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外殻大地編

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「リグレットさん…」





崖の上からわたしたちを見下ろすその瞳は冷たい。リグレットさんは銃口を逸らさずに、自分の教え子であるティアに問いかけた。



「ティア。何故そんな奴らといつまでも行動を共にしている」
「モース様のご命令です。教官こそ、どうしてイオン様をさらってセフィロトを回っているんですか!」
「人間の意志と自由を勝ち取るためだ」



意味がわからないという顔をするティア。リグレットさんは続ける。




「この世界は預言に支配されている。何をするのにも預言を詠み、それに従って生きるなどおかしいとは思わないか?」
「預言は人を支配するためにあるのではなく、人が正しい道を進むための道具に過ぎません」
「導師。あなたはそうでも、この世界の多くの人は預言に頼り支配されている。酷い者になれば、夕食の献立すら預言に頼る始末だ。おまえたちもそうだろう?」

「そこまで酷くはないけど…。預言に未来が詠まれてるならその通りに生きた方が…」
「誕生日に詠まれる預言はそれなりに参考になるしな」
「そうですわ。それに生まれた時から自分の人生の預言を聞いていますのよ。だから…」
「…結局の所、預言に頼るのは楽な生き方なんですよ。もっともユリアの預言以外は曖昧で、詠み解くのが大変ですがね」



この世界の人たちは預言に頼りすぎて狂っているとリグレットさんは言う。みんなが口々に発した預言に対する意見も、リグレットさんには反論にすらならなかった。



「そういうことだ。この世界は狂っている。……それにハナ…あなたはどう?あなただって考えはこちら側に近いのではない?あなたもこの世界はおかしいと思うでしょう」



わたし?どうしてリグレットさんはそう思うのだろう。まるでわたしが預言をあまり良く思っていないのを知っているみたいな言い方だ。そんなことは誰にも話した覚えはない。まさか、シンクだけじゃなく六神将みんな、わたしの事情を知っているとでも言うのだろうか。



「わたしは……リグレットさんの言ってることが間違いだとは思わない、けどそれは…!」
「ならわかるでしょう。……この世界は誰かが変えなくてはならないのだ。ティア、ハナ…!私たちと共に来なさい」
「私はまだ兄を疑っています。あなたは兄の忠実な片腕。兄への疑いが晴れるまでは、あなたの元には戻れません」
「わたしも、今のリグレットさんとは一緒に行けない…!」

「……では、力ずくでもお前たちを止める!」



そう叫ぶと、リグレットさんは再びルークたちに弾丸を撃ち込む。やはり話し合いだけでは済ませることができず、戦闘が始まってしまった。


ハナ!イオン様と後ろへ!」
「はい!」


わたしはいつも通りイオンと攻撃の当たらない安全なところへ避難し、護衛としてアニスがつく。魔物と戦うときはすぐに終わるのだが、今回はリグレットさんが相手だ。五人を一人で相手しているのに、一歩も引かないどころか卓越した譜銃の腕前と強力な譜術で圧倒してみせている。譜術防御も堅く、ジェイドさんたちの譜術攻撃も通りにくい。特に前衛のルークとガイは間合いの内側へ入ろうとしても弾丸の牽制で近づけず、ダメージばかりがどんどん増えてしまっている。回復が追いついていない。



「(ナタリア、バリアーを使えばいいのに……まさかまだ習得してない?)」



リグレットさんの譜銃による連続攻撃は一度でもまともに食らうと大ダメージになってしまう。バリアーで守りを固めるだけでもかなり戦いやすさが違うと思うのだけど、仲間内で唯一その術を使えるはずのナタリアは治癒術と弓技しか使う様子がない。


「(……それなら、わたしが…!)」


治癒術は使えた。エナジーブラストも、失敗したけど形にはなっていた。しっかりとイメージを固めれば、他の術だってきっと…!



「…か、堅き守りを!バリアー!」
「!? これは!」
ハナ!?」


詠唱こんなのだっけ?と思いつつ、ルークとガイの周りに堅い盾が張られるイメージをして、術にして放った。二人の周りには光の壁のようなものが現れ、その瞬間襲いかかったリグレットさんの弾丸を弾き返す。壁があっても二人の動きには問題がないみたい。やった、成功だ!


「ふたりとも、今のうちに!」
「…ああ、了解!真空破斬!」
「烈破掌!」
「くっ…!」
「…ナイトメア!」



防御を得た二人はリグレットさんの攻撃を無視して懐に潜り込み、息の合った連撃で初めてリグレットさんの体制を崩す。そこにできた隙に、ティアが譜歌を歌いきって術を発動させた。ティアのナイトメアは対象を眠らせてしまう効果があるが、仰け反った状態でも半端に譜術防御を展開させたのか、リグレットさんは膝をつくのみに留まった。しかし、これで決着はついたようだ。
「くっ、」苦い顔をしたリグレットさんは攻撃をやめてルークたちから距離を取る。


「ティア、ハナ…!その出来損ないの傍から離れなさい!」
「出来損ないって俺のことか!?」
「……そうか。やはりおまえたちか!禁忌の技術を復活させたのは!」



リグレットさんの吐いた台詞に反応したルーク。しかし、それ以上に取り乱したのは、普段の冷静さからは想像できないジェイドさんだった。珍しく怒りを顕にしているその理由をわたしは半端に理解できてしまって、ぐっと胸が詰まる思いがする。



「ジェイド!いけません!知らなければいいことも世の中にはある」
「イオン様…ご存じだったのか!」
「な…なんだよ?俺をおいてけぼりにして話を進めるな!何を言ってんだ!俺に関係あることなんだろ!?」
「…誰の発案だ。ディストか!?」
「フォミクリーのことか?知ってどうなる?采は投げられたのだ。死霊使いジェイド!」



ジェイドさんは感情の昂りのままに槍を構えてリグレットさんに向けるが、リグレットさんはその瞬間に閃光弾を投げる。あまりの眩しさに全員が目を瞑り、再び目を開けたときにはリグレットさんの姿はなくなっていた。



「……くっ。冗談ではない!」
「大佐…。珍しく本気で怒ってますね…」

「……失礼。取り乱しました。もう…大丈夫です。アクゼリュスへ急ぎましょう」


冷静さを取り戻したジェイドさんの言葉で、みんなは再び歩き出す。取り残されたルークと、そこに留まるミュウとわたしだけが歩を進めないまま。


「ふざけんな!俺だけおいてけぼりにしやがって。何がなんだかわかんねーじゃんか!」
「ご主人様、怒っちゃ駄目ですの…」
「どいつもこいつも俺をバカにして、ないがしろにして!俺は親善大使なんだぞ!」
「ご主人様…」
「ルーク、落ち着いて。みんなもきっとそれどころじゃないくらい切羽詰まってるんだよ、ルークをないがしろにしてるわけじゃ…」
「うるせぇっ!お前もどっか行けよっ!!……師匠だけだ……。俺のことわかってくれるのは。師匠だけだ……!」



どうしよう。ミュウの言葉もわたしの言葉も、今のルークには届かない。ヴァンさんに依存してはだめだ、みんなを信じないと。そうじゃないと……
「ルーク、きいて、」ともう一度話しかけようと手を伸ばす。でも、「うぜーんだよ!」と、伸ばした手はばしんと跳ね除けられてしまった。



「ルーク………わかった、ごめんね。…みんな行っちゃうよ。わたしたちも行こう」
「………くそっ…」
「ご主人様……」



だめだった。今のルークにはもうヴァンさんの言葉しか届かないのかもしれない。わたしがもっと早く決断して動き出していれば、ルークのことを気にかけてあげられていれば、何か変わったのだろうか?だとしたら、わたしはなんて使えないんだろう。自分の情けなさに、きりきりと胸が痛んだ。








✱✱✱



峠を越えればアクゼリュスは目の前。街の外まで広がりつつある毒々しい障気に、わたしたちは言葉を失った。


「こ……これは……」
「想像以上ですね……」



アクゼリュスは鉱山都市。資源を掘り進めるためにできた窪地にそのまま街ができたような場所だ。そのため、崖に囲まれた街の中には噴き出した障気が溜まってかなりの濃度になっていた。おかげで街の外にはまだ障気が広がっていないのかもしれないけれど、その代わりに街の中は酷いなんてものじゃない。診療所は既にいっぱいなのだろうか、障気を吸い込んだ人々は道端に倒れ、怪我人の治癒も追いついていないようだ。まるで地獄絵図。

「大丈夫ですか?」と、ナタリアが怪我をしている人に近づいて治癒を施す。それを見たルークが怖気づいて発した「お、おい。ナタリア。汚ねぇからやめろよ、伝染るかもしれないぞ」という言葉は、ナタリアの怒りの琴線に触れてしまった。


「……何が汚いの?何が伝染るの!馬鹿なこと仰らないで!」


怒鳴られたルークはびくりと何も言わなくなる。…今のは、人一倍誰かを思う心の強いナタリアが怒るのも当然だと思う。想像もつかなかった、経験したことのない状況にルークが怯えてしまっている気持ちもわかるけれど、それは一度この状況を俯瞰で見たことのあるわたしだから思うことなのかもしれない。



アニスに続いてナタリアもルークと険悪な雰囲気になってしまい気まずい空気が流れる中、街に訪れた余所者のわたしたちに一人の男性が話しかけに来た。坑道の現場監督をしているパイロープさんという人らしい。村長さんが倒れてしまったため、代理で雑務を請け負っている一環でわたしたちの素性を確かめに来たと言う。
何者か、と聞かれてもしどろもどろで答えられないルークの代わりにナタリアが自分たちは救援隊であると答えると、先に到着したヴァンさんから話は通っていたようで、パイロープさんは「グランツさんは坑道の奥だ」とわたしたちに告げて去っていった。



「想像以上に酷いですわ…」
「死者が出てもおかしくないよ。急がないとやばい感じ」
「野ざらしになってる人や、坑道に取り残されてる人もいるみたいだ。……こりゃやばいぞ」
「現状を正確に把握しないといけませんね。一度手分けして、街を隅々まで調査しましょう。ティア、ナタリア、ハナは必要に応じて街の人に治癒術を施してあげて下さい」
「はい、わかりました」
「ルーク、それでいいわね。……ルーク?」
「え、ああ…」



ジェイドさんの提案でわたしたちはそれぞれ街の様子を見るために散り、わたしも何かできることはないか探すため街の奥に進む。倒れている人に治癒術をかけたり、怪我人を運ぶのを手伝ったりしながら街を見て回っていると、先程会ったパイロープさんが小さな男の子といっしょにいるところに出くわした。


「ああ、さっきの」
「はい、わたしはといいます。息子さんですか?」
「ええ、自分はエンゲーブからの単身赴任なんですが、間の悪いことに息子が遊びに来た日に障気が出ちまって。息子を無事帰さねぇと気が気じゃないんでさぁ」
「姉ちゃんたちがおいらを助けてくれるんだろ!おいらの家はエンゲーブだよ、早くつれてってよ!」
「エンゲーブ……?きみ、もしかして……」



エンゲーブから来た男の子。まさか。
だんだんと薄れゆく"物語"の記憶の中でも、強く心に残って忘れられないものもある。アクゼリュスが崩落し、ルークたちの目の前で、お父さんと一緒に障気の泥の海に生きたまま沈んだ男の子。必死に伸ばした手も届かず、助けられなかったあの子。



「きみ…名前は?」
「おいらはジョンだよ!」
「そっか…。ジョンくん、膝、怪我してるね。転んじゃったのかな。ちょっと待ってね」



膝を擦りむいていたジョンくんの膝に治癒術をかける。浅い傷は、あっという間に塞がった。



「すごい!治癒術つかえるんだ!ありがとう!」
「どういたしまして。…ジョンくんも、きみのお父さんも、街の人たちも…わたしたちがきっと助けられるように頑張るから。もう少し、辛抱してね」
「約束だぞ!」


早く母ちゃんに会いたい、と口を尖らすジョンくんの頭をひと撫でして、パイロープさんに会釈をするとわたしは踵を返す。そうだ…そうだ、何をやっているんだろうわたしは。わたしはアクゼリュスの崩落を阻止するためにここに来たんじゃないか。崩落を阻止すれば、避難や治療はそれからでもできる。今はとにかくルークの近くに行かないと!



「ちょっと待ちなさい、君」
「っ、なんですか?ごめんなさい、わたし今すごく急いでいて…」
「グランツ謡将の命令だ。我々と一緒に来てもらう」
「った…!ちょっと…!」



急いで来た道を戻っている最中に話しかけてきた誰かに腕を掴まれる。何事かと振り返ると、そこにいたのは神託の盾兵。こんなときに…!力ずくで振り払おうとしても敵わず、ずるずると引きずられそうになる。早くルークのところに行かなきゃいけないのに…!



「何やってんだ、馬鹿女!」
「……アッシュ!」


がつん、と重い音がして、わたしを掴んでいた神託の盾が倒れた。その背後には剣を持つアッシュ。柄で殴ったのか。どうしてこんなところに、と訊く前にアッシュが口を開く。



「こんなところで何してる!あの屑はもう坑道に向かったぞ!」
「えっうそ、もう!?わたし合流してないのに…!」
「知るか!とにかくあの屑を止めるぞ!取り返しがつかなくなる…!」
「うん!」



まさか、もうみんなが坑道に進んでしまっているなんて。もたもたしすぎてしまった。アッシュと一緒に街を走り抜け、第14坑道に駆け込む。街中よりも濃い障気の中、走り続けても息を切らさないアッシュはヴァンさんの目論見をわたしに明かす。知っていたことなのでさしたる驚きはないけれど、それでも表情は歪む。


「ヴァンの妹も襲われているはずだ、お前が助けるのは無理だろうから俺が行く!先に行って、あの屑を止めろ!」
「わかった!…ありがとう、アッシュ!」



途中でアッシュとふた手に別れ、わたしはセフィロトへの道を走る。息はとっくに上がっていて、喉も胸もお腹も痛い。それでも走らなくちゃ。止めなきゃ…!!



「っ、はぁっ、はぁ……っ!セフィロト、開いてる…!」



ダアト式封咒は既に解かれていた。ルークとイオンと
、それからヴァンさんはもうパッセージリングに向かってしまっている!時間がない、急げ、急げ!
重たい両足を無理やり持ち上げて走る。足がもつれて、何度も転んで、それでも走る。






「ルークっ……!!」




ようやく辿り着いたセフィロトの深部、パッセージリングのある間。イオンとヴァンが並び立つ中心で、ルークはパッセージリングに両手を翳していた。



「ルーク、駄目!!超振動を使わないで!!!」

「……おまえか。私の部下はどうやら失敗したようだな」
「ヴァンさんっ…!」



ルークたちのいるところまで駆け寄り、ルークからヴァンさんを引き剥がそうと掴みかかる。「ルークから、離れて!!」

ハナ…!?」「お、おい何だよお前…!」、イオンもルークも驚いているが構っている暇はない。ヴァンさんがルークにパッセージリングを破壊させてしまったら全てが手遅れだ。




「今からルークは英雄になるのだ。邪魔をしないで欲しいものだな」
「うっ!」
ハナ!」



ヴァンさんに強く胸を突き飛ばされ、思いきり地面に倒れ込んでしまう。げほ、と咳き込んでいる隙にヴァンさんはまたルークの背後に寄って、



「っげほ、だめ……だめぇっ!!!」






「さあ…『愚かなレプリカルーク』。力を開放するのだ!」






ヴァンさんがその言葉を告げた瞬間、ルークの力が解放される。ルークの手からでたらめに発される超振動のエネルギーに、わたしもイオンも弾き飛ばされた。「イオン!」、わたしはなんとか受け身を取れたものの、壁に強かに打ち付けられたイオンはそのまま気を失ってしまう。



「ようやく役に立ってくれたな、レプリカ」
「せんせ……い……?」


「くそっ!間に合わなかった!」



そこへアッシュが駆け込んでくる。ああごめんなさい、アッシュ。わたし、止められなかった。



「アッシュ!何故ここにいる!来るなと言ったはずだ!」
「…残念だったな、俺だけじゃない。あんたが助けようとしてた妹も連れてきてやったぜ!」



アッシュとともに、ティアたちみんなもこの場所に駆けつけていた。ただ事ではない雰囲気にみんなも動揺している。
ヴァンさんは指笛を吹き、待機させていたのであろう二羽の魔物を呼び寄せた。一羽に飛び乗り、もう一羽にアッシュの襟首を捕まえさせる。



「……離せ!俺もここで朽ちる!」
「イオンを救うつもりだったが仕方ない。おまえを失うわけにはいかぬ」


「兄さん!やっぱり裏切ったのね!この外殻大地を存続させるって言っていたじゃない!これじゃあアクゼリュスの人もタルタロスにいる神託の盾も、みんな死んでしまうわ!」
「…メシュティアリカ。おまえにもいずれわかる筈だ。この世の仕組みの愚かさと醜さが。それを見届ける為にも…おまえにだけは生きていて欲しい。おまえには譜歌がある。それで…」



そこで切り、ヴァンさんはティアに向けていた視線をわたしに向ける。



「……ハナ。おまえもティアと共に生き延びろ。おまえは私の理想を理解できるはずだ。生きて私の元に来い。いずれ時が来れば…」
「な、なにを……」


「まずい!崩れます!」




ヴァンさんの言葉は、イオンを背負ったジェイドさんの声に遮られた。ルークがパッセージリングを破壊してしまったことで、アクゼリュスが崩落していっている。この場所も例外ではない。ヴァンさんは最後にわたしたちを一瞥し、アッシュを連れて飛び去って行った。
「私の傍に……早く!」焦りの混じった叫びに、みんながティアの周りに集まる。ショックで気を失ってしまったルークはガイが背負った。ティアが譜歌を歌う。フーブラス川でも歌っていた、護りの譜歌だ。わたしたちの周りに光のドームが浮かび上がる。



「(でもそれじゃ、足りない…!)」



ティアの譜歌、フォースフィールドはわたしたちの周りしか覆っていない。これではわたしたちは助かっても、街の人たちが…!



「(わたしが何かしないと、わたしが!ジョンくんと約束だってしたんだから、守るって、助けるって決めたんだから…!)」



お腹の底がざわつく。わたしの中の音素がたくさん湧き出るのを感じる。ティアの譜歌でみんなを守るなら、わたしの力で街の人を…!
ティアのフォースフィールドはティアだから使えるユリアの譜歌だ、わたしには真似できない。どうしたらいいかなんてわからないけど、とにかく体から音素を出して、周りから音素を集めて、大きな守りの壁を張るイメージをする。それを広げて、広げて。でたらめに力を使っているせいか、頭ががんがん痛む。手が震える。隣でみんながわたしに何か言っているのも聞こえない。


音素が出る体。異世界から来たわたし。それがそんなにヘンですごい力なら、異質なわたしに意味があるのなら。





「―――街ひとつくらい、守らせてよっ!!!」












地鳴りが響く。アクゼリュスは、魔界へと墜ちた。


























外殻大地編 了






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