アストライア・ノヴァ
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自分がなにを口走ったかも気付かず、ただ友達の大切な指輪を壊された怒りであたしは声を上げ続けていた。
「だいたいっ急に来てなんなのよ!
炎真もっツナの好きなようにさせてって言うから黙って見てたのに!
どうしてくれるのよっそれはティティの…大切…な……」
あたしを見るツナと炎真の視線がなんだかおかしく感じて、それをきっかけに少しずつ冷静になっていく。
やがて言葉を失いしばらく呆然と二人を見つめ
無意識に口元を押さえて
「…あたし…さっき、なんて呼んだ…?」
「え…?」
聞き返す炎真に
「炎真の…隣の男の子…」
「美香…」
「『ツナ』って…
そう。ツナ…ツナ、よね?沢田綱吉、よね?
あたしの義弟…そして…
あたしの、恋人」
「っ」
「なんで…あたし、ツナのこと…」
「美香!!」
ハイパーモードのままツナがあたしに駆け付け抱き締めてきた。
「美香っ良かった…良かった!」
何が何だか分かっていない状況だけど、ツナのあまりにも必死な様子と
しがみつくような痛い程の抱擁に思わずそっと抱き返す。
「あたし…なんでツナのこと…」
「忘れるようマインドコントロールされていたんだ。
美香、君は骸のマインドコントロールにもDのマインドコントロールにもかからなかった。
でもそれは…御先祖さんが美香の中にいて守っていたからなんだ。
御先祖さんが居ない今の美香は、もうただの女の子。
だから…普通にマインドコントロールにかかる」
「………」
「オレの勘だけどな」
ツナはそう言いながらあたしの首元で何か作業をして、体を離した。
見れば首元に山桜の指輪がかかるチェーンが首から下がっていた。
「おばあちゃんが…居たから…?」
コクリと頷くツナ。
「マインドコントロールしていたのはさっきオレが壊した指輪だ。
あの指輪から微かに霧の炎の力を感じた。
そして…その指輪にその力を込めたのは…」
振り返るツナと炎真。
そのツナと炎真の視線の先には、冷たい視線をあたし達に送り続けるティティが立っていた。
「………ティティ…?」
「そう。どう足掻いても、貴女は彼らを…そして今の立場を手放す気はないのね」
淡々と話す見た事のないティティの姿にあたしは動揺する。
まるで別人みたい…
あの年相応に無邪気に笑い、人をからかいつつも味方になってくれる
頼もしくて癒されるあたしの友達の姿は何処にも見当たらない。
「ならば私は貴女の全てを否定します。
その居場所、その立場、その存在も魂も全て否定します」
「ティティ…どうして…?」
「貴女はかつて『生き物として根本的な望みさえ否定されるような事はしていない』から『生きたい』と望み、願い続けた」
「そう…そうよ。
あたしは…生きる事を否定されるような事、絶対してない!」
「私は否定します。
だって貴女のせいで…私は存在を否定された…!
生きていく事を否定され、奪われた!
私は絶対に許さない。
貴女を、そして…貴女の先祖を!絶対に!!」
「ティティ…貴女は…一体何者なの…?」
そこに公園の外から「ツナ!」「初代!」と山本くんと獄寺くんの声が聞こえた。
チラリと見れば他にもリボーンくんや雲雀くん、クロームちゃんと骸くんにフランくんもいる。
ふわりと風が吹くとまるで霧が晴れるようにティティの姿が変わり始めた。
ふたつに分けて纏めていたセミロングの髪の長さが膝裏程まで長くなり
並高の制服だった服が夜空のように深い青色のマントに変わって、流れ星の刺繍が施されているそれは高級感と神聖さを感じる。
手にはいつの間にかファンタジーで見るような杖が持たれていて、先端には象徴のような星が輝き、そこから吊り下げられた旗には公正と平等を表す天秤のマーク。
星の中央にはあたしがティティから渡された指輪に使われていた、ラピスラズリの石がハメられていた。
姿格好すら、最初からあたし達を騙していたのだ。
姿が変わり伏せ目だった目がゆっくりとあたし達を見据えると
静かに口を開いてこう言った。
「私はユースティティア。
数百年前のイタリアに生まれ、確かに存在していた人間。
けれどこの星にトリップして来た貴女の先祖にその『立場』を奪われ
そして遥か未来の貴女に『存在』も奪われた者。
故にこの世界で唯一、私だけは貴女の存在を、立場を、生を否定出来ます。
私は貴女達に存在を奪われたのだから…!」
「ど…どういう…こと…?
あたし、別にティティの存在を否定なんてしてない!
おばあちゃんだってきっとそうよ!」
「…なるほどな。そういうことか」
ティティの正体にあたしやツナ達も困惑する中、山本くんの肩に乗っていたリボーンくんだけが腑に落ちたようだ。
「何か知ってるのか?リボーン」
ツナが問う。
「ツナ、美香の御先祖がこの世界に来た原因は覚えているか?」
「え…それは…確か星のミスによる『トリップ』だろ?」
「『トリップ』は別の世界から別の世界へ移動する事をそう呼ぶんだ。
美香の御先祖がこの世界に来た原因は『星の配置ミス』だぞ」
「っ…!」
「『配置ミス』ということは、本来配置されるべき正解の『もの』があった筈だ」
「っまさか!」
「そう。それが私です。
美香の先祖がトリップした場所に、この世界で生まれ生きていた私が存在するべきでした」
ティティはそう語る。
「じゃあ、本来のボンゴレI世の婚約者は彼女だった…ということなのか!?」
「それはちげーぞ。
『存在』と『立場』は別物だ。
美香の御先祖はトリップした場所に『存在』したことでボンゴレI世の婚約者という『立場』になるきっかけを得たが
ティティが本来の場所に『存在』したからと言って、御先祖のような『立場』になるとは限らねぇ。
だが、『立場』はともかく『存在』を奪われた事は確かだな。
しかしそれでも御先祖を恨みはしても、美香の存在や生きている事を否定出来る理由にはならねぇぞ。ただの理不尽だ」
「ええ。それだけなら私もただ本来居た場所を横取りされただけです。
けれど…美香、貴女が遥か未来でこの星で生きる権利を得た事で
過去にあった先祖とジョットの出会いや、以降の出来事が『存在した過去』として確定してしまった。
それにより私は『存在』を貴女の先祖の『存在』にすり替えられてしまったんです…!」
「なぁ!誰かオレにももっと分かりやすく説明してくれ!」
山本くんが頭を抱えながらそう叫んだ。
そこに骸くんが
「椅子取りゲームを想像すると良いですよ。
ユースティティアの物で、彼女が座っていた椅子が急に美香の先祖に奪われた。
けれど先祖が元の世界に帰ったことでユースティティアはまた自分の椅子に座る事が出来ましたが
美香がこの世界に来て、更にそのまま美香の『生きたい』という願いがこの世界で叶ったことで
無かった事になってた筈の過去の出来事が有ったものとして変わり
ユースティティアはまた座っていた椅子から美香の先祖に弾き出された。
その上自分が座っていた椅子は先祖の物に変えられてしまう。
彼女の様子から変わりの椅子というものは世界には存在しないようですね。
だから、ユースティティアは自分の椅子を失い、変わりがないまま『存在していない』が『存在している』人間として生きているんです」
「そう。私は確かに両親から生まれたのに、育てられたのに
『存在』という椅子を奪われたせいで両親はもちろんそれまで関わっていた全ての人から私は忘れ去られました。
全てを理不尽に一気に失った!貴女のせいで!貴女の先祖のせいで!!」
「っ……」
ティティは恨みの籠った目で真っ直ぐあたしを睨みつけてきた。
「それでも私は貴女に譲歩しようとしました。
ボンゴレとシモン。沢田綱吉と古里炎真。
そしてこれまで関わった人々を諦めてもらう代わりに
元の世界でかつて愛し合う存在だった人とこの世界でもう一度愛し合う関係になり、新しい絆を作ってもらおうとしました。
私と同じ立場になってほしい。
けれど全てを失っても、新しい居場所があれば良い。
タイミング良く貴女達二人が大きな喧嘩をしたようだから、それを利用しよう。
そう思って沢田綱吉との距離を少しずつ引き離していっていたのに…!」
「そんな…ティティ…
あんなに仲直り出来るようにって、応援してくれてたのに…!」
「美香。
貴女がこの場にいる全ての者を手放さないと言うのなら
私は貴女の生を否定するしかない。
…殺すわ。
私は貴女に殺されたようなもの。
だから、殺されても文句はないはずです」
「な…本気なのか!?ティティさん!」
ツナの叫びにティティの口調は変わらず
「私は本気です。
美香、もう一度だけチャンスをあげます。
貴女がこの場いる全ての人を諦めるなら殺さない。
さぁ どうするの?」
あんなに強い目であたしを睨みつけてくるティティの顔は初めて見た。
本当にいつも一緒にいて、カフェや帰り道で楽しく話した彼女なのか疑ってしまうほど。
「………」
ツナ達が見守る中、あたしは口を開き
「『この場にいる全ての人を諦める』…そう言ったわね?」
「そうです」
「ならあたしの答えは決まってるわ。
…諦めない。あたしはっ誰も手放さない!!」
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