継承式編
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「エンマ。力を貸してほしい」
夜にエンマがいる並盛民宿に綱吉が来て、エンマにそう言った。
出迎えたエンマは開口早々にそう言った綱吉をまずは室内に招き入れ、誰もいない部屋に案内する。
「もちろんだよツナくん。僕は何をしたらいいの?」
部屋に入るとエンマを具体的な内容を聞くこともせず即座にそう答えた。
「美香の指輪に一緒に炎を注入してほしい」
「え?」
「今日美香の指輪に触れたんだ。
今まで大地の炎を知らなかったから気付けなかったんだけど、確かに美香の指輪から大地の炎も感じた」
「……やっぱり気の所為じゃなかったんだ…
あの指輪、美香とツナくん以外が触れると拒絶するって本当なの?」
「うん。同じ大空属性の炎を持つ人でも拒絶されたんだ」
「でも…僕は触れても拒絶されなかったんだ…」
「やっぱりエンマが初代シモンの子孫だから…かな…
その美香の指輪に込められたⅠ世と初代シモンの炎が弱まっていることに気付いたんだ。
多分あの炎は秘宝を開けるために必要な炎で、他の意図は無いとは思うんだけど…
それでもオレ、あの炎があったから美香やそれまでの先祖達は不可解な現象から何度も何度も助かってきたと思ってる!」
「……実際美香以外の血縁者は早々に亡くなってるみたいだしね…」
「だから、弱まってる炎にオレ達の炎を注入して再び強めてみよう!
もしかしたら…奇跡が起こってくれるかもしれない!」
「!」
「でも…これはリボーンが言ってたんだけど
美香の指輪はオレ達が持つリングと違って普通の指輪と比べて多少特殊ってぐらいで、基本的に普通らしいんだ。
だから、炎を注入する量と注入する際の威力を間違えると指輪が壊れてしまうかもしれない。
そうなると秘宝は二度と開けられなくなるし、美香を守ってくれるものが無くなってしまうかもしれない…」
「…………」
「それでもオレはやろうと思ってる。
…エンマは?これは大空と大地の炎が無ければ出来ない事なんだ!」
綱吉の強い目に見つめられ、炎真も手を拳にして決意すると
「……もちろんやるよ。いや、やらせてほしい!」
「エンマ…!」
「僕達で美香を助けよう。
そうすれば…やっと全部元通りに戻るんだ!」
「そうだ…やっと、やっと誰一人欠けてないいつもの日常に戻れるっ」
二人はガシッと手を握りあい、声を合わせた。
『やろう。二人で!』
「だからって夜に侵入するのーーーーーーー!?」
「やるなら早めの方がいいと思って」
「エンマって意外と大胆だね!?」
その日の夜、病院前に綱吉と炎真は来ていた。
面会時間はとうに過ぎ、表の玄関は施錠もされて入院患者の消灯時間も過ぎてる時間。
「でっでも!どうやって中に入るの!?」
「美香の部屋がある階、ナースステーションの近くにある患者さん達が寛ぐスペースの窓からだよ。
ジュリーが換気のためか常に開いてるのに気付いて『エンマなら飛んで入れるからいつでも夜に会いに行けるな』ってからかってきたんだ。
それを覚えてて…」
「でも、夜に開いてるとは…」
二人でコソコソと病院の敷地内を移動し、目的の場所がある窓を見上げる。
「……開いてるね。昼間と違って薄くだけど」
「ほ…本当だ」
「ナースステーションはなんとか横切ろう。
夜だし、昼間よりは人少ないと思う」
「そうだね…!」
「よしっ」
「行こう!」
二人は同時に両手と額に炎を灯し、地面から飛び上がる。
美香が眠る部屋は5階。無事に薄く開く窓まで辿り着くとこっそり壁に隠れて人がいないかを確認。
誰もいないと分かると綱吉が窓を静かに開けて、まずは炎真が侵入する。
続けて綱吉が侵入し、窓を最初の状態に戻して目立つ炎の光を消すために死ぬ気を解除した。
シン…と静かで薄暗い病院。
「ヒイィィ…!夜の病院こえー…!!」
「頑張ってよツナくん…!僕も怖いの我慢してるんだから…!!」
すぐ近くにはナースステーションがあった。
そこには看護師が一人だけいて、いつ横切ろうかカウンターの影に身を屈ませてタイミングを図っていると
運良くナースコールがなり看護師はそのコールした患者の元へ向かっていった。
「見回りの時間も気にしないと」
「とりあえずそれは部屋に着いてからだね…」
足早にナースステーションを通り過ぎ、美香の個室前に着くと素早く侵入する。
辿り着いたことに二人はホッと胸を撫で下ろしベッドに近付こうとすると足音が廊下から聞こえ二人は無言で慌てふためく。
そして炎真が指さしたのはトイレも付いているシャワールームで二人はそこに急いで、しかし静かに隠れてドアを閉めた。
そのタイミングで看護師が部屋のドアを開けて入ってきて、美香のベッドの近くで確認や書き物を済ませるとキョロキョロと他に問題がない事を確認してから部屋から出ていった。
綱吉と炎真は念の為数秒待ってからシャワールームから出る。
「行った…かな?」
「心臓に悪いよ〜もおお…!」
「でも、見回りが終わった直後で良かったねツナくん」
「そうだね。これでしばらくは大丈夫だ」
美香のベッドに近付き、ベッドを挟むようにして二人は立つ。
綱吉が首にかけられた指輪のチェーンを再び服の中から引っ張り出すとそれを首から外す。
指輪をチェーンから取り外し、美香の右手の中指にはめてあげるとその手を握った。
「エンマも」
「うん」
エンマもその手を綱吉の手ごと握る。
「いくよ!」
「うん!」
『せーの!』
ボッと大空の炎と大地の炎がそれぞれの指輪に灯り、それを美香の指輪に意識させる。
ハナニラの刻印が大空と大地の炎で光り輝いているように見えた。
綱吉と炎真は集中し、指輪に優しく…そしてゆっくりと徐々に炎を注入して指輪に宿る炎が少しずつ強まっていくのを確認しながら炎を灯し続ける。
集中のあまり二人は話す余裕もなかった。
そして綱吉が一定の炎の強さを感じると
「エンマ!止めて!」
「!!」
エンマは注入する炎を止め、綱吉も同時に炎を止める。
美香の指輪は無事だった。
心無しかまるで星のように刻印が光っているように見える。
だが、それだけで何も変化が起こるようには見えない。
「これで…良いのかな…」
「分からない…普通の指輪だから分かりやすい変化とか無いのかも…でも」
指輪がされてある美香の手を握る。
「炎は確かに強まってる。オレ達はちゃんと成功させてるよ…!」
「……良かった。やったねツナくん!」
「うん!あとは…奇跡が……」
「ん…」
『!?』
一斉に美香を見る。
美香はまだ固く瞼が閉じられているが、薄く口が開いていた。
綱吉は手を握る力を少しだけ込めて
「………美香?」
「…………」
「………美香、美香っ」
「…………ぁ…」
ゆっくりと美香の瞼が開かれた。
彼女はぼんやりと天井を眺めており
「………ここは…?」
「美香っ」
「病院だよっ美香…ずっと…眠ってて…っ」
「……ツナ…炎真………?」
綱吉はたまらず、手を離すと美香を抱きしめた。
炎真は驚き体を硬直させたが、出遅れてしまったのでそのまま二人を眺めることに。
「良かった…っ良かった!良かった!!」
綱吉は美香をきつくきつく抱きしめ、そのまま泣き始めた。
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