したくなって、観光を楽しんでいる家族の輪の中に無理矢理割り込んで持ってたアイスを貪って「おいしいねぇおいしいねぇ」と笑ってる私を見るなり小さい子どもが泣き叫んで、親御さんは「あなた誰なんです!?」と異形のモノを見るような目で見てきたりして、理想通りの阿鼻叫喚となってて悦に浸っている私を見ても、笑って許してくれたし……。
本当にこの人だけは違う。
私は確信した。
ジュンくんとは、絶対この先も一緒にいられるって。
ジュンくんこそ、私の、最高のかれぴだって。
「ジュンくーん!」
そうこう考えている間に、待ち合わせの公園に辿り着いた。
ジュンくんは既に噴水前にいた。
ジュンくん、いつも私より先に待ち合わせ場所にいるんだよね。
キュンッ。
「ごめ〜ん、待たせた……?」
「ううん、オレもちょっと前に着いたところ」
ジュンくん……。
本当は三時間前からここにいたって、GPSでわかってるんだからねっ。
なのに、私を気遣って……キュンッ。
「えと、今日はジュンくんの車に乗ってお出かけするんだよね?」
「うん。坪野鉱泉に行こうと思ってね。れいか、気になるって言ってただろ?」
「え……」
それ最恐の心霊スポットやん。
確かに気になる言ったけど、行きたいとまでは言ってないし。
まぁ〜私レベルの可愛いとなるとさすがの悪霊も恐れをなすだろうけど〜〜。
まったく、ジュンくんったら私の軽い発言を真に受けちゃって……。
そんなちょっと天然なところも……スキッ(ハート)。
「やったぁ、坪野鉱泉だぁ(ハート)。楽しみ〜」
「よかった、喜んでくれて。それじゃあ、車に乗ろうか」
「うんっ」
そう言って、ジュンくんが案内してくれた先にあったのは…………。
プリ●スだった。
それを見た瞬間、私は一気に全身の血が凍りつく感覚に襲われた。
憎悪、嫌悪、憤怒、悲哀、殺意……ありとあらゆる負の感情が私という器を支配していく。
「?、れいか?どうしたんだ?」
ジュンくんが話しかけてくる。
いや、もうこの時点でクズと言っても過言ではないだろう。
私はなんとか震える唇を開いて声を出した。
「ジュン……くん……」
「何?」
「私……無理、なの……」
「え……?」
「っ……私!プ●ウスに乗ってる人無理なの!!!」
「えっ!?」
よし、言った。
帰ろう。
「つーわけで、さいなら」
「ちょ、ちょっと待ってれいか!なんでそんな急に!?プリウ●が何をしたって言うんだ!?」
「うるせー乗ってる車が●リウスの時点でクズってのが世の中の常識なんだよ身の程をわきまえろクズ」
「そんな!それはただのプリ●ス差別だよ!●リウスに乗っていてもいい人は山ほどいる……」
「わけねーだろ!!殺すぞ!!!?」
「ひっ……!」
「そんじゃあな。二度とその面見せんじゃねーぞ」
「わ……わァァ………」
クズはその場で泣き崩れた。
ふん、プリウ●に乗ってるヤツに相応しい末路だ。
さて、デートもおじゃんになったわけだし、スタバをたまり場にしている学生どもを泣かせに行くか。
こうして、私はジュンくんと別れた……。
記念すべき101人目のかれぴ……。
まさかプ●ウスによって、終止符を打たれることになるなんて……。
やっぱ許せねぇなぁ、プリ●ス。
今度私の愛車(タ●ト)でわからせてやっからなぁ……。
震えて待てよ……!!!
あ、あともう一つ。
「園崎れいか、ただいま彼氏募集中です♡」
おわり