継承式編
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10年後の未来の激闘から元の時代に綱吉は帰ってきていた。
取り戻したいつもの日常を噛み締めるように、だが少々うんざりしながら補習で出された宿題に頭を抱えて机に向かう。
リボーンはそれを見張るように近くでテレビを見ながらエスプレッソを飲んでいた。
「そう言えば」
宿題からの現実逃避もあり綱吉はハッと思い出してポケットからひとつの箱を取り出す。
リボーンもそれを見てエスプレッソをテーブルに置くと綱吉の机にピョンッと飛び乗った。
「すっかり忘れてたけど、もしかしたらこれって匣兵器の要領で開けられるんじゃないか!?」
「『初代ボンゴレの秘宝』か」
「でも…結局10年後の未来で誰も知らなかったよな。
『初代ボンゴレの秘宝』のこと」
「あの未来では秘宝は見つかってねーのかもな」
「10年後かぁ……そういえば京子ちゃん…オレのことツっ君って………
へへへ………もしかして………付き合ってたり………!?」
「ニヤニヤしてねーでさっさと開けろ」
「へぶっ!」
リボーンの鋭い蹴りを頬に喰らい、綱吉は体制を整えてからボンゴレリングに炎を灯し差し込み口に挿入した。
すると秘宝はカチン!と音を立てて解錠され上蓋が浮いた。
「あ……開いた!!」
「やっぱりそうだったのか…」
「こんなの未来に行かなきゃ分からないよ…
ていうか、リングの形が変わってるのに原型のリングの方がすんなり入った気がする」
「『初代ボンゴレの秘宝』だからな。
原型のリングを基準に差し込み口が作られたのだろうが、オレは多分重要なのはリングの形より血筋と大空の炎だと思うぞ。
で、家光の予想だと箱の中身はもうひとつ箱があるって言ってたな」
「どんだけ頑丈なんだよ…やっぱり兵器なのか?」
「さーな。とりあえず開けてみろ」
上蓋が浮いた秘宝は炎を灯したリングで解錠されたという特殊な方法だったが、秘宝自体はなんとも普通で素朴だった。
ずっと解錠されず正体不明だった秘宝の中身が分かるかもしれないと緊張し、恐る恐る綱吉は慎重に蓋を開く。
中にあったのは、一回り小さな箱だった。
「へ…」
「家光の言った通りだったな」
拍子抜けしつつ綱吉は中身の箱を取り出す。
箱は銀色にピンクゴールドの縁取りがされた、なんとなく女性用を思わせる丸みのあるデザインだった。
「またオレのリングで開けるのかな」
「いや…ここを見てみろ」
と、リボーンが指差したのはもうひとつの箱にある穴。
それは指輪の挿入口のような穴で、穴の上には星のようなマークが描かれている。
「星…?」
「星みてーな形の刻印だな。
花にも見えるが…花なら6枚の花弁か。
多分、この刻印がされてある指輪じゃなきゃ開かねぇぞ」
「え゛ーーーーーー!?
星の刻印を持つ指輪なんて誰が持ってるんだよ!
星の守護者なんて聞いたことないぞ!?」
「オレも聞いたことねーぞ」
綱吉は念の為自分のリングに炎を灯して差し込み口に挿入してみる。
だが、やはりリボーンの言う通りなのか全く反応しなかった。
「はーあ。やっと秘宝が何なのか分かるってちょっと楽しみだったんだけどな。
星の刻印の指輪を持つ人なんていちいち探してらんないよ…」
「もしかして秘宝は…」
「ん?」
「兵器じゃなくて、星の刻印の指輪を持つ誰かへの贈り物かもしれねーな」
「そうなのか?」
「でなきゃわざわざ守護者のものでもねぇ刻印をした箱を、こんな回りくどい解錠方法で保管しねーぞ」
「それは確かに…」
「星の刻印の指輪の持ち主を探して渡してやらねーとな」
「何処にいるんだよそんな人…途方も無さすぎるだろ。
……でも、なんでだろう。
オレ…なんか…知ってそうな気がするんだよな…
全然分からないのに」
「意外と会ってたりな」
「あははっそんな事有り得るのかよ」
綱吉は笑いながら秘宝の蓋を閉じる。
そして再びポケットにしまうと、目の前の真っ白な宿題に項垂れるのだった。
ーーー有り得ません。そんな事、絶対に有り得ません!
あたしの中にいるもう一人が叫んでいる。
炎真達からボンゴレプリーモと初代シモンの間に何があったのかを聞いてみた。
炎真達は声を絞り出すように教えてくれた。
ボンゴレプリーモは初代シモンと兄弟ファミリーだった。
それほどまでに仲が良かった二人だった。
だが、ある戦いでプリーモはシモンに囮役を命じ、それを初代シモンは快諾した。
しかしプリーモはそんなシモンを裏切り、その結果初代シモンは敵に八つ裂きにされファミリーが無惨な最後を遂げたという。
それだけでなくプリーモは敗戦の責任をシモンが単独行動したからだと生き残ったシモンファミリーになすりつけ、戦犯扱いした。
その結果シモンは孤立し、永遠の罪人として今も虐げられているという。
ーーー彼が…ジョットがコザァートを裏切った…ですって!?ふざけないで!
ジョットは付き合いの長い幼馴染のGよりもコザァートと気が合っていて本気で仲良しでした。
仲が良すぎて私、嫉妬してたくらいです!
ジョットのバーーーーーカ!もうコザァートと結婚しちゃえ!!
「分かった。分かったから落ち着いて…」
自分の部屋であたしの中で地団駄を踏みそうな(踏んでるかもしれない)くらい喚いている中の人を宥める。
「あたしはプリーモにも初代シモンにも会ったことないから分からないけど
だからと言って今のボンゴレであるツナと今のシモンである炎真が恨みあって戦う事は無いと思うわ。
仮に話が本当だとしても」
ーーーいや有り得ないんだってば!
「万が一よ」
ーーー万が一も億が一も有り得ない!!
「そう…」
ーーー絶対におかしいです。
これはもう勘違いとかいうレベルの域を超えて陰謀すら感じます。
何者かがジョットとコザァートの関係を無理矢理捻じ曲げて後世に伝えたとしか考えられません。
何が目的でそうしたのかは分かりませんが…
「そもそもその情報…何処から入手したんだろうね」
ーーー美香、調べてみましょう。
ジョットとコザァートの関係をここまでめちゃくちゃに捻じ曲げた人を私許せません!
「調べるってどうやって…」
ーーー炎真に情報の出処を聞いてみるのです。
そこから私達が出来る範囲で調べてみましょう。
「あたし、シモンに身を寄せてはいるけど基本的にただの女子高生よ!?
そんなの調べられるかしら」
ーーーやってみなければ分かりません。
美香だって綱吉くんと炎真が戦うのは避けたいのでしょう?
「それは…そうだけど…
あたし、そろそろ炎真とも離れた方が良いと思うのに」
ーーー………終わった後に離れれば良いでしょう。
離れれば恋心も全て星が消してくれますから…
でも私は別に離れる必要はないと思います。
誰かに恋をするなんて自由だと思いますから。
「その人が間違った人に恋をしていたとしても?」
ーーー間違っていると判断する基準は何ですか?
星が記憶を消すからですか?
相手の人生を変えてしまうからですか?
良いですか美香。星は生命を生み出し育む存在で、星が生きていなければ全ての生命が生きていけないのは確かです。
だから躍起になって生きようとするのは星の本能でしょう。
ですが、生命の…ましてや個人の生きる道にまで介入する権限は持っていません。
それはただの星の過干渉です。
好きな人がいたけど、好きな人が変わった。なんて思春期に限らず人間ならよくある話ですよ。
『知ったことか』と、たまには星に強気に出ても良いんですからね。
だって世界が違うだけで、貴女だって同じ星の元に生まれたのですから…
「(星の過干渉…確かにそれは、あるかもしれない)」
でももし人生を変えてしまっていたらどうしよう。
あたしと関わらなければ幸せいっぱいで順風満帆な人生を送れたかもしれないのに、それを変えてしまっていたら申し訳ないなんて言葉じゃ済まされない。
あたしはまだ決断出来ないまま、並盛へ向かう日がやって来たのだった。
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