アストライア・ノヴァ
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雲雀くんの手錠に繋がれていたティティが霧散した。
どうやら捉えたと思ったティティは幻覚だったようだ。
ティティは大地の重力と霧の力を使う事が出来る特殊な人。
雲雀くんが本物のティティを探そうと顔を上げた時、大勢のティティが次から次へと姿を現した。
「今度は間違い探しかい?
それで居場所を誤魔化したつもりなら大間違いだよ」
一人のティティがニヤリと笑った。
「なら当ててみなさい。
…ああ。アーデルハイトと戦った時に使った雲の増殖による鎖の攻撃は今の貴方には出来ない事、それは自覚してますね?」
「…………」
雲雀くんが無言でいる事から、どうやらあの時のような攻撃は出来ないようだ。
「貴方は古里炎真の大地の力で『比較的にマトモに動けるようになった』だけです。
鎖の長さを幾ら増殖させても、それを振り回す遠心力…つまりスピードが必要なはず。
今の貴方ではそのスピードを出せない。
……更に」
そして別のティティが
「もうひとつ教えてあげましょう」
「私が並高生徒でも無いのに誰にも不審がられず生徒になりすませた理由を」
ティティが自分が持つ星の杖を見せてきた。
星の中心には青く光る石のようなものが埋め込まれている。
それはあたしがティティからお守りとして受け取ったラピスラズリという石にそっくりだった。
「私は大地の力の使いだからか、この星の鉱石に宿る神秘の力を引き出せる力を持ちます。
その中でも一際私と相性が良い石はこのラピスラズリ。
この石に自身の力を宿したり、幻術の力を封じ込めたり出来ます。
…皆さんはヘルリングという指輪を知っていますか?
師匠もひとつ持っていたのですが…」
「未来で戦った幻騎士と未来の骸が持ってた指輪…
呪いを宿す指輪で使用するには契約が必要だって聞きました」
と、ツナが言う。
「そうです。師匠は気配の力を持つヘルリングを持っていました。
誰もいない空間に気配を漂わせたり…特定の人物の気配を別の場所にいると錯覚させる、とにかく気配の力を司る指輪です。
私はその指輪を参考に亜種として自身で気配を司る指輪を作りました。
それが沢田綱吉に壊された私の指輪です。
その指輪には『自分が元々その場所に居たと錯覚させる力』を込めました。
並高生徒ではないけれど周りに生徒だと錯覚させたり、友達ではないけれどまるで以前から知る友達のように思わせたり…
逆に『居る』のに『居ない』と思わせたり。様々です」
「オレと獄寺がティティさんを知らないのに、ずっと前から知っていたかのように錯覚してたのはその指輪の力って事か…?」
「チッまるで狐に化かされたような気分だぜ」
「雲雀の追跡から逃れ続けてこれたのもその力があったからか」
と、リボーンくんが言った後に
「じゃああたしも…ティティといつから出会い、どのように出会ったかも分からないのに友達だと思ってたのは…」
「指輪の力でそう思わされてただけですよ美香。
だから私と貴女は最初から友達じゃない」
「っ………」
「指輪の力を使って、貴女に沢田綱吉じゃなく例の彼の事が好きだと思い込ませる為に私の手から離れ貴女の元に指輪が渡ってしまった。
それ故に自分の存在の違和感を消すものが無くなってしまったんです。
だからそれをきっかけに私の存在に違和感を持つ人が出て、結果私の正体が沢田綱吉達にバレるのは時間の問題だと思っていました。
…ええ、それは計画の内なので問題ありません。
正体がバレようとその間に美香と例の彼が愛し合う関係になってくれていたのなら、沢田綱吉達との縁は切れる。それで私の計画は成功でした。
彼女の居場所を奪うだけで私は…満足だったのに…
奪うだけじゃない。元の世界では元カレだった人という新しい居場所だって作ってあげたのに…
貴女は…!私の居場所を、存在を奪った人なのに…!!」
「ティティ…」
ティティの目から涙が一筋流れ
「返して…!私の居場所を、存在を…返して…!
貴女と貴女の先祖のせいで私は…!!
私は自分のお父さんとお母さんから我が子と認識してもらえない!
私は世界の常識に縛られない剥離した存在だから寿命がなくて
その結果愛する人と同じ時代で死ぬ事も出来ない!!
この
この
「…………」
「返して!返して!!返せないならその命で償って!!」
「どんなに気配を紛れさせても能力者が感情的なら無意味だな」
泣き叫ぶティティに向かって雲雀くんが走り出した。
多くのティティの分身がそれを阻止しようとするけれど、彼は重力の力で体が重くなっているにも関わらず身軽に避けて突き進み
やがて泣き叫んでいたティティの前に現れると
「捕まえた」
そう言って彼女の腕にガチャン!手錠をかける。
だが
「捕まえたのは此方の方です。雲雀恭弥」
泣いていたティティがニヤリと笑った。
「っ!」
次々とティティの分身が雲雀くんに集まりだす。
そのティティ達はまず雲雀くんの武器であるトンファーを抑え、足に絡みつき、腰に纏わりつき、肩を腕を背中を抑え、そして物量で覆い被さり抑え込んでいく。
動きを制限されていないいつもの雲雀くんなら簡単に振り払えたかもしれない。
しかし今の彼はティティの重力の力によって動きが鈍くなっている。
振り払おうとはしたけれど物量に敵わず地面に抑え込まれてしまった。
雲雀くんを抑えていない分身はまだ残っている。
別の場所の…本物かどうか分からないティティが地面に抑え込まれた雲雀くんを見ながら
「ええ。私は感情的です。
だからこそ、油断を誘いやすいのですよ。
しかしどんな手を使っても束縛から抜け出してくるのが貴方です。
その拘束も一時的なものでしょうね。
もっと確実のものにしなければ…」
チラリと視線を今度は炎真に向けた。
「どんなに強い貴方でもこの星に生きる者。
地に足を付けて生きてる限り、この星の重力には逆らえない」
キッと炎真を睨むと
「ぐ…っぅわあああああ……!!」
「炎真!!」
途端に炎真が苦しげに叫びだし、アーデルちゃんが心配そうに叫んだ。
「重力を操る大地の守護者とはいえ、よくもまぁ惑星そのものの守護者である私とここまで張り合えるものです。
でもそろそろ限界でしょう?力尽きても誰にも責められませんよ。
貴方のお仲間もお友達も、みんなお優しいのですから。ねぇ?古里炎真」
唆すように優しく炎真に微笑み、甘く囁く。
しかし炎真はギリッと歯を食いしばり、険しい顔のままティティを見て
「イヤだ…!絶対にみんなを守ってみせる…!!」
ティティの表情が優しい笑みからスッと氷のように冷たい表情に変わった。
「来るぞ!」
了平くんの言葉をきっかけにまだ残っていた大勢のティティの分身が此方に走ってきた。
「みんなっ攻撃しちゃダメだ!身を守って!!」
ツナがそう叫び、死ぬ気丸を飲み込みながらあたしの手を引く。
ツナの背に、そして山本くんや獄寺くん達からも囲まれるように守られる。
襲いかかってきたティティ達をそれぞれで防衛しながら、彼等は絶対中心にいるあたしの所に分身を侵入させることはなかった。
「羨ましいですね美香。
そうやって体を張って守ってくれる大切な人や仲良しのお友達と、貴女は同じ時代を生きて…死ぬ事が出来るのですから」
「お願いティティ…もうやめて…」
「私も…そうやって普通の女の子になりたかった」
スッと杖をティティが振り上げた。
「っえ…?」
同時に炎真が驚いたように呟いて目を見開く。
そして続けて
「そんな、まさか」
「オイ炎真!やべぇぞ!!」
結界の外からジュリーくんの叫び声が聞こえた。
「状況の把握が結界の中の人間には難しいはずです。
クローム、フラン、霧と砂の結界と幻術を解きます!」
「分かりましたっ骸様!」
「うわわ…!師匠っあれ幻術じゃないんですかー!?」
霧と砂で構成された幻術と結界が晴れていく。
少しずつ結界の外の状況が明確になっていく。
「ツナくん気をつけて!!」
「炎真!?」
「僕がつくった重力の星の主導権を奪われたんだ!
星が落ちてくる!!」
全員が一斉に空を見上げる。
そこには炎真がつくった幾つもの星が宙に浮いていて
「さようなら」
星が、落ちてきた。
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