アストライア・ノヴァ
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家に帰り着くとあたしは出迎えたツナに挨拶もそこそこにすぐランボくんの頭を冷やしに家の中に入った。
奈々さんには「転んだ」と誤魔化して冷凍庫の中の保冷剤を取り出し、タオルに包んで頭を冷やしてあげる。
玄関先ではツナと炎真の話し声が聞こえ、やがて話し声は二階へと消えていく。
保冷剤の冷たさに目を覚ましたランボくん。
ふわーと欠伸をしむにゃむにゃとする様子を見ながら
「ランボくん…まだ頭痛い?」
「冷たぁい。ランボさんお腹すいた」
「この様子だと大丈夫そうだけど…」
「美香姉後は僕がやっておくよ」
「イーピンもテツダウ!」
「ありがとうフゥ太くんにイーピンちゃん。
じゃあお願いするわね」
抱いていたランボくんをフゥ太くんに渡し、保冷剤も渡した。
「ガハハハハ!フゥ太ー!ランボさんブドウの飴玉食べたいぞー!!」
「わっちょっとランボじっとしてよ〜!」
「ランボ暴れるダメ!」
後ろで賑やかな声を聞き、思ったより元気そうなランボくんに胸を撫で下ろしてあたしは二階に上がった。
自室で着替えようと思ったけど炎真とツナの方が気になって、あたしはツナの部屋のドアをノックした。
ツナが部屋から
「母さん?」
「ううん。あたし…」
「美香…」
「入って、いい?」
「…うん」
ドアを開けるといつものテーブルにツナと炎真が向き合って座っていて
リボーンくんがその間に挟まるようにしてテーブルの上に座っている。
「大変だったな美香。
怪我はないか?」
と、リボーンくん。
炎真からある程度の話は聞いているようだ。
「あたしは平気…
寧ろランボくんの方が心配だったけど、元気に暴れてるから今の所大丈夫そう」
「あいつは丈夫だから心配すんな。
伊達にツナの雷の守護者やってねぇからな」
「それなら良かったけど…」
言いながら開いている場所にあたしは持っていた荷物を置いて座った。
さっきから無言のツナをあたしはチラッと見て
「……ツナ…怒ってる…?」
彼は俯き目元に影をつくって静かに低い声で
「……当たり前だろ。
しかも、二度目だって?なんで黙ってたんだよ…!」
「………ケンカしてるじゃない」
「っそんなの関係ないだろ!?」
ツナが顔を勢いよく上げてあたしを睨んだ。
そしてあたしの腕を掴むとそのまま詰め寄り
「足は!?撃たれたんだろ!?」
「な、なんで知って…もう大丈夫よ」
「リボーンから聞いた。
…見せろよ。言葉じゃ信じない!」
「っ…分かったわよ」
靴下を脱いでその素足をツナに見せる。
炎真もテーブルを乗り越えて覗き込んできた。
撃たれた箇所は元々掠っただけというのもありもう殆ど完治していて痛みもない。
しかし治りかけではあるのでうっすらと傷跡は残っている。
「傷跡はうっすらとあるけど、これもだいぶ薄くなってるわ。
多分もうしばらく経てば完全に消えると思う」
「………それでも…美香は傷付いたんだ。
怖くて…痛い思いもしたんだ…」
「…ツナ?」
彼の手がそっとあたしの傷跡が残る場所に触れた。
暖かい季節なのに、まるで血の気が引いているように手の平が冷たい。
肌から僅かに感じる振動に、ツナの手が震えている事に気付いた。
「なんで…そっとしておいてくれないんだ…!
もう美香を放っておいてくれ…!」
「………」
「っ美香もなんで黙ってたんだ!
リボーンだけでなくディーノさんにまで口止めして…
エンマが教えてくれなかったらオレはまだ知らないままだった…!」
「…ツナと距離を置きたかったからよ」
「まだケンカにこだわってるのかよ!?
そんな事言ってる場合じゃないっ
美香は危ない目に遭って…」
「っそんな事!?ツナにとってあたしの気持ちなんてその程度なのね!?」
「そうじゃなくてっ」
「あたしが…っどれだけ寂しかったかなんてどうでも良かったんだわ!!」
「美香っだから今は」
「手を繋ぐ事も、繋いでくれる事もしてくれない!
抱きしめてもくれないっキスなんて以ての外!
あたしってツナの何なの?ツナにとってどういう存在なのよ!」
「っそれは…」
眉を顰めバツが悪そうな顔になるツナ。
あたしは感情が爆発して、口が止まらずにいた。
「結友はそんな事なかったわ!
付き合った頃は中学の受験生の頃。ツナと同じ歳の頃よ!」
ツナの顔が強張る。
こんな事言いたくないのに。
「お互い受験勉強で忙しかったけど
結友はあたしをほったらかしになんてしなかった!」
ナンセンスだって分かってるのに。
最低だって…分かってるのに。
「手を繋ぐのはもちろん、抱きしめてもくれた。キスもしてくれた!
だけどツナはあたしに何もしてくれない!
あたしからしようとしても、拒絶するじゃない!」
口が止まらない。
涙が止まらない。
「付き合う前の方が…ずっと情熱的だったわ…!」
ボロボロボロ涙を溢しながら顔を強張らせたままのツナを睨む。
「寂しい…ツナ…あたし、ツナに愛されたい…!」
「美香…」
「きっとツナはもうあたしの事なんてどうでもよくて、嫌いなのよね?」
「………は!?」
「そうとしか考えられないわよ!
何もしてくれないだけでなく、あたしからのアピールも拒絶するなんて!」
「そんな訳ないだろ!?そんな…オレが、どれだけ…!
美香だってオレがどんな思いでいたか何も知らないくせに…!!」
「知るわけないでしょ!?何も言ってくれないんだもの!」
「そんなに秋元先輩が良いなら行ってしまえよ!優しくしてもらえよ!
もう襲われたって美香なんか助けてやらないからな!!」
「ツナくん!」
「ダメツナめ。それは流石に言い過ぎだ」
バキ!と、あたしの目の前でツナがリボーンくんに顔面を蹴飛ばされる。
いつもなら驚いて、意外と平気そうでリボーンくんに怒るツナに笑ったりしていたけれど
今のあたしはとてもじゃないがそんな気分になれなかった。
ーー行ってしまえ
「(…意味分かんない。なに、動揺してるの?
当然の結果で、自分が望んだ事じゃない)
ツナから正式に、結友の元に行って良いという許可が出たってことじゃない。
「…そう…分かったわ」
「っ……」
いつもなら慌てて取り繕うツナの言葉もない。
リボーンくんに蹴飛ばされた頬を押さえて、無言で俯いているだけ。
あたしは靴下を履き直すと荷物を持って立ち上がりツナの部屋から出る。
そのまま自分の部屋を通り過ぎ
「待って美香っ何処に…」
後ろで炎真が声をかけてきたけど何も答えず階段を下りる。
そして玄関のドアを開けて夜の外に出た。
「美香!美香!!」
「あら?美香ちゃんどうしたの?」
「あっ…すみません。ツナくんの母さん!
美香、今日僕の家に泊まります!
お邪魔しました!」
炎真の声でそんな話が聞こえて、駆け付けてきた炎真があたしの手首を掴んで
「夜道は危ないからダメだよ…!
しかも女の子が泣きながらなんてっ」
「帰りたくない…!」
「分かった。なら僕達の民宿においで。
しばらく泊まっていくといいよ」
コクリと頷くあたし。
自然と炎真と手を繋いであたし達は一緒に夜道を歩く。
炎真とだって手を繋げるのに。
どうして?ツナはどうしてそれすらも出来ないの?させてくれないの?
あたしとツナは、もう終わりなのかもしれない。
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