アストライア・ノヴァ
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「えー?それって彼氏じゃなくて友達じゃーん」
そう言ってケラケラと笑う女の子はあたしの同級生。
同じ並盛高校に通う女子高生だ。
イタリア生まれの彼女は小さい頃に親の仕事の都合で日本に来てそのまま日本で育った為、イタリア語だけでなく日本語もペラペラのイタリア人だ。
「そんな事言わないでよティティ〜…」
「だって恋人同士なのに手を繋ぐのがやっとでキスすらまともに無いなんて!
彼氏くんシャイすぎない?」
余程おかしいのか目に涙を浮かべながら自分が頼んだアイスコーヒーをひと口飲む。
ティティとあたしは別クラスの上、教室もかなり離れていて学校ではなかなか会えない。
そんな中でもティティは下校時間になると必ず校門前であたしを待ってくれていた。
学校の中で話せない分、帰り道にカフェ等に寄ってこうしてお喋りを楽しんでいる。
ティティとはどういうきっかけで知り合ったのか思い出せないくらい仲良しだ。
あたしも頼んだアイスティーを飲みながら
「クラスの友達もみんな言うのよね…
やっぱりおかしいかなぁ」
「うーん。おかしいとは思わないけど」
「けど?」
「面白いなぁって私は思う!」
「面白がってるだけじゃない!」
そしてティティはまたケラケラと笑い始めた。
あたしは彼氏が居る事は友達には伝えているが、その彼が一緒に暮らしているツナだというのは伝えていない。
というのもツナは書類上はあたしの義理の弟。
異世界云々の事情も話がぶっ飛びすぎているし、奈々さんは未だにあたしの事は『家族を失い強いショックで記憶の一部を失った女の子』と認識している。
その為奈々さんと話し合い、世間に対する口裏合わせとしてあたしは沢田家の遠い親戚で、両親を失ったので養子として引き取った女の子となっている。
孤児を引き取った。でもいいのだが、それだと変に目立ちそうで…
親戚の子同士で愛し合う関係になっていると学校中に広まるのは避けたくて
今度はツナと話し合って付き合っているのは一部の人達だけが知る秘密にする事にした。
ちなみに奈々さんと家光さんにはあたしとツナが付き合っているのは気付かれている。
家光さんはともかく奈々さんまで…奈々さん、意外と鋭い。
「あ、もうこんな時間」
あたしが取り出したケータイで時間を見るとそろそろ夕飯が出来る頃だった。
「じゃあ帰る?」
「そうだね。帰ろっか」
二人で席を立ち、それぞれで会計を済ませ店を出る。
並盛商店街の入口に差し掛かった所で
「あ、美香」
「ツナ」
帰りの途中なのかツナとバッタリ会った。
何故か服がヨレヨレで所々怪我している。
これはまた誰かに絡まれたな。
「ティティさんもこんばんは」
「弟くんチャオ〜♪
じゃあまた明日ね美香」
「うん。またねティティ」
ティティとはいつも並盛商店街の入口で分かれる。
今日もいつものように彼女と分かれて、ツナと一緒に商店街の中に入った。
「ツナったらまた誰かに絡まれた?」
「並高の人に…
ダメツナのオレの事知ってるから多分お兄さんと同級生の人だよ」
「なら高1か…並高もガラが悪い生徒多いから…
そのせいか高校であっても雲雀くんが睨みを利かせてるものね。
並中じゃなくても関係ないみたい」
「雲雀さんも怖ぇえ…」
と、顔を青ざめさせるツナ。
クスッとそんなツナに笑い、愛おしい気持ちが膨らんでそっとあたしは彼の手に触れた。
手を繋ぎたい。そんな甘えん坊なおねだりを彼に伝えたのだが
「っ」
ツナは触れられた手を慌てた様子で引っ込めた。
「………」
「……恥ずかしいから…ごめん」
「…ううん」
こうやって、あたしはいつも彼と手を繋げない。
寂しいし胸がズキリと痛むけどツナが嫌がるなら仕方ない。
あたしは諦めて手を引いた。
キスなんて初めて想いが通じ合えたあの公園での時以来無いし
抱き締める事も付き合う前の方が数が多く、情熱的だった。
だけどあたしはツナの気持ちを信じたい。
だから…寂しくても耐えていた。
「あ、そうだ美香。これあげる」
ツナは突然そう言ってあたしの頬に何か冷たい物をギュッと押し付けてきた。
「つめたっ…なに?」
「ジュース。飲む?」
缶の炭酸ジュースだった。
それを受け取ると買ったばかりなのかまだ冷たかった。
「うわー…このジュースこの世界にもあるのね」
「ん?」
「元カレが好きだったのよ。懐かしいわ」
「ぇ………へぇ…」
プシュッと音を立てて缶を開け缶を口に近付けながら
「あれからだいぶ経つけど飲めるかしら」
「え?飲めるって…」
炭酸ジュースを口に入れて、口内に広がるパチパチとする痛み。
それを無理やり飲み込もうとして気管に入り、あたしは思いっきり噎せた。
「ちょっ…何やってるんだよ!?」
ツナが驚き咳き込むあたしの背を摩ってくれる。
「ありが……ゴホッゴホッ」
「あーあーもう…慌てて飲むから…」
「その…炭酸ダメみたいで」
「…は?
えっじゃあなんで飲んだんだよ!?」
「ずっと昔元カレと一緒に炭酸ジュースを飲みたかったから練習した事あるのよ。
付き合ってた頃は何とか慣れるまでいけたけど…あれからだいぶ経ってるからやっぱり元に戻っちゃってるわね」
「元カ……っ」
何故かあたしの手から炭酸ジュースをひったくるツナ。
不思議に思って彼を見上げると眉を顰め厳しい顔付きで
「やっぱりオレが飲む。
つか、美香は炭酸禁止!」
「え…」
「炭酸ダメならそう言えよ。
別にオレは美香が炭酸飲めなくても気にしないし
一緒に何か飲みたいなら…美香の好きな飲み物にするから…」
と言って炭酸ジュースを飲み始めた。
「……関節キス」
「ぶは!?
ちょっ…いきなりなんだよ!?」
「ツナのばーか」
「はぁあああ!?意味わかんねー!」
冷たいって思うのに、こんなに優しい。
あたしはツナにいつも振り回されてばかりで…
ドキドキドキドキと、高鳴りが止まらず
悔しくて悪態をつくしかなかった。
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