アストライア・ノヴァ
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その日の晩。綱吉は夢を見た。
暗い深海のような、光が一切届かない場所。
天地がどうなっているのかまるで分からなくて
自分が真っ暗な空間に浮いているような感覚だった。
「どこだ?此処…」
自分以外人がいるような気配は感じられず不安に駆られる綱吉。
地に足がついてない事もあってその不安さを加速させた。
「リボーン!おいっいないのか!?」
まずいつも一緒にいてくれる自分の家庭教師の名を呼ぶ。
しかしその呼び声は真っ暗な空間に吸い込まれるだけ。
反響もなければ、綱吉の声に応える声もない。
「獄寺くん!山本!?」
次に親友であり、仲間の名前を呼ぶ。
やはり返事はない。
「エンマ…みんな…一体、どこに…」
自分の両手には戦う為の武器であるグローブはない。死ぬ気丸もない。
指にいつもあるはずの指輪もなければ戦いの相棒であるナッツもいない。
パジャマのポケットの中を探るがやはりなく、この暗い空間に着の身着のままで放り出されているのだと知った。
「そんな…どうすれば…」
途方に暮れていると啜り泣く声が聞こえた。
「ヒィ!?なっなに!?」
ホラーによくある展開だと思って綱吉は思わず悲鳴を上げる。
しかしよく聞いてみると啜り泣く声は遥かに遠かった。
「誰か…いるのか?」
不思議とその声に向かう意思を示すと地に足がつき歩けるようになった。
それだけでも綱吉はひどく安心した。
泣き声に向かって怯えながらゆっくりと、しかし確実に近付いていく。
やがて泣き声が近付いてくるにつれて別の声が聞こえてきた。
ーー寂しい
「っ……」
綱吉は何故か急がなければならない気がして走り出す。
聞こえた声はよく分からず、女性の声なのか男性の声なのかも判別出来ない。
しかし…若い人だというのは何となく分かった。
「誰ですか…?あなたは、一体…!」
ーー寂しい
「どこにいるんですか?」
ーー独りにしないで
「…もしかして…美香か?」
立ち止まり、真っ暗な空間を見上げる。
ーーもう独りはイヤだ…
「美香なのか!?返事をしてくれ!」
ーー寂しい…寂しい…
「独りじゃない!お前は独りじゃない!
オレがいる!みんながいる!!
だから…寂しがる必要なんてないんだ!!」
ーーみんな…置いていかないで…
「置いていくわけないだろ!?
何処にいるんだよ…一緒に帰ろう!
迎えに来たぞっ美香!!」
啜り泣く声が遠のいていく。
それに気付いた綱吉が慌てて声が小さくなっていく方へまた走り出し
「待てよ!待てって!」
ーー……………
「何処に行くんだよ!」
ーー……………
「帰ってこいよ!」
ーー……………
「行くな!」
「美香!!」
叫びながら綱吉はガバ!っとベッドから飛び起きた。
ハァ…ハァ…と息を切らししばらく放心する。
そして息も落ち着いた頃に辺りを見回して、自分は今自分の部屋にいる事を確認すると
「夢…?」
ハーーー…と、深く深く安堵のため息をついた。
チラリと視線を上げるとハンモックで寝ているリボーンはスヨスヨと眠り続けていて、ひとまず起こして無いことにホッとする。
「ハァ…」
いつもならそのまま二度寝するのだが、何故か目が冴えてしまい綱吉はベッドから降りた。
時計を見ればまだ朝の5時頃。
夏の入り口の季節であるが故に外はうっすらと明るいが、まだ家族は誰もが眠っている。
部屋からそっと静かに出て、ひとまず飲み物でも飲もうかと廊下を歩き…
ふと、隣の美香の部屋の前で足が止まった。
「……美香…」
小さくノックをして、部屋のドアを開ける。
「ツナ。どうしたの?」
「っ美香!?」
思わず声をあげたが、冷静になって部屋を見ると美香の姿は無い。
「…そう、だよな…
いるわけ…ないよな…」
美香は今炎真達が住む民宿にいる。
それを知ってるはずなのに…
「幻覚まで見るとか末期かよ…」
自嘲しながら綱吉は頭を抱えた。
「オレ…やっぱり美香がいないとダメだ…
寂しいなら帰ってこいよ…
……いや…オレが帰り辛くしたんだよな…」
誰もいない部屋を見回して、もう一度ため息をついてドアを閉める。
階段を降りてダイニングに着くと、棚からガラスのコップを取り出して冷蔵庫の中のミネラルウォーターを注いだ。
それを一気に飲み干すと、コップを流し台に置いて何となく玄関に向かう。
寝間着姿のまま外に出て、陽が登ったばかりの白い光が目立つ青空を見上げる。
「春の流星群…」
京子とハルの話を聞いてからずっと何かが引っ掛かっている。
何かを忘れているのに、思い出せない…スッキリしない違和感。
「オレ…あの流星群、確かに綺麗だったんだけど
それだけじゃない感じがしたんだよな」
近所の公園でみんなで集まって見た流星群。
住宅地とはいえ町中ではさほど流れ星はハッキリ見ることが出来ないのではという心配とは裏腹に
沢山の夜空に流れる星をハッキリと、幾つも幾つも見ることが出来た。
それをみんなは喜んでいて…とても楽しんでいて。
だから綱吉は言い出せなかった。
まるで、泣いているように見える。と…
「おお!沢田ではないか!」
空を見上げているとまるで空が太陽を連れてきたような辺りいっぱいに響く明るい声が聞こえた。
「お兄さん!」
「今日は朝早いんだな!」
そこには首にタオルを巻きジャージ姿で汗だくになっている笹川了平がいた。
「お…おはようございます…
お兄さんは朝練…ですか?」
「おう!朝のロードワークは極限に良いぞ!
お前も一緒にどうだ!並盛町50周!!」
「いえいえいえいえ!!遠慮します!!」
「そうか?」
「そ…それより…相変わらず元気そうで安心しました。
高校に進学して、しかも並高じゃなくてボクシングの強い少し遠い高校に行ったから
前みたいに気軽に会えなくなって元気にしてるか気になってたんです」
「オレなら極限に元気だ!!」
「(確かに病気とか無縁そう…)」
「それになんだかんだ会えてるしな!心配するな!」
「でも春の流星群以来ですし。
あっ京子ちゃんから聞きましたか?
もし良かったら今度夏の流星群を見に一緒に海に行きましょうよ!
流星群が夏休みと被るかはまだ分かりませんけど…」
「ああっ京子から聞いている!
夏休みはおそらく全部部活だと思うが、何とか時間を作るつもりだ。
受験勉強の何たるかを先輩として教えてやろうではないか!!」
「(絶対ズレた事教えられそう…!!)」
「む。そろそろ起きてきたコロネロ師匠と修行の時間だな」
「(コロネロ 京子ちゃんの家に居座ってんの!?)」
「じゃあな沢田!また会おう!!」
「えっ…あ、はい!あの…頑張って下さい!」
「おう!」
そうして了平はまた走りだし、そのまま去って行った。
その背を綱吉はしばらく見送ってから
「お兄さん…とりあえず元気そうで良かった。
なんか安心したら眠たくなってきちゃったな。もう一眠りするかー」
急に眠気を感じた綱吉は欠伸をしながら家に入る。
玄関の鍵を閉めると2階に上がっていき、自室に入ってベッドに潜り込んだ。
そのまま綱吉は数秒でまた眠りについたのだった。
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