継承式編
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後ろにはアーデルちゃんとジュリーくんが追いかけてきていた。
「待ちなさい炎真!!まだ貴方の戦う時ではないわ!!」
「もう無理だよ!!自分を抑えられない!!
しとぴっちゃんを…紅葉を…らうじを…!
そして僕の大切なものを傷付けたボンゴレを………許せないんだ!!」
爆発したように浮いていた瓦礫が四散する。
暴風による轟音の中、あたしはツナ達に聞かれてないのを確信した上で
「どういう事…!?炎真は…ジュリーくんから話を聞いてもDの事は信じられなかったって言う事…!?」
ーーー分かりません!
でもあれは…話を聞いたと言うよりも、また別の怒りと憎しみを植え付けられたように見えます!
後ろにいるジュリーくんを見る。
彼はあたしの視線に気付くとニヤリと意味深に笑った。
「…あの笑み。間違いなく仕込まれてるわ」
ーーー……なるほど。そういう事ですか。
炎真の美香に対する恋心を利用したというのは…
「(どういう事?)」
音が止んだ為あたしは心の中で問う。
ーーー元々ボンゴレへの恨みが強かったのもあるでしょうが…
炎真が恋した貴女をわざとボンゴレ側に付かせる事で嫉妬心が混ざり、憎しみが更に膨張されるでしょう。
炎真は貴女が好きなのですから、話は聞くでしょうから僅かでも疑われるのは予想していたと思います。
しかしそこで隠し持っていた、更に憎しみを膨らませる何かを与える事で…もう彼の耳には誰の声も届かなくなります。
「(じゃあDがあたし達に正体を明かしたのはわざと…!?
わざと正体を明かして真実を話し、話を聞く余裕がない炎真を何としても止めようと敢えてツナ達に付くと見越して…!?)」
ーーー炎真は少なからず嫉妬したでしょう。
好きな人が敵だと思ってる人の元に付き、更にその恨みの大元である綱吉くんに恋心を抱いていたという事すら知ってしまったのですから…
だから…一応話は聞いたのでしょうが…
「(Dが隠し持っていた、もうひとつの何かの情報で…完全に我を忘れてしまったという訳ね…
もしそうなら…あたし、悪手もいい所じゃない!)」
ーーー私達はD様に踊らされていたのです。
やっぱり私じゃ守護者には敵わない…
どれほどジョットとコザァートに助けられていたのか身に染みます…悔しい…っ
「(そうなると…炎真の恨みを膨張させてしまったのは…あたしのせい…?)」
あたしは炎真とツナをどうしても止めたかった。
それだけなのに…!
「それはオレも同じだ…」
炎真の怒りと悲しみを見たツナはそう言いながら何かを飲み込んだ。
「その気持ちが分かるのに…なぜ…オレの仲間を苦しめた!!」
ツナが突然ハイパーモードに切り替わる。
あたしはリボーンくんが撃つ小言弾でしか切り替われないと思っていたけど、ツナが持っていた何かを飲めば自分だけでも切り替わる事が出来るようだ。
炎による激しい噴出にランボくんやあたしは飛ばされそうになるが、それを獄寺くんが腕を掴んで助けてくれた。
「下がるぞ獄寺」
「了解っス!
オラ、さっさと行くぞ」
「あ…」
リボーンくんに指示され獄寺くんはあたしの腕を掴んだまま移動する。
「君にものを言う資格はない!!
消えろ!綱吉!!」
炎真の右手がツナに向けられる。
能力はよく分からないが、多分相手を大地の重力で押し潰す力だ。
あたしがされた時はほんのちょっと押さえつける程度だったが、今の炎真は本気で怒りそしてツナに向けている。
だから体が動かない程度では済まないだろう。
継承式で手も足も出なかったツナを思い出したあたしはツナが殺されると思い一気に怖くなって
「炎真!ダメーーーーーーー!!!」
ドゴォ!
地面が抉れる音がした。
「ツナ…!」
「10代目ーーー!!」
だが、ツナは抉れた地面の中心に立っていた。
「VGを装着してるんだ。以前のツナとは違うぞ」
というリボーンくんの説明にもうツナは継承式の時のように簡単には潰されないのだと知ってホッと胸を撫で下ろす。
「怒っているのはお前だけと思うな!!」
「その程度で図に乗って!ボンゴレめ!!」
ーーージョット…コザァート……
「っ…!」
あたしの目から涙が零れた。
何となく、あたしの涙じゃないのが分かる。
これはきっと…あたしの中にいる人の涙だ…
空を見上げると空中で戦うツナと炎真。
二人はプリーモとコザァートの子孫。
もしかしたら、プリーモとコザァートを重ねて見てしまっているのかもしれない。
仲の良かった二人を知っているからこそ、子孫が憎しみあって殺し合う姿が辛いのだろう。
ツナと炎真はしばらく空中で互角の戦いをした後、地面に降り立った。
「この強さ…血も涙もない残虐なボンゴレⅠ世の正当後継者だけのことはある」
「Ⅰ世はお前の思ってるような男じゃない。
過去の記憶を見ているはずだ。
それにオレはボンゴレを継ぐ気はない!」
「ハハハ…まだ言ってる。
それが君という人間の狡さだ。沢田綱吉」
「狡さ…だと…?」
「君のグローブについている紋章はボンゴレの証じゃないのかい?」
「!!」
「君はいつもそうだ。
ボンゴレのど真ん中にいて、誰よりもボンゴレの力にあやかっているのに
いざとなったら責任逃ればかりじゃないか。
ボンゴレの紋章を振りかざし…他人を巻き込み傷付けておいてボスは継がないなんて、虫がよすぎるよ!」
「……!!違う!
他人を傷付けるつもりなんてない!
オレはこの力を友達を守るために使いたいんだ!
今までも…これからも…!!」
「Ⅰ世と同じペテンで嘘つきだね。
君は本気で血塗られた運命から逃れられると思っているの?
その血の呪縛は決定的なのに…」
「な…何を言っているんだエンマ!!」
炎真の拳にグッと力が入る。
「教えてやるよ沢田綱吉。
君という人間は初代シモンを裏切ったボンゴレⅠ世の子孫というだけじゃない…
僕の両親と妹を殺した沢田家光の息子なんだ!!」
『!?』
その場で全員に衝撃が走るように体が動かなくなり、一瞬思考が止まった。
「僕の家族は沢田家光の指示によって
ボンゴレ門外顧問機関に殺されたんだ!!」
「(家光さんが…!?そんなの有り得ないわ!)」
ーーーD様が隠し持っていた情報…炎真の憎悪の後押しをしたのはきっとこれですね…!
真偽は定かではありませんが…
「(有り得ないっ有り得ないわよ!
だって家光さんはあんなにも優しくて、息子思いの良い人だったもの!)」
ーーー美香…
ですが、それは身内に対するものです。
寧ろ身内を守るために非情になる人は幾らでもいます。
「(でも…!)」
ツナも動揺を隠せないようだ。顔を青ざめさせて
「父さんが……?う……ウソだ!!」
「君は自分に都合の悪いことは、何も信じようとしないんだね…」
泣き続ける炎真にツナは戦意を消失したらしい。
額の炎がみるみる小さくなっていき、やがて消えた。
「っ聞こえたよね!?」
次に炎真は泣きながらあたしを見た。
そして、まるで縋るような目を突き刺すように向けて
「こんな奴を君はまだ信じるの!?
人殺しの息子を!まだ信じるの!?
どうして僕を信じてくれないんだ!!
僕は君を信じてるのに!!」
「炎真…」
「両親と弟を誰かに殺された君だから…僕はその心に共感が出来たんだ!!」
「…………」
「答えてよ!君は、誰を信じるの!?」
「っ…………」
言葉が詰まる。
Dの事は知っていても、家光さんのことは知らないもの。
判断基準が揺さぶられる。
それでも。
それでも…
あたしは…!
「………家光さんのことは…正直分からないわ」
「…………」
「でも、あたしは…!
やっぱりこの戦いはっ間違ってると思う!
仕組まれた事に変わりはないもの!!」
「沢田綱吉が人殺しの血筋である事も変わりはないよ!」
「炎真!その情報は確かなの!?
しっかりしてっちゃんと自分でも調べて!!自分で確かめて!!
その情報が炎真を苦しめるだけに作られた情報である可能性も考えて!!」
「君はシモンの仲間を疑うの!?」
「疑うわ!疑わしい人物と接触したと話したはずよ!
それを信じてくれなかったのは炎真じゃない!」
「くっ…!」
「仲間を装った敵がいる。ファンタジー小説でも王道の展開よ!
それがどうして炎真の中に可能性として残らないの!
頭を冷やしてっ今の炎真は炎真らしくない!」
「うるさい!!
僕は…!ただボンゴレが許せないだけなんだ!!」
あたしの声を振り切るようにしてツナに向かって飛び始める。
ツナは放心しておりボーッと突っ立っていて炎真にあっさり首を掴まれた。
「やめて炎真!やめて!!」
「僕は絶対に許せない!君を殺すまで!!」
「やめてぇええぇぇええええ!!」
「死ね!!」
炎真はツナに向かって炎を灯した右手を突き刺すように振り下ろした。
けれど次の瞬間、炎真は「ぐあ!」と悲鳴を上げてツナの首から手を離し右腕を押さえて呻きながら下がっていく。
見れば炎真の右腕からは何か機械の部品のようなものが次々出てきて生えていた。
「なに…あれ」
「シモンリングによる覚醒だ!」
アーデルちゃんはそう叫び炎真に駆け寄った。
覚醒には痛みが生じるようで、炎真はそれに耐えながらも呆然としているツナを睨み
「ぐ……綱……吉…よくも…妹を…!
真美を……返せ!!」
その血を吐くような炎真の言葉と、嘆きと絶望で涙する目にツナは完全にその場に座り込んでしまった。
その後すぐ炎真はアーデルちゃんとジュリーくんに回収されるようにその場から去った。
後に残ったのは、放心して立てないでいるツナと、それを呆然と見守るしかないあたし達だけだった…
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