アストライア・ノヴァ
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昼休み。
綱吉は応接室の前で深呼吸を繰り返していた。
何せ相手はあの気難しく、群れる事が大嫌いな並盛最強の雲雀恭弥。
そんな相手に一対一で対面しそれだけでなく頼み事もするのだ。
殴られる覚悟でキッと表情を固めると応接室のドアをノックする。
…前に応接室のドアがガラッと開かれた。
綱吉は驚いて見上げると不機嫌そうに雲雀が綱吉を見下ろしており
「…いつまで経っても鬱陶しい気配が消えないと思ったら君か」
「ヒ…ヒバリさん…!
すみませんっあの…!なかなか決心が付かなくて…じゃなくて!
だから、その…!!」
「要件はなに」
『そんな事は聞いてない』と言わんばかりの鋭い眼光で睨み要件を促す。
これ以上長引かせたら間違いなく咬み殺されると判断した綱吉は
「……お願いしたい事があります」
「!……」
本人は無意識だが先程のオドオドした様子から明らかに変わった雰囲気に雲雀は眉を顰める。
不本意だが長い付き合いでこういう時の綱吉は自分にとって面白い話を持ってくる事を知っている雲雀は、ひとまず話だけでも聞こうと無言で応接室に入るよう促す。
「あ……」
そんな事は知らない綱吉は単純に話を聞いてもらえるのだと安心し
応接室に入ってドアを閉めると雲雀が座る執務机の前に立った。
雲雀は自分のペースで執務室の椅子に座ると、ヒバードがパタパタと飛んできて雲雀の頭にぽすっと乗り
「で…なに」
「あの…ずっと前、ヒバリさんが『並盛で見慣れない人がいる』って言っていましたよね?」
「それが?」
「もしかしたらその人と会わせてあげられるかもしれません。
オレじゃ分からないのでヒバリさんに確認してほしくて…」
「?見慣れないと君でも思ったのなら僕に確認を取る必要は無いんじゃないの?」
雲雀の言葉に綱吉は苦笑いを浮かべ、言いにくそうにポリポリと頬を指で掻きながら目を伏せ
「いえ、その…オレ人の顔を覚えるのが苦手で…
それにその人は並高の生徒なので、もし違ったら申し訳ないなぁ…って…
だから人の顔を確実に覚えてるヒバリさんにお願いしたいんです」
「…人の顔を覚えるのが苦手な君が怪しむ相手って事かい?」
「…さっき、『違ったら』なんて言いましたけど」
そして綱吉は俯かせていた視線を上げて雲雀を真っ直ぐ見て
「自信はあります」
「………」
雲雀はそんな綱吉の目をジッと見る。
いつもならそんな視線から逃げるように逸らすが、今回の彼は目を逸らす事なく雲雀と真っ向から視線を合わせた。
この小動物にそこまで言わしめる人物。
他人に興味を持つ事が極稀な雲雀が珍しく興味が湧いた。
「ふぅん。君にそこまで怪しまれる相手なんて興味が湧いたよ。
そんなに言うなら見に行ってあげる。
ただし…この僕をわざわざ呼び付けるんだ。
僕が満足出来る結果じゃなかった場合、どうなるか覚悟しておいてよね」
「う…わ…分かりました。
でも…多分…大丈夫だと思います」
脅しをかけると相変わらず言葉は弱気だが、珍しく怯えない綱吉。
雲雀はそんな綱吉の様子に更に探していた『なりすました余所者』である事の確信を強めた。
「今日の夕方…並高前で待ってます。ヒバリさん」
夕方になり獄寺と山本は綱吉よりも早く並高前に来ていた。
多くの生徒が下校している中、獄寺は万が一秋元が紛れて帰っていないかを考え目を鋭くして生徒達を睨みつけている。
それを並高の生徒達は不良が因縁をつけに来ていると勘違いして、関わらないよう獄寺とのほほんとしている山本から距離を置いていた。
そんな二人に恐れ知らずで近付く二人の生徒がいた。
「あら?獄寺くんと山本くんじゃない」
「あ…きみは確かコンビニの…」
それは美香と秋元だった。
二人はまるで付き合っているカップルかのように当たり前のように隣り合って歩いており
それを見た獄寺は胸糞悪いと言いたげに舌打ちをすると、秋元を睨みつけ
「おい。テメーはここに残れ」
「え?」
「ちょ…彼をどうするつもり獄寺くん?」
「テメェには関係ねぇ!」
「ダメよ!ケンカはダメ!
また変な因縁付けて秋元くんを脅すつもりならあたしが許さないわよ!?」
「っ…テメェは…!初代がどんなお気持ちで…!」
「まーまー落ち着けって二人とも」
そこへ山本がいつも通りのほほんとした口調で二人を止めた。
ニカッと明るい笑顔で山本は美香を見ると
「安心してくれ美香さん。
昨日会ったツナを覚えてるか?」
「え?…うん」
「そのツナが秋元先輩にちょっと用事があるって言うんだ。
別にケンカする為じゃないから、しばらく先輩貸してくれねぇか?」
「………」
無言になって山本を見上げる美香に、ダメ押しのように「な?」と言って山本は笑う。
それを見た美香が秋元を見ると
「秋元くんが良いなら…」
「僕は良いよ。一緒に帰れなくて残念だけど…」
「そう…なら、仕方ないわね。
また明日ね秋元くん」
「うん。また明日」
仲睦まじい様子で手を振り合って別れる秋元と美香。
美香が歩き去り姿が見えなくなった所で獄寺が満足気に
「よし。これで確保は完了だ。
初代の手を煩わせるまでもなかったぜ」
「確保って…一体何のこと…?」
「テメェは黙って初代が来るのを待ってろ」
「ごっくんって弟くんの事なんでか初代って呼んでるよねぇ
ごっくんのあだ名のセンス面白いから私好きだよぉ?」
と、そこへひょっこりとティティが現れた。
「よーティティさん!」
「テメ…いつの間に!つーか誰が『ごっくん』だ!
テメェに用はねぇんだよ!さっさと帰れ!」
「『獄寺くん』ってなんか個人的に言いにくくてさ。
ていうか送ってくれるって言ったじゃん!」
「くそ…そうだった。ほんとタイミング悪い女だな」
「それよく言われるし私も自覚してる」
「あれ…?なんか揃ってる…?」
ワイワイと賑やかに騒いでいた所に綱吉がリボーンと一緒に来てキョトンとしている。
獄寺はすぐに気持ちを切り替え秋元の腕を掴むと
「お待ちしておりました初代!
ターゲットの軟弱野郎はこの通りオレが確保しておきました!」
「えっ…あ、ごめん。オレが遅れたからだよね。
宿題忘れた人だけ居残り補習とか…普段そんな事あの先生しないのに…」
綱吉はシュンと落ち込み獄寺に頭を下げた。
「気にしないで下さい!
ボスが動けない時に動く。それが右腕の仕事なので!
あの先公ほんと空気読めないっスよね!」
「なに言ってやがる。
宿題を忘れたツナが100%悪いに決まってんだろ」
「う…わ、分かってるよ…」
「だ…大丈夫っスよ!ヒバリの野郎もまだ来ていませんし!」
「ほ…本当に良かった。それだけは本当に…!」
「それで、ティティのヤツどうします?
やっぱオレがひとっ走り送ってきましょうか?」
「いや…多分もうすぐヒバリさんが来ると思うから…」
「ヒバリ?」
「ティティさん知らないのか?並中の風紀委員長っスよ」
「知ってるよ有名だもん。でもなんでそんな人が?」
「ちょっと用事があってな」
「ねぇ。何の群れ?」
綱吉の背後から噂の人物の低い声が聞こえた。
慌てて綱吉が振り返るとそこには雲雀が立っていて
目の前の人口密度に眉をひそませ不機嫌そうに睨み付けている。
「あ…すみませんヒバリさん!あの」
綱吉が続ける前に雲雀はとある人物に視線を向けた。
それは獄寺に逃げられないよう腕を掴まれ、イマイチ状況が掴めておらず困惑している秋元。
「…彼かい?君の言う『怪しい人』っていうのは」
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