アストライア・ノヴァ
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お客さんの数は多くもなく少なくもなく。
ケーキが必要な大きな季節のイベントが無いのもあって来客数は安定していた。
レジを終わらせケーキを詰めた箱をお客さんに手渡し、そこでお客さんが途切れひと息つく。
そしてふとガラス戸越しに外を見ると
「(あ…)」
ツナとティティ、そして獄寺くんと山本くんが楽しそうに笑いながら歩いていた。
「(あれ…ティティ?
それにしても珍しい組み合わせね)」
あたしと分かれて家に帰ったはずのティティがなんでツナ達と歩いてて
しかも向かう先はティティの帰り道がある方向なんだろう?
「(途中でツナ達と会って遊んでたのかな?)」
そういえばティティに貸してたツナの本、そろそろ明日にでも返してもらわなくちゃ。
そう考えながらあたしはとりあえずバイトの作業を再開したのだった。
18時にお店は閉店。
その後一時間かけて店内の清掃やレジ閉め
明日に備えて消耗品の補充等をして19時にバイトの仕事は終わる。
パティシエである店長はそれからまた明日並べるケーキの為に下準備をするようだ。
「お疲れ様でした〜」と挨拶をしてお店の裏口から退勤する。
「ふう…今日も疲れた」
平日の学校帰りに入るバイトの時間は短いので休憩はない。
立ちっぱなしの接客業はまだ10代であるあたしでも終わった後は足がむくみ、棒のようになっていて痛い。
そんなあたしを労うようにツナはいつも迎えに来てくれていた。
が…
「…ツナ…いない」
いつもお店の表の出入り口で待ってくれているのに、今日はツナはいなかった。
でも別に初めてではない。
宿題が終わらずリボーンくんのスパルタを受けている最中だったとか
ランボくんとイーピンちゃんがケンカして仲裁に入ってて来れなかったとか、色々事情はある。
だからあたしはツナがいない時は普通に一人で帰っていた。
「(今日は一人か…)」
初めてではないのに…なんで今日はこんなにも寂しく思ってしまうのだろう。
自分の感情が理解出来ないまま夕日が沈みかけ空が暗くなり、街灯やお店の照明がチラホラと着き始めた並盛商店街をとぼとぼと歩く。
暖かい季節なのに…どうしてか心が寒かった。
「(疲れてるのね…きっと)」
早く帰って奈々さんの美味しいご飯が食べたい。
そして温かいお風呂に入ってゆっくり癒されるんだ。
「(ツナ…)」
出来れば…ツナに愛されたい…
せめてハグだけでも良いから。
「………」
こんな事思うなんてやっぱりあたしがガツガツしすぎてるのかな。
ツナはどう見ても所謂『草食系男子』だ。
だからきっとこんな肉食獣みたいにガツガツしてるあたしに引いてるのね。
「ハァ…反省しなきゃ」
ティティの言う通り一度身を引いてみよう。
ツナを試すというより、自分への戒めという意味で。
彼から離れれば少しは頭が冷えて冷静になれるわよね。
その後は無心でとぼとぼと一人道を歩き続け、沢田家に帰り着いた頃には日が落ちてしまっていた。
「ただいまー…」
玄関を開けて靴を脱いでいるとダイニングから奈々さんがひょっこりと顔を見せ
「あら?美香ちゃんお帰りなさい。
もうそんな時間だったのね。
ツっくん今日は美香ちゃんのお迎え行かなかったの?」
「え?……あっ忘れてた!!」
と、ダイニングからツナの声も聞こえる。
そしてガチャガチャという食器の音がした後バタバタと走る音。
家に上がったあたしの前にツナが慌てた様子でやって来て
「ごめん美香!色々あって忘れてた!!」
「気にしないで良いわ。また何か作業とかしてたんでしょ?」
「………いや……普通に飯食ってた……」
「…………」
「……ごめん…」
「…いいのよ」
フッと笑ってツナの横を通り過ぎる。
着替えをしようと部屋に戻る為に二階の自室へ向かう。
そんなあたしの背にツナが申し訳なさそうな声で
「……怒ってる?」
振り返り
「なんで?」
「だって…」
「迎えに来なかった日なんて今までも何回かあったじゃない。大丈夫よ」
「でも」
「それにツナ…昨日から色んな人達に狙われてるんでしょう?
受験もあるのにそれ以外の事も考えなきゃならないんだから、余裕が無くなって当然よ」
「…………」
「だから…もうお迎えはいいわ」
「えっ…なんでだよ!」
「無闇に外に出てツナが狙われる方がイヤなの」
「オレは平気だよ!そりゃ戦いはイヤだけど…」
「大丈夫だって。
これから日も長くなるんだし。…ね?」
「…………」
「ツナ、ご飯の途中でしょ?
早く食べないと冷めちゃうわよ。
あたしは着替えてくるから」
「う…うん…」
なんだか気まずそうにしながらあたしに背を向けた。
そんなツナを見送ってからあたしは階段を上りきり部屋に入った。
カバンを自分の机に置いて、制服から部屋着へと着替え始める。
「……勉強も今日から一人でしようかしら…」
今までは受験勉強だけでなく宿題等も一緒にやっていた。
こう考えたら、やっぱりあたしとツナの距離は近すぎる気がする。
寂しいけど…ツナがもう一度あたしを意識してくれるなら…
あたしを 見てくれるなら。
「っ………」
ぽろっと一粒だけ涙が零れた。
「やだ。なんで…?」
泣く要素なんて何処にもないのに。変なあたし。
ゴシゴシと目元を擦ってまた着替えを再開する。
涙はその一粒だけで止まったようなので
着替えが終わるとあたしは部屋を出てダイニングへと向かったのだった。
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