アストライア・ノヴァ
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夕方が終わりを迎え、夜が差し迫る薄暗い公園。
その公園のベンチに座る星を守る者は更に語り続ける。
「その男性をティティアは何度も救おうと時間遡行を繰り返した。
ティティアは特異な存在になったせいか、私のように時間に縛られない存在になっていた。
だからどんなに時が経っても見た目は変わらないし、縦の時空にも横の時空にも行く事が出来る。
だから…自分の特異な存在でも受け入れ、家族はいるのに家族に存在を認めてもらえない寂しさと悲しさを包み込んでくれるその者を心から愛していた。
しかし時間遡行を繰り返す内にティティアは知ってしまった。
確定されている『過去』を変える事は出来ない。
どんなに足掻いても…彼は死ぬ運命だと。
仮に彼を運命から救いだしたとしても、時間に縛られない自分に『死』という概念が存在するかも分からない。
誰かを愛しても、誰かに愛されても、自分はその者の元へ行く事は叶わない。
永遠に独りで生き続ける運命。
ティティアをそれに気付き自分の立場に絶望したんだ」
「…………」
言葉が出なかった。
あたしの『生きたい』というたったひとつの願いが、ティティの存在をそこまで狂わせてしまった。
それでもあたしは『生きたい』と願った事をこれ以上後悔したくない。
「それで…自分がこうなってしまったのは美香とその先祖のせいだと恨みを募らせたってわけか」
と、リボーンくんが言う。
「そのようだね」
「『そのようだね』って…自分の弟子なのに把握出来てなかったんですか?」
困惑するツナに星を守る者が
「私もまさかティティアが復讐に目覚めるとは思わなかったんだ。
私と一緒にいたときはちゃんと前向きに自分の運命を受け入れていたからね。
それに彼女はもう私の手から離れた立派な後継者だ。
わざわざ監視する必要もないと思ってね。
だからそれに至るまでの経緯を知るために時間遡行で過去のティティアの行動を確認してきたんだよ」
「だがお前と違ってティティは元々普通の女の子だぞ。
精神的なものはお前のような古代種とは根本が違うはずだ。
女心というものを理解出来てねーからユニの先祖ともケンカ別れすることになったんだろーが」
「う…それを言われると痛いなぁリボーンくん。
だがまぁ、君の言う事にも一理ある。
だから私なりに弟子に歩み寄ろうと努力はしてきたのだよ。
しかしティティアの方が一手早くてね。
暴走を止めようとする私への対策として自分の気配を撹乱させた。
春にあった流星群。
あの流星群に自分の死ぬ気の炎を灯した石を自分の気配に仕立て上げ
日本だけでなく世界中に、そして全ての時空にばら撒いたんだ」
「!!あの異常な数を観測したという流星群!?」
「ツナくん達と一緒に見たあの流星群だよね…?
まさかあれが関係あったなんて…」
と、炎真も驚愕した様子で呟く。
「そして自分は指輪の力を使って人々に馴染んだ。
私が持つリングが気配を消すリングなら、ティティアが持つリングは人々に何の不信感も抱かせず紛れ込む事が出来る指輪だ。
ティティアがこの大地の石の性質を研究し、自分で作りだした特別なリングなんだよ。
だから綱吉くん達も、美香ちゃんも気づけなかっただろう?
ティティアとは気付けば一緒にいて、初めて会った時の記憶は曖昧か無いはずだ」
「オレは…ティティさんとは美香の紹介だけど…」
「あたしは無いわ。確かに無い。
ティティとはいつ知り合ったのか、どうやって知り合ったのか全く思い出せないし分からない。
気がついたらティティと友達だった…!」
「山本と獄寺くんも記憶に無いよね?」
「ああ…そうだな」
「オレもです初代。
ティティと初めて会った時の記憶が無いです。
気付けば既に知り合っている感覚でした」
「じゃあティティが並高の生徒達に紛れ込まれていたのはリングの力のおかげ…?」
「美香ちゃんのマインドコントロールを安定させる為
リングの力の性質を変えて美香ちゃんに身につけさせる必要があった。
だがそのせいで自分の存在を馴染ませていた力が無くなり、安定していた計画が綻び始めたという所だろう。
だが自分の存在を馴染ませる力はリングの力だと悟らせない為に霧の力で覆っていた。
霧の力に敏感な霧の守護者と雲の守護者には極力会わないよう逃げ回っていたんじゃないかな」
「そ…そんな…オレ、ティティさんの護衛でよく一緒に居たのに…
リングや炎の力なんて感じた事なかった…」
「ツナの超直感すら欺く程の使い手か…」
「恥じることはないよ。
何せ私も並盛にティティアは居ると分かっているのに
綻び始めてやっと本物の彼女の詳細な時空と居場所を特定出来たのだからね」
星を守る者はそう言って眼鏡のズレを指先で直すとベンチから立ち上がる。
「ティティアの為に人を呼んだのだが、なにぶん多忙な人でね。
到着するまでにもう少し時間がかかる。
綱吉くん…良かったら協力してほしい」
「え…?」
「ティティアを止めてくれないか?
彼女の気持ちを理解出来なかった私がいくら声をかけても、ティティアの心には届かないだろう。
なら、一時的でも友達として過ごした君達から声をかけた方が良い。
その方が彼女の感情が落ち着き、暴走した想いも鎮まるかもしれない。
………私にはどうしても、女心というものが難しくてね」
そう言って星を守る者は自嘲した。
それを見てツナは「え゛!?」と声を上げて
「いやっあの…!オレもっそれはよく分からないんですが…!!」
と、チラッと一瞬あたしを見るツナ。
「で、でも!やってみます!
友達を助けたい。その気持ちなら…オレは分かりますので!」
「ツナくん。僕も一緒に戦うよ。
ツナくんと美香の友達なら、僕も助けたい!」
「ありがとうエンマ!」
それを見ていたあたしは咄嗟にツナの服の袖をきゅっと握る。
それに気付いたツナが不思議そうにあたしに振り返ると
「ツナ。あたしも連れて行って。
足手纏いっていうのは十分分かってるわ。
でも…あたしはティティの事やっぱり友達じゃないだなんて思えないの!
ティティの友達だから彼女の目を醒させたい!
お願い。一緒に連れて行って!」
ジッとあたしを見つめてくるツナをあたしもジッと見つめ返す。
やがてツナは優しい笑みを浮かべて
「もちろん。一緒に行こう。
今度こそオレが守るから」
「ツナ…ありがとう」
「そうと決まれば早速ティティのやつを探しましょう初代!」
獄寺くんも、もちろんその他の人達もツナと一緒に行くつもりのようだ。
…雲雀くんだけ物凄く不機嫌そうな顔をしてるけれど。
「ティティアの居場所は私がわざわざ教えなくても分かるね?」
「はい。…何となくですが分かります」
「なら、頼むよ。
心して行くといい。彼女は手強いよ。
何せ私の弟子なのだからね」
そう言って星を守る者は微笑んだ。
その笑顔はまるで…優秀な弟子を自慢する師匠のように見えた。
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