継承式編
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「何処だ美香!美香ーーーー!!」
空を飛び、名前を叫びながら探し回る綱吉。
あの時こうして飛べていれば追い付けたのに。捕まえられたのに。
「くそっ…何処だ…!何処にいるんだ…!」
高度を上げて更に高い位置から彼女を探す事にした綱吉。
「もう失いたくない…!!」
ザワザワと胸騒ぎがしていた。
これを逃すと今度は永遠に失ってしまいそうな予感がしていたのだ。
彼女を、そして…記憶を。
「忘れたくなかった!忘れたくなんかなかったんだ!!」
叫びながら自分の直感を頼りに空中を移動する。
そして目を凝らして下を素早く、けれど丁寧に見つめ続け
「……っあ!」
崖に人影が見えた。
そしてその人影は綱吉が見つけたと同時に落ちていく。
「美香!!」
一目散にその人影を目指した急降下した。
「ぐ……くぅ…!」
見通しを良くする為に高度を上げすぎたせいか落ちていく人影と距離が縮まらない。
腕を力いっぱい伸ばし、炎の出力をどんなに上げてもまだ遠い。
なんとか人影が美香である事が確認出来る距離まで近付けたが地面もすぐそこまで迫っている。
「っおおお!!」
叫びながら更に炎の出力を上げた。
めいっぱい伸ばした腕の手が、僅かに美香の服の裾に触れた。
手繰り寄せるように手を動かし、ガシッと手首を掴む。
しかし
「しま…!!」
地面はもう目前。そのまま二人は地面に激突した。
綱吉は地面に激突する直前に噴出していた炎を咄嗟に空から地面に向けて落下の衝撃を和らげようとしたが、それには成功したものの美香の手首を掴んだ手が急な炎の出力の変わり方に力加減がついていけずツルリと彼女の肌で滑って抜けてしまった。
「美香!」
彼女の体は地面にドサ!と落ちて、ゴロゴロと転がってやがて止まった。
落ちた場所は崖下の砂浜。しかし普通の砂浜と違い小さな石が多く敷き詰められ、波で削られて先が尖った大きな岩なども転がっていた。
自分も地面に落ちたけど、まだ受け身が出来た為特に怪我はない。
綱吉は慌てて体を起こすと急いで美香に駆け寄った。
「美香っ美香!しっかりしろ!!」
顔を覗き込む。
彼女は気を失っていて、全身が傷だらけで
「っ!!」
尖った岩が刺さったのか、腹部の服が血で滲み、口から一筋の血が流れていた。
「うわああ!!美香!美香!!」
美香の体を仰向けにさせ、肩に腕を回し上半身をそっと抱き起こした。
「いやだ…いやだっいやだ!!
死ぬなっ死ぬな!死ぬのは許さない!!」
そのまま体を抱いて綱吉は片手だけの炎の噴出で空を飛ぶ。
オレンジ色に光る目には、いつの間にか涙が溜まり…飛び上がったタイミングで零れた。
「絶対に死なせない…!絶対に!!」
薄れゆく意識の中で、けれど確かに聞こえた彼女の声で語られた『星に消されてしまう。私達はそういう運命』という言葉。
意味自体はよく分かっていない。
けれど、何となく腕の中にいる大切な人がこの世から消えてしまう気がして綱吉は歯を食いしばり頭をブンブンと振って嫌な想像を振り払った。
泣きながらとにかく飛んで、そして炎真達が待つ場所に突っ込むように帰ってきた。
「ツナくん!」
「帰ったかツナ!」
綱吉は額の炎が消えるのを感じながらまずは了平に
「お兄さん!!助けて下さい!!美香が!!」
そして自分の腕に抱いていた彼女を動揺している了平に見せた。
口から血を流し、体も血だらけで意識のない美香の姿にその場の全員が言葉も無く驚愕する。
「美香ーーー!!」
炎真が顔を青ざめさせて絶叫した。
「助けて下さい!お願いします!!」
「わっ分かった!!任せろ!!」
了平はすぐさまVGを発動させ漢我流を呼び出すと美香の治療を開始した。
「なんでこんな事に…!
ツナくん!一体何があったの!?」
「オレが…見つけた時は、丁度美香が崖から落ちた所だったんだ…」
「っなんですって!?
まさかっ……自……っ」
アーデルハイトが叫び、続けようとする言葉に顔を青ざめさせながら声を震わせる。
察したツナは少し慌て
「あ…っ自分から落ちたっていうよりも…落ちかけてたのを堪えてたけど、崩れて落ちたって感じだった…」
「なんで…そんな危ない場所に…っ」
「星に…消されてしまう」
「…ツナ、くん?」
「Dとの戦いの最中で…美香の中の人が言ってた…星に消されてしまうって…
もしかして、美香の身に起きてた不可解な現象の正体なんじゃ…」
「でも…一体どういう意味なのか分からないよ…
このまま…っ美香を失うなんてイヤだ!!」
「『どうせみんな忘れる』とも言ってたな…
もしかしてオレ達が美香さんの事を忘れていたのは、美香さんが原因なのかもしれねぇな…」
と、山本も治療を受けている美香を見つめながら呟いた。
リボーンも横たわる美香の傍に寄ると
「……『この世界の人間じゃない』と言っていたな。
ツナ達と別れるまでは美香は記憶喪失か記憶の混濁だと思っていたが…」
「…ぼく、聞いたことがある。
アーデルも一緒に聞いたよね?僕達がボンゴレへの復讐を固く決めた時、美香が言ってた『この世界の、この星の人間じゃない』って言葉…」
「…ええ、聞いたわ」
「その時は信じてあげられなくて
ツナくん達との戦いを止めたいが為に咄嗟に出た言葉だと思ってたんだけど…
でも確かに言ってた。
『自分はこの星にとって異物で危険因子でしかない。
だから星の修正システムが自分を除去しようとしてる』って…」
「星の…修正システム…!?」
「そうだよツナくん」
「にわかに信じられねーが…」
「僕はもう美香を傷付けたくない。
僕は美香を信じるよ。
言葉通り信じるなら、この世界…僕達が生きるこの星が別の世界から来た美香を消そうと、殺そうとしてるってことだよね…?」
「そんな…そんなこと…美香は一体いつ、どこで知ったんだ…!
だったら尚更なんでオレ達から離れたんだ!
なんでいなくなる必要があったんだよ!!
そんなに危ないなら一緒にいれば良かったのにっ
そうすれば、守ってあげられたのに!!」
「ツナくん…」
「わざわざオレ達の記憶を消してまで…なんで…!
やっと思い出せたのにっやっと見つけられたのに!!
こんなの絶対にイヤだ!!」
泣きながら綱吉は気を失って目を閉じている美香を見下ろして叫んだ。
その時、治療の為に発光していた光が消えた。
了平が「よし」と言うと続けて
「とりあえず傷が塞がって血は止まったぞ沢田。
だが…高い所から落ちたんだよな?
なら頭をぶつけている可能性がある。早いところ病院に連れていった方が良い」
「ああ…っありがとうございますお兄さん!
本当にありがとうございます!!」
「ツナくん。まだ飛べるなら先に美香を連れて船に行った方がいいよ。
歩いて山を下りたんじゃ時間がかかりすぎる。
僕はなんとか大地の重力を使ってみんなを運べないか考えてみる!」
「ありがとうエンマ。そうさせてもらうよ!」
涙を拭って綱吉は美香を抱く。
死ぬ気丸を取り出すとそれを飲み、ハイパーモードになるとすぐに飛び立った。
「待ってろ…!絶対に助ける!!」
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