継承式編
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「ボンゴレⅠ世は……シモン=コザァートを助けに行こうとしていた!!」
目に光が宿ったツナがそう叫んだ。
そしてその言葉だけであたしは大方の察しつがつく。
「バカな…」
今までずっとプリーモに裏切られたと信じてきたアーデルちゃんに動揺が走る。
「てめーもはっきり見たはずだ!!
Ⅰ世はコザァートを裏切ってなんかいねぇ!!」
「嘘だ!!真実じゃない!!」
「アーデルちゃん!今度は貴女が都合の悪いことは信じないの!?」
「それにⅠ世がコザァートへの手紙のことすら知らないってことは
何者かがコザァートを罠に嵌めたことになる」
「くっ…!」
「そうよ…仕組まれてるの。何もかも!
お願いだから信じて!!」
そこに何かを感じ取ったらしい雲雀くんが手錠を構えた。
「そこにいる君は…誰だい?」
「おっと あぶね〜!」
手錠が投げられた先にはジュリーくん。
そしてその後ろにまるで仕えるように立つクロームちゃんがいた。
ーーー操られてますね。
間違いなくD様のマインドコントロールです。
それでもアーデルちゃんはジュリーくんを信じているらしい。
「ジュリー…炎真のことは…頼めるわね」
「ああ 任せとけ。お前はよくやったさアーデル」
「ジュリー…」
「ヌフフッこれでオレちんも、キレイさっぱりシモンに見切りをつけられる」
「………!?ジュリー!?」
「あんなに姫がお前達に信じてもらおうと必死に奔走してたのに
なぁーんにも信じてあげなかったなんて可哀想だなぁ〜」
「なに…?何を言ってるのジュリー!」
ーーー美香
言われるまでもなくあたしは彼女を前に出した。
「気にする事はありませんアーデルちゃん。
内容が内容ですし、それを信じてもらうだけの信頼関係を築く時間がなかったのですから」
私は呆然と私を見る綱吉くん達の傍から離れ前に出る。
「いい加減芝居をする必要はないでしょうD様」
「ヌフフ…それもそうですね。
挨拶も必要でしょう。腐った若きボンゴレ達よ」
ジュリーくんの姿が砂と霧が混ざったモヤに掻き消され、姿を現したのはD様。
「!骸!?」
「…違う」
「まさか…本当にあいつが言ってた初代霧の守護者D・スペードなのか!?」
動揺する綱吉くんと獄寺くん。静観する雲雀くん。
「信じようが信じまいが私は存在する。
お前のような男が生まれる限り私は在り続けるのです。沢田綱吉」
D様は私を見るとニヤリと笑い
「ご苦労でしたねボンゴレの…いえ、プリーモの姫」
D様に向いていた驚愕の目が今度は私に突き刺さる。
「ひたむきに…そして甲斐甲斐しく私の計画を潰す為、皆に信じてもらおうと頑張っていましたが…やはり無駄でしたね」
「…………」
「貴女は昔からそう。
愛する人の為に力になりたい。その一途な想いは本物ですが実力が伴わずいつも空回ってばかり。
貴女はいつも役に立てず…プリーモとコザァートに助けられてばかり」
「…………」
「いい加減身の程というものを学ぶべきです。
プリーモもそんな無茶する貴女をとても心配していましたよ」
「………そうですね。約立たずなのは確かです」
「っそんな事ありません!!」
綱吉くんの叫び声に私は驚いて振り返った。
「確かにオレ達のように戦えなかったかもしれません。
でも、貴女は裏切り者扱いされてでも仲間を守る為に必死に…一人で戦っていました!
仲間に裏切り者扱いされる勇気なんてオレには持てない…っ
それに…オレは十分励まされました!
一心にオレを信じてくれたし、貴女を見ていると何故か癒されて…………え?」
そこで言葉を止めて、綱吉くんは改めて私を凝視し
「………あの……『貴女』は…………誰ですか?」
「えっ…10代目?!」
「何か…違う。今までオレ達と一緒にいた人と違う気がするんだ獄寺くん。
違う人の気がするけど、悪い感じは全然しない…」
「……貴方はジョットの超直感を受け継いでいましたね。
ならば見破られてしまっても仕方ありません。
驚かせたり、不信感を持たせたくなくて今まで黙っていましたが…こうなった以上、黙秘するより話してしまった方が良いでしょう。
丁度信じてもらえる例としてD様も姿を現しましたしね」
私はD様みたいに実体はない。
彼女の体を借りて、彼女の声を借りて言葉を発したり動く事しか出来ない。
「初めまして。ボンゴレⅠ世、ジョットの子孫。
私は遥か昔、初代ボンゴレと初代シモンと深く関わりのあった…簡単に言えば幼馴染み。そしてジョットの婚約者です。
訳あって私はこの女性の体に住まわせて頂いてますが、だからと言って乗っ取ったりなんてする気はありません。なのでご安心下さい」
『!?』
D様以外全ての人達が言葉もなく驚愕した。
…雲雀くんは一人淡々としていたが。
「ボンゴレⅠ世の…婚約者!?」
「そんな存在聞いたことねーぞ」
「初代シモンの幼馴染みですって!?一体何を言っているの!?」
「ヌフフ…彼女の言う事は本当ですよ」
D様からのお墨付きという意外な展開にツナ達はまた無言で驚いた。
「存在を聞いたことないのは無理もありません。
私という存在は徹底的に消されてしまいましたから」
「存在を…消された…?」
「記録は勿論、ジョットを含めた全ての人の記憶からもです。
そして私もジョットやボンゴレ、シモンやコザァートの事等全て記憶から消されていました。
これは話が長くなってしまいますので今この場では何も聞かないで下さい。
色々落ち着いて…もし皆さんが望まれるのでしたらお話しましょう。
まずはD様です。
お話した通りD様の狙いは綱吉くんの命。
そして自分が相応しいと思う者をボンゴレのボスにする為です。
その為に…シモンを利用しました」
「その通りです姫。
全てはボンゴレのため…
ボンゴレを創ったⅠ世という男は優れたリーダーではあったが欲に欠けていた。
しかしマフィア界においては強欲と力こそが絶対的正義。
Ⅰ世の資質では完全無欠の巨大なボンゴレを創ることなど不可能だったのです。
故に私がⅠ世をおだて、泳がせ、目を盗み企て…
現在のボンゴレの基礎を創ったのだ」
D様の言葉に私はクスリと笑う。
それに気付いたD様は、けれどやはり元貴族としてあくまで紳士的に
「おや…何か私が可笑しい事でも言いましたか?
楽しそうですね姫」
「姫という柄ではありませんからお止め下さい。
姫はアルコバレーノの姫だけで十分です」
「アルコバレーノはアルコバレーノ。ボンゴレはボンゴレですよ」
「なんか釈然としないなぁ…
そんな事より、貴方はジョットの霧の守護者でありながら彼の事を何も分かっていないのですね」
「ほう…と、言いますと?」
「ジョットがそんな鈍い男に見えたのですか?
確かに鈍い所もありましたが…私はD様の動きは全て把握していたと断言しましょう。
把握していた上で、好きにさせていたのです」
「おやおや。強気な所は相変わらずですね。
恋は盲目と言います。
気付いていたというのなら、何故親友であったコザァートのシモンが崩壊したのですか?
私の手によって…」
「!!…ま…まさか!シモン=コザァートを罠に嵌めたのって…!」
「貴様が…初代シモンを!!」
「シモンファミリーの能力は当時から注目に値する危険なものだった。
更にシモン=コザァートは軟弱な思想をⅠ世に吹き込む危険人物だったのですから当然のこと。
…さぁ姫。Ⅰ世は気付いていたというのなら、何故私を止めなかったのですか?」
「シモンファミリーの崩壊は私が姿を消して以降の話です。
なので詳しい事は分かりません。
ですがひとつだけ言わせて下さい。
…全て貴方の思い通りになったとは思わない方が良いでしょう」
「果たしてそうでしょうか?
それこそⅠ世が裏切ったということも」
「有り得ません。絶対に。
私は何を言われても彼を…ジョットを信じています」
D様を強く睨みつける。
だが彼はどこ吹く風の如く受け流し、楽しそうにヌフフと笑ってすらいる。
「その強い眼差し…姿は変わろうとも変わりませんね。
それこそⅠ世が愛した信じる強さ。
そしてコザァートが惹かれた健気さ。
ですが無意味ですよ。全てうまくいっているからこそ…現代に再び現れたⅠ世の思想を継ぐ愚かな10代目ボス候補と、憎悪の念で増幅された眠っていたシモンの力がぶつかり合う事になったのです。
姫、貴女も気付いているはずです」
「?」
「炎真の憎悪を更に膨張させる為に、貴女も利用された事を」
「………!」
「まったくもって良い因縁でした。
先祖と同じく、子孫もまた貴女に恋をするとは…
本当にタイミング良く現れてくれました。感謝しますよ」
「勝手なことを…!炎真の純粋な恋心をこんな事に利用して…!」
「貴様…!ではシモンによるマフィア界の転覆など始めから…!!」
「私の目的はあくまで現ボンゴレの転覆です。
私の頭の中は…次世代のボンゴレでいっぱいだ。
ご苦労でしたアーデルハイト」
「おのれ!!」
アーデルちゃんは今にも飛び掛かろうとするが復讐者の鎖に繋がれ動く事が出来なかった。
「ジュリーを!!ジュリーをどこへやった!!」
「ヌフフ…私の中に僅かに残りクズがあるかもしれません」
「貴様ァ!!…ぐっ…う」
アーデルちゃんは泣き始めた。
涙を次々と流しながら俯き
「…すまない…炎真……
貴女も……っ信じてあげられなくて…!!」
「アーデルちゃん…!泣かないで…どうか気にしないで…!」
「それでも…っ私は…!
貴女を傷付けてしまったわ…!」
「傷付いてないわ!貴女達はいつでも優しかった!
貴女達の優しさを知ってるから…私は皆に裏切り者扱いされても構わないって思ったのです!
またいつもの、優しい貴女達を取り戻せるなら…!」
「ヌフフフ…貴女のそういう一途な心…とても利用しがいがありましたよ。
仲間を救う為なら、自身を犠牲にする献身さ。
それこそⅠ世が一番恐れ、心配していたとも知らずに」
「え…」
その時だった。
「許さねぇ!!」
叫び声と共にD様の腹部が貫かれた!
D様の背後には怒りで目を血走らせ、歯を食いしばらせる水野薫くんだった。
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