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  • 恋の禁断症状 ブチャラティ

    20210919(日)10:35
    私の仕事はブチャラティを守る事。

    「ちょっと!隠し撮りはダメですよ!」
    「いいじゃない少しくらい!!」
    「相手に同意を求めずに撮るのは常識的にダメです!!」

    そう、任務以外でも彼は四六時中狙われているのだ。もしかしたら、彼の命を狙う男達よりも隙を狙っているのかも知れないと私は最近思う。
    護衛チームのメンバーは各々にファンが付いていて、ひっそりと見つめる者、想いを伝える者と居るがブチャラティのファンの女性は徐々に積極的になってきている。

    きっとブチャラティが丁寧に答えてしまうから。結構他のメンバーは上手くあしらうか、本当に興味なさそうだもんなぁ。

    「最近は隠し撮りを売り買いする者もいるんです!」
    「私がするって言うの!?」
    「いえ、そう言う人も居るので控えて頂きたいんです!」
    「あんたはずっと一緒に居るからいいでしょ!?私達からブチャラティを取らないでよ!」

    いやいや私だって苦労してるんですよ!?傍に居る時間は長くても、ぜんっぜん気付かないんですから!寧ろ隠し撮りも欲しいです!

    私は心の中で反論しながら話が通用しない女性の、掴み掛かる手を必死に押さえる。きりきりと露出する肌に食い込む爪が痛くて奥歯を食い縛る。いつもは可愛くて羨ましいキラキラなネイルも、今は凶器で襲撃に使えそうだなんて一瞬思ってしまう。一方、下手に此方から手を出せないのも任務とは勝手が違うから困る。

    「困ったな。…すまない、彼女をあまり苛めないでくれないか。」
    「ブチャラティ!あ…私は苛めてなんて…そ、そんなつもりはっ。」
    「ほら、傷が出来てる。…オレにだけなら構わないが、彼女に暴言や危害を加えるなら…オレも黙ってはいられないな。」

    ひょいっと女性から私を引き離し後ろへと庇うブチャラティは、表情は見えないが声からして凄く思っているのだろう。みるみる赤く色付いた女性の顔は青ざめていく。まるで怒られるナランチャみたいだ。あ、逃げてっちゃった。

    「ありがとうございます、ブチャラティ。」
    「いや、オレの事なのにすまなかった。…どうにかしないと、とは思っていたんだ。これで少しは落ち着くといいんだが。」
    「あ、気付いてたんですね。」
    「まあな。…毎日キミが疲れている理由を辿ったら行き着いたんだ。キミにこうしてキズが付いたら、守っている意味がないからな。」
    「ん?守ってる?」

    私の腕に付いた女性特有の長い爪で出来た引っ掻きキズを見つめながら、ブチャラティの言葉に疑問が浮かんだ。守っているのは私ですよ?
    だが当のブチャラティはそれ以上言わずに口角を上げて私の目を見れば、当たり前の様に手を絡めて歩く。

    「帰って手当てしよう。」
    「え!?このくらい大丈夫ですよ!こ…。」
    「オレが嫌なんだ。……顔じゃなくて良かった。」

    こんなの放っておけばいいと口を開けば、いきなり立ち止まり目の前に顔が来るモノだから言葉を失った。
    他にキズがないか屈んで頬に触れ覗き込む仕草に、私の心臓はバクバクと動き変な汗まで出てきた。

    キズよりも恋の禁断症状の方が困ります…ブチャラティ。
  • ぎゅってさせて下さい ジョルノ

    20210825(水)12:40
    「どうしましょう…。困りましたね。」
    「ジョルノどうしたの?」

    私は口元を手で押さえながら眉を寄せて、何かに困っている様子のジョルノに気付くと迷わず声を掛けた。だっていつも器用にこなしていくジョルノだもの。相当な悩みなのかも知れない。

    「あ、良かったです。調度頼みたかったんです。」
    「私に?」
    「はい。貴方しかぼくを助けられないですから。」
    「そ…なんだ。そんな事言われちゃうと照れくさいけど…どうしたらいいの?」

    待ってましたとばかりに喜ぶジョルノは笑顔で私に手招きする。何だか大袈裟な言い回しに期待されては失敗が許されないなと緊張しつつも、頼りにしてもらえて嬉しいと言う気持ちもあった。
    「あまり難しい悩みじゃないといいけど」と問い掛けてみると、ジョルノは座っているソファの背凭れに凭れて足を広げると出来た間の隙間を指差した。

    「此処、座って下さい。」
    「…。」

    此処って…ジョルノの前に座れって事?
    瞬きを2、3度してから停止した脳内を無理矢理起こして導き出した答えに自問自答した。何故そうなるのだろうか。

    「そ、そこに座らないと解決しないの?」
    「そうなんですよ。まさか、ミスタやアバッキオには頼めないでしょう?」

    確かに!それは絵面的にも衝撃的だから見たくないかも知れない。私的にはこれ以上無いってくらい嬉しいシチュエーションだけど…。

    「ね、お願いします。」
    「はい…。じゃあ…失礼します。」

    そう上目遣いでお願いされたら従うしかない。私は意を決してジョルノの足の間にちょこんと身体を極力小さくして座り込んだ。すると遠慮なく後ろから抱き締めるジョルノの体温と、密着する身体にビクッと肩は反射的に跳ねた。

    「わっ…!ぇ、えーっとジョルノくん。…私はこの後どうしたらいいの?悩みは?」
    「ああ、悩みは吹き飛んじゃいましたので、貴方はこのまま大人しく抱き締められていて下さい。うん、いい香り…やっぱり抱き心地いいんですね。」
    「!?」

    え!これだけ!?
    私はそう問い掛けたかったけど、首に触れる肌やジョルノの質のいい上品な香りとか耳に少し掠れる声だとかで何も出来なくなってしまった。幸せだけど、このままじゃ身が保たないよ!!

    「ねえ、このままだとぼくの香水の香りが貴方に移っちゃいますかね?同じっていいですよね。…ね、そう思いませんか?」
    「ジョ…ルノ…楽しんでる…でしょ?」
    「ははっ、バレました?」

    クスクス笑う声が真っ赤な私の耳を擽る。恥ずかしくって顔が見れないよ。
    だが、皆がこの数分後に帰ってきたので、香りが同じになる前に解放されたのであった。
  • お出掛け前に アバッキオ

    20210816(月)22:18
    「おい、もう行くのか?」
    「うん!早めに帰ってくるから!」
    「あ?久しぶりの友達との飯だろ?気にせずゆっくりして来いよ。」
    「アバッキオありがとう!」

    ソファに置いておいたバックを手に取る私に気付いたアバッキオは、近寄るといつもとは違い優しい口調で気遣ってくれる。確かに彼の言う通り、友人と食事なんて1年ぶりだ。
    仕事を始めてからなかなか皆揃って時間が合うのが難しくなったし、主にギャングの私だけ欠席が多かったのだ。

    「じゃあ…行ってくるね。」
    「……男は居んのか?」
    「あ…うん、2人は来るよ。」
    「……ならこれは付けてけ。」
    「ぇ…。」

    そう言うなり私に影が覆い被さった。顎に掛かる綺麗なパープルのネイルが彩る指により、斜め上へと持ち上げられると露になった首筋にピリッとした痛みが襲う。

    「これなら男に言い寄られねぇだろ。」
    「と、友達だし…大丈夫だよ。」
    「あ?んなの解んねーだろ。…オレ達だってそうだっただろ。……おまえなんか、"アバッキオなんて有り得ない"とか言ってなかったかぁ?」
    「うっ…。すみません。」

    至近距離で話すアバッキオは正論過ぎて、言い返せない私は首を押さえて頷くしかなかった。
    うーん…指摘されると恥ずかしいから、ストール巻こうかな。なんて考えていたら、私は指先に違和感を感じて視線を向けると薬指にキラリと反射して光った。

    「え…え!?」
    「これ付けとけば間違いはおきねーだろ。」
    「ゆ、指輪…だよ?どうして…。」
    「前に欲しいって言ってただろ。」
    「あ…。」

    確かに前にデートに行った時に会話の中で触れたかも知れない。覚えててくれたんだ。
    私は嬉しくなって、背の高いアバッキオの首には届かないから背中へと腕を回して抱き締めた。

    「ほら、時間無くなるぞ。」
    「だって嬉しいんだもん。…もう少し。」

    たく…。なんて溜め息混じりに漏らしつつも、身を屈めて私の肩へと腕を回す腕の力は優しくて、なんだか泣きそうになった。
  • いってらっしゃい ブチャラティ

    20210808(日)22:39
    「ブチャラティが見回りに行かれるんですか?」
    「ああ、麻薬の匂いがするんでな。アバッキオと行ってくるから、後は任せる。キミは今日、フーゴと徴収に行ってくれ。」
    「はい、解りました!」

    私は珍しく自身から見回りに行くと言うブチャラティに、大きな事件かと不安にもなったが声を聞いたら安心して笑顔を見せた。アバッキオも一緒だし、彼なら大丈夫。

    「ブチャラティ任せて下さい。彼女と一緒にこの後行ってきます。」
    「ああ、頼む。アイツは少し抜けている所があるから、フーゴ、おまえが頼りだぜ。」
    「ブチャラティ、聞こえてますよ!」
    「すまない。心配してるからなんだ。キミに何かあったら、それこそオレは仕事にならない。」

    フーゴとブチャラティのやりとりが耳に聞こえて少し唇を尖らせて会話に割り入る。するとクスクスと笑うブチャラティは、年相応の青年の顔になった。私は彼のこの顔に弱いのだ。

    ま、いっか…恋人として心配してくれるのは嬉しいし。

    「ブチャラティ、いってらっしゃい。」

    玄関まで付き添うと笑顔で右手をヒラヒラと振ると、立ち止まりジッとこちらを見るブチャラティ。
    あまりにも長い間見るので、私もアバッキオもフーゴも頭の中で「?」マークが浮かぶ。

    ちゅ。

    「「「!?」」」

    漸く動いたと思ったら私の唇へと甘い音を弾かせてキスを落とすと、満足げに笑みを浮かべて頭を撫で真似する様に手をヒラヒラと振った。

    「ブ、ブチャラティ!?」
    「いってくるよ、未来の奥さん。」
    「お、おく!?」

    まるで新婚の様なやりとりに真っ赤になって魚みたいに口をパクパク動かす私と取り残されるフーゴ。
    一方外へと足を進めたブチャラティに、アバッキオはバカップルに呆れた様な目線を送る。

    「よくオレ達の前でいちゃつけるよな…見せられる方にもなってくれ…。オレは少なくとも見たかぁねぇ。」
    「すまない。あんなに可愛い見送りされたら、体が勝手に動いてたんだ。」

    相変わらず笑みを浮かべて話すブチャラティに、アバッキオは「仕事も捗るからいいか…。」と半ば諦めつつ目的地へと歩幅を合わせるのだった。
  • 名前で呼んで ブチャラティ

    20210804(水)09:09
    「ねえ、ブチャラティ。」
    「…。」
    「ブチャラティ?」
    「……。」
    「ブーチャーラーティー!!」

    何度呼び掛けても振り向かないブチャラティに、私は頬を膨らませて大股で接近すれば座る彼の膝に座り込んだ。
    向き合う形で恋人が座ったのに、背凭れに肘を付き見下ろす余裕のブチャラティに余計に拗ねる。
    なにその態度!腹立つけどかっこいいな!

    「何で返事してくれないの!?」
    「…名前で呼べって言ったろ?」
    「え、あー、…だって恥ずかしいし、仕事中は…。」
    「皆もオレ達の事は知ってるんだ。いい加減諦めろ。」
    「ブチャラティは、どれだけ名前で呼ぶ事が女の子にとって恥ずかしい事か解らないんだよ…。」

    ずっと好きだったんだよ?憧れてたんだよ?皆のアイドルブチャラティだよ?そんな人を名前で呼ぶなんてハードル高すぎ!

    この膝の上に座るのだって、2ヶ月経って漸くだ。しかも毎日乗せられて慣れ始めたばかり。もう頬や触れている太腿も熱くて仕方がない。しかも顔が近いからまともに直視も出来やしない。
    すると溜め息が耳に届いたと同時に、私の顎を持ち上げたブチャラティが軽いキスを唇へと落とした。

    「んっ…。」
    「いいか、名前で呼ばない度にこうしてキスする。」
    「へ!?」
    「何処ででもだ。」
    「み、見られちゃ…。」
    「呼ばないおまえが悪いんだ。…オレには好都合だけどな。」
    「うう…。反則だよ…。」

    口角を歪め私の紡がない唇をフニフニと親指で弄りながら意地悪するブチャラティに、私は困り果てて泣きそうな声を漏らす。

    「オレにしたら色々と焦らされてるんだぜ?これくらいのご褒美貰わなくっちゃあな…いつか襲っちまうぜ?」
    「が、頑張ります…。」

    言葉の意味に益々頬は熟れていき、渋々承諾をして頷いた。ブチャラティなら本当にやりかねない。しかも楽しみながらだ。
    少しずつ彼なりの調教が始まっていくのだった。