アストライア・ノヴァ
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朝の登校も一人でするようにした。
バイトがあっても無くても一人で帰るようにした。
そのおかげかツナとの接点は自然と減っていき、距離が出来つつあるのをあたしは感じていた。
でも流石にバッタリと会ったのを無視する事は出来ない。
それはただの嫌がらせだし、彼を傷付けることになる。
それはあたしが望むものではないから。
「…なんか久しぶりだな。一緒に帰るの」
「そうね」
と、ツナに同意する。
「ティティさん今日学校来なかったんだって?」
「風邪だって。朝メールが来てたわ。
移すからお見舞いに来ないで〜って。
最近気温差激しいから仕方ないわよ」
「朝の護衛をしてる獄寺くんにも昨日具合が悪い事伝えてたみたいでさ。
早く良くなると良いね」
「そうね」
ティティとの事情はツナから聞いて知っている。
敵の勘違いでティティも狙われるようになり、護衛としてツナ達が一緒にいるようになっているという。
そのおかげもあってか、あたしは割とすんなりツナと距離を置けてホッとしている。
「美香」
「ん?」
彼を見上げる。
けれどツナは見上げたあたしを見下ろすだけで何も言ってこない。
「…ツナ?」
「いや…なんか最近美香の顔をちゃんと見れてない気がして」
「そう?」
「うん…なんでだろうな。
なんだか、美香が遠く…」
「あれ?君はもしかして沢田くんじゃないかい?」
前方から聞こえてきた声にあたしの頭の中が一瞬にして真っ白になった。
その為、ツナが続けようとしていた言葉の意味を考えられなかった。
「あれ…秋元先輩!」
秋元……そして、この…声……
おそるおそる前に視線を向ける。
そこに居たのは
「っ結友!?」
『えっ!?』
あたしの大きな叫び声に二人だけでなく周りにいた人達も驚いたようで一瞬足を止めあたしをチラリと見る。
ツナと結友そっくりのその人はキョトンとしていて
「あれ…美香、知り合い?」
「そうなのかい?ごめん…えっと…
同じ並高の人みたいだけど…」
と、結友そっくりの人は戸惑っている。
そこであたしはハッとし
「あ…ごめんなさい。知り合いとそっくりで…」
「そう、なんだね。
ええっと…初めまして。並盛高校三年の秋元結友って言うんだ」
同姓同名…そんな、まさか、やっぱり…
「………あたしは……沢田美香…
同じ並盛高校三年よ」
「あれっやっぱり同級生なんだ。
じゃあきっとクラスが離れてて今まで会えなかったんだね。
沢田さんと沢田くんって同じ苗字だね」
「ツナはあたしの
「あ、そうなんだ」
「ややこしいから…良かったら名前で呼んで?」
「えっでも」
「沢田さんって呼ばれたら呼ばれたのはツナなのかあたしなのか分からないから」
「あー…たしかに。
オレの事も良かったら名前で呼んで下さい。
沢田くんって呼ばれ慣れてなくて」
と、ツナが同意した。
納得したらしい結友に似た人が
「分かった。なら、美香さんと綱吉くんって呼ばせてもらうね」
…………結友と全く同じ声なのに、呼び捨てじゃない事に胸の奥が激しく痛んだ。
「秋元先輩が商店街にいるなんて珍しいですね。
家は反対方向でしたよね?」
ツナはそんなあたしの様子に気付く事なく結友に似た人と話し始めた。
「うん。ちょっと買い物があったんだ。
もう終わったから帰る所だったんだよ」
と、結友そっくりの笑顔で笑うその人。
「もう危ない人達に絡まれてないかい?」
「あはは…正直時々あるんですが…
でも、最近はよく友達と一緒に帰ってるのでなんとか大丈夫です」
「そっか。それは良かったよ」
そしてその人は商店街にある時計を見上げ
「そろそろ行かないと。
またね綱吉くん。そして美香さんも」
「はい!また会いましょう!」
「また…ね」
あたし達に笑顔で手を振り、そのまま背を向けて歩き去っていく。
その背をあたしは呆然と眺めて続けていた。
それがあまりにも長かったのか
「…?美香、どうしたんだよ」
不思議そうな顔をしてツナが顔を覗き込んできた。
そのおかげでやっと我に帰ったあたし。
「…ツナ……」
「そんなに秋元先輩を見つめて…何か気になることでもあるのか?」
相変わらず鋭いツナ。
下手に誤魔化しても今のあたしの状態を見ればすぐに嘘だと分かり、ツナは怒るだろう。
ただでさえあたしはずっと前に彼に嘘をついて家出をしたのだから。
「……そっくりなの…」
「?」
「顔だけじゃないわ。
声も…本当にそのまま」
「え?誰かに似てるってこと?」
「…うん」
「誰に?」
「……あたしの、元の世界での元カレよ」
「!?」
「名前も一緒なの。
多分…ううん。きっとこの世界での彼だわ。
あたしは生まれなくて、彼は生まれていた世界だったんだわ…!」
「っ……」
「結友…まさか…この世界で会えるなんて」
「美香っ」
突然腕を掴まれたかと思うとグイッと力強く引っ張られた。
「え…!?」
驚いて彼を見上げるあたし。
ツナは顔を顰めており、眉間に皺をつくって
「ほらっ帰ろうっ」
「?」
「あんまりゆっくりしてたら、オレまたいつ襲われるか分からないしさ…!
今日は獄寺くんも山本もバイトや部活でいないし」
「…そう、ね」
ツナの言う通りだ。
いま一番危険なのはツナなのだ。
彼の言う通りあたしは結友が去って行った方向に背を向け歩きだす。
「それからさ」
「?」
「あんまり…元カレの話、しないでほしい」
「え?」
「大切な思い出っていうのは分かるけど。
でも…なんか、オレはあんまり気分が良くないからさ…」
「………やきもち?」
「んな!?…………悪いかよ」
気まずそうに目を背けるツナが愛おしい。
「ううん。…ふふっ」
嬉しくて思わず彼の腕にぎゅっと抱きつくと
「ちょっ…恥ずかしいってば…!」
そう言ってあたしを引き離した。
ツナはシャイだからさすがに腕を組むのはまずかったか。
でもちゃんと愛されてると分かってあたしは嬉しかった。
「心配しなくてもあたしはツナが一番好きよ」
「美香……」
そう呟いて見下ろしてくるツナの顔は、少し安堵したように微笑んでいた。
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