アストライア・ノヴァ
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そうしてやってきたお昼休み。
あたしは嫌がるティティを半ば引きずって待ち合わせ場所である並盛商店街のカフェに向かい、そして辿り着いた。
ひとまず飲み物だけ先に注文しておいてまだ到着していないツナ達を待つ。
注文して届けられたアイスコーヒーをティティは明らかに不機嫌そうに
不満を訴えるかのように「ぢゅ〜〜〜〜〜ッッッ」と音を立てながら飲み
あたしは彼女の横でそれを完全に無視してアイスティーを飲む。
そして遂にツナ達が到着した。
『……………!?』
彼等もやはり無言で驚愕してティティを凝視した。
カフェにやって来たのはツナとリボーンくんと炎真。そして獄寺くんと山本くんの五人。
昼休みという短い時間だから急ぐ必要があった為
同じ教室で同時に行動出来るからと、午前中の内に炎真からメールで連絡があった。
同じ教室のはずのしとぴっちゃんは謎の文字の羅列を延々と書くのに忙しそうだったみたい。
「ぇ……ティティさん!?」
ツナが声をかける。ティティはツーーーーーンと冷たくそっぽを向いた。
「てめ…!初代に向かってなんだその態度は!」
「まーまー獄寺。落ち着けよ」
「聞きたいことがあるならさっさと聞いて解放してくれます?」
「なんでそんな偉そうなんだよ!!」
「と…とりあえず…良かった。ティティさん…また会えて嬉しいよ」
そう安堵した笑みを浮かべるツナを見てティティはチラッと見て
そしてまたツンとそっぽを向いた。
なんだかまるで人に懐かない野良猫のようだ…
ひとまず残された時間もそんなに多くないのでツナ達はそれぞれ席に座って昼食のメニューを素早く決める。
あたしも一緒に昼食のメニューを決めた。
ティティは「必要ありません」と言うので彼女だけ昼食はない。
やがて運ばれてきた食事にそれぞれ手をつけて、食事をしながらあたし達は話し始めた。
「それで…その、ティティさん…一体…」
まずツナが昼食のハンバーグを食べながらティティを見る。
あたしに閉じ込めるように窓際に座らされていたティティは
頬杖をついて窓の外を眺めていたが、ツナの問いかけにハァ…とため息をつくと
不満そうな表情であたし達を見て
「………これが私への師匠からの罰です」
「罰…?」
「知っての通り私は罪を犯しました。
守護の立場でありながら、星に生きる者を殺そうとしたのですから…当然罰が与えられます。
そしてその罰がこれです。
『人々との交流』それが師匠からの罰です」
それは数日前の事。
自分の師に連れられやって来たのは自分の正体を打ち明けた公園。
夜も遅い時間なのでティティと自分の師しかいない。
川平のおじさんことチェッカーフェイスは緊張感なく「よいしょ」と近くのブランコに腰掛けると
ずっと俯いて大人しいティティを見て苦笑した。
「ティティア、そんなに俯いてどうしたんだい?」
「私は守護者ではなくなるのでしょう?
自業自得とはいえ、私は唯一の存在意義だったその使命まで無くなってしまう。
最後くらい落ち込んだって良いじゃないですか」
「ティティアの使命は私から受け継いだものだ。
それはもう君のものだよ。誰にも奪えないものだ」
「え……?」
驚いてティティが顔を上げ自分の師を見る。
「とはいえ護るのが君の使命なのに害を与えたのは師としてちゃんと罰を与えないといけない。
そのように私は育ててないからね」
「………」
「ティティア、君はしばらく並盛高校に通う女子高生として過ごしなさい」
「………はい?」
一瞬どころかどう考えても理解出来ないその内容にティティは顔を思いっきり顰めて問い返す。
「え…どういう意味ですか?」
「そのままの意味さ。
美香ちゃんに近付く為に女子高生を演じていたんだろう?
それをそのまま続けなさい。
あ、設定は美香ちゃんのクラスメイトって事に変えるんだ。
そして同じクラスで過ごすように。
それくらいティティアの能力なら簡単だろう?」
「ちょっ…ちょ!なに言ってるんですか!
あれだけ美香や沢田綱吉達に色々やっておいてのこのこ帰れと!?そんなのイヤです!!」
「イヤがるから罰になるんじゃないか。
喜ぶなら罰にならないでしょうに」
「う゛っ…そ、それはそう…ですが…っ」
些か納得がいっていない様子で目を泳がせる自分の弟子を見てチェッカーフェイスはクスッと笑う。
「君にまださせてない修行があったのを思い出してね」
「させてない修行ですか?」
「人間として生まれた者の永遠の課題。それは『人間関係』さ。
これは正解がない分とても難題でね…私ですら未だに答えというものが分からない」
「………」
「ユースティティア。君は異質な存在になったその瞬間から…人間関係が希薄な女の子になってしまった。
この星に存在してるのに存在してない事になり、私の元でずっと修行に明け暮れ
その後は様々なこの惑星の縦の軸にも横の軸にも渡り歩いて星の脅威を監視、切除してきた。
人と関わる事はほぼなかったんじゃないかい?」
「……はい…」
「その結果自分を唯一認め、受け入れてくれた人に『依存』する形で関わりを持ち
心の支えとしていたその者を失ってティティアはすぐに壊れてしまった」
「………」
「依存するのは別に悪い事じゃない。人は何かしらに依存しているものさ。
けれどね、その依存しているものがたったひとつというのが危ないんだよ。
身を持って感じたはずだよ。ひとつだけの依存先を失った結果どうなったのか…」
「……はい…」
「私もそうだった。
私はこの星に住む全ての者に負けない程の強大な力を持っていると思っているよ。
しかし…私一人だけではどうしようも出来ない事もある。
どうしても、この星に生きる者達に力を借りなければならない事もある。
私一人ではきっと今でもアルコバレーノは生まれ続けていたさ」
「師匠…」
「しかしこの星に生きる者によって、もう呪われた赤ん坊が生まれる事がなくなった。
この星に生きる者の力を借りる事が出来たから得られた結果だ。
私でもこうやって…誰かのおかげで解決出来た事があるんだ」
「…………」
「人の繋がりを作りなさい。ユースティティア。
幸い君には既に、繋がってほしいと手を差し伸べてくれている人達がいるじゃないか。
そうして沢山の自分にとっての支えを作りなさい。
そうすれば…また孤独に苦しみ、泣かなくて済む」
「そんな…師匠は分かってるはずです!
私には永遠の時間があります。それはつまり…繋がりを多く作れば作る程、その数だけ失う事になるのです!
その数だけ…っ死にゆく姿を見送る事になるのです!
友達になった者達が死ぬその瞬間全てに立ち会えと言うのですか!
そんなの…っ辛すぎます…!!」
「確かに失うのは辛いだろう。
友達、愛する人、その者を失った時の喪失感は計り知れない」
「だったら…!」
「そうして心が傷付いて絶望している君に、まだ失ってない人がきっと寄り添ってくれる」
「っ……」
「そして寄り添ってくれたその者を失った時は、また別の失ってない人が寄り添ってくれる」
「………」
「人の繋がりを作るとはそう言う事さ。
沢山の人との繋がりは、その数だけ君を支える力となる。
ティティアだって異質な存在というだけで人間だ。
人間は決して一人では生きていけないんだよ」
「………」
「人の繋がりを作るのはなかなか難しい事だ。
大の大人でも人との関わり方が分からず孤立する者も多い。
しかしティティアは既に友達だと言ってくれる人達がいる。
その者が差し伸べてくれている手を君は掴むべきだ。
だから…人間関係を学んできなさい。
今から始めて美香ちゃんが卒業するまでの間だ。一年もない。
君が見た目通りの年頃の時に経験出来なかった、本来なら経験出来たはずの暮らしや環境を学んできなさい。
そうすれば…見えなかったものが見え、理解出来なかったものが理解でき、考え方も変わってくるだろう」
「……でも…私、まだ…怖い、です。
失った時の事を考えるだけで胸が苦しくて、息も出来なくなるのです…」
「別に今すぐ最愛の者を失ったトラウマを乗り越えろとは言わないよ。
その心の傷だって人と関わる事で癒される場合もあるんだ。
ゆっくりで良い。人と関わり、人というものを学びなさい。
それもこの
ティティは口を噤み、視線を下げて神妙な面持ちで考えに耽る。
やがて彼女はそのまま…とても小さくコクンと頷いた。
師であるチェッカーフェイスは、本当は素直なのに、なかなか素直になれない相変わらず難儀な性格の弟子に微笑する。
そして話が纏まったところで彼はブランコから立ち上がり
そこで何かをふと思い出して
「そうそう。バミューダ君が言っていた次の復讐者になる話はどうする?
これは私ではなくティティアに来た話だから、ティティアが決めて構わないよ」
「え?…と…」
「私はオススメしたいな。
復讐者の仕事の範囲はこの現代のみで星の時系列は関係ないから
美香ちゃんとも綱吉君達ともそんなに離れる事はない。
学校生活の両立も出来そうだし…ティティアの性格にも合ってそうだしね」
「そ…そんなに言うなら…引き受けます」
「そっか。なら私からバミューダ君にそう伝えておくよ。
近々引き継ぎの為に呼び出されると思うから連絡を待っててくれ」
「はい…」
「それからバミューダ君が言ってたんだけど」
「はい?」
「『復讐者』という名は神聖な雰囲気の君に似合わない。
別の名前を考えてくれて構わないよって」
「別の名前…」
「ユースティティア。そのまま名乗るのはどうかな?」
ユースティティア。
それはローマ神話の正義の女神の名。
現代では法の番人としてその像がイタリア他各国の裁判所等に飾られている。
数々の女神と同一視されているが、中でもギリシア神話の女神アストライアーと強く同一視されている。
神々の中で最後まで地上の争い続ける人間達に寄り添っていた女神。
アストライアーという名前は『星のごとく輝く者』『星乙女』という意味である。
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