アストライア・ノヴァ
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「お疲れ様でしたー」
バイトが終わり、あたしは裏口から店を出た。
そして表通りにやってきて
「……………」
当然だが迎えに来ていないツナに疲労もあってため息をつく。
「(…なんだか、帰りたくない)」
もう薄暗いけど遠回りをして帰りたくてあたしは帰り道とは反対方向に歩きだしていた。
ツナに会うのが気まずい。
どうしてこうなっちゃったんだろう。
去年まで…あんなに仲良しだったのに。
気が付くとあたしは並盛中学校の前に立っていた。
休みの夜だから、いつもは生徒で賑わう学校も今は少し怖さを感じるくらい静まり返っている。
去年まで何かと縁があった並盛中学校。
よく遅刻してお弁当を忘れたツナに届けに行ったし
頭の怪我の治療でこっそりシャマルさんの所に行ったり…リング争奪戦で訪れたりもした。
夜遅くまで野球の練習をする山本くんと薫くんにツナと一緒に差し入れに行ったり
なんだかんだ並盛中学校と繋がっていて、同時にツナ達とも繋がっていた。
でも今は……
「……………」
暗い並盛中学校を見つめながらきゅっと唇を噛む。
卒業して並盛高校ではなくボクシングが強い高校に行った了平くん。
でも彼はツナの守護者で、ボンゴレファミリーという繋がりがある。
何より本人が割と頻繁にツナ達の元に訪れている。
だけど…あたしは何もない。
去年までは『初代ボンゴレの秘宝』とその鍵である『ハナニラの指輪』という物を持っていた故に、否応なしに巻き込まれ関係を持たされたけど
今はもう秘宝は解明され鍵も無くなった。
つまりあたしは、もうボンゴレとは無関係の人間になったのだ。
服の中にある山桜の指輪を服の上からぎゅっと握る。
そう…あたしはもう関係ない。
ツナだって言ってた。
『もう秘宝の事で危ない目に遭うことは無くなったんだね』と、嬉しそうに。
危ない目に遭わなくなるのは確かに嬉しい。
けど…
『秘宝』という糸で繋がっていたツナ達との縁が、まるで切れてしまったようだ。
あたしはもしかして…この指輪がボンゴレと関係してたからツナ達と繋がれていたのだろうか?
だから、その糸が無くなってしまったのだから…あたしは……
「っ……」
くらりと目眩がする。
頭を抱え、あたしは並盛中学校に背を向けた。
「…帰ろう…」
虚しい気持ちに何も感じてないと嘘をつき、とぼとぼと歩きだす。
「(こんな事なら奈々さんにご飯要らないって連絡しておくべきだったわ。
そうしたら…適当に食べて帰って、後は帰ってお風呂に入って寝るだけで済むのに)」
…明日はそうしようかな。
その時だった。
あたしの真横に黒い車が横付けされた。
それを確認し、ドアが開く前にあたしは反射で走りだした。
「あっ…待て!」
案の定中から出て来た人は知らないスーツの男。
後部座席の人だけでなく運転手も出て来て二人であたしを追い掛けてきた。
去年一年間で散々味わった拐われるという経験。
そのせいで不審なものに対しては反射で体が動くようになっていた。
「(なんとか商店街に…!
人が多い所に逃げ込めば、あたしの足なら撒ける…!)」
けれど悲しいかな商店街はまだ遠く、あたしに不利な無人の直進が続くのみ。
このままでは足の長さで追い付かれてしまう!
埒が明かないとあたしは近くの竹藪に飛び込んだ。
商店街とは離れるけど確かこの竹藪は帰り道の途中にある無人神社に繋がってたはず。
竹藪の暗さと地の利を活かせばまだ逃げ切れる!
しかし、あたしは相手を甘く見ていた。
パン!
「いっ…」
竹藪に響く発砲音が聞こえたと思うと足に激痛が走った。
思わずその場に座り込み、ズキズキと痛む足を見る。
「っ……」
血が流れていた。
貫通してるというよりも掠めている。おそらくわざとだ。
それでも逃げようと激痛を我慢して立ち上がるが
「ああ!」
「よし。確保だ。連れて行くぞ」
後ろから髪を掴まれ、片腕を背に無理やり回された。
「いや!離して!離して!!」
「大人しくしろ」
「一体なんなのよ!
せめて理由を教えなさいよ!」
「今ボンゴレはボンゴレ10代目のせいで内部分裂を始めている。
あの強大な組織ボンゴレでも混乱状態ならボンゴレの秘宝を奪い、それを利用して崩壊させる事が出来る!
我々中小規模の組織にはまたとない機会だ。
利用させてもらうぞ小娘」
「だから!ボンゴレの秘宝なんて知らないってば!
大体解明されたって聞いたわよ!?」
「初代ボンゴレが婚約者の為に用意した婚約指輪だった。
とかいうふざけた情報を信じろと?
あんなものフェイクに決まっている!
あの歴代最強と言われた初代ボンゴレが、そんな物を後悔として遺すものか!
間違いなく秘宝は兵器に決まっている!!」
何も知らないくせにっ
この山桜の指輪にどんな想いと悲しい出来事があったのか…全然知らないくせに!!
「車に乗れ!」
このままでは連れていかれてしまう。
ツナはいない。
あたしが竹藪に入ったばかりに周囲に人気はなく、他に助けてくれそうな人はいない。
それでもあたしは諦めず、とにかく叫んだ。
「いやーーーーーーー!!
誰か!いやぁ!助けて!!
いやぁぁぁ!いやあああああ!!!」
「やかましい!」
「おいっ早く黙らせろ!」
「寝てろ小娘!」
「いや……かっ」
後ろ首に強い衝撃を感じた。
途端にぐらっと視界が揺らぎ、全身の力が抜けてぐったりとする。
遠のく意識の向こうで男達が「よし」「早く乗せろ」と会話している様子が聞き取れた。
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