アストライア・ノヴァ
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「最近美香が私と帰ってくれない理由、分かっちゃった〜」
ティティがそう言いながらニヤニヤとしている。
夕方の校門前。
ティティを迎えに来るツナ達を一緒に待っていた。
ツナ達が来る前より早くその場を立ち去ろうとしたのだが、直前にティティが急にいや〜な笑顔を浮かべたのだ。
「な…なに…」
「聞いたよ〜?弟くんとケンカしたんだって?
彼氏くんと上手くいってないからって弟くんに八つ当たりしちゃダメでしょ〜」
「(そのツナが彼氏なんだけどなぁ〜…)」
でもティティは知らないから…
「あはは…八つ当たりかどうかはともかく、ケンカしたのは本当…
しばらく顔を合わせたくなくて」
「どっちが悪いのか知らないけどさ
ちょっとは歩み寄ってあげたら?
弟くん美香のことすごく気にしてたよ?」
そう言いながら差し出してきたのはひとつの紙袋。
「え?」
「土曜日美香はバイトで遊びに来れなかったでしょ。
その時のお土産♡
弟くんはもちろんその時集まった全員で選んだんだよ?
ケンカしてるから自分は渡せないって弟くんに言われたから私が渡す事になっちゃった。
京子ちゃんもハルちゃんも美香に会いたがってたし、寂しがってたし?
バイトが楽しいのも良いけど、たまには彼女達にも構ってあげなって〜」
「ティティ…」
「一緒に居たの私だったのに妬いちゃうくらいみんな美香のこと話してたんだからねっ」
と、ティティがウインクをする。
彼女は元々とても整った容姿をしている。
白い肌にパッチリとした大きな目。男子だけでなく女子すら認め、羨む美少女。
そんな彼女のウインクは、まるでアイドルのように綺麗に決まっていて、惚れ惚れするほど様になっていた。
「ありがとう…
うん。お土産のお礼もあるし今日京子ちゃん達に連絡してみる」
「それがいいよ〜」
そこへ「ティティさん!」とツナがやって来た。
今日は獄寺くんも山本くんもおらず、一人のようだった。
一緒にいたあたしに気付くとツナは気まずそうに顔を強張らせ
「ぁ…美香…」
「ツナ…」
「……………」
「……………」
お互いに気まずい。
やっぱり、あたしも今は彼を顔を合わせたくなかった。
「…お土産…ありがとう…」
「え…あ、うん…」
「じゃあ…あたし…」
「えっ…美香…!」
そこにあたしにとってはタイミング良く、救世主のようにすら思える声が聞こえた。
「あっ美香さん。今から帰りかい?」
秋元くんだった。
「秋元くん」
「一緒に帰りたいけど帰り道反対方向だったね。
そうだ。この前美香さんのバイト先で買ったケーキすっごく美味しかったよ!
また美香さんがバイトしてる時に買いに行っても良いかな?
お昼ご飯また奢ってあげるよ」
「良かった。あのケーキ店長のイチオシなの。
店長に伝えておくわね。
それと、気持ちは嬉しいし勿論何度だって買いに来てもらっても構わないけど
お昼ご飯くらい自分で出すわ。やっぱり悪いもの」
「そう?気にしなくて良いのに。
美香さん色々頑張ってるみたいだから力になりたくて」
「ありがとう。
そうだわ。またあの公園で一緒に話さない?
こっそり次の限定メニューとか密かに人気のケーキとか教えてあげる」
「ほんと?是非聞かせてよ!
じゃあ一緒に公園まで行こっか」
「うん!」
あたしはティティに振り返ると
「じゃあまたねティティ」
「うん。また明日ね〜」
「…ツナも、家でね」
「………………」
「あれ、綱吉くんもいたんだ。
じゃあね綱吉くん。お姉さん少し借りるね」
「え……あ………」
そしてあたしと秋元くんは一緒に並んで歩き始めた。
「まさか美香…
彼氏くんと上手くいってないから他に好きな人ができちゃったとか…そんなオチ?
大人しい顔してなかなかやるじゃん。隅に置けないなぁあの子」
「っ…彼氏がいるのに…!
他に好きな人なんて出来るものなんですか?」
「ん?弟くんもしかして恋愛したことない?
恋人がコロコロ変わるなんて割と不思議じゃないよ〜。
私の周りの同級生だって彼氏変わった〜だの、彼女変わった〜だの。
そんなの頻繁に聞こえてくるよ〜」
「そん、な………」
「寧ろ学生時代からずっと続く関係の方が稀だって」
「でも…でもっオレ、知ってます!
何百年経っても変わらずお互いを想い合い、愛し合っていた人達を!」
「…恋愛物の漫画によくありそうだね。その設定」
「…………」
おばあちゃんとⅠ世のような関係に、あたしとツナはなれないのかもしれない。
そんな事をあたしはこの頃から薄っすらと考え始めていた。
秋元くんとの仲もまだぎこちなかった知り合いというものから、本格的に『友達』へと変わっていき
途中のコンビニに寄って好きな飲み物やお菓子を買っていつもの公園で喋りながら食べる事にした。
ツナとだってそんな事した事ない。
一緒に帰ることはあっても、寄り道なんて殆どせず
いつも真っ直ぐ沢田家に帰っていたから。
獄寺くんと山本くんと三人で帰る時は、時々ゲームセンターに寄ったりと遊んで帰っていたみたいなのに。
あたしはやっぱり…ツナの恋人にはなれないのかも…
「美香さんどうしたの?ぼーっとして」
秋元くんに声をかけられハッとした。
コンビニで飲み物を選んでいた最中だったのを思い出し、キョトンとしている彼を見てあたしは慌てて
「ううんっなんでもないの。
ちょっと考え事してたの」
「…彼氏さんのこと?」
「……まぁ…」
「話し聞くよ。いっぱい僕に愚痴っていいからね」
「…ありがとう」
細かな気遣いに申し訳なく思うが嬉しくて
そして頼もしく思う彼の言葉にあたしは自然と笑みが溢れる。
「あ。これすっごく美味しいジュースなんだ。
美香さんも飲んでみる?」
目の前の冷蔵庫から彼が取り出したのは一本の炭酸ジュース。
この間奢ってくれた物とは違う飲み物だが、ラベルが似ているから同じメーカーのジュースなのかもしれない。
「(あ…炭酸は…)」
「また僕が奢ってあげるよ」
「え…悪いわ。
それにあたし、炭酸はあまり沢山飲めないの」
「そうなのかい?なら半分ずつ飲もうよ」
半分なら…頑張れば。
そう思って頷く直前
「そいつは炭酸が飲めねぇんだよ。
飲むなら一人で飲みやがれ」
聞き慣れた声が後ろから聞こえあたしは驚いて振り返る。
そこにはあたしと秋元くんを睨みながらコンビニのエプロンを制服の上から身につけた獄寺くんが立っていた。
「獄寺くん…!?」
「え…知り合い?」
「ツナの…友達」
「ああ、綱吉くんの」
「テメェ如きが初代の名前を気安く呼んでんじゃねぇ!」
「え…?」
事情を知らない秋元くんは当然困惑する。
これ以上獄寺くんがヒートアップすると大変な事になりそうで、あたしは慌てて
「そ…そういえばここのコンビニでバイトしてるんだったわね獄寺くん」
「大体オメーもなんだ!」
と、話題を変えようとするあたしの言葉を無視して怒りの矛先を向けた。
「最近やたらそいつと一緒にいるじゃねぇか。
あの方がどれだけ傷付いてんのか分かってんのか!」
どうやらツナと付き合っている事は特定の人以外秘密である事をちゃんと覚えてて、秘密を守ってくれているようだ。
とりあえずあたしはホッとしてから
「誤解しないで。秋元くんとはただの友達で…
色々相談に乗ってもらってただけなのよ」
「それにしては随分親しそうじゃねぇか。
まさかまた勝手にあの方から離れようなんて考えてねぇだろうな?
あの方を悲しませる奴はたとえお前でも許さねぇぞ!」
「…………」
黙り込むあたし。
けれどそんなあたしの前に秋元くんは立って
「よく分からないけど…『あの方』っていうのが美香さんの彼氏の事だっていうのは分かった。
彼氏さんを悲しませるなって言うなら、彼女である美香さんを苦しませ…悲しませるのは良いのかい?」
「っ秋元くん…!?」
「なんだテメェは。今そいつと話してんだからすっこんでろ」
「美香さんはずっと悩んでるんだ!
彼氏さんとどうすれば仲良く出来るのか。どうしたら愛してもらえるのか…
僕や友達からの助言を色々試すけれど良い結果は出なくて。その度に落ち込んで…!
そんな思いをしてるってきみも彼氏さんも知らないだろう!」
「っ…」
「秋元くん…!」
「彼氏さんの事を思うのも大切だけど
美香さんの事も少しは気にかけてやってよ!」
「秋元くんもういいのっもう、いいから…!
ありがとう。ほら…早く行こう?」
彼が持っていたジュースを冷蔵庫の棚に戻すと秋元くんの背をグイグイと押した。
「ちょ…待ちやがれ!まだ話は」
「獄寺くん。あのね」
引き止められあたしは獄寺くんに振り返ると
「あたしは今…彼の気持ちが分からないの。
愛されてると、愛してくれてると信じたいのに…信じる事がどうしても出来ない」
「な…あの方はお前を愛してるに決まってるだろ!」
「なら、どうして手を繋いでくれないの?
どうして抱きしめてくれないの?キスもしてくれない…!
理由を聞いても恥ずかしいからって何もしてくれない。させてくれない!
…分からない。彼の気持ちが。
だから離れるの。お互いに頭が冷えるまで…」
そう言い残してあたし達はコンビニから何も買う事なく出ていった。
そしてその日は結局あたしの気が乗らなくなって公園にも行かず秋元くんと別れることにした。
…そういえば獄寺くん。
どうしてあたしが炭酸を飲めない事を知ってたんだろう?
ツナ以外に話した事ないはずなのに。
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