継承式編
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ツナと炎真は学校を休んでいたらしい。
あたしが退院するのは午前中だと読んで、病院の表と裏どちらからあたしが出てきてもすぐ駆け付けられるようわざわざハイパー化して見渡しやすい空で待機していたという。
あたしは炎真とツナと一緒に久しぶりの沢田家の前にやって来た。
何となく入りづらくて門の前で立ち止まった。
それに気付いたツナが振り返り
「…美香?」
「…………」
「……大丈夫だよ。母さんにはオレとリボーンがうまく言ってる。
元々美香は自分の家に帰るって話で家から出ていっただろ?
だから、家の整理が終わって…やっぱり考えが変わって帰ってくる事になったって言ってるんだ。
今日学校を休んだのは、美香の手伝いの為だって言ってる」
「でも…あたし…あんなに施設に入るとか、家に帰るとか…騒いでたのに。今更…」
「気にするなって。寧ろ母さん喜んでたよ。
やっぱり美香がいないと寂しいってさ。
記憶が無くなってた事に関してはちょっとド忘れしてただけだって誤魔化したし…」
「記憶を取り戻した家光もママンに連絡してフォローしている。安心しろ」
「………うん」
「だが、炎真はいいのか?
今まで美香はずっと炎真達といたんだろ?」
炎真はそう言うリボーンくんに微笑し
「うん…美香はツナくんの家に帰るべきだよ。
元々ツナくんの家にいたんだしね。
…ねぇツナくん」
「ん?」
「ツナくんも美香のこと、好きなんだよね?」
「な゛……それは、その!」
「先に美香に告白したのは僕だけど
先に美香と出会ったのはツナくんだ」
「結局ヘタレてあの時キス出来なかったしな」
「ちょお!?何言ってるんだよリボーン!!
つか、いつから見てたんだよ!?」
「僕もキス出来なかったし…」
「んなーーーーーー!?」
「競走しようよツナくん。
どっちが先に美香に好きになってもらえるか」
「…………は?」
「僕、もし相手がツナくんじゃなかったら諦めてたと思う。
でもツナくんが相手なら競走してみたいって思ったんだ」
「…………」
「きっとⅠ世も初代シモンも…美香の中の人をどっちも好きになって、競走したかったんだと思う。
だけど時代や環境を考えて身を引いたんだ」
「エンマ…」
「ね、ツナくん。次は負けないよ。
恋のライバルって親友っぽくない?」
「………うん。オレも負けない」
なんて仲の良い親友同士のやり取りなんてしてるけど
「待ってよ…当事者であるあたし置いてけぼりなんだけど…!?」
「それにお前ら二人とも平等に一敗してるしな。
見知らぬ男に」
「やめろよリボーン!テンション下がる!!」
「えっ一敗って…」
「美香は彼氏いた事あるぞ」
「ええーーーー!?」
「大丈夫だってエンマ!元の世界での話だからこっちの世界に美香の元彼はいないよっ」
「そ…そうだよねっ
元彼まで出てくるってことにはならないよねっ」
「元々ならないわよ…」
「本当に好きなら好きな女に元彼がいようと関係ねぇのにそこんとこガキだな。
ダメダメコンビめ」
炎真とは家の前で別れて沢田家に帰ってきた。
出迎えてくれたフゥ太くんやランボくん、イーピンちゃんに抱きつかれ、ビアンキさんにも優しく出迎えられる。
そして
「おかえりなさい美香ちゃん」
今にも泣き出しそうな奈々さんが部屋の奥からやってきた。
「…………あの、その……本当に…ごめんなさい」
奈々さんは頭を振り
「いいのよ…美香ちゃんがこうして帰ってきてくれただけで嬉しいわ。
でも、何か悩み事があるなら今後は何でも話してちょうだい。
力になるから…!」
「奈々さん…」
「今日の夜はお御馳走ね!
美香ちゃんの大好きなお寿司食べに行きましょ!」
「山本にもう話してるんだ。
今日は山本の店を貸切にして、みんなを呼んでパーティーだからな」
「パ…パーティー?」
ツナはコソッと耳元で「退院祝い。表向きは転校生のエンマ達の歓迎会と帰ってきた美香の歓迎会だけどな」と囁いた。
それを聞いたあたしは少し躊躇しながら
「あ、あの」
「ん?どうしたの?」
「今日は…もう、いいので…明日は、良かったら」
「?」
「奈々さんの…オムライスが食べたい、です。
あんなに美味しいの…初めてで…
なんだか…好きになっちゃった…っていうか…
また…食べたくて……」
この歳でオムライスなんて…恥ずかしくて目を逸らしモジモジしていると
「まああ!嬉しいわ美香ちゃん!
もちろんよっ美香ちゃんの為なら何度だって作ってあげるわ!
ほら、早く家に上がって!家の片付けで疲れてるでしょう?部屋でゆっくり休んでらっしゃい」
「は、はい。おじゃま…」
「『ただいま』だろ?」
「ツナ…」
「家に帰ってきたんだからさ」
「……た…ただいま…ですっ」
「はい。おかえりなさい」
奈々さんは、そう言って優しく微笑みあたしを抱きしめてくれた。
あたしの部屋はツナの言う通り掃除されてるだけで何も変わっていなかった。
置いてきた小物類とか、本や書類等が綺麗さっぱり消えてはいたが。
あたしの荷物を持ってくれていたツナも部屋に入ってきて
「な?あまり変わってないだろ?」
「うん…」
「でも…リボーンに見せてもらったんだけど
海で一緒に撮った写真とか、美香も一緒に映ってたはずなのに美香だけ綺麗に消されてたんだ。
美香がこうして戻ってきて、オレ達も記憶が戻ったのに元に戻ってないってことは
多分写真もそのままなんだろうな…」
「……仕方ないわね」
「仕方なくない。また一緒に撮ろう。
これから何度も、何回だって一緒に撮るんだ。
海だってまた来年一緒に行って撮ればいい。
とりあえず手始めに今日のパーティーの写真、美香は何度も一緒に撮ってもらうからな」
「ええ…」
「それから、その」
「?」
ツナは持ってたあたしの荷物をその場に置くとあたしと向き合い、頬を赤く染めて
「色々出遅れてるけど…やっぱり自分からも伝えたい」
「え」
「好きだ。美香」
「っ…」
胸がドキッと鳴る。
痛い程高鳴る胸を抑えながら、あたしは
「でも…京子ちゃんは……」
「好きだったよ。もちろん。
でも今は美香が好きだ。
好きな人が変わるって…悪いことかな?」
「悪くは…ないと思うけど…」
「美香は?」
「えっ」
「オレのこと、好き?」
心臓が高鳴りすぎて本当に痛い。
ツナに聞こえてしまったらどうしようと思うくらい。
何とか隠せないかと無意識に胸元に自分の拳を押し当てる。
「あの…その…ほんと、言うと…好き
「え゛…好き、だった?」
「でもツナは京子ちゃんが好きだからって諦めようとしてて…その最中にあたしとツナは離れて
そんな中炎真に大切にされて、告白されて…
ダメだって分かってても炎真のことちょっと気になり始めてて」
「な…」
「ご、ごめん。優柔不断で…
だけどどっちが好きなのか今は本当に分からないの」
「…そっか。なら…やっぱり炎真と競走しないとな。
それに炎真なら仮に負けても…悔しいけど、大切にしてくれるって信じられる。
でもオレ、負ける気ないから」
「っ…」
ツナはまっすぐとあたしを見つめ、こう言った。
「美香に『好き』って言わせてみせるよ。死ぬ気で」
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