継承式編
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泣き疲れもあり、美香はナッツを抱いて先に眠っていた。
ナッツも美香に寄り添い気持ちよさそうに眠っている。
それを綱吉は傍らで見つめ
「すっかり懐いちゃったなぁ
ナッツ臆病なのに、エンマやこの人は怖くないんだな」
「野生の本能でその人の人格が分かるとかか?」
「ナッツは野生じゃねーだろ野球バカ」
「その人の事なんだが」
と、リボーンが切り出して綱吉達はリボーンを見る。
「Ⅰ世の婚約者云々はまず考えるな。
とりあえず、今まで一緒にいてどう思った?」
「どうって…さっき言ったみたいに強い人だなって…」
「他にねーか?」
「他に…」
「オレは…なんか、一緒にいて違和感ねぇなって感じたくらいスかね。
最初こそ警戒してたんですが…途中から忘れてましたし…
寧ろ一緒にいるのが自然みたいに感じたっつーか…」
「獄寺くんも?実はオレもなんだ。
初めて会った人なのに一緒にいて全然違和感がなくて…
それに…なんか、オレ………
この人を見てると胸が締め付けられてめちゃくちゃ苦しいんだ。
忘れちゃいけないなにかを…忘れているような…」
「オレもさっき初めて会ったって人なのに何か違和感ねーのな。
危なっかしくて目が離せない。なんて思ってさ」
「ランボもこの人に凄く懐いてるし、なんでだろうね。本当に不思議な人だよ」
「実はオレもなんだ」
「えっ…リボーンも?」
「寧ろ何で今までいなかったんだって思うくらい、何も違和感がねーんだ。
それに…オレの予想だがこの人はおそらくオレ達をよく知っている。
獄寺の武器がダイナマイトだとすぐ見破り、雲雀の強さに『やっぱり』とも言っていた。
ランボの扱いも子供に慣れてるというよりも、ランボに慣れてるという印象だ」
「ランボに…慣れてる…?」
チラリとランボを見る綱吉。
ランボは山本の足に寄りかかって、指をくわえてスヤスヤと寝ていた。
「何か思い出せねーか?
オレは間違いなくお前達はこの人に会ったことがあると思うぞ」
「会ったことって…オレは…特に………っぐっ!」
「ツナ!」
「10代目!」
突然激しい頭痛に襲われ綱吉は両手で頭を抑え蹲った。
ズキズキと脈打つような痛みに綱吉はひたすら耐え、しかし痛みは収まらずそのままゆっくりと気を失い始める。
ーーー行かないで…
ーーー行かないでくれ…!
「(なんだ…これ…?)」
薄れゆく意識の向こう。白いモヤのかかった記憶で自分が誰かに向かって必死に手を伸ばす姿を見た。
誰か分からない人を、自分が必死に手を伸ばして引き止めようとしている。
けれど手は届かず、相手の姿は消えて自分の手は虚しく空を掴んだ。
ーーーなんでだよ!!なんで…!
ーーーなんで何も話してくれないんだ!●●●●●●!!
自分が頼られなかった事の悔しさと悲しみと怒り。
「(オレ…前にも感じた事がある…)」
そうして綱吉は、そのまま意識を手放した。
翌日、あたし達は目を覚ますと朝食を済ませて先に進むことに。
雲雀くんの姿がいつの間にか消えていたが、彼なら大丈夫だろうとそのまま気にしない事にした。
まだまだ続く階段を登って、すぐバテるあたしに気遣ってくれて頻繁に休みつつ少しずつ進んでいく。
「そういやツナ、体調は大丈夫なのか?」
「うん…寝たら治ったよ。疲れてたのかな…」
「仕方ありませんよ。昨日は色々ありましたし」
「まぁ治ったんなら良かった」
「山本こそ無理しないでよね」
「ハハハッオレは大丈夫だって」
そんな話を聞きながら両膝に両手をついてハァ…ハァ…と息を整えるあたし。
ナッツが「ガウ」と鳴いてあたしを励ますように見上げていた。
「ナッツ本当に好きなんだな。あの人のこと」
「あのナッツがあんなに懐いてるのも珍しいな」
「瓜もあいつに懐いてましたし…小さい奴や動物に懐かれやすいんスかね」
「ランボさんは小さくないもんねー!!!」
「うっせ!」
ふぅ…と息が整うとナッツに手を伸ばす。
ナッツはご機嫌そうに「ガウガウ♪」とぴょんっとあたしの胸に飛び込むと、それを抱き留めて背を伸ばした。
「ごめん…足を止めちゃって」
「気にしないで下さい」
「もう慣れたしな」
「大丈夫か?」
「なんとか…元々体力ないから…」
「それなのにここまで一緒について来れたなんて本当に凄いですね」
「そんな事ないわよ。
…今日、やっと炎真を助けられるのね」
「はい。この道の先にエンマがいると思うんです」
「………そう。
全部終わったら…炎真達のこと、よろしく頼むわね」
「……え?」
「あたしは訳あってひとつの場所に長く留まれないのよ。
だから…炎真達と綱吉くん達との誤解も解けた事だし、炎真を助け出してDを倒したら
あたしは炎真達の元から去る事にするわ」
「そんな…なんでですか!?
だってエンマは、貴女の事が好きなのに…!」
「それはいけない事なのよ。
理由は言えない。でも…私を好きになってはいけない。
私は誰かと一緒にいてはいけないから」
「どうして…そんなのおかしいです…また、貴女は一人に…」
「大丈夫。もう慣れたから」
「う…嘘です!」
「そうね。一人は寂しいわ。
でも仕方ないの。仕方ないのよ…」
「……………」
「だから…炎真達と仲良くね」
「……………」
ツナ達の横を通り過ぎ、あたしを一人先に進む。
ーーー行くあては?美香
「(山登っちゃったわね…)」
ーーー森にでも行きますか。
「(もうただの観光ね)」
そう気楽に考えつつひたすら階段を登り続けた。
階段を登り続けた先に待っていたのは洞窟。
中を覗けば人の出入りの痕跡があり、人が歩いた足跡で道が踏み固まっていてそこそこ歩きやすかった。
ライトを持つ獄寺くんを先頭に深い洞窟を降りていく。
そして辿り着いたのは地下の中にある城。
その城はあちこちから炎を噴き出していた。
「あの炎はエンマの炎だ…
もしかしたらあの城にエンマが」
「あっ」
あたしの腕の中にいたナッツがピョンッと飛び降りた。
そのまま走り出し、城へと向かう。
「ナッツ待って!!」
「な…どうしたんだナッツ!」
「どうやらエンマがいるとみて間違いないな」
「行こうぜツナ!」
「うんっナッツ!!」
今度はツナを先頭に走る。
山本くんが気をつかってヘトヘトのあたしの手を取ると一緒に走ってくれた。
地下の城はあたしも見たことがなかった。
城内に入ると案内して欲しいとツナに言われたが、存在は知っていたけど実際に来るのは初めてだと伝えると一緒にナッツを探す事に。
ナッツは案外早くに見つかった。
大きな両開きのドアを一生懸命引っ掻いていたからだ。
「ダメじゃないかナッツ!」
「何やってんスかね…中になんかあんのか?」
獄寺くんと山本くんが両方の扉を開き、中心にいたツナがそっと隙間を覗く。
「……奥に誰かいる…」
あたしもツナの後ろからそっと中を覗いて
「………っ炎真!!」
「え」
扉を思いっきり開いてあたしは炎真に駆け寄ろうと走り出した。
扉が開いた事によりナッツも一緒に走り出す。
「わ!まっ…待ってください!!」
ツナが慌てて追い掛けてきてあたしの腕をガシッと掴む。
「様子が変です!近付いたら何が起こるか分かりません!!」
見ればあたしの足元にいたナッツも足が止まってガタガタと震えている。
ツナはあたしの腕から手を離すとナッツを抱き上げた。
そしてあたしを自分の背で庇うように前に出て
「エンマ!オレだよ!」
炎真は答えない。
「お前も見たはずだ!!
シモン=コザァートはボンゴレⅠ世に裏切られていなかったよ!!」
そこで炎真はやっと口を開き
「シモン…コザァート……
ボンゴレ…プリーモ…ガ…コロ…シタ」
「!?」
「コザァート…マミ…ミンナ…
ボンゴレ…ガ…コロシ…タ…
ツナヨシ…ガ……コロシタ」
炎真のリングからは何本もの触手のようなものが生えていた。
そんな気味の悪いリングが光ると
「うわっ!」
目も開けられない強い光と体を出入り口に押し戻すような衝撃があたし達の体に叩き付けられる。
あたしはツナが盾になってくれているからなんとか一人で耐えることが出来た。
炎真の様子を見てリボーンくんが
「アーデルハイトの言ってた通りだな。
今のエンマは誰の言葉も届かない。恨みと殺意の塊だ…
こうなっちまったら話し合いは通じねぇ」
「いちかばちか力ずくでわからせるしかねーな」
そう言って構えようとする獄寺くんに
「待って」
ツナが自分の荷物を下ろしながら止めた。
「オレに任せてほしい」
「10代目…しかし…」
「大丈夫。エンマのことは大丈夫」
自信ありげに微笑んで振り返るツナ。
次にあたしを見ると
「必ず元に戻してみせますからね」
「………ツナ……」
「ああっそれなら頼んだぜツナ!」
「お気をつけて10代目!」
あたしは地面に下ろされたツナの荷物を手に取ると彼を見て
「無理しないでね」
「ありがとう!…下がっててください」
言われた通りツナの荷物を持って獄寺くん達の元へ走る。
だが、そこに雲雀くんが姿を現し
「何言ってんの?あの小動物は僕の獲物だよ」
「ヒ!!ヒバリさん!!」
「まぁだけど君が殺されるの待っててあげるよ。
その後で僕が咬み殺す」
「んなーーーー!?オレ…殺されるの前提ですか?」
「ヒバリてめー!!ナメたこと言ってんじゃねーぞ!!」
「まあまあ獄寺。落ち着けって」
「…ヒバリさん…すみません!じゃあ、行ってきます!」
ツナはグローブをはめ、何かを飲み込んだ。
途端に額に炎が宿り目付きが変わる。
ツナに抱かれていたナッツはツナの肩に乗り
「エンマ!!オレの言葉を聞け!!
言葉が通じないなら、拳でわからせてやる!!
目を覚ませエンマ!!」
ツナは両手に炎を灯し、奥にいる炎真へと飛んで行った。
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