継承式編
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遠くでツナや炎真達が笑いあい、そして抱きしめあったり…泣きあったりしている。
Dが倒され復讐者との約束により捕らわれていた人達が全て解放されたのだ。
あたしはそんな微笑ましい光景を森の入口で遠巻きに見つめていた。
「良かった。みんな戻ってきて」
ーーーなんだか長い旅が終わったような感覚ですね。
私もちょっと疲れちゃいました。
「だから引っ込んだのね…
それにしてもどうしよう。いつ炎真達とお別れしよう」
ーーーここは無人島ですし流石に今は無理ですよ。
「色々質問攻めされそうだから早めに離れたいんだけど…」
ーーーあー…もう殺されるつもりでぜーんぶ暴露しちゃったから…
「全部終わったし…島を出て並盛に着いたらその晩にこっそり出発しましょう」
ーーー良いのですか?炎真の気持ちは…
「無視しちゃうのは申し訳ないけど…その恋心はあたしのものじゃないから…
あたし達は、決してあそこには入れない。そういう運命なのよね」
明るい青空の、日差しの下で楽しそうなツナ達。
あたしはそれをしばらく眺めたあと、ちょっと一人になりたくてそっと暗い森の奥へ入っていく。
ーーー元の世界に帰ろうとは思わないのですね。
「元の世界にだって帰る場所なんてないわ。
弟が生きていてくれたのなら、まだ帰る気になれたかもしれないけど…
帰ったって誰もいないもの。なんの未練もないわ」
森の茂った草木やジメジメとした暗さがなんだか今の気分に丁度良かった。
今は…あの太陽のように眩しい所にいたくない。
寂しさが増すだけだもの。
「…そういえばここ最近星の修正による不可解な現象がないわね」
ーーーそういえばなんだか不気味なくらい落ち着いていますね。
まぁでも、さっきはD様に殺されかけてましたし…そうでもないのかも。
「あ、そうか。確かに殺されかけてた」
道が下り坂になっており、この辺りの土は粘土質なのか若干滑りやすい。
あたしはセーラー服にローファーなので普通に歩きにくかった。
「うーん…どっか静かに一人になれる所ないか探してるけど…歩きにくいだけで見つからないわね」
ーーー元の道に戻って階段を下りた方が良いかもしれませんね。
その途中に無いか探してみましょう。
「そうね。そうし」
木の葉を踏んだ足がズルリと滑った。
「えっわ…!」
そのまま転んで、下り坂の為ゴロゴロと転げ落ちていく。
ーーー美香!!
木にぶつかったり、石で切ったりしながらも頭だけは守ろうと両手で抱えて転げ落ちるスピードが弱まる時を待つが一向にその時が訪れない。
ーーー美香!美香っしっかり!!
「…………っ」
やっと止まった時、おそるおそる目を開けると随分下まで転げ落ちており全身は傷だらけだし打ち身だらけだしとしばらく倒れたまま動けなかった。
「ぃっ……た……」
ーーー美香っゆっくり…ゆっくり動いて
「なに…?」
ーーーすぐ後ろ崖なの!
「え…」
サァッと一瞬で血の気が引いた。
あたしは今横向きになっているけど、すぐ後ろが崖だと言う。
ーーーまずうつ伏せに…
言われた通りまずうつ伏せになる。
地面に擦られて、あちこちぶつけた腕が痛い。
ーーーそのままほふく前進で崖から離れて…!
その時、下から足を引っ張られる感覚がした。
もう…分かった。
これは星の修正だ…!
ーーー美香!!いやぁ!
崖下に引きずり込まれたが何とか崖に掴まる。
「(下を見たらダメ!恐怖で力が抜けてしまう!)」
けれど、腕もあちこち擦ったりぶつけたりしている為痛みで自分の体重と星の重力に耐えられる気がしない。
加えて特に鍛えられてない腕の筋肉じゃ自分の体を持ち上げる事も出来ない。
なんとか足先を崖の側面に掛けられる場所が無いか探ろうとし、丁度よく引っ掛かったそこに足をかけて
「あ」
足場が崩れ、足を掛けた事により腕の力が弱まっていてあっさり空中に投げ出された。
頭が下になっていく。目の前には逆さになった綺麗な海。
「……そっか」
これが、あたしの最期か。
元々あの日…車に轢かれて死ぬ運命だったのをプリーモが助けてくれたんだ。
そう考えたら 長生きした方よね。
綱吉達はまず簡単な応急手当をリボーンからやそれぞれで処置していた。
「早く9代目が待ってる船に急いで戻らないと。
あの船なら設備も整ってるし医療チームもいるからもっと良い治療をしてくれるよエンマ」
「え…でも」
「大丈夫。9代目にはオレから全部説明する。
エンマ達は騙されてただけで、何も悪くないんだ」
「ごめん…ありがとうツナくん」
「そういえばあの人は?
安全な場所に避難したと思うんだけど見当たらない…」
と、綱吉はキョロキョロと辺りを見回した。
「あの人?」
「エンマの…ほら、す…好きな人…」
「美香のこと?」
「………美香?」
「あれ?ツナくん美香の事知らないの?
美香が前お世話になったのはツナくんの家だって聞いてたけど…」
「美香……うっ!」
激しい頭痛に襲われ綱吉は思わずその場に膝をついて頭を抱えた。
「ツナくん!?」
「10代目!」
「ツナ!!」
獄寺と山本が綱吉の異変を察知して慌てて駆け寄った。
「大丈夫?ツナくん!」
「どうしたんだツナ!!」
「あ……頭が………!!」
そして意味のわからない涙が急に溢れてきてボタボタと雫が地面に落ちる。
頭の中に今までの出来事の映像が時系列を無視してぐちゃぐちゃに流れ、混乱する。
その中で、綱吉はひとつの靄がかかった映像を見つけた。
「美香……」
セーラー服を着た女の子の背中。
「美香……」
手を伸ばすけれど、電車のドアが閉まり届かない。
「美香……っ」
叫ぶけれど、その背は振り返らず
「美香!!」
そのまま去って行ってしまった
恋をした、大切な人。
「あ……ああ……!!」
綱吉は頭を抱えたまま、泣き続けた。
そんな異様な光景をその場の全員が固唾を呑んで見守る。
「おもい…っだした…!!」
「ツナ…くん?」
「美香…美香だっ
オレ達の前から急にいなくなった美香だ!!」
「え…急に…?」
綱吉はすぐ傍にいる獄寺と山本を見上げた。
「獄寺くん!山本!!美香だよっ思い出して!!」
「美香…?」
「美香って…」
「ずっと一緒だった美香だよ!
春休みに一緒に花見に行って、夏休みに海やお祭りに行って!
骸に捕まったのを助けに行って…リング争奪戦ではヴァリアーに捕まって、みんなで助け出した美香だよ!!
頼む思い出してくれ!なんで…なんでオレ達ずっと忘れてたんだ!!」
「あ……美香…さん…!?」
山本も頭に手を置いて、顔を顰めて何かを思い出す。
「あ…!駅で…オレ達を撒きやがった女…!!」
「そうだよ獄寺くん!!
オレ達の前から急にいなくなった人だよ!!」
「今までずっと美香さんと一緒にいたのになんで思い出せなかったんだ!?
そもそもなんで忘れて…!?こんなのおかしいだろっ」
「そうだよ山本!なんで…なんでオレ達忘れてたんだ!?
あんなに一緒だったのに忘れるなんて有り得ない!!」
「オレも思い出したぞ沢田!京子の家に泊まりに来た…」
「ボス…私も…あまり関わりはなかったけど、ボスの大切な人…!」
「この僕が一度捕らえた者を忘れるはずがない。なのに何故…」
次々とみんなが思い出していく。
綱吉は次にリボーンを見る。
リボーンはそんな綱吉の視線に気付くとコクリと頷き
「オレも思い出したぞ。
ハナニラの刻印の指輪を持って突然現れた、沢田家の新しい家族だ」
綱吉はリボーンが思い出した事を確認し終えると今度はエンマへと振り向き
「エンマっ美香はどこ!?」
「え…わ、分からない。
ツナくんとDが戦っていた時は向こうの森の入口辺りにいて戦いを見てたんだ。
でも今はいなくて…」
エンマが指差す方向を綱吉は確認する。
そしてその方向をキッと睨むと立ち上がり
「ごめんエンマ。詳しい事は後で説明する。
みんなは此処で待ってて」
死ぬ気丸を取り出す綱吉にリボーンが
「もう体力も気力も使い果たしてるはずだ。
そんな状態でハイパーモードになれば」
「大丈夫。平気だよリボーン」
丸薬を飲み込み、目をオレンジ色に光らせ額に炎を灯らせた。
「死ぬ気で美香を連れ戻す。
あの時はまんまと逃げられたけど、今度は逃がさない。
このままじゃ…死んでも死にきれねぇ!!」
・NEXT
