アストライア・ノヴァ
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「美香。こっち」
炎真と歩いていると彼がグイッとあたしの腕を引いた。
「え…?」
そして小声で
「後を付けられてる」
「!?……」
「人気の無い所に行こう。
いつ襲ってくるかわからないから僕から離れないで」
「分かったわ。
ランボくん、イーピンちゃんこっちおいで」
「?」
「なになにー?」
フゥ太くんと遊びながら歩いていたランボくんとイーピンちゃんを呼び寄せ、二人を抱っこするあたし。
「美香姉どうしたの?」
不思議そうなフゥ太くんには「あたしから離れないでね」と言うと、賢い彼は何となく察したようで「分かった」と言ってあたしのすぐ傍に寄った。
炎真があたし達の準備が整ったのを確認すると
さりげなく路地裏へと入っていく。
あたしもその後に続いた。
人が誰もいない夜が迫る暗い路地裏。
人気がないのを確認してから炎真はあたし達を後ろに隠し振り返って誰もいない所に
「…もうバレてるよ。誰なの?」
「女を渡してもらおう」
姿を現し、開口一番にそう言ってきた。
相手は誰もいなかった道の中心に突然姿を現した。
まるで霧の中から出てくるように…
ローブを纏っているがつば広の帽子をかぶっている為顔が分からず、全身黒づくめ。
この間あたしを襲った連中と違う人だ。
「霧属性の炎…美香が目当て?何のために?」
「お前は継承式で見た事ある。
シモンファミリーボスの古里炎真だな。
やはり和解後ボンゴレファミリーと同盟を組んだようだな」
「勘違いしないで。
和解はしたけどボンゴレなんかと同盟は組んでない。
僕が認めたのは10代目候補…今はネオ・ボンゴレⅠ世予定かな?沢田綱吉だけだよ」
「ボンゴレの解体が危ぶまれている状況だ。
ボンゴレⅠ世が遺したという兵器を使えば一気に転覆する」
「ボンゴレⅠ世の兵器なんてまだ馬鹿げた噂を信じてるの?
『初代ボンゴレの秘宝』は兵器じゃない。
昔ボンゴレⅠ世が渡せなかった婚約者への婚約指輪と解明されたじゃないか」
「それこそ馬鹿げた噂だ。
あの歴代最強と名高いボンゴレⅠ世がそんな軟弱でくだらない物を『秘宝』等という大層な名で遺すものか」
「くだらないって…!」
事情と真相を知っているあたしは思わず胸元の山桜の指輪を服の上から握ってムカッとする。
もちろんそれは炎真もで、彼も無言で一瞬眉を顰めた。
「信じる信じないは勝手だけど彼女を巻き込まないでくれる?
もう秘宝の鍵は持ってない。ただの一般人なんだから」
「『初代ボンゴレの秘宝』に関わる重要人物なのにただの一般人は無理があるだろう。
何かしらの情報は持ってるはずだ。
もしくは…『秘宝』に関わる物を持っているかだ。その胸元が怪しいな?」
「っ」
しまった。つい無意識で…!
慌てて手を離しランボくんとイーピンちゃんを抱き直すがもう遅い。
「此方に来てもらおうか」
相手が一直線に炎真の後ろにいるあたしに向かってきた。
「彼女に手出しはさせない!」
額に大地の炎を宿し炎真の手が向かってくる敵に向けられる。
「ぬおっ」
途端にべシャ!と地面に張り付くように押し付けられ身動きが取れなくなる。
炎真の炎の重力だろう。
「このまま気を失うまで押し潰させてもらうよ」
ググ…と敵の体が更に押し潰され
「!?」
敵は霧散した。
「っ幻覚!」
「あっ…いやぁ!炎真!!」
「っ美香!?しまった!」
いつの間にか敵はあたしの背後にいて体を抱いていた。
「重力を操る事は継承式の時に見て知っている。
使いたければ使え。この女ごと押し潰されるだろうがな」
「くっ」
その時だった。
「美香姉を離せーーーーー!!!」
あたしのすぐ近くにいて、敵が割り込んだおかけで敵のすぐ後ろに立つ事になっていたフゥ太くんが敵の背中をボカボカと殴り始めた。
「フゥ太くん!?」
そして同時にランボくんとイーピンちゃんもあたしの腕から抜け出し、腕を伝って敵の顔面を思いっきり殴ったり蹴ったりし始めた。
「美香さん狙うユルセナイ!」
「お化け離れろーーーー!!いやーーーー!怖いーーーー!!」
「な…なんだこのガキ共は!鬱陶しい!」
男は片手を抱いていたあたしの体から離して手近なランボくんの頭を鷲掴む。
そして思いっきり地面に叩き付けた!
「ぐぴゃ!」
「ランボくん!!なんてこと…っすんのよ!!」
敵の腕が片方離れたおかげであたしの片腕も自由になっている。
ランボくんに手を上げた敵にあたしはカッとなって思いっきり相手の腹部に肘を突き刺すように叩き込んだ!
「ぐは!?ぐっ…」
それが運良く入ったようだ。
敵のもう片方の腕の力が緩んで急いで腕から抜け出し、敵にへばりついて抵抗していたイーピンちゃんを引き離すとフゥ太くんの手を引いてランボくんの元へ走り
「炎真っお願い!」
「さすが美香っありがとう!」
炎真が再び敵に手を向けると相手は重力に縛られ一気に炎真へと引き寄せられる。
「寝ててもらうよ!」
自分に引き寄せる引力の強さを最大のままに炎真は拳を振り上げ思いっきり引き寄せられた敵の顔面を殴った。
バキィ!という凄まじい音。
今度こそ敵は霧散せずその場に倒れた。
「ほ…本体…よね?」
「霧散しないから…多分」
炎真はしばらく警戒してから追撃が無いことを十分に確認し、そして死ぬ気状態を解除した。
「うわああああ!!痛いぃぃぃい!!」
「ああ…ランボくん」
地面に座り込んでワーワー泣くランボくんを慌てて抱き上げる。
幸い怪我は無いようだけど…
「大丈夫?美香」
炎真も駆け寄ってきた。
「あたしは大丈夫…でも」
「一応地面に叩き付けられる寸前に僕が重力で受け止めてはおいたんだけど…」
「ランボくんどこが痛いの?」
「頭あああ!!!」
ああ…思いっきりわし掴まれてたもんね…
「よしよし。早く帰って頭冷やしましょ。
フゥ太くんとイーピンちゃんもありがとう」
「美香姉守れて良かった!」
「美香さん無事ウレシイ!」
「炎真も…本当にありがとう」
「ううん。僕も助かったよ」
炎真が戦闘の為に投げ捨てておいた自分の荷物を拾うと、気を失っている敵をそのままにあたし達は歩きだす。
「それにしても…この間と違って何処かのファミリーの能力者まであたしを狙ってくるなんて…
こんなのあたしの手に負えないわ」
「この間…?
もしかして襲われたの二回目なの?」
「え?うん…
この間は普通?の人達で…
偶然居合わせたディーノさんと雲雀くんが助けてくれたのよ」
「ツナくんは?ツナくんはその事知ってるの?」
「…………」
「……言ってないんだね。
ツナくんが知ってたら美香を放置なんてしないはずだもん。
ダメだよ美香。ちゃんとツナくんに言わないと」
「でも、ツナは…」
「ダメっ言わなきゃダメ!」
炎真が立ち止まりあたしの両肩を掴んで少し怒った顔をして目を合わせてきた。
フゥ太くんとイーピンちゃんも立ち止まり心配そうにあたしと炎真のやり取りを見ている。
「美香はツナくんを悲しませたいの?
いくらケンカしてるからって命の危機を黙ってちゃダメだよ!」
「だけどツナに負担かけちゃうわ。
ツナは今自分の事やティティの護衛でいっぱいいっぱいで…」
「ティティ?」
「あたしの友達…今回の騒動に巻き込まれて、狙われるようになったの。
それでツナ達が学校の行き帰りを護衛してるのよ」
「それでツナくん最近いつも帰り道が違うんだ…
でも確かに美香の友達も大切だけど美香だって大切なはずだよ。
ツナくんは…寧ろ誰よりも美香を守って大切にしたいはず。
どっちにしろランボだって怪我しちゃったからツナくんはもう誤魔化せないよ。
何があったのか絶対聞いてくるし、下手に嘘ついても見抜いてくるだろうから」
「………そう、ね」
あたしの腕の中には泣き疲れてスヤスヤ眠るランボくん。
「でも…お願い炎真。
今はツナと一緒にいたくないっ」
あたしは炎真の袖をきゅっと握り見上げる。
「もしあたしの護衛という話になったら、あたし炎真がいい!
ツナとは…今は距離を置きたいの…」
「美香…」
困ったような表情をする炎真。
あたしはそれを必死に見ないふりをし、ワガママを貫いたのだった。
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