継承式編
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その後美香は9代目の船の中でも治療を受けた。
幸い了平の治療のお陰で一命を取り留める事は出来たのだが、9代目が手配した病院で綱吉達は医者から
「頭を強く打っていて昏睡状態となっています。
いつ目が覚めるのか分かりません」
という説明を受け、その場の全員が絶句した。
美香の病室は9代目の配慮で広い個室を割り当てられた。
9代目は綱吉に「入院費の心配はしなくていい。今回の戦いは私の責任でもあるのだからね」と言い残し、美香の見舞いを済ませると自身のホテルへと帰っていった。
明日にはイタリアに帰るのだという。
広い個室に美香が眠るベッドを前に綱吉と雲雀と骸のいないそのファミリー、そして炎真とそのファミリーが揃って綱吉と炎真だけ椅子に座って互いにこれまでの事の情報共有をした。
「………そっか。美香は急にツナくん達の前からいなくなったんだね。
そしていつの間にか美香のこと、美香との記憶を全て失っていた」
「エンマ達と知り合ってくれて良かった。今まで守ってくれてありがとう」
「僕達と知り合ったのは偶然なんだ。
僕が不良にいじめられていたのを美香が助けてくれて…行くところが無いって言ってたからお礼に一晩だけ僕達が暮らしてた民宿に泊まらせたんだ。
次の日には出て行っちゃったんだけど、行くあてを見つけられなかった美香が橋の下で野宿して
その結果寒さで風邪をひいてぐったりしてたのを僕がたまたま見つけて。
そのままシモンのみんなにも話して一緒に暮らそうって提案したんだよ。
本当に無茶する人だなって思ってた」
炎真の話を聞いた綱吉は頭を抱えた
「本当に無茶だ…無茶すぎるよ。こんな時期に女の子が一人で野宿なんて。
なんで急に…オレ達だって美香が何かに殺されかけてるって知ってたんだ。
知ってて一緒にいたのになんで離れていったんだ。
……そういえば、美香が言ってた。
『理由は言えないけど自分はひとつの所に長くいられない』って」
「え…」
「だから…オレとエンマが仲直りしたら、自分はエンマ達の元から離れる。
エンマの事、よろしくねって言ってたんだ」
「な…っ」
炎真だけでなくシモンの全員がそれぞれ短く声を上げた。
「そんな…イヤだよ!美香と離れるなんて!
まさか僕達の記憶もツナくん達みたいに消すつもりで…!?」
「………多分」
炎真は言葉を失い呆然とする。
そこへ綱吉のすぐ後ろに立っていた獄寺が
「…10代目」
「どうしたの?獄寺くん」
「今までの情報なんですが…美香の中にいる奴から聞いた情報もありますよね?」
「確かに…そうだね」
「僕のはちょっと判断が出来ないけど…」
「もしかしたら中の奴に操られてる可能性とかありませんか?
わざと傷付けるような事を言って混乱させたり、オレ達から遠ざけようとしたり。
美香を殺すのが目的なら有り得ない事はないはずですっ」
綱吉はまず獄寺の話を最後まで聞いてから、そして視線を床に落として
「オレは…美香の中にいる人は信じられると思うんだ」
「!?」
「どんな人なのか分からないし、少し話した程度でしかないけど
でもオレはあの人は信じられると思ってる。
なんていうか話し方とか凄く優しくて、暖かい感じがするんだ…
それに、伝言を預かった時のⅠ世の顔が…とても和やかだった。
だから、信じられるよ」
「10代目…」
「あ!…あくまでオレは。だけど…!」
「いえっ10代目がそう仰るのなら間違いありません!
すみません!オレの早とちりで!」
「いいよ!獄寺くんも美香の為に心配してくれありがとう」
「僕はツナくんみたいに超直感はないけど、僕も美香の中にいる人は優しくて良い人だと思ってる。
もしかしたら今も美香の中で無茶した事怒ってるかもしれないね」
「ハハ…オレもそんな気がする」
「…ねぇツナくん」
「なに?」
「美香が目を覚まして、体が回復したら一緒に怒ろうよ」
「え」
「どれだけ心配したか教えてあげないとダメだ。
好きだから、僕は怒るよ」
「……エンマ。
それに関してオレからちょっと提案があるんだ。
でもその前に…」
すぐ横で眠る美香を見て
「まずは…目を覚ましてくれないと…」
「オレの時みたいに白蘭が治してくれたらいいのにな…」
と、山本も眠る美香を見つめて言う。
「美香は未来に行ってないから白蘭の事は分からないし、白蘭も美香の事は分からない。
この時代の白蘭がどこにいるのかも分からない。
……本当に…目が覚めるのを待つしかないのかな…?」
綱吉が手を伸ばして美香の頬を撫でた。
「何か方法があるはずだ…
絶対に、目を覚まさせてやる…!」
夕方の病室に綱吉は一人残っていた。
情報共有も終わり両ファミリー解散となった後も綱吉は一人部屋に残る事を伝えた。
炎真はそれに何かを察したようで、何も追求せずファミリー達と一緒に帰る事にした。
綱吉のファミリー達も気を利かせ全員病室から立ち去る。
薄いカーテンから和らいだ夕日が室内を赤く照らし、綱吉は眠り続ける美香の傍らから離れようとしない。
毛布の隙間から手を差し込み、美香の白い手を毛布から出すとそれをぎゅっと握って美香の寝顔を切なげに見つめる。
「美香…」
最悪もう一生目覚めないかもしれない。
綱吉はそう一瞬考えてしまいゾッとした。
「やっと…捕まえたのに…っ
また離れて、今度は追いかける事すら出来ないなんてオレは許さない…!」
握る手に少し力を入れ
「好きだ。美香」
相手は何も知らず眠り続ける。
「京子ちゃんも好きだったよ。
でも…思い出したからこそ分かる。
美香と知り合ったオレは、美香の事が好きだったんだって」
綱吉はカタンと座っていた椅子から腰を浮かせ、身を乗り出す。
眼下に目を固く閉じた美香の寝顔。
「こんなの…オレらしくないって、分かってるけど…」
美香の頬を撫で、綱吉はそのまま身を屈め
「っ…ごめん。
でも…っ美香が悪いんだからな…!
オレの気持ち、全然気付いてくれない上に…消えようなんてするから…!」
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