アストライア・ノヴァ
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「二度寝した途端これだよ!!
なんとか間に合いそうだけどさーーー!!」
そして朝。
綱吉は寝坊して並中に向かって猛ダッシュをしていた。
悲しいかなこういう時になるとリボーンとの修行でついた体力と脚力に感謝する。
もう少しで並中の校門というところで前方に見知った人物が二人近付いてきて
「おはようございます初代!」
「おはよ〜美香の弟くん!」
「獄寺くん!ティティさん!」
二人の組み合わせは護衛の事もあって珍しくはないが
ティティが並中の校門の前にいる事に驚いた。
二人の前に来ると綱吉は息を整えながら
「お…おはよう獄寺くん。ティティさんも…
どうしたんですか?ティティさんが並中の校門にいるなんて」
「実は毎日の護衛で相談したいことがあってさぁ
あのね、なんでか今朝から並高前に大勢の不良が集まってるの」
「はい?」
「オレも見ましたがあれは雲雀の風紀委員の奴らですね」
「ええー!?なんで風紀委員が!?」
「だから並高の生徒みーんな怖がっちゃって…
かくいう私もああいうタイプの不良はちょっと苦手かなぁ…
美香ぐらいだよ。物怖じせず学校に入ってっちゃったの」
「あいつ何故か風紀委員の奴らは怖がらねぇんだよな」
「私がいつも授業受けてる特進科の区画にも大量の不良くん達が蔓延ってて…いやぁそれはもうおっかなくて。
しかも聞けばしばらくは並高を取り囲む予定みたいで?
今日の朝はともかく、今日の夕方から落ち着くまで学校の行き帰りはパパに車で送り迎えをお願いしようかなって思ってるんだよぉ
帰りもどうせ、美香は新しい彼氏くんとデートみたいだし。
ほんとに彼氏くんと別れる気満々なのかねぇ」
「っ」
「バカ!もっと言葉を選べバカ女が!!」
「?なんで?」
ティティは綱吉が美香の彼氏とは知らない。
それを分かっている綱吉が慌てて
「わ…わかりました。
ならしばらくは護衛はいらないって事ですね?」
「うん。とりあえず今日の朝まで獄寺くん貸してもらうねぇ。
ほら行こうダイナマイト不良くん。
同じ不良でも私はきみの方が落ち着くな」
「意味わかんねぇ!つか引っ張んな!
大体オレは初代と一緒に登校する為に戻ってきたんだ!」
「きみは時間を守って登校するような顔じゃないでしょー?
どっちかと言えば遅刻しまくってるのに悪びれない態度で、でも成績良くて先生達の頭を抱えさせてるタイプ!」
「(全部当たってる…)」
「うるせーほっとけ!!」
ギャアギャアと賑やかな二人を苦笑しつつ見送ってから並中の校門をくぐる。
「それにしてもヒバリさんどうしたんだろう。
並高にまで幅をきかせてるのは知ってたけど、急に風紀委員を並高に集結させるなんて…
何かあったのかな」
「見慣れない草食動物の炙り出しだよ」
背後から聞こえた低い声に思わず緊張で体が硬直する。
そしてギギギとまるで錆びたブリキの人形のように顔を振り向かせると
そこには予想通りの雲雀が立っていた。
条件反射のように綱吉はピシッと姿勢を正すと
「ひっヒバリさん!!
あのっ遅刻じゃないので殴らないで…っじゃなくて
見慣れない草食動物…ですか?」
「昨日商店街で見かけたんだ。
随分臆病な草食動物のようでね。
僕に目をつけられたと気付いて人混みに紛れて逃げていったんだ」
「それ…ヒバリさんを撒いたってことですか!?」
「気にくわない草食動物さ。
顔もハッキリと見られなかったけど僕の直感は並盛では見たことがないと断定している。
けれど実態を追えば追うほど存在は薄まり消えていく」
「実体のつかめない…霧…!?
まさか骸が…!」
「六道骸とはまた違う。
コソコソと隠れ、人に紛れる臆病者だよ」
「でも…どうして並高なんですか?
もしかして並高に逃げ込んだ。とかですか?」
「……並高の制服を着ていたからだよ」
「え…」
「並高の制服を着ていた。
そこまで分かったのに顔も性別も認識出来なかった。
まるで認識の邪魔をするかのように妨害されたんだ。
僕はそれが一番気にくわない」
「…………」
「だからまず並高の炙り出しから始めたんだ。
逃した獲物は必ず仕留める」
学ランを翻し去っていく雲雀。
それを綱吉が呆然と眺めながら
「あのヒバリさんを撒ける程だなんて…」
「相手は相当な実力者だな」
「んぎゃ!?」
踏み潰すように綱吉の頭に勢いよく何かが乗った。
それは綱吉の後頭部を踏み台にしてピョンっと前に立つと
「ちゃおっス」
「リボーン!いつ来てたんだよ!
つか、わざわざ頭を踏んだ理由はなんだよ!?」
「そんな事より気を付けた方がいいぞツナ」
「な…何をだよ…」
「あの雲雀の追跡から逃げ切れる程の実力者だぞ。
気付いてねぇだけで、とっくに敵の攻撃を受けてる可能性が高いぞ」
「……………は?」
ティティからケータイで連絡があり、しばらく行き帰りはお父さんの車で送迎してもらうとの事。
ちょっと寂しいけど最近はツナ達の護衛もあって
学校帰りにカフェに寄ったりゲームセンターに寄ったりが出来なくなっていたので
放課後に会う事すら出来なくなるけど仕方ないかな。と思って了承の返信をした。
なので自然と秋元くんと校門で待ち合わせて一緒に帰る事になる。
秋元くんはあたしと同じ普通科の生徒だが、クラスが違って教室も離れているのでティティと同じように待ち合わせするのが一番合流しやすかった。
「そういえば秋元くんって元々並盛出身じゃないんだっけ?」
元の世界の結友もそうだった。
中学まではあたしと同じ地域に住んでいたけど、高校になって別の高校に行って引っ越した。
そしてその先で好きな人が出来て…本当に出来たのかは、分からないけど
とにかくそれがきっかけで別れることに。
秋元くんもどうやら元々並盛に住んでいたわけではないようだ。
高校生になって引っ越してきたという。
「うん。元いた所はおばあちゃんの家だったんだ。
でもおばあちゃんが死んじゃって…同じタイミングで父さんの仕事の都合が出来ちゃって
それで僕が父さんの仕事先に合わせて並高を選んだんだ」
「そうだったんだ…
でもお父さんの仕事先に合わせてあげるなんて
秋元くんって優しいのね」
あたしのその言葉を聞いて彼はこれまで一緒にいて初めて表情を暗くした。
「……父さんが…合わせろって…」
「………」
「実は両親と僕、あまり良い関係じゃないんだ。
何より両親が不仲で…
どっちも夜遅くになっても仕事で帰ってこない。
本当に仕事なのかも分からない。
たまに帰ってきても僕には無関心だし、両親は顔を合わせればケンカ。
おばあちゃんだけだったんだ。僕に優しくしてくれたの」
「…そうだったの…」
結友はそんな事なかった。
結友のご家族に会った事あるけれど、家族みんな仲良しだった。
ただ、おばあちゃんは結友が小さい時に亡くなっていたようだけど。
「正直家に帰っても誰もいなくて寂しいからさ
美香さんとこうして放課後に公園に寄って
お喋りしたりお菓子食べたりして過ごすの、すごく楽しいんだ。
友達らしい友達もいないからさ」
「そっか…」
「ごめんね。こんな暗い話」
「大丈夫!あたしこそいつも愚痴を聞いてもらってるし。
それで、元いた場所って何処だったの?」
秋元くんは引っ越し前の場所を教えてくれた。
驚くことに、その場所はあたしが知る場所ではなかった。
引っ越し前なら…あたしが住んでた地域でもあるのに…
違う地域だから当然通っていた中学校も違う。
「(結友と…違う…?)」
出身も…生い立ちも違う。
いくら別世界だからってこんなに違う事ってあるんだろうか…
「どうかしたの?」
ぼんやりとしていたら秋元くんが不思議そうに顔を覗き込んできた。
「あ…ううん!ちょっとぼうっとしてた」
「そう?具合とか悪かったら無理しなくていいよ?」
「大丈夫。平気」
「…まだ彼氏さんとの事で悩んでる?」
心配そうに見つめてくる秋元くん。
あたしは心配してくれる優しい彼にニコッと笑いかけ
「えっとね…実はもうそんなに悩んでないの」
「え?…あ、もしかして仲直り出来た?」
「もう…必要ないかなって」
「?」
「仲直り…必要ないかなって…思ってるの」
「どうして…」
「あたしはもう彼に愛されてないんだわ。
嫌われてるかどうかはともかく、関心がないのは確かだもの」
「…………」
「だったらもう別れても何も問題ない気がして。
友達はみんな『気が動転してるだけ。冷静じゃない』って言うんだけど。
あたしも…そうかもしれないって思ってるから、まだ別れ話をしてないだけ」
「そう…なんだ…」
「ごめんね。せっかく今まで仲直り出来るよう相談とか乗ってもらってたのに」
「ううん大丈夫。
でも…結果はともかく美香さんが納得出来る結末を迎えられるなら、それが一番良いと思うよ」
「うん…ありがとう」
「その…」
「?…」
「もし…美香さんが彼氏さんと別れるなら」
「………」
「僕にも…チャンスがあるのかな。……なんて」
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