継承式編
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「ほ…本当に普通の人なんですね…」
ツナはそう言いながら、木の幹に手をついてゼーゼーと息を整えるあたしに水を差し出した。
森の中を歩き続けて数時間。
普段から鍛錬している彼等は多少長く歩いても問題ないようだが、あたしはそうもいかない。
足を引っ張りたくないけど、こればかりは本当にどうしようもなかった。
「ごめん、なさい…早速足を、引っ張って…しまって…ハァ…ハァ…っ」
「気にしないで下さい。お水…良かったら飲んで下さい」
フルフルとあたしは頭を振り。
「あたしは貴方達の物は信じて受け取れるけど、貴方達はあたしを信じて物を受け取れない。
お水は貴重なものですから、そう安易に渡してはダメです。
あたしは自分のものを飲みますから…気持ちだけで十分です」
「でも…」
あたしは自分が持っていた荷物から水を取り出してひと口飲んだ。
「急ぐのでしたら先に行ってください…」
「そんな事出来ませんよ!
本当に気にしてませんから一緒に行きましょう!
獄寺くんとお兄さんも良いですか?」
「10代目が構わないのなら大丈夫です!」
「オレも構わん!急ぎたい気持ちはあるが、急いだ所で変わらなさそうだしな!」
「ランボさんも疲れたーーー!!おんぶしろツナのバカタレーーーー!!!」
と、お昼寝をしていたランボくんが起きてからはツナや獄寺くん、了平くんに我儘言ったり
リボーンくんにしばかれたりと割とてんやわんやの珍道中だった。
「えっと…あの…こういう事なのでオレ達もあまり人の事言えないというか…
だから本当に気にしないで下さい…」
「ツナー!ランボさんねーパンケーキ食べたい!!」
「なんで急にパンケーキなんだよ!
そんなの今まで自分からねだってきたことないだろ!?」
「なんかこの人見たら食べたくなったんだもんね!」
と、ランボくんがあたしを指差す。
「こらっ失礼だろランボ!!
すみません本当に…!」
「……いいのよ」
フッと笑ってあたしはツナの体にへばりつくランボくんに手を伸ばし、ふかふかのアフロの頭を撫でた。
そしてしゃがんで視線を合わせると
「パンケーキが食べたいのねランボくん。
今は食べられないけど…知り合いにお姉ちゃんがいるならお願いするといいわ。
きっと美味しいパンケーキを作ってくれるはずよ」
「ほんと!?」
「ええ。それまで我慢できる?」
「ええ〜どうしよっかなぁ〜
だってランボさん今食べたいしぃ〜」
「ここにブドウの飴玉があるの。これで我慢できる?」
ずっと持っていたけど捨てきれずにいたブドウの飴玉をバッグから取り出してランボくんに見せる。
途端にランボくんは目を輝かせ
「ブドウ!?できるできる!ランボさんね〜ツナ達よりも偉いし強いからガマンできるんだよ!!」
「そう。凄いわね」
と、飴玉をランボくんに手渡した。
ランボくんはその飴玉を大事に大事に抱いて静かに眺める。
一部始終を見ていたツナは感心したようにため息をつき
「すげー…女の人って凄いなぁ…子供の扱い慣れてる…」
「あはは…たまたま持ってた飴玉が好きな味だったようで良かったわ。
ごめんなさい…やっぱりちょっと休憩していいかしら。
少し離れた所に座りやすそうな石があったの。そっちに行ってます。
五分ぐらい戻ってきますので」
「あ…はいっ」
何とか休憩出来そうでホッと息をついて、先程見つけた座りやすそうな石を目指して歩く。
「女の人だから慣れてるとはオレは思えねーな」
「リボーン?」
「オレには…ランボの特性を知った上での扱いに見えたぞ」
そんな会話が後ろでされてるとも知らずに。
それから少しまた歩いて、辿り着いたのはジャングルのように鬱蒼と木々や葉が茂る森の奥。
「ハァ…ハァ…うう…」
「あっあの…大丈夫ですか…!?」
「チッほんとに軟弱な女だな」
「オイ!あれを見ろ!」
了平くんが指差す方には木の葉が渦巻くように模様をつくっている開けた空間があった。
突如強い強風が吹いて、疲労でヘロヘロのあたしが思わず倒れかけるが
それを察知したらしいツナが体を支えて転倒を防いでくれた。
しばらく経って風が止んだ為あたしはツナから体を離し
「あ…ありがとう」
「いえ」
知ってる人の気配を感じて開けた空間を見る。
「この植物は全て死んだ初代シモンの血痕から生えた芽を聖地に植え直し、育てたものだ。
今度はこの植物に貴様らボンゴレの血を吸わせる番だ。結局な」
現れたのは紅葉くん。
「まずは謝罪をしたい。ボンゴレは少し待て」
そう言って紅葉くんはあたしを見た。
「さっきはすまなかった。
また裏切られるのかと思い焦ったのだ。
思えば僕もお前に世話になっていたというのに、結局配慮に欠けた言葉を浴びせてしまった。
理不尽と無礼を許して欲しい」
「……気にしてないわ。
シモンのみんなの過去の事は知ってるもの。
知ってる上で、裏切り者扱いされる覚悟でみんなから離れたの」
「炎真はお前がまだボンゴレに騙されてると思い、『救う』という方針で話を纏めた。
過酷だろうが目を背けず直視してほしい。
ボンゴレの本性を知り、必ず帰ってくることを僕は願う」
「そう。炎真は結局あたしの言葉にひと言も耳を貸してくれなかったのね。
……仕方ないわね。炎真って変な所頑固だし」
ーーーやっぱりD様を引きずり出して皆さんの前にポイ投げするしか信じてもらえないようですね。
「(ポイ投げ出来るといいなぁ…)」
あたしの中の人がとりあえず怒っているのはよく分かった。
「何故だ!何故こうなった紅葉!
お前とは拳を交えスポーツマンとして分かり合えたはずだ!!」
あたしと紅葉くんの話に一区切りがついた所で了平くんが叫んだ。
「それを上回る憎しみがボンゴレにあるからに決まっとろうが。
大体ハナからスポーツマンシップなど持ち合わせておらんぞ」
「なにぃ!?」
「ボンゴレによってどん底に叩き落とされ、地面を這いずり回っていた我々に
貴様らのようにのほほんとお遊びのスポーツで遊んでいる余裕があったと思うか?
僕の拳闘は生きていく為の手段!
そして貴様らボンゴレに復讐するための兇器…!」
「こ…紅葉…」
「さぁ纏めて相手になるぞ。
結局貴様らを全滅させる事などこの青葉紅葉一人で事足りる」
「ふざけるな!
お前との勝負に多勢でかかることなどせん!
正々堂々一対一で勝負!!
それがボクサーとしての、オレの誇りだ!!!」
誇り…それは今回の戦いの際に互いが賭けるもの。
その誇りを折られた時敗者となり、敗者は永遠に復讐者の牢獄に閉じ込められる。
紅葉くんは了平くんの誇りを聞き「ハン」と笑ってから
「いいだろう。
僕も自分の拳に誇りを賭けてやる」
こうして最初の戦いは紅葉くんと了平くんの誇りを賭けた拳の勝負が始まった。
始まってしまった。
ーーージョット…コザァート…止められなくてごめんなさい。
私はやっぱり、何も出来ない人です…
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