継承式編
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温かい炎を感じた。
意識もなく、真っ暗で…泥の中に沈んでいるかのように眠っていたあたしだったけど
胸に何か熱いものを感じてそれが刺激となり意識がハッとした。
目が開かない為、刺激したそれが何か分からなくて、「なんだろう?」とその熱いものに意識を集中させると炎を感じたのだ。
炎…それも、激しい熱さじゃなくてとても優しく…温かい。
真っ暗な闇の中で手探りで炎を探す。
やっと見つけて、その炎に手を伸ばすとパシッと握られた気がした。
驚いて、あたしは思わず目を開けて……
ーーー美香、美香っ良かった…良かったですぅぅうううう゛う゛う゛っっっう゛え゛っ
「(頭の中がうるさい…)」
目が覚めて最初の朝。
面会時間が始まると同時にツナ達と炎真達が部屋に乗り込んできた。
まるでホテルの一室かのような豪華で広い個室があっという間に人でみっちりと埋まる。
「ちょ…みんな学校は!?まだ9時よ!?」
「そんなのサボりだよ!面会終わってから行けば良いんだから!」
「そうだよっちょっとくらい平気だって!」
「平気じゃないわよ♡」
「ぐへ!?」
何故かセーラー服姿のリボーンくんがツナの後頭部に飛び蹴りをする。
「なにすんだよリボーン!」
「ま、今回ぐらいは大目に見てやるが
その代わり帰ったら補習をねっちょりだからな。
丁度宿題も溜まってるし」
「ね…ねっちょり…」
「ツナから美香さんが目を覚ましたって聞いて居ても立ってもいられなくてさ」
「仕方ねーから来てやったぞ」
「極限に安心したぞ!」
「山本くん…獄寺くん…了平くんも」
「本当に心配しました。ずっとこのままではないかと気が気ではなくて」
「結局目を覚ましたのだ。めでたい事だ」
「アーデルちゃんに紅葉くん達まで…」
あたしのベッドの周りは沢山の人に囲まれていた。
「それにしても美香…どうして崖なんかにいたの?
ツナくんが助けてくれなかったら死んじゃってたんだよ?」
「色々疲れちゃったから一人になりたくて、良い場所がないか探してたの。
そしたら足を滑らせて転がり落ちて…そのまま」
「そうだったんだ…」
そしてあたしはツナを見る。
昨夜は意識が戻りたてもあって頭がぼんやりとしてよく覚えていない。
でも今…改めてツナ、そして山本くん達の様子を見ると…これは、多分…
「えっと……つな…よしくん?」
「ツナ。そう呼んでくれてただろ?」
あー…やっぱり思い出しちゃってる。
「(なんで思い出せてるんだろう…星の修正仕事雑すぎない?)」
ーーー何かトリガーになったのか…はたまたそれまでのやり取りがあったからトリガーになったのか…謎ですね。
「あの…ツナ、あたし…」
「いいよ。もういいんだ。
こうして戻ってきてくれたのなら」
「え…」
ツナは優しく笑っていた。
「何か理由があったんだよね?
それも、多分美香の事だからオレ達を思って…」
「…………」
「だからいいんだ。
でも 次は怒るからな」
「わ…分かったわ」
正直ホッとした。炎真もツナから事情を聞いてるはずなのに何も聞いてこなかったから。
他のみんなも何も聞いてこず楽しそうにいつも通り笑って話している。
「(これならまだ間に合いそうね)」
思い出してしまったのなら、なるべく早めに離れないと。
実は今朝、今日検査をして何処にも異常がないようなら明日には退院していいと言われている。
明日はまだ平日。ツナ達は学校だから…その間にでも…
「あ…そういえばツナ…ここの入院費って」
「9代目が払うから心配しなくていいって言ってた。
だから気にせずゆっくり体を休めるんだぞ」
「そう…今度お礼を言わなくちゃダメね」
「ディーノさんと父さんもお見舞いに来たんだ。
父さんはともかくディーノさんにも連絡しないとな」
二人もあたしの事思い出しちゃったってわけか…
「(それにしても…)」
あたしのベッドを囲むボンゴレのみんなとシモンのみんなは笑っていた。
本当に仲直り出来たのだと、今更ながら実感する。
「……仲直り出来て良かったわ」
あたしのその言葉に全員が黙って室内がシンと静まり返る。
「……美香、本当にごめん。
信じてあげられなくて…裏切り者扱いしたりして。
僕達シモンの為に一人でDと戦っていたなんて…
こんなの償いきれないよ…!
僕はもう二度と美香を傷付けたくない。
誓うよ。僕は今後何があっても美香を信じる」
「気にしないで炎真。
一人で戦ってたなんて大袈裟よ。
結局あたしは何も出来なかった上に利用すらされていたもの。
寧ろ状況を悪化させたも同然だわ」
「そんな事ない!
美香は普通の女の子なんだから守護者でもあるDに敵わないのは仕方ないよ!
それでも僕達の目を覚まさせようと、一人になる決意をしたんだ。
それだけでも…十分凄い」
「オレも美香がいてくれたから心強かったんだ。
それに…オレ達の事をずっと信じ続けてくれて嬉しかった」
「ツナ…」
「もう心配しないで美香」
「オレ達はちゃんと仲直り出来たから。
エンマ達とはずっと友達だよ」
「………本当に、良かった……」
そう言ったのはあたしだったけれど、心からそう思ったのはきっとあたし中にいる人だろう。
プリーモとコザァートを知っていて、そして仲も良かった人達の子孫が恨みあい、憎しみあって戦っている様子はきっと心が引き裂かれる程辛く悲しいものだったに違いない。
「(良かったわね)」
ーーーはい。本当に…やっぱり二人は、笑いあっていてこそです。
そう脳内で聞こえる声は少し涙ぐんでいるように感じた…
あたしは検査がある為検査着に着替える必要がある。
その事を伝えるとお開きとなるきっかけになったようでみんな学校へ向かうことにしたらしい。
ゾロゾロと部屋から出ていく集団で、ツナが一人「あ、そうだ」と言って振り返りあたしのベッドに戻ってくると
「退院いつぐらいになりそう?」
「今日の検査結果次第って言ってたわ」
「そっか。早ければどのくらい?」
「そんなに早く退院してほしいの?」
「当たり前だろ?早く帰って母さんにはちゃんと謝れよ」
「……あたしの部屋はもうないでしょ?」
「あるよ!……美香の部屋は、何故か母さんが片付けたがらなかったから…」
「!!…………」
「掃除はしてるから大丈夫。
というか、小物とか…何でか色々消えてて…」
「そう…」
「それで?どのくらい?」
「ええ…だから検査結果次第…」
「目安とかあるだろ?」
「ううん…じゃあ多分…
「明後日だね。分かった。
今日の夕方学校帰りにまた寄るよ。
その時に検査結果教えてね」
「分かったわ」
「ねぇ美香」
「ん?」
「嘘はイヤだからね」
「え」
ツナは意味深にそう言ってあたしに背を向けて部屋から出ていった。
「(まさか…気付いて……?)」
そんなはずない。そう思いたいけど、超直感を持つ彼なら有り得ないこともない。
「…………」
毛布をぎゅっと握る。
「(離れるなら明後日の方がいいかしら…
でも明後日は土曜日だし。
やっぱり明日の昼間に…明日なら平日だから、学校にいるツナは動けない)」
ごめんねツナ。でもツナや炎真の人生をこれ以上壊したくない気持ちは変わらない。
ツナと炎真があたしを暗い意識の中から助けてくれた事は知ってるわ。
だからこそ、大切な人だからこそ。
あたしとこれ以上かかわってはいけない。
笑いあう貴方達の中にあたしがいないのが
本来の貴方達なのだから…
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