継承式編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
語られたのは私も聞いたボンゴレとシモンの関係の歴史。
でもそれが偽りの歴史ということを知っているのは、この会場ではあたし一人だろう。
ボンゴレ側は勿論そんなシモンとの歴史を知る筈もなく、呆然と炎真達を見つめていた。
初代シモンの血でシモンリングを覚醒させた炎真が言った。
「シモンファミリーはここに宣言する。
古里炎真が10代目シモンボスを継承し
ボンゴレへの復讐を果たすことを誓う。
そして世界中のマフィアを再組織化し、マフィア界の頂点に君臨する。
この戦いは シモンの誇りを取り戻すための戦いだ」
傍らにいるあたしはそっと炎真を見上げる。
冷たい目…まるで今までの炎真とは別人のよう。
こんなのやっぱり、炎真らしくない…!
「なんでだ炎真!!お前達が山本を…!」
ツナは既にハイパーモード化しており、あの綺麗なオレンジの瞳で炎真を睨み付ける。
怒りもあるけれど、それよりも戸惑いと悲しみが濃く瞳に表れていた。
「まだ分からないのかいツナくん。
その体には裏切り者のプリーモの血が流れているというのに」
「ボンゴレプリーモはそんな事をする男じゃない!」
「会ったこともないのによくそんな事が言えるね。
何故初代ボンゴレが僕達シモンをこの世から抹殺したか分かる?
それは僕達の先祖が持っていたボンゴレに対抗する力を恐れたからだよ。
大空の7属性に対をなす、大地の7属性。
この力故にボンゴレの兄弟ファミリーたりえた。
そして、この力故にボンゴレに恐れられ裏切られた。
この炎はシモンの誇りを取り戻す為の炎」
淡々とした態度の炎真に対してツナは強気に
「お前は間違っている。
お前達の辛い過去も、怒りの理由も分かった。
だが…人を傷付けることは、誇りを取り戻すことじゃない!!」
この言葉は炎真を怒らせたようだ。
彼は傍らのあたしを腕で下がるよう指示しつつ
「アーデルハイト、下がっていて。
僕一人で十分だ。ツナくんと守護者を潰すのは」
「ほう。言うでは無いか古里炎真」
「てめーじゃ無理だぜ」
了平くんと獄寺がそう言って、ツナ達も臨戦態勢に入り炎真からの攻撃を迎え撃とうとする。
炎真はまず、了平くんと獄寺くんを標的にした。
手をほんの少し動かしただけ。
それだけで獄寺くんと了平くんの体が浮いて
「ぐあ!!」
「がっ!!」
部屋の両脇の壁が凹む程二人が叩き付けられた。
「(獄寺くん…了平くん…!)」
次にクロームちゃんと雲雀くんが天井にドカァ!と叩き付けられる。
「っ……………!!」
見ているしか出来ない。何も出来ない…!
立っていた山本くんが何故か霧のように霧散し、それを見たアーデルちゃんが
「やはり山本は幻覚か。我々が見破れぬとでも思っていたのか」
「(山本くんは…!?なに、どういう事なの…!?
山本くんはどうしたの…!?)」
「ツナくん、信じかけてたんだよ」
壁に叩き付けられた4人が宙に浮く。
嫌な予感がしたらしいツナは「何をする気だ!!」と叫ぶが、炎真は構わず
「なのに君は」
「やめろ!!」
あたしはつい目を逸らしてしまった。
閉じた瞼の暗闇の向こうでゴキャ!という嫌な音が聞こえ、次にドッと重たいものが次々床に落ちる音が聞こえる。
「みんな!!」
恐る恐る目を開けて確認すると、四人がツナの前で倒れていた。
「なぜ君にだけ攻撃してないか分かる?
ツナくんには初代シモンがプリーモに受けた苦しみをしっかり味わってほしいんだ」
「エンマ…!!」
再び立ち上がろうとするツナの守護者達。
けれど炎真はそれを「いくよ」の一言で押さえつけ、再び床に這い蹲る格好にさせてしまう。
「ああ!!」
「ぐああ!!」
四人がどんどん床にめり込んでいく。
そのまま押し潰されてしまいそうなのを、炎真が絶妙に力を調整してギリギリ殺してないようにも見える。
「やめろ!!!」
遂にツナが黙っていられなくなり炎真へ向かって飛んできた。
それを炎真が右腕で立ち向かい、二人はガッ!とリングをした腕をぶつけ合う。
「あ!」
リングの共鳴なのか凄まじい力が生まれ目も開けられない程の光が二人を中心にして部屋中に広がる。
「っ………?」
その時あたしは胸元に熱さを感じ、何となく自分の指輪を取り出した。
腕で目元に影を作りながら確認した指輪は、丁度花の刻印がある箇所がキラキラと光っていた。
「(どうして…まさか、大空のリングと大地のリングの共鳴に反応して…?)」
この指輪はボンゴレだけに関係するものじゃなかったの?
どうしてシモンが持つリングにも反応するの?
ーーーその指輪は、ジョットとコザァートが私の為に作ってくれた仲間と友情の証でした。
「(え………)」
ーーー私は…ボンゴレでも、シモンでも、守護者になれない普通の人でした。
私は大好きな、力になりたい彼等の本当の仲間になれないのだと落ち込んでいたのですが
それを知ったジョットとコザァートがボンゴレリングに似たデザインで、星に似た花の刻印を入れ
そして二人の炎を込めた指輪を贈ってくれたのです。
決してその炎を使って守護者達のように何か出来るような量でも、ボンゴレリングやシモンリングのように能力を授けてくれる物でもありません。
けれど、仲間の証という形にこだわってしまっていた私の為にリングに模して作ってくれた指輪。
「ファミリーがなくても、炎がなくても、オレ達は仲間で友達だ」
そう二人は私に言ってくれて指輪を渡し、Gはそれを見届けてくれたのです。
私とジョットとコザァート、そしてGは幼馴染みだったのです。
「(……………)」
ーーーそれがどうして『初代ボンゴレの秘宝』の鍵となっているのでしょうか。
私も、秘宝が何なのか分かりません。
きっとそれは私がいなくなった後に作られたもの…
「(やっぱり…間違ってる)」
バキ!という何か重いものが壁に叩き付けられる音が聞こえてハッと炎真の方を見ると、ツナが天井にめり込んでいた。
ツナはそれでも何とか炎真に反撃しようとするけれど、炎真は容赦なくツナを更に天井にめり込ませていく。
「やっぱり間違ってる…こんなの、間違ってるわよ…!
ツナと炎真はこんな関係になんてなるはずなかったのに…!」
気付けばあたしは泣いていた。
悲しくて、悔しくて、何も出来ない自分がただただ情けない。
「帰ろうアーデルハイト。
面倒な外野も来たことだし…このままだと簡単に殺しちゃいそうだよ。
一瞬で殺してしまったらシモンが背負わされたのと同じ苦しみを味わせられない」
「そうだな。息の根を止めることなどいつでも出来る。
彼等に味わわせるべきは生き地獄」
そこでジュリーくんが床に埋もれて気を失っているクロームちゃんを抱き上げ
「クロームちゃんも連れて行くよ。
デートする約束してるからね〜ん♪」
「クローム!!」
「ツナくんは自分の心配をした方がいいよ」
炎真は更にツナを天井に追い込んだ。
そのせいでツナはガハッ!と血を吐き
「炎真…!」
もう、見てられなくて…あたしはつい炎真の左腕にしがみついた。
彼は泣いているあたしを見てゆっくりとツナに向けていた右腕を下ろす。
ツナを天井に押し付ける力がなくなったのか、まるで剥がれるようにツナは床に頭から落ちる。
「あ…」
駆け寄りたい。けど…けど、今のあたしは……
「今日この日がボンゴレ終焉の始まり。
そして新生シモンの門出だ。
帰りましょう 聖地へ」
アーデルちゃんの言葉の後、後ろにあった壁を壊して炎真達は出ていく。
あたしは動けずにいた。
床に倒れ伏すツナと、みんなを前に足が動かなかった。
やがてツナが力を振り絞るように顔だけを上げてあたしを見ると
「………っあなた………は…………っ」
「(ツナ……!)」
駆け寄りたい。けど、今のあたしは貴方にとって知らない人。
貴方の、敵側の人。
「っごめんなさい…!」
泣きながら、振り切りるようにツナに背を向け炎真達の後を追う。
ーーー美香、貴女と私の戦いはこれからです。
気をしっかり持ってください。
「分かってるわ…分かってる。
何も出来ないけど、あたしはあたしで出来ること事をする…!」
涙を拭って炎真達の元へ走る。
あたしが出来ることを、する為に。
・NEXT
