アストライア・ノヴァ
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「もう…むり…」
今日もリボーンくんにこってり絞られたツナは机の上に突っ伏して白目を剥いていた。
「じゃ、オレは風呂に入ってくるぞ」
「行ってらっしゃいリボーンくん」
一緒に受験勉強をしていたあたしが道具を片付けながらツナの部屋から出て行くリボーンくんを見送る。
パタンとドアが閉じられるとツナがヨロヨロと身を起こして
「で…でも…これで今日は解放された…
あとは好きに過ごして寝るだけだ…」
と、嬉しそうにベッドの上に雑に放っていた携帯ゲーム機を手に取った。
そんなツナの様子を見ながらあたしはクスッと笑い、ツナの自分の時間を邪魔しない為に部屋を出ようとすると
「美香」
「えっ」
後ろからツナに腕を掴まれた。
「ツナ?」
「一緒にゲームしようよ。美香も持ってるゲームだからさ」
「?この間買ったっていう新作ゲームでしょ?あたし持ってないわよ?」
「あれは夕方したから…
今からやるのはずっと前一緒にやろう!って言って一緒に買ったやつだよ」
「ほら」と言って見せてくるゲーム画面は確かにあたしも持ってるゲーム。
「……ツナ、無理してる?
気持ちは嬉しいけど…いいのよ?自分の時間を大切にして…」
あんなに自分一人の時間を大切にしてたのに
仲直りした途端あたしをゲームに誘うだなんて、あたしを気遣ってるとしか思えず
ケンカの前のあたしなら喜んだかもしれないが、今はもうツナの精神的なものも考えられるくらい余裕があるから…
彼に無理してほしくなくてそう聞いた。
けれどツナはそれを聞くと苦笑して
「恋人と楽しく過ごすのも自分の時間のひとつだろ?」
「っ………」
「無理なんてしてないよ。美香と過ごしたいだけ」
「……分かった。ゲーム機持ってくるわね」
嬉しかった。
だから自然と笑みが溢れてあたしは足早に隣の自分の部屋に戻り
勉強道具を机の上に置くと棚から充電済みのゲーム機を手に取ってツナの部屋に戻ってきた。
一緒にツナのベッドを背もたれにして並んで座り
「協力プレイじゃないと入れないダンジョンの部屋があってさ」
「あーあったわね。中盤のダンジョンだったかしら?
あまりやり込んでないけど、そこならあたしも一緒に行けそうね」
そんな風に話しながら楽しくゲームを進めていく。
協力してダンジョンを進んで行ったり、一緒にやり込み要素の記録を競ってみたり…
恋人同士なのに友達と過ごすような時間だったけど、あたしはすっごく楽しかった。
そうして気付けば時間は夜11時。
リボーンくんはまだ帰ってこない。
もしかしてリビングでビアンキさんと過ごしているのかも。
あたし達はゲームはもう終わっていてお喋りして過ごしていた。
「秋元先輩が遠くに進学しちゃうなんて寂しいな…
卒業の時、オレも挨拶に行こう」
「あたしもビックリしたわ。
だから友達にはなれないって友達としてはあたしフラれてるのよね」
「はははっ…友達にフラれるってなんだよ。
あっそうだ。ずっと言い忘れてたんだけど」
「ん?」
「ハルと京子ちゃんが言ってたんだ。
今年の夏休みは海で勉強会して、一緒に夏の流星群を見に行こうって」
「夏の流星群?」
「春にみんなで流星群見ただろ?
なんか、それが楽しかったから次の流星群を調べてみたらハルのお父さんの話だと次は夏に見れるかもしれないって言ってたみたいなんだ。
もし夏休みと被ったら海で見たいねって話してて」
「そうだったの」
「宿泊先で時間を決めてみんなで勉強して…それから時間を決めて遊ぶ。
今年はエンマ達シモンのみんなも声をかけたんだ」
「すっごい大所帯になりそうね」
「ほんとだよな。でも、楽しそう」
「うんっ楽しそう!」
「美香も行こうよ。
今年は夜の海で花火もしようってみんな盛り上がってるからさ」
「うん。あたしも行きたいわ」
「それから…」
「?」
「ティティさんも、呼んでさ」
「……うんっ誘ってみる。
来なかったらあたしが引きずってでも連れてくるわ!
これも修行のひとつなんでしょ!?ってっ」
「ははは…美香なら絶対連れてきそう…」
と、笑うツナ。
会話が途切れて静かになる部屋。
その時…ツナが恥ずかしそうにしながらもそっとあたしに近付き
後ろにあるツナのベッドに手をついて逃げ場を無くす。
「ぁ……」
「楽しみだね…夏休み」
「…うん…楽しみ…」
ツナの顔が近付いてきて、反射で目を閉じる。
まだ数回目と少ない数のキス。
唇と唇を重ねるだけの、あたし達らしいキス。
でもそれがすごく甘く感じて…
胸の奥からじわりと広がる、あたしの幸せ。
そして抱きしめあってお互い照れながら笑いあう。
これがあたしの幸せ。
あたし達の幸せ。
十分過ぎる幸せ。
「ツナ…ずっと一緒にいようね」
「うん…ずっと一緒にいよう」
ずっとツナと一緒にいる為に、あたしは何が出来るだろうか?
大好きな貴方の力になりたい。
そう思いながら今日は珍しく…もう一度キスをしたのだった。
並盛の夜の河辺。
隣町と並盛の間に横たわるように流れる川。
そんな川の、町と町を繋げる大きな橋の下の堤防にティティは座ってぼんやりと川を眺めていた。
その格好は霧の幻術で作った並高の制服ではなく、いつもの夜空のようなマント。
この時代にそんなファンタジーな格好をしている女の子が座っていたら目立つはずなのだが
堤防を散歩する人や帰り道のサラリーマン等、行き交う人々はまるでティティが居る事に気付いていないかのように通り過ぎていく。
「すごいね。本当に人からの認識の妨害も出来るんだ」
そんなティティに話しかけたのは、美香の荷物を届けに行った帰りの炎真だった。
ティティはチラリと見ることもなく
「認識されては色々と不都合な事が多い存在なので当然です」
「ふぅん…」
当たり前のように炎真はティティの隣に座った。
「…何か用ですか。本来なら貴方だって私を認識出来ないはずです。
それをわざわざ大地と霧の炎の痕跡を探してまで…」
「ティティさんって家何処にあるの?」
「そんなものありません。
私に帰る所がない事ぐらい知ってるはずです」
「うん…だから気になって」
「言っておきますが沢田家なんて絶対行きませんよ。
第一あそこは既に大勢の居候がいるじゃないですか。
これ以上家の方の負担を増やすのはどうかと思います」
「僕なにも言ってないよ」
「言いそうだったので」
「言わないよ。僕が言いたいのは…
ティティはそこで初めて炎真を見た。
その表情は「理解出来ない」と言いたげな程眉をひそませており
唖然とした様子で
「………正気?」
「正気」
「信じられない。敵だった人をそんな簡単に…」
「もう敵じゃないから」
「敵ではないですが友好的に接する理由はありません」
ティティは立ち上がり、マントを翻して逃げるように歩きだした。
「もう私に関わらないで下さい。
………別れが辛くなるだけですから…」
ティティが何処へ向かうのか炎真にも分からない。
そんなティティの背を炎真は見送りながらこう呟いた。
「じゃあねティティさん。
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