継承式編
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ツナはずっと黙り続けている。
それと同時にリボーンくんも黙り続けている。
かける言葉が見つからなくて、獄寺くんもあたしも黙り込んでしまっていた。
ランボくんだけは元気にツナにちょっかいかけようとするが、それを獄寺くんが阻止している。
でも…そんな状態でも、階段を登り続けてバテたあたしを待ってくれたりとツナは優しかった。
「…ごめんね獄寺くん…綱吉くんには余裕がないはずなのに…余計な気を遣わせちゃって…」
木に手を付き、息を激しくきらしてそう謝ると獄寺くんは暴れるランボくんを腕に抱えて押さえ込みつつ、何処かバツが悪そうに
「10代目なら気にするなって言っただろうよ…」
「……そうね…」
重い空気を背負っている感覚。
けれど見える景色はとても美しく、穏やかな海の音が聞こえる。
そんな本来なら癒される景色でも今のあたし達にはなんの効果もなかった。
「(ツナ……)」
心の整理がつかないであろう彼が…果たしてDに勝てるのだろうか…
そう心配していると空からヘリコプターの音が聞こえてきた。
上空を見上げるとやはりそこには一機のヘリコプターが飛んでいて、しばらくあたし達の様子を眺めるかのようにその場に留まっていたがやがて去って行った。
「なんだ…?ありゃ…」
「さぁ…」
「まぁここまで来たら気にしたってしょうがないっスね!10代目♪」
そこでツナが口を開いた。
「オレ…自分が正しいことをしてるのか分からなくなってきた…」
「えっ…10代目…」
「エンマ達のやり方が正しいとは思わないけど…
でも、もし自分がエンマと同じ立場にいたら
同じことをしてしまうかもしれない…
自分の家族を殺した奴の子供がいたら、黙って見ていられないんじゃないかって!!」
「ですが10代目!まだ古里炎真が言ったことが真実かは分かりません!」
「エンマは嘘を言っていない気がする…
初めて同レベルで戦えるようになって、拳からエンマの悲しみが伝わってくるのが分かるんだ」
「そ…そんな…」
「確かにオレにもあれが演技だとは思えねぇ」
と、リボーンくんが言って更に続ける。
「だがエンマは嘘を言ってねーとして
これが本当にエンマの望んだシナリオだと思うか?
あのタイミングで我を忘れたエンマが飛び出してきたってのが、どうも引っ掛かる」
ーーー美香
「(え?)」
ーーー私を出して下さい。
言われた通り、彼女の意識を前にする。
「……お話した通り、シモンファミリーは初代ボンゴレの霧の守護者…Dさ…Dが裏で操っているわ」
三人の視線が私に向かう。
「私は…綱吉くんのお父さんの事の真偽は分かりませんが…
炎真の両親と妹が殺されたのは真実でも、『綱吉くんのお父さんが殺した』という情報は疑って良いと思ってるわ」
「え…」
綱吉くんが動揺する。
「これは勝手な想像だけど、炎真のボンゴレを恨む気持ちを何らかの方法で増幅させ続け
そしてその膨れ上がった恨む気持ちは最終的にボンゴレ全体ではなく、綱吉くん個人に全てを向けさせる必要があったのだと思うわ。
目的はひとつ…綱吉くんを殺すためだけに」
『………………』
「だからでっち上げの情報で、炎真の恨む気持ちの方向を操作した。
そんな可能性もあると思ってる。
さっきも言った通り、シモンには味方に扮した敵が紛れてるの。
だから私は…綱吉くんのお父さんを信じるわ。
これは炎真を通した敵からの精神攻撃よ」
「……なるほどな。戦意消失した今のツナなら確かに簡単に殺せる」
「ふざけたことを言うな!
シモンはひとつに団結している!」
前方からアーデルちゃんの声が聞こえた。
アーデルちゃんはあたしを睨み
「貴女がそんな事を言う人だとは思いませんでした。
やはり貴女もボンゴレのように我々を裏切るのですね!」
「裏切り者扱いされる覚悟で私はこっちにいます。
何度裏切り者扱いされようが、私の主張は変わりません!
この戦いは間違っています。
貴方達は復讐に囚われすぎて周りが見えなくなっているの。
貴方達が信じている仲間は…本当に本物なの?
一人だけ違うのが混ざっていると分からない?
たった一人でも…『今までこんな事するような人じゃなかったのに』と思う人はいないのですか!?」
「だ…黙りなさい!!」
「いるのですね!?」
「もしいるとするのなら、私は貴女を疑う!
貴女は我々の団結力と絆の強さを知っていながら何故そのようなシモンファミリーを嘲笑うような事を…!
貴女はそんな人ではなかったはず!」
「そうですね。現に私はボンゴレ側にいるのですからそう思われても仕方ありません。
嘲笑うという事に関しては抗議したい所ですが、今は何を言っても信じてもらえないでしょうからスルーします。
それで?他にいないのですか?」
「いない!そんな者は貴女以外…」
「好きな人だからって目を背けないでアーデルちゃん!」
「これ以上話すことはない!!
私は…沢田綱吉!貴様に決闘を申し込みに来ただけ!!
さぁ、貴様の誇りを言え!!」
「え…誇り…」
ぼんやりと私とアーデルちゃんのやり取りを眺めていた所に急に話を振られる綱吉くん。
「迷うことなどないはずだ。
貴様の体に流れる残虐な血こそが、貴様の誇りだろう!」
「っ…!!」
「てめっ言わせておけば!!」
その時、背後の崖から先程のヘリコプターが姿を現した!
間近で聞くうるさい音に私はつい反射で耳を両手で塞ぐ。
ーーーうう…うるさい…
「(ちょっアーデルちゃんにあれだけ啖呵切っておいて騒音で引っ込んじゃうの!?)」
ヘリコプターから降りてきたのは雲雀くんだった。
操縦席には彼の部下が乗っており、そのままヘリコプターは去っていく。
彼は最初こそアーデルちゃんを見て、そして彼女に向かって歩いていたが途中あたしを見掛けると足をピタリと止めた。
そしてそのままジッとあたしの顔を見つめるので、あたしは不思議に思って見つめ返す。
「……ねぇ君」
「え…」
「君を見てると何かイライラするんだけど…何か知らない?」
「え゛」
記憶を失わせる前の彼に何か怒らせるような事したかしら…
考えてはみるが何も心当たりがなく
「ごめん…ちょっと思いつかないわ…」
「そう。ならいい」
そう言ってあたしの前から立ち去ってアーデルちゃんの前に立つ。
「(もしかして…あたしと接してる時って常にイラついてたのかしら…)」
もしそうなら申し訳ない。
今後はなるべく関わらないようにしないと…
まぁ、そんな機会は無いのだが。
「やぁ小動物。
どこだい?継承式で暴れたもう一匹の小動物は」
「エンマの事だな」
小動物という単語に理解出来なかったアーデルちゃんだが、リボーンくんがそう言った事で分かったようだ。
「言っておくがボンゴレの卑劣なボスと、我らシモンのボス炎真は似ても似つかん!
一緒にしてくれるな!」
「何か違うの?生態的に」
雲雀くんにとっては自分以外は基本的に同じなのだろう…
「炎真はここにはいない。だが貴様が来た以上私が倒してやる。
勝負しろ、雲雀恭弥」
「いい。以前の屋上での戦いで君という獣の牙の大きさは見切った。
君じゃ僕を咬み殺せない」
「なに…!?」
「まぁだけど…僕の欲求不満のはけ口には丁度いい肉の塊だ」
「貴様…!!未だシモンの恐ろしさを分かってないようだな。
勝負だ。ルールは互いの誇りによって決定する。
私の誇りは炎真率いるシモンファミリーと、粛清の志!!」
「誇りでルールを決めるのかい?変わってるね。
誇りなんて考えたことも無いけど…答えるのは難しくない。
並盛中学の風紀と、それを乱す者への鉄槌」
「やはりな。ならばルールは簡単だ。
腕章没収戦。相手の腕章を先に奪った者を勝ちとする。手段は選ばない」
「僕は今イラついてるんだ。それを紛らわせられるなら何でもいいよ」
こうして雲雀くんとアーデルちゃんの戦いが始まる事になる。
「小動物 今の君の顔…つまらないな。
見てて。僕の戦い」
覇気の無くなったツナに、彼はそう言い残して滝の下へと飛び降りて行った。
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