アストライア・ノヴァ
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並盛中学三年になって数ヶ月。
春の気配が薄れほんの少しだけ暖かさが時々暑いと感じるようになった頃。
沢田綱吉は相変わらずダメライフを送っていた。
「ダメツナじゃねぇか。
今日は獄寺と一緒じゃねぇんだな」
下校中、少し用事があった綱吉はいつもの帰り道ではない道を通っていた。
その結果綱吉は不幸にもガラの悪い男の不良二人に絡まれる事になったのだ。
制服は着ているが殆ど着崩しており原型が無い。
辛うじて、ズボンの色と近辺に住んでいる故にある心当たりで並盛高校という事が分かる。
「いえっあの!獄寺くんは今日はバイトで…
って、そうじゃなくて!
ぶつかってすみませんでした!!だから許して下さいお願いします!!」
「まぁそう言うなゆっくりしてけよ」
「獄寺もいねぇ事だしじっくり可愛がってやるよ」
「ヒィィ!お助け〜!!」
そして始まる理不尽なリンチ。
自分の事になると死ぬ気になれない綱吉はいつも通りその暴力をされるがままに受け入れていた。
その時だった。
「お巡りさんこっちです!」
という叫び声が辺りに響いた。
地面に蹲る綱吉を笑いながら足蹴にしていた不良二人はハッとして辺りを見回すが、他に人は見当たらない。
「なんだぁ?」
「早く!こっちですお巡りさん!!
子供が殴られています!」
やはり声は聞こえる。それも大きな声量で。
その声で周辺の住人が様子を見ようと次々家の窓を開け始め、不良二人はあっという間に大勢の目に晒された。
気まずくなった不良二人は綱吉への暴力を止めると
「チッ…誰か知らねぇけど面倒な事しやがって」
「サツに見つかる前に行こうぜ」
こうして二人はそそくさと足早にその場を去って行った。
「いっ…てて……
誰か分かんないけど助かったー…!」
いつもよりは被害は少ないものの痛みはある。
よろよろと体を起こす、そんな綱吉の前に人影が現れた。
それに気付いて顔を上げると、そこには一人の若い男の人が立っていて
優しそうに微笑みながら綱吉に手を差し出している。
「大丈夫かい?」
「あっ……ありがとう、ございます」
ありがたく手を借りて綱吉は立ち上がった。
そして改めて相手をよく見ると、並盛高校の制服を着ている事に気付いた。
くせっ毛のある深みある茶髪。
ネコ目をした平凡な容姿だが、とても穏やかな雰囲気で優しそうな表情に見える。
多少着崩している制服も彼にはよく似合っていた。
「その制服…並盛高校の方ですか?」
「うん。僕は並盛高校三年の
「高三…!?
あっオレは並盛中学三年の沢田綱吉です」
「そっか。お互い受験生なんだね。
…すぐ助けられなくてごめん。僕ケンカとか出来ないから、あれしか方法が思いつかなくて」
「いえっそんな!十分助かりましたっ
それより警察が来るんですよね!?」
「ううん 来ないよ。お巡りさんなんて嘘なんだ。
居ないけど、呼んだフリして叫んだ方がアイツらすぐ逃げてくれるかなって思って」
「そ…そうだったんですか…」
「良かったら途中まで一緒に帰らないかい?
一人より二人の方が絡まれにくいと思うから」
「えっ…あ、お願いします!」
一緒に歩いた距離と時間は決して長くはなかった。
けれど結友の穏やかな雰囲気と、人懐っこい性格なのか積極的に話題を振ってきてくれるおかげで話題探しに苦労する事もなく、綱吉と結友はあっという間に打ち解けた。
そうして道の分かれ道で二人は分かれる事に気付いた結友は「ちょっと待ってて」と綱吉に言うと少し離れた場所にある自販機へ向かった。
そして何かを買うとすぐに戻ってきて、手に持っていた物を綱吉に差し出す。
それは炭酸ジュースだった。
「え…」
「受験勉強頑張ってね」
「あっ…」
「……炭酸ダメだったかな?」
「いえっそんな事ないです!
ありがとうございます秋元先輩!」
相手の意図にやっと気付いた綱吉が礼を言いながらその缶を受け取った。
「今日はありがとうございました」
「どういたしまして。
また会えたら一緒に帰ろう」
「はいっ秋元先輩も勉強頑張って下さい!」
「ありがとうっじゃあね」
手を振ってから背を向け、帰路を歩く結友の背を見送る綱吉。
その姿が見えなくなるまで見送ったあと綱吉は一人で
「すっごく良い人だったなぁ…
ああいう先輩がいるなら、オレも並高がいいな…
つか、オレの成績じゃそこしか行けないんだけど。
……イヤそこすら難しいんだった…」
自分で言ってため息をつく。
そして綱吉は缶ジュース片手にとぼとぼと自分の家に向かったのだった。
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