継承式編
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「バ…バカな!!Ⅰ世に私の策が見透かされていただと!?」
内容は分からないが、D様が記憶を見て開口一番にそう叫んだ。
「シモン…コザァートは…」
「殺されていなかった………」
アーデルちゃんと薫くんの反応。そして
「どうやらシモンファミリーに伝承されてきた歴史が塗り替えられることになりそうだな」
「ボンゴレⅠ世は初代シモンを裏切らなかった!!
二人の友情は変わらなかったんだ!!」
リボーンくんと綱吉くんのこの言葉に確信する。
「おのれⅠ世!!コザァートの死を偽装するとは!!」
「言ったはずですD様!ジョットはそのような鈍い男ではありませんと!」
「く…そこはさすが婚約者という所ですか。
まぁ貴女は、そうでありながらⅠ世を捨てた方ですが」
「えっ…!?」
綱吉くんが声をもらして私を見た。
無言でD様を見る私にD様は今までとは違う恨みの混ざった目で見つめ
「貴女が…Ⅰ世を捨てなければ…っ」
「…………今はその話をしている場合ではありません」
「…そうでしたね。
しかし生きていたとなると、何故その後のシモンの足取りが無かったのだ…
この私ですら知らないシモンの生きた歴史…」
そこに「ハハハハッ」という明るい笑い声が響いた。
衝撃の事実と啀み合う私とD様の重い空気を吹き飛ばすようだ。
「まぁいいじゃねーか♪
シモン=コザァートは無事だったんだからさっ」
そう満面の笑みを浮かべたのは山本くんだった。
「まぁよくねーだろ!ノーテンキ野球バカ!!」
「相変わらず軽い奴だな」
山本くんが戻ってきて余程嬉しいかったのだろう。
綱吉くん達は和んだように微笑していた。
そこに復讐者達が動き出す
「敗者を投獄する」
「カオル!」
「アーデルハイト!」
二人が復讐者の牢獄へと消えつつあった。
アーデルちゃんは涙を流しながら、どうしようも出来ず見つめる綱吉くんに
「沢田…頼みがある…
炎真を…あの子を助けてあげて!!」
「え…」
「あの子…炎真の心はもう引き返せない程に壊れている!!
コザァート達の過去の記憶も届かない!!
救えるのは…もう貴方しかいない…
継承式の前日まであの子は貴方を信じていたわ。
まるでボンゴレⅠ世とシモン=コザァートのように…
あなたへの数々の非礼…今更許されるとは思わないが…すまなかった……」
そう涙を流して、アーデルちゃんは投獄された。
そして薫くんも
「武…お前さえ良かったらよぉ…これからも…友達でいてくれ…」
「カオル…カオルーーーーーー!!!」
みんな…投獄されてしまった。
私は結局誰も救えなかった。
「(ごめんなさいコザァート…)」
私は両手で顔を覆って、もうこの世にはいない大切な友人に心からお詫びする。
「(私が…役立たずなばかりに…)」
「ヌッフッフッフ…ヌハハ!!
過去の人間に惑わされるとは愚かな子供達だ!!
姫も何故泣く必要があるのです?
ああ、そうですか…誰も救えなかった役立たずな自身の無力さに泣いておられるのですね?
なんと可哀想に…これで自分の身の程を知りましたか?
貴女はⅠ世とコザァートがいなければ、何も出来ないただの女だとこれで自覚出来ましたね?」
「くっ…デイモン!!それ以上その人を侮辱するな!!
どんな思いで彼女がオレやエンマ達に…っ」
「ツナ 少し休め」
今にも飛びかかりそうだった綱吉くんに山本くんが止める。
「カオルやシモンの連中を自分の欲のために弄び
お前達や彼女をそこまで傷付けたこの亡霊は…オレが斬るっ」
「山本…超怒ってる…!」
「ほほう…図に乗りますねぇ山本武…
しかし貴方ごときがこの私を斬るなど不可能ですよ」
両手から顔を上げて二人を見る。
D様は姿がぼやけていて、山本くんは二振りの刀を鞘に収めていた。
それから二人の戦闘が始まる。
霧と砂漠両方の能力を持つD様に斬撃が効くのかと少し心配したが、どうやら彼の持つVGなら対処可能のようだ。
可愛らしい秋田犬の次郎の能力を駆使し、小さな燕の小次郎で姿を隠したD様に攻撃を繰り出す。
その斬撃は、空中に浮いていたD様を捉え斬り裂いた!
「ちいぃっ!」
血を吐き、血を流しながら地面に降り立つD様。
「フッ…加藤ジュリーというかりそめの器では本来の能力の一割も使えないのですから
こんなものですかねぇ」
「どのみちお前はここで倒すぜ」
刀をもう一度構える山本くん。
しかしそんな彼の前にクロームちゃんが槍を構えて立ちはだかった。
「ここは通さない」
「…どいてくれ」
「だめ」
さすがの山本くんも操られている仲間に武器を向けることは出来なかった。
「よろしいクローム。ここは退くこととします」
「はい…」
「姫、それではごきげんよう。
次に会った時貴女は今度こそ私のものになるでしょう」
「!……」
「Ⅰ世の愛する大切な貴女を…私が好きに出来る。
その時を楽しみにしております…」
そう言い残してD様は去っていった。
山本くんはクロームちゃんが消える直前に何かを渡し、それを受け取って彼女もまた姿を消した。
「……ぐっ」
「山本くん…っ」
「山本!!」
地面に膝をついた山本くんに駆け寄る私と綱吉くん達。
雲雀くんも含め全員力を使いすぎたり、色々あったせいで気力も使い果たしてヘトヘトだった。
リボーンくんの提案でそのまま私達は今いる川辺で一度休むことにしたのだった。
ーーーまだ色々根掘り葉掘り聞かれたくないので引っ込んでます!
「(はいはい)」
という訳であたしが表に出ることになった。
勿論ツナはそれにもちゃんと気付いていて、不思議そうに「あれ…?」と見てくる彼に「まだ色々聞かれたくないみたいなのよ」と言うと納得したようにそれから何も聞いてこなかった。
リボーンくん達も、ツナに説明されたのか何も聞いて来ることは無かった。
雲雀くんは離れた所で既に眠って、ツナ達は夜が更けるまで色々話していた。
瀕死状態だった山本くんが何故助かったのか…
そしてツナからはこれまでの事の共有など、積もる話をたっぷりと。
そしてツナは雲雀くんとの戦いの前の意気消沈した自分を思い返し
「もうオレ…迷いはなくなったよ…
京子ちゃんのお兄さんもクロームも、全部あの男のせいで……
倒すべきはD・スペードだ。
クロームはもちろん古里炎真も助けるんだ。友達だから…!」
ツナの強い意志に応えるように彼のリングが眩しく光った。
「えっあれ?勝手に!!」
狼狽えるツナの前に現れたのはオレンジ色の炎の鬣を持つ小さなライオン。
「ガオ!」
「ナッツ!やっと出てきた〜!!
どうしたんだよお前、今までずっと出て来なくて…」
その小さなライオンはツナに擦り寄りゴロゴロと甘えている。
「ナッツは可愛がってくれるエンマのことを好いてたからな。
エンマと戦うのを拒否していたのかもしれねーぞ」
「そ…そうかも!こいつ変なとこ頑固だし…」
そう言いながらナッツの頭を撫でてあげる。
そしてナッツを両手で抱き上げ、何故かあたしを見て。
「……あの、貴女も…必ず助けます」
「え?」
「今までずっと…シモンとオレ達ボンゴレの為に…一人で戦ってたんですよね?Dと…」
「………」
「マジかよ…」
「一人で……」
「それも両ファミリーを助ける為に、か…」
「……一人じゃないわ。あたしの…中の人と二人よ。
でも、結局こうなってしまった。
あたしは何も出来なかったのよ。
その上…Dに利用されてもいたわ。何の役にも立てなかった」
ツナはブンブンと頭を左右に振る。
「少なくともオレは貴女に助けられました。
…オレは今回の事で信じ続ける事の難しさを知りました。
けれど、貴女は最初からずっとシモンとオレ達を信じ続け…戦いが間違っていることを教えてくれてました。
仲間から裏切り者扱いされる覚悟で、一人でも、ずっと耐えて…ひたすら信じてきた。
オレ…貴女は十分強い人だと思ってます!本当に凄い人だって…」
「綱吉くん…」
「だからオレは、そんな貴女のおかげで父さんを信じる決意が出来ました。
貴女のように オレも最後まで父さんを信じ続けます!
貴女のように強い心を持ちたい!」
「…………」
「だから…もう、安心して下さい。
エンマ達は助けますし、貴女も絶対Dに渡しません。
オレ達のように戦えないのなら、戦えるオレ達が戦えばいい。
だからそんなに自分を責めないで下さい。もっと自分を褒めてあげて下さい。
オレ達こそ…ずっと一人だった貴女に気付けなくてすみませんでした…」
そう言って、ツナはあたしにナッツを渡して抱かせてくれた。
ナッツはキョトンとしてあたしを見上げている。
そんなナッツの顔にポトリと雫が一粒落ちた。
私は泣いていた。一筋だけだった涙がみるみる溢れてきて次々と頬に零れ落ちる。
ツナはそんなあたしを見てギョッとしオロオロとし始めたが、やがて「泣けて良かった」と言いたそうな柔らかい表情をして落ち着く。
初めて会ったというのにナッツが心配そうにあたしの頬をザリザリと舐めてくれる。ちょっと痛い。
「ハハハ…ナッツが懐いてる。やっぱり、貴女は優しい人だ」
「うう…ぅ……っ」
ナッツを抱き締め、私は声を押し殺して泣き続ける。
「全部終わったら…良かったら名前を教えて下さい。
貴女の名前、オレ 知りたいです」
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