アストライア・ノヴァ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕方の並盛商店街を雲雀恭弥は歩いていた。
最近妙な人物達が徘徊する様になった為強化した日課である見回りだった。
買い物客や学校帰りの生徒達が多く集まる時間の為
大勢の人達がひしめく商店街の道を一人颯爽と歩き、しかし目だけは光らせまるで獲物を探すように人々を観察している。
特に獲物が見つからないまま商店街の出入り口に辿り着く。
問題がなさそうな様子に関心が無くなったのか、さっさとその場から離れ次の狩場に向かおうとすると
「っ!」
見慣れない人物を目の端で捉え咄嗟にその方向に顔を向けた。
しかしその人物は逃げるように人混みの中に隠れてしまう。
足早にその気配を追い、ハッキリと確認出来なかった相手の顔を見ようとするが
まるで風のように相手は人混みの中をすり抜け雲雀との距離を確実に開けていく。
間違いなく相手は雲雀に追われている事に気付いている。
手応えを感じた雲雀は更に相手を追い詰めようと行動の先読みをし
地の利を活かして先回りをする。
確実に相手の不意をつき先回りに成功した。
そう確信した雲雀だったが、曲がり角から出て相手の目の前に立ち塞がったと思ったが
「な…なんだ!?」
なんと目の前にいたのは見るからに普通のサラリーマンだった。
「…………」
「な…なにか用かな?」
自分を凝視してくる雲雀にサラリーマンは戸惑いながらそう問う。
雲雀はそのサラリーマンがどう見ても自分が追っていた人物ではないと確信すると、無言でその横を通り過ぎた。
しばらく辺りを警戒して追っていた気配を探ったが、どうやら撒かれてしまったようだ。
どんなに意識しても相手の気配を感じる事が出来なかった。
不思議な感覚だった。
見覚えがない人物だと断定出来るのに、その顔や雰囲気…性別その他諸々が分からない。
ただ直感的に見覚えがないと断定した。
「…気にくわないな」
まるで実体のつかめない、霧のようだ。
バイトが終わるとアーデルちゃんとらうじくんがお店の前に立っていた。
「お疲れ様です美香さん」
「お疲れ〜」
「あれ?アーデルちゃんにらうじくんどうしたの?」
「もちろん迎えに来ました。
炎真から聞いています。貴女もボンゴレの敵勢力や混乱に乗じてボスの座を狙う内部の裏切り者に狙われていると。
我々シモンファミリーはボンゴレに協力する気はありませんが
沢田綱吉率いるファミリーには協力する姿勢です」
「そうなんだ。ありがとうツナの為に…」
「もちろん沢田綱吉の為でもありますが…」
「?」
「我々は友達ではありませんか」
「そうだよぉ
友達なら困ってる時に助け合わないと」
「アーデルちゃん…らうじくん…」
「さぁ帰りましょう。
食事は既に完成しています。帰ったらすぐに食事にしましょう」
「あ…待って。
今日は沢田家に帰りたくて」
「それは出来ません」
「?」
「炎真から美香さんは必ず我々の民宿に連れ帰るよう言われていますので」
「どう…して…」
「ごめんねぇ
でも珍しくオイラ達のボスとしての命令だから…」
「…………」
電話もさせてくれない。
家にも帰らせてくれない。
どうやら炎真は本気であたしとツナを会わせず、別れ話をさせない気のようだ。
「炎真があたしを沢田家に帰らせない理由…二人は知ってるの?」
「はい」
「うん」
「それを聞いて、やっぱり二人もあたしの事冷静じゃないって思う?」
「はい」
「うん」
「そうなんだ…」
「私とSHITT・P!に事情を話し、胸の内を打ち明けてくれた時の貴女は切に沢田との仲を修復したいと願っていました。
それなのに急に仲の修正どころか関係を終わらせる決断をするだなんて…
とても冷静な判断とは思えません」
「ちょっと気が動転しちゃってるんだよ。
だから距離を置いてしばらくオイラ達と一緒に過ごそう。
気分転換してからまた冷静に考えた方がいいよぉ
その時はオイラ達も力になるからさ」
「うん…ありがとう…」
やっぱりそうなんだろうか。
あたしとしては、もうこれしか方法がないと思っているのだけれど
その考えが冷静ではないのだろうか?
「分かった…なら、しばらくお世話になるわね」
「ええ。美香さんならいつでも、いつまでも大歓迎です」
「美香さんはシモンの仲間でもあるんだからね」
そう優しく微笑む二人にあたしはなんだか救われた気がした。
二人に挟まれる形で三人で並んで夜の迫る商店街の中を歩く。
「アーデルちゃん今日の晩御飯なに?」
「今日は焼き魚です。
スカルがいるので騒がしい食卓になると思いますよ」
「あ〜アルコバレーノの!
リボーンくんがオレのパシリなんて言ってたわね。
代理戦争以降シモンファミリーに居着いちゃったんだ」
「炎真が拾ってきた上に炎真も面倒を見てますからね。
一度許可した以上途中で放り出すことは出来ません」
「なんだかんだアーデルちゃん達面倒見良いよね」
「引き受けた仕事ですから」
「オイラはランボさんとまた違う子供だから楽しんでるよぉ」
その時、前方に見慣れた髪型を見つけた。
後頭部のまるでフサのような髪が特徴的で、シルエットだけ見るととある南国の果物のような…
「(まさか骸くん!?)」
それに気付いたのはあたしだけのようで急に走りだしたあたしに慌てる二人。
駆け寄ってみると後ろ姿がハッキリしてきて、その姿は骸くんとは違っていた。
けれど見慣れた華奢な女の子。
「クロームちゃん!」
呼ばれた彼女はゆっくりと振り返り
「あ…」
あたしを見て小さく声をもらした。
「クロームちゃんが並盛商店街にいるなんて珍しいわね」
彼女の前に立ち話しかけている間に後ろからアーデルちゃんとらうじくんも追い付いてくる。
「貴女はボスの大切な人…」
「まだその呼び方なのね…
美香で良いわ。良かったらそう呼んで?」
「………」
人見知りのようで目を逸らし、頬を少し赤らめてモジモジとしている。
ふと見ると彼女の腕には風呂場で使うようなプラスチックの桶が抱かれている。
その中にはシャンプーやボディソープ、タオルが入っていた。
「もしかして銭湯に行く途中だった?
あら…?黒曜に銭湯なかったかしら」
「て…定休日で…
近くになかったから、
「そっか。ゆっくり温まってね」
「は…はい…」
「そうだ。クロームちゃん麦チョコ好きなの?
いつも買ってるってジュリーくんから聞いたんだけど…」
「え?は、はい…」
「ランボくん達がよく行く駄菓子屋に苺味の麦チョコ見つけたのっ
良かったら今度買ってくるわね。
なかなか会えないから京子ちゃん達に渡しておくわ」
「そ、そんな」
「ついでに一緒にいる人達の差し入れも買っておくわ。
骸くんと犬くんと千種くんだっけ?他にも一緒にいる人がいたらごめんね?把握出来てなくて…
それで、その人達の嫌いな物とか好きな物はある?」
「あ…その…む…骸様は…チョコが好き、で…
犬はガムとか…千種は…よ、よく…分からなくて…っ」
よく見ればクロームちゃんの顔は先程より更に赤みが増していた。
タジタジ、おどおどとしていて…もしかしなくても、あたしクロームちゃんに恐怖心与えてる?
ハッとしたあたしは慌てて
「あっごめんね…尋問みたいなことして。
クロームちゃんと話せる機会がなかなかないから嬉しくて、つい…」
「っ〜…」
「分かった。じゃあ適当に買っておくわね」
「あ…」
「引き留めてごめんね。お風呂楽しんでね」
クロームちゃんは頬を赤らめたまま視線を下げた状態でしばらく固まっており
やがてペコッと頭を下げるとパタパタと走り去って行った。
その背を見送りながらあたしはため息をつき
「怖がらせちゃったわ…気を付けないとダメね…」
「私は怖がっているようには見えませんでしたよ」
「うん。怖がってるというよりも、どう接して良いのか分からなくて戸惑ってるって感じだったね」
「そうなの?怖がってないなら良かったわ」
アーデルちゃんとらうじくんの言葉を信じる事にしてあたし達はまた歩きだして民宿に向かうのだった。
美香と別れてクロームは自分の気持ちと息を整える為に脇道に入った。
夜が迫る狭い脇道は暗く道の端に置かれてある物が荷物や植物等とは分かっても、その詳細までは視認出来ない。
クロームは京子とハルに初めて接した時以来の戸惑いとドキドキとする胸に動揺し、それを抑えようと胸元を押さえながら
「どうしよう…伝えそびれちゃった…」
まだ人の優しさに触れ慣れていないクローム。
緊張と動揺で出会って気になった事を美香に伝えそびれていた。
「そうだ…明日、ボスに……うっ!?」
突然体が動かなくなり、声も出なくなった。
そしてやっと自分の背後に誰かがいる事に気付く。
「(これは…霧の炎…!?
そんな…ボス…骸……さま……)」
遠のく意識の中、クロームの耳に聞こえたのは聞き慣れない声だった。
「痕跡は残したくなかったのに。残念だよ」
・NEXT