アストライア・ノヴァ
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「(言葉にしなくちゃ伝わらない。
そうよね…言われないと分からない事なんてあたしにもあるもの)」
あたしはどこかでツナに甘えていた。
いつか気付いてくれるって思ってた。
優しい人だから人の感情に敏感な彼。
だからこれまでの戦いの中でも、彼は敵であった人に対しても寄り添っていた。
理解出来ない事でも、決して放棄せず彼なりに理解しようとしていた。
そんな彼だからあたしの気持ちにいつか気付いてくれるって甘えていたんだわ。
超直感は持っているけど、ツナは基本的にまだ子供である中学生だもの。
何でも出来る万能な人だなんて思っちゃダメ。
「(言うぞ…あたし、言うわよ。
ツナ、寂しいって言うんだから…!)」
意を決してあたしはツナの部屋のドアをノックした。
中からツナが「はい?」と返事をしてくれる。
「ツナ…あたし。入っていい?」
「……うん」
ドアを開けるとベッドの上でツナは漫画を読んでいた。
幸いリボーンくんは下の階でビアンキさんと一緒に過ごしている。
「なに?」
あたしがドアを閉めるとツナは一言そう言ってきた。
「あのね。ツナ」
「うん」
「………その…寂しい、な……って」
「…………」
「ツナに…構ってほしくて」
「…………っ」
「……ツナ?」
ツナの顔が何故か怒った表情に変わっていた。
「……美香なら、別にオレじゃなくても構ってもらえる人いるだろ」
「……え?」
「炭酸禁止って…言ったのに」
「あ…」
そう言えば、秋元くんが買ってくれたジュース
結局あの場で飲みきれなくて飲んだ量も一口だけで勿体なかったから持って帰ったんだった。
一応ツナにバレないよう隠して自分の部屋に持ち込んだんだけど…
夜の今になっても全く減らせないから、申し訳ないけど夜中にこっそり残りを台所の流し台に捨てる気でいた。
そんな長時間持ってたから何処かのタイミングでツナにバレたんだわ。
無言でいるとツナは漫画を閉じ、自分の横に置くとあたしを見て
「美香さ 結構元カレに未練があるよな」
「…………」
「秋元先輩が元の世界だと元カレだからって
その影を重ねてるんじゃないのか?」
ギクリとする。
ツナはあたしのそんな僅かな動揺は見逃さなかった。
…あたしの寂しい気持ちには気付いてくれないのに。
「今美香の彼氏は誰なんだよ…!
オレ、美香の気持ちが分からないよ!
何かと元カレがチラついて…オレがどれだけ複雑だったか知らないだろ!」
「そ…そんなに結友の事言ってたかしら?
ごめん。そんなつもりじゃ」
「『結友』って……っ」
「未練があるのは…確かにそう。
だって結友とは別にケンカ別れでも、お互いに不満があって別れたわけでもないもの。
……あたしのせいで彼が怖がっただけ。
結友は普通の人だから不可解な現象を怖がるなんて当たり前よ。
守ってくれなかったなんて責められないわ。だって結友は戦えないし、特別な力を持ってるわけでもなかったんだから。
だから…あたしから距離を置こうと離れるのは当然なのよ」
「オレだって怖かったよ!つーか、今でも怖いよ!
よく分からないマフィアに命を狙われるなんて!
美香の指輪に振り回されるし、ボンゴレの秘宝にも振り回されるし。
オレだって散々だったよ!
イヤでたまらなかったよ!!」
「っ………」
「それでもオレは美香を……っあ…」
「………ごめん…ごめんね、ツナ。
本当は…そんな風に思ってたのね」
ポロポロと涙が零れた。
止めようと意識しても止まるわけがなく、あたしは両手で拭い
「そうよね…ごめんね。ツナは、優しいから…っ」
「ちが…!
ごめんっ言いすぎた…!
そうじゃなくて、オレは…!」
「もういいの。もういいのよ、ツナ」
「良くない!オレは…!」
「ごめん。あたし」
「っ待てって!」
ツナの部屋を出ようとするけど、そんなあたしの腕をベッドから立ち上がり追い掛けてきた彼が掴む。
「話しを聞けって!オレはただっ美香にオレを」
「ごめんツナ。今はむり。聞きたくないの…!離して…離して…!」
「美香……
っわ…分かった。なら明日!明日一緒に出掛けようよ!
明日なら学校休みだし…」
「……無理よ。あたし明日は朝からバイトだもの」
「ぁ……
……そういえば、オレも明日ティティさんと約束があるんだった…
買い物に行きたいみたいだから獄寺くんと山本も一緒に護衛で付き添うんだった」
「…………」
「…ごめん。
じゃあ、日曜日とか」
「…バイト」
「……そっか…」
ツナの手が諦めたように離れた。
「美香…オレは…オレは、ただ」
これ以上ツナの言葉を聞きたくなくて部屋から出る。
バタンとドアを閉めると自分の部屋に駆け込んで、ドアの鍵をかけるとベッドに沈み無言で泣いた。
「美香にオレを見て欲しかった。それだけなのに…!」
ドアを拳で殴り、悔しそうにそうツナが呟いているなんて
あたしは知る由もなく…知る余裕もなかった。
「おはよう美香ちゃん。
今日は朝からバイト?」
奈々さんの優しい笑顔で朝を迎えた。
「おはようございます。
はい。今日は朝から夜までです」
「受験勉強もあるのに偉いわ〜
でも、無理しないでね?
生活費出してくれるのはありがたいけど
学生の内に沢山楽しい事もしてほしいの。
大人になったらみんな働くんだからね」
「ありがとうございます。
でも、バイトも楽しいです。
時々奈々さんや京子ちゃん、ハルちゃん達が買い物に来てくれたりするから毎日どんなお客さんが来るのか楽しみで。
もちろんイヤな事や大変な事もありますけど…」
「そう。美香ちゃんが楽しいなら良かったわ♪」
そう言いながら奈々さんがあたしの前に焼いてくれたトーストを置いてくれた。
「美香ちゃん卵は目玉焼きとオムレツ、どっちが良い?」
「じゃあ…オムレツでお願いします」
「はーい♪」
慣れた様子でフライパンでちゃちゃっとオムレツを作る。
あっという間に完成したオムレツにケチャップをかけて、可愛らしいお皿に盛り付けた。
その間にあたしは自分でグラスに牛乳を注いで待っておりオムレツが目の前に置かれると手を合わせ
「美味しそう…
いただきます」
「はい。どーぞ!」
カリカリに焼けたトーストを手に取って、目の前に置かれてあるジャムをスプーンで掬って塗り始める。
奈々さんは台所に立ってまだ寝ているツナ達の分の朝食を作っていた。
「…ねぇ美香ちゃん」
「はい?」
トーストを食べながら奈々さんを見る。
「ツっくんと最近どうなの?」
「……え?」
「二人の問題だから…あまり色々聞くような事したくないんだけど
ツっくんと仲良く出来ているのか心配しちゃって。
ほら、ツナって美香ちゃんと比べたらまだ子供でしょう?
女の子の気持ちを把握したり、理解するって難しいと思うのよ。
私だって夫に対して時々『人の気も知らないで!』って思う事あるもの。
男の人ってみんなそうなんだから。
でも私は夫にそれをガツン!と言っちゃうけど
美香ちゃんは優しいから…ツナに気を使って抱え込んでないか気になっちゃって。
何か悩み事があるなら、いつでも相談に乗るからねっ」
優しい奈々さん。
あたしとツナの間に出来た壁に気付いているのだろう。
あたしもツナもまだ子供だから恋愛というものが、人を愛するというものがどういうものか分かっていない。
実際、ツナに限らずあたしもよく分かっていない。
ただ漠然と好きだから一緒にいる。それだけ。
最初はそれで良いのかもしれない。
でも…あたしとツナが目指したいのはもっと先のもの。
Ⅰ世とおばあちゃんのような『生まれ変わってもまた会いたい』と思える関係だ。
だけどその関係になるにはどうすれば良いのか。
それはまだ全く分かっていない。
「…そうですね。確かにちょっとケンカはしました。
でも、大丈夫です。きっといつものようにすぐにまた元通りになりますよ」
これ以上奈々さんを心配させたくなくてあたしはニコリと笑いかけた。
奈々さんは微笑みながらもまだ心配そうに
「そう?それなら良いんだけど…
心配しないでね。ツナったら不器用なだけで、本当は美香ちゃんのこと大好きなのよ。
お買い物のお手伝いに来た時なんか一度は絶対美香ちゃんの名前が出るのよ?
『美香の好きなお菓子買っていこうよ』とか。ふふっ♪」
「っ………」
あたしの知らないツナの愛。
愛しさで胸が痛いくらい締め付けられる。
頬が熱くて…
「えっと…そう、なんですね。
あはは、知りませんでした」
ああ、分からない。
あたしもツナの気持ちが分からない。
素っ気ないと思っている彼が、あたしの知らない所で…見えない所でそんな風に愛してくれている。
でも手を繋ぐことも、抱き締めることも、キスも出来ない…させてくれない。してくれない。
「(ツナ…)」
貴方の…本当の気持ちが知りたい。
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