アストライア・ノヴァ
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「…………ん…」
霞む視界でぼんやりと目に映ったのは低い天井と蛍光灯。
「目が覚めたか?」
男の声にあたしはまだ覚醒しきってないまま其方を向いた。
「え……」
そこにいたのは心配そうにあたしを見下ろしているディーノさん。
奥の執務机には興味なさそうに書類に目を通している雲雀くんが座っていた。
辺りをキョロキョロと見渡すと、どうやらここは並盛中の応接室のようだった。
その応接室のソファにあたしは寝かせられディーノさんの上着を掛けられていた。
「あれ…あたし…」
「美香、襲われてただろ」
ゆっくりと体を起こすあたしをディーノさんが優しく支えてくれながらそう言った。
あたしはハッとして彼を見ると
「そう、です。でも…」
「安心しろ。あいつらはオレと恭弥が追い払った。
美香はキャバッローネファミリーのボスであるオレと繋がりがあると知った途端逃げて行きやがったんだ。
睨みもちょっときかせてある。だから、今後は下手に手出ししてこないと思うぜ」
それを聞きホッとする。
「助けてくれたんですね。ありがとうございます…
雲雀くんも、ありがとう」
「相変わらずの生き餌っぷりだね。君」
まだあたしを餌扱いしてるのねこの人…
「でも…ディーノさんいつ日本に…」
「並盛に着いたのはついさっきだ。
ボンゴレは今内部分裂が始まって、内部抗争直前まできている。
同盟ファミリーすら現ボンゴレの解体に賛成したり反対したりぐっちゃぐちゃのひっちゃかめっちゃか状態だ。
…ツナが心配でな。大丈夫だとは思うが…
オレはツナの味方だから、様子を見に来て力になれる事があれば教えてくれって伝えに来たんだ」
わざわざツナの為に…
やっぱりディーノさんは頼もしくて、優しい人だ。
「その途中でついでに恭弥の様子も見に来たんだが、顔を見せた途端殴り掛かられてな…」
「決着がまだついてないからね。
逃げたあなたが悪いんでしょ」
「んな!まだ言ってんのか!?
決着ならついただろ!」
「ついてない」
「たくっも〜〜〜〜!
しょーがねぇ奴だな恭弥は!!
……て、こんな感じで追いかけ回されててな」
「ふふっ」
容易に想像出来て思わず笑うあたし。
「そんな時に銃声が聞こえてな。
辺りを警戒してたら次に悲鳴が聞こえた。
その声が美香だと分かって慌てて駆け付けたんだよ。
追い払った後は怪我の治療を優先して此処に連れて来たんだ」
「そうだったんですか…」
あたしの最後のがむしゃらの悲鳴、無駄では無かったようでホッとした。
「ごめんな。撃たれる前に助けてあげられなくて。
痛くて怖かっただろ…?」
ディーノさんが申し訳なさそうに顔を悲しそうに歪め、優しくあたしの頭を撫でてくれる。
「大丈夫です。ありがとうございますディーノさん」
「そうか?本当に強いな美香は。
怪我ならロマーリオが処置してる。
まぁ美香なら大丈夫だと思うがあまり無茶な動きをしたら傷が開くからな」
「ありがとうございますロマーリオさん」
「その程度で済んで良かったぜ」
と、応接室の出入口に立っていたロマーリオさんが笑った。
「明日もバイトなんですけど、接客業だから立ちっぱなしで…
それくらいなら大丈夫ですかね?」
「そっか、バイト始めたって言ってたな。
んー…まぁ頻繁に走り回ったり長時間歩き回らないなら大丈夫じゃねぇかな。
つかオレなら休ませるけどな…休めないのか?」
「土日はお客さんが多いんです。だから一人でも欠員が出ると大変で…」
「そっか…大変だな接客業も。
無理すんなよ。痛むような休ませてもらえ。な?」
「分かりました」
ディーノさんがあたしの頭をポンポンと叩いてから屈ませていた体を起こして立ち上がると
「さて、んじゃツナん家行くか。送るぜ美香」
「あ…ありがとうございます」
「足も怪我してるし表に車を待たせてんだ。乗ってけよ」
「何から何まで…」
「んじゃな恭弥。またな!」
「また逃げる気かい」
「ちょっ…今は勘弁しろ!怪我人がいるんだぞっ」
つまらなさそうに「フン」と言ってそっぽを向く雲雀くん。
「雲雀くんもありがとう。またね」
「さっさと行きなよ」
余程ディーノさんとの戦いを中断されたのが悔しいらしい。
ツンとして拗ねてしまった。
「(今度差し入れも兼ねてお礼持って行こう)」
雲雀くんが好きそうなお菓子と…ヒバードとロール用の食べ物も。
そう考えながら、荷物はロマーリオさんが持ってくれて、あたし自身はディーノさんに抱き抱えられ応接室を後にしたのだった。
校舎から出て校門前に停められている車に辿り着くと待機していたらしいディーノさんの部下の方が後部座席のドアを開けた。
その開いた後部座席にディーノさんがそっとあたしを座らせるとロマーリオさんが差し出してくれた荷物を受け取る。
自分はわざわざ隣のシートのドアの前に移動しあたしの隣に座った。
待機していた部下の方が後部座席両方のドアを閉めると運転席に移動し、ロマーリオさんは助手席に座ってドアを閉めた。
運転手の方も準備を終わらせると程なくして車は発進した。
「…あの、ディーノさん」
「ん?」
「あたしが襲われたこと…ツナには黙ってて下さい」
「え…なんでだ?」
「ツナは…今色々大変だから、あたしの事まで心配かけたくないんです。
去年なんて本当に色々ありましたし
やっと終わったのに、また…なんて思われたくなくて」
ーー美香の指輪に振り回されるし、ボンゴレの秘宝にも振り回されるし。
オレだって散々だったよ!
イヤでたまらなかったよ!!
「…………」
ズキッと胸が傷んだ。
でも、散々迷惑かけたのは本当だから…
「ツナがそんな事思うかぁ?
オレなら恋人が自分の知らない内に襲われてたなんて何処かのタイミングで知ったら、それこそ気付いてやれなかったって自分を責めるし…心配するけどな。
…でも美香がそこまで言うなら、黙っておくよ」
「ありがとうございます…」
「何かあったのか?ツナと」
「………ちょっと…ケンカしただけです」
「…そっか。何かあれば話し聞くぜ。
心配すんなって。なんだかんだツナは美香の事が大好きなんだ。
まだ子供だから、色々不器用なだけだって」
「……そう、ですね」
本当にそうかしら?
本当に好きなら…手を繋ぐだけで『恥ずかしい』なんて思うかしら?
腕を組むのも 手を繋ぐのも拒絶するかしら?
結友はそんな事なかった。
「(元カレと比べるなんてナンセンスだわ)」
結友はもっと積極的に愛してくれた。
「(結友とツナは違う。比べるなんて二人に失礼よ)」
でも 恋人になって幸せを感じられたのはどっち?
「っ……………」
ああ 頭の中が
糸が絡まったみたいで…
目眩がする。
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