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  • 誘惑の海 ブチャラティ

    20230101(日)07:33
    ああどうしよう…。

    「可愛い…。その瞳も愛らしい唇も…全てをオレが奪いたい。」

    私達の道標となるブチャラティは、敵のスタンド攻撃によって愛を奏でる破壊兵器へと姿を変えた。うっとりとした瞳で愛でて、背後から手を取り指先を絡めて「この綺麗な指先にキスしたい。ダメか?」とわざとなのか耳元で囁きかける。そう、私はブチャラティの膝の上に座らされている1人の部下にすぎない。

    「だ…めです。」
    「残念…。なら愛を囁く事は許してくれないか?苦しくて仕方がない。」
    「ぅ…。は…はい…。」
    (かぁっこいいよぉ!)

    大好きな人の眉を狭めて切な気な表情は、胸を逆撫でしきゅんきゅん締め付けて私を苦しめた。
    背後から回る腕に力が籠ると、耳朶に触れた唇の柔らかい感触だけで骨抜きになりそうなのに、そのまま「好きだ…。」と鼓膜を撫でるなんて反則だ。早く、誰でもいいから帰ってきてほしい!
    そう思っていたのに、いつの間にか目の前に現れたスティッキー・フィンガーも私の手を取り白い肌にキスを落とした。

    「オレのキミへの思いが強すぎたか?……こいつも愛を伝えたいらしい。」
    「ぁ…うそ…。」

    スティッキー・フィンガーの優しいキスは指1本1本に落ちて背筋がゾクゾクと震える。その姿はさながら異国の王子の様。

    「言葉に出来ない分、こいつの方が積極的だぜ?」
    「そ…そんな…。」

    ブチャラティは優しく頭を撫でてくれるのに、何処か楽しげに笑んでいる。そして助けを求めて見上げる私の唇に、もう触れそうな距離で「こっちはオレが奪いたい…。」と敢えて告げたのだ。
    もう鼓膜は心臓の音が響きダメだと解っているのに、彼の色香で惑わされてしまいそう。

    「ほら…。スティッキー・フィンガーのキスが終わっちまったら、こっちも奪われるぜ?どうする?オレか…こいつか。」

    「どっちとキスしたい?」なんて意地悪な質問は、少し背筋を伸ばした私の唇で塞ぐ。もう私のギリギリ保っていた理性は切れて、誘惑の海へと身を捧げる事にした。
    1度触れると離れた瞬間に後を追って啄まれ新たな音が生まれる。

    さあ…一緒に堕ちましょう。一時の甘い時間に。
  • Merry Merry ブチャラティ

    20221225(日)09:17
    12月25日はキリストの誕生日。
    世界中がお祝いしてくれるけど、今日だけは私の特別な誕生日でお祝いして欲しい。何故なら18歳の誕生日なのだから!

    「ねえブチャラティ、あの約束覚えてる?」

    私はなんとか通してもらったアジトのソファで、未だ仕事中のブチャラティへ問い掛けた。するとバサッと何やら重要そうな分厚いファイルを机へ置いて、彼は言葉の意味を理解してニヤリと口角を上げて笑った。

    「約束って…キミが勝手にしたやつだろ?」
    「勝手にって…。」
    「オレは"考えてやる"としか言ってないぜ?」
    「うっ…確かに…。」

    指摘されたら認めざるを得ない。だって告白したって『キミはまだ子供だ』とか言ってはぐらかすじゃあない。
    思い出してむうっと頬を膨らませれば、ブチャラティは背を丸めて両膝に肘を着いて口元を手で隠して笑った。えーその笑った顔かっこ可愛い。ズルいっ。
    今日だって改めて告白しに来たのに出鼻を挫かれてしまった。

    「キミはまだ若い。」
    「でも2個しか違わないわ。」
    「ギャングの本当の怖さを知らないからさ。」
    「でもブチャラティだって、私がどのくらい本気か知らないでしょう?」
    「キミが本当のオレを知ったら嫌いになるぜ?」
    「ううん…だって2年も好きだったもの。あの頃からブチャラティは優しくて…夜道だって守ってくれてたの…私知ってる。」
    「…。」
    「それに…もっと知りたいし、私の事…知って欲しい。…です。」


    言っていてどんどん羞恥心が増してきて、最後は何故か敬語になってしまって余計に頬が熱い。それに答えが怖くて徐々にブチャラティから目線は自身のスカートから覗く膝へと移動する。
    だって断られたら…もう本当に可能性は無いもの。"18歳になったら"は私の魔法の言葉。

    「キミは諦めが悪いな。」
    「ブチャラティは…諦めが悪い女は嫌い?」

    「私じゃ…やっぱりダメ?」と聞くと差し伸べられた手にドキドキしながら、私からも手を差し出せば真っ赤なバラが1輪現れた。それはまるで手品みたい。

    「寧ろ好きだ。」

    その瞬間、私の魔法は周りにも広がってキラキラ輝き始めた。ブチャラティはやっぱりかっこよくて、1輪のバラはどの宝石よりも綺麗で忘れられない誕生日になった。
  • 可愛いって…からかわないで ブチャラティ&ジョルノ

    20221110(木)21:24
    「ねえジョルノ…これって絶対ダメだと思う。」
    「ダメって何がです?」
    「26歳で女子高生の制服を着せられているって事がよ!このスカート短いし!!」
    「知らないんですか?今はそのくらいの短さが流行っているんですよ。」

    私は何年ぶりかに袖を通した制服とスカートの短さに、身体中が燃え尽きてしまいそうな程熱くなった。しかし現役で学生のジョルノはにっこりと微笑んで「似合ってますよ!」とパチパチと軽快な拍手までしている。もうやめてー!
    さて…どうしてこんな醜態を晒しているかと言うと、なにやら学生達の間で流行っている薬があるとか無いとか。麻薬の可能性が少しでもあるのならばと、ブチャラティの指示で潜入捜査が決定したのだが…。

    「ねぇ…。ジョルノとナランチャじゃだめなの?」
    「女性の潜入捜査も必要だって、ブチャラティが言ってたじゃあないですか。ねえ、ブチャラティ。」
    「ぎゃあ!ちょっと何でブチャラティ居るの!?」
    「最後に決断をするのがオレだからだ。しかしこれは…。」
    「解る!言わなくても解るから!」

    ブチャラティにも見られた事がショックだし恥ずかしすぎて早く制服を脱ぎ去りたい!聞かなくったって、「25過ぎた女に似合ってない、無理だ」って言われるのは解るから。攻撃を避けるみたいに私が着替えの入ったトートバックへ手を伸ばしたが、その手は何故か大きな掌に包まれて制されたのだ。その手の力があまりにも強いから顔を上げれば、真剣な顔のブチャラティが自身のスーツに付いたジッパーをゆっくり下ろすから私の羞恥心の火種が着火した。
    「ちょおおおおっと!?なになに何で脱ごうとしてるんですか!?」と大声で止め様とすれば、蒼い瞳が細くなり映っていた私の姿は歪み切な気だ。その姿に燃えた炎に水が掛けられたみたくあっという間に沈下した羞恥心。なんて切ない表情なの…ブチャラティ…どうしちゃったの?

    「ブチャラティ…?」
    「ジョルノだけキミと同じ制服なんてズルいだろ。オレも着る。」
    「は?」
    「くそっ。何でこんなにも似合うんだ…。やっぱり今すぐに制服を着る。ああ…なんでオレ達はもっと早く会わなかったんだろうな…。可愛い…。学生時代のキミと会いたかったと、こんなに悔やんじまうなんてな。」

    しかし、心配も何処へやら。予想を遥かに越えた回答に自己防衛が働いた私の頭の中は、びゅうっと突風が吹いてブチャラティに対しての"ちょっとヤバイな"と言う怪しんだ感情を飛ばしていった。寧ろこうまで本人の前で言えるのもすごい。これ…ブチャラティみたいにかっこいい人じゃなかったら怖いよ…。
    逆に清々しくなった私は、「そっか…ブチャラティってたまに、こう言う所あるよね」と納得した。

    「困ります。羨ましいとは思いますけど、ブチャラティが制服って無理がありますよ。彼女みたく愛らしい顔じゃなきゃダメです。」
    (ジョルノもいつも通りだ)
    「じゃあオレが教師なら問題ないだろ。」
    「顔バレしてるし無理ですよ。」
    「なら変装するか!おいフーゴ!至急他のスーツを用意してくれ!」

    遠くからフーゴの若干呆れた様なシャキッとしない返事が聞こえ、ジョルノとブチャラティが言い争ってる内に私はこっそりと部屋を出て着替えた後に制服を床に叩きつけた。

    もう!2人して…からかわないでよ!

    学生なんて通り過ぎた大人に「可愛い」とか恥ずかしいしからかわれてるって事も頭では理解してるのに…。どうしてこんなにも身体が熱いの。
    ぎゅうっと腕を押さえ付けながら"嬉しい"と素直に感じてしまう女性としての感情に私は戸惑っていた。
  • 誕生日は全力で ブチャラティ

    20220927(火)22:30
    ※アイドルパロディの続き

    『本日はアイドルグループ、パッショーネのリーダー。ブローノ・ブチャラティさんの21歳の誕生日です!』
    「ブチャラティおめでとー!」
    「ずっと、ずーっと大好きです!」
    「これからパッショーネのDVD観てケーキ食べてお祝いします!」
    『やはり大人気ですね!以上、街頭インタビューでした!』


    今日のニュースはブチャラティの誕生日と言う事で、デビュー当時から今に至るパッショーネの映像が流れている。そして大好きなファンの女の子達も輝いていて、本当に彼が愛されているのだと痛感した。

    解る!ファンとしては推しの誕生日ってお祝いしたいし一大イベントよね!

    私は画面いっぱいに映る、歴代の王子様みたいな衣装やカジュアルまで着こなして踊って歌うブチャラティにデコレーションしたうちわを手にしていた。

    「あ~この衣装も良かったよねぇ!かっこいい…え、あの笑顔良すぎて泣ける…え、このDVD観直そうかな。」
    「おい、観直さなくても此処に居るだろ。」
    「もぉ!何でうちにブチャラティが居るの!?」
    「今日は家デートだって約束しただろ。寧ろさっきから居たぜ?」
    「恋人…え…奇跡すぎて現実と向き合うのがツラい…。私運を全部使いきってる。」

    私はもう感極まって瞳を潤ませながら此方の反応に笑っているブチャラティとテレビのブチャラティを見比べた。そう、年に1度だけ私の情緒が乱れる…と言うか爆発する日が恋人の誕生日だ。

    だってマネージャーの私が、ブチャラティと付き合えてるなんて神展開すぎるでしょ!?

    もう付き合って1年過ぎたが、現場や活躍を目にする度に信じられないくらいかっこいい。ブチャラティの恋人なんて幸せ過ぎて溜め込んでいる好きって気持ちが誕生日に溢れるのだ。だから、誕生日は思いきって恋人とファンとしてもお祝いするって決めている。

    「だから!今日はDVD観て美味しい夕飯とケーキ食べて写真取ってお祝いします!」
    「解った、任せるよ。…ライヴも思いっきりファンみたく楽しめてないもんな?マネージャーさん。」
    「そうなの!ステージ横で応援してハラハラして忙しくってさ…あの、ファンサしたりするの?」
    「ファンサか…。」

    うーんと悩んでから右手でマイクを持つ真似をしながら左手を伸ばして「大好きだぜ…。」と一際甘い声と愛しげに見つめる瞳とぶつかり「きゃー!」と声を上げた。一瞬にして私はマネージャーと恋人からファンに戻りうちわを振って好きアピールをする。

    「あとね、あの…私握手したい。握手会って参加出来ないから…。」
    「ふっ…いくらでもどうぞ。」

    なんだか私の誕生日みたいになってきたな…と思いながらもお願いすれば、ブチャラティはよしよしと頭を撫でてくれた後に手を包んでくれた。
    恋人でも手を繋いでも握手はしないよなぁ…と感じながらファンとして彼と向き合った。気持ちを伝える大チャンスだ。

    「ふふっ…恥ずかしい。あのね…ブチャラティをずっと応援してます。ツラい時も寂しい時もDVDでブチャラティを観て、歌で…背中を押して貰ってます。…大好き。大好きです。」

    ゴツゴツした手の感触を確かめながら、色々思い出して少し鼻の奥がツンとするのを感じつつ率直に伝えた。すると、目の前のブチャラティにいつの間に抱き寄せられていて握手していた手は宙に舞う。

    「ブチャ…ラティ?」
    「オレこそ、いつもおまえが居るから…どんな時も、そっちの方こそ多忙な仕事なのに、笑顔で応援してくれるから頑張れてる。ありがとう。」
    「うう…泣きそう。ずっとブチャラティは私の推しですぅぅ。ぐずっ…。」
    「そこは"恋人"って言えよ。たく…推し変したら許さないぜ?」

    うちわで顔を隠しながら感極まって泣き出す私の額にキスを落として、耳に贈るファンとして最高のお願いに気を失いそうになった。

    ずーっと愛してる!
  • ファンクラブ代表(仮) ブチャラティ

    20220918(日)12:46
    「私ね、ブチャラティのファンクラブがあったら絶対入ってたなぁ。」

    テレビの中で複数の男性グループが歌いながら踊っている。私がその姿を見つめながらしみじみと呟けば、背後からブチャラティの笑う声が聞こえて思わずソファの背凭れから身を乗り出した。

    「あー!ブチャラティ笑うけど、私は本気だよ!?だってかっこいいし、言っとくけどどのアイドルや俳優さんよりかっこいいんだからね!?」
    「そう言うのはキミぐらいじゃあないか?」
    「いやいや皆ブチャラティの前で言えないだけで、私はいっぱい聞いてるから!ちょー人気者だよ!?」
    「あーあとはナランチャくらいか?」
    「聞いてる!?」

    相変わらず何処かマイペースなブチャラティはお揃いのグラスに氷とレモンウォーターを注ぎながら思い出した様に呟く。
    無自覚なのがまたいいんだけど、それだからファンが途切れないと言うか…恋人としてはソレが心配。メンヘラな子にも好かれそうだし。いつかファンに刺されたら怖いし…。

    「まあ、その時は私が全力で守るけど。」
    「何か言ったか?」
    「ううん、何でもない!とりあえずファンクラブあったら毎月会報とかポストカードとか出て~…あー握手会とかもいいね!うんうん、私ってグッズとか揃えちゃうからタイプだからぁ…ランダムでも買い占めるね!」
    「おいおい凄い想像力だな。」
    「私、好きな事にはのめり込んじゃうんだぁ!」

    隣に座るブチャラティは盛り上がる私の話に耳を傾けながら笑ってグラスを差し出した。「ありがとー」と早速カラカラだった喉を潤せば、尽きないブチャラティの妄想の続きを話すつもりだった。でも…。

    「なら、手に入ったら熱も冷めちまったりするのか?」

    ギシッと体重を掛けたソファが音を立てたと同時に私の心臓も大きな音が鳴る。組んだ足に肘を付いて此方を覗き込む表情は余裕がある笑みを浮かべているのに、口調は拗ねた様にも聞こえてとりあえずかっこいい。表現がもう"かっこいい"しか出ないのも無理はない。だってどの角度から見ても造形が完璧だし声までも魅力的なのだから。ブチャラティの質問の答えは1つしかないし、寧ろ言わせるなんて拷問に近い。

    「……冷めるなんて思ってもないくせに。」
    「ははっ、愛してるぜ…。」
    「ずるい!罰としてその顔写真に撮らせて!(カシャカシャカシャカシャ)」
    「もう撮ってるだろ。」

    携帯と言うカメラまで付いている最高の機器を駆使して、私はどんな瞬間の恋人もファンクラブ代表(仮)として記憶していく。これからもずーっとね!
  • キューピッドになります ジョルノ+ブチャラティ

    20220914(水)15:55
    「ブチャラティの好きな所、10個教えて下さい。」

    私はジョルノの唐突な質問に顔を歪めた。どうして急にこんな事を言い出すのか、私は探ろうと穴が開く程見つめたが相変わらずの爽やかな笑み。純粋なのか何か企んでいるのか解らない。

    「あのね、ブチャラティの好きな所なんて10個で収まらないの!」
    「それをなんとか10個に纏めて下さいよ。」
    「何それ…どうして知りたいのよ。」
    「だってボクの目指すギャングスターに近いのがブチャラティだ。なら、その魅力を知りたいと思うのって普通じゃあないですか?」

    ジョルノも大人びて見えるけど、まだ学生だもんね…確かに憧れの人を知って目標にする考えもあるか…。
    からかわれている訳じゃないと理解した私は、少しの間手元のコーヒーに浮かぶ自身と見つめ合ってから意を決した。

    「1,誰にでも優しい 2,気遣いが出来る 3,冷静 4,部下想いで面倒見がいい 5,先を見通す頭の良さ 6,いつもは優しいのに、たまに見せるギャングとしての鋭い目付きと口調 7,兎に角どんな危機に面しても俊敏な思考と行動力 8,声が兎に角素敵!かっこいいのにえろい!! 9,さらさらな黒髪といい匂いがする清潔感! 10,かっこよくて冷静なのに、たまーに天然な発言と行動しちゃうブチャラティが愛しい!!」

    全て言い終わる頃には達成感と高揚感に満ちてた私は、ジョルノにニッコリと笑みを浮かべて「どう!?解ってくれた!?」と身を乗り出す勢いだ。

    「最後の方はどんどん長くなってましたね。1つに3つくらい詰まってましたよ。」
    「最初から纏めるなんて無理だって言ったじゃあない!」
    「ははっ…うん、時間通りだ。」
    「は?時間通りって…何がよ。」

    一体何を言っているのだと首を傾げて、胸元から懐中時計を出して満足げな笑みを浮かべるジョルノに首を傾げる。
    しかし、その直後。背後に誰かの気配を感じて勢いよく振り替えれば私は大口を開ける。その口の大きさに対して「へ…ぁ…ぁ…。」と掠れた絞り出した様な小さな声。

    だって、だって目の前に、ブチャ、ブチャラティ!?

    ブチャラティは口元を押さえて何やら驚いており、ほんのり白い肌がピンク色に染まって見える。そんな姿もかっこいいし、可愛らしくてきゅんとした。
    だが、私は混乱する思考の中で「お、お疲れ様です!」なんて咄嗟過ぎて部下としての挨拶が口から出る。いやいや今来たばかりで聞かれてない可能性だって十分にあるもの!
    だが『1,誰にでも…』ともう1人の私の声が聞こえるから飛び上がった。

    「ジョルノ!?」
    「聞こえてましたし、万が一の時の為に録音もしておきました。」
    「ジョルノおま、おまえ…何を考えて。」
    「何って恋のキューピッドですよ、ボクは。」

    ジョルノはカチッとボイスレコーダーを止めて、スタンド能力で白い鳩に変えて撫でている。そして「お誕生日おめでとうございます、ブチャラティ。当日は2人で楽しんで下さいね。」と一足先にプレゼントを贈るのだった。
  • 悪気は無いから許してあげる ブチャラティ

    20220909(金)23:08
    「きっのう飲んだ女によぉ、キスが下手って言われたんだけどヒドくない?」
    「ぎゃははミスタざまぁみろ!」
    「確かにミスタってキスが雑そうですよね。」
    「雑ってヒドイ!年下のキミ達に言われたくぁ無いんだけど!?」

    うわ…始まった。

    テーブルを囲んで食事をしていたのに、いきなり生々しい話題に変わるものだから私はなるべく関わりたくないと食事の手を止めない。
    私以外が男だから自然とこう言う話になったりするけど、なんだか気恥ずかしいしどう反応していいか困るよ。せめて私が居ない時にしてほしい…それとも、話してもいいくらい馴染めているのかな?やっぱり日本人よりオープンだ。

    「キスの仕方…てか、そもそもキスした事あんのかぁ?」
    「ありますよ。」
    (即答…。うん、ジョルノはありそう…。)
    「オ…レだって!」
    (ナランチャは怪しい…。)

    多分黙って聞いている私とブチャラティとアバッキオにフーゴは同じ事思ったに違いない。
    どうかこのまま話が終わりますように。そう願いながら、食後のデザート頼んだパンナコッタの柔らかい表面へとスプーンで触れた時だ。

    「おまえだってキスが上手い男の方がいいよな!?」
    (私に振らないでー!)

    1番恐れていた事態に、私は心の中で絶叫した。ここで女性の意見を尊重しないでほしい。寧ろ察して!?

    「わ、私に聞かないでよ!」
    「だって女子っておまえしか居ないんだぜ?なぁどうなのよ。」
    「い、言わないわよ!」
    「ははーん、きっと彼氏は上手くないんだな!?大体キスが上手くない男って気遣いも出来ねーって言うし!?男はちゃあんと選んだ方がいいって事だな!」
    (やめてー!)

    最後は何故か得意気なミスタ。スラスラと早口で追い掛けて来た質問に、私の徐々に顔は青ざめていく。やばいどんどん変な話になってる!?こんな話しをこれ以上広げたくない!

    「悪い…解ってやれてなかったか?」
    「へ…。」

    その声の主は一斉にして皆の視線を持って行った。
    向かい側に座る、私達のリーダーであるブチャラティが申し訳なさそうに此方を見ているではないか。あー…まずい。

    「昨日も…やはり家に誘うのは間違っていたのか…。」
    「ちょちょブチャラティ!」
    「嫌だったか?」
    「ぅっ…、ぃ…やでは…なかった…です。」
    (ぎゃあああ生き地獄!!)

    もう恥ずかしすぎて泣きたい。そんな言い方じゃあ「キス以上してます♡」って言ってるのと同じだよ!?
    私の恋人の質問は、彼の性格からして悪気は無いので行き場の無い葛藤に身体の力は抜けていった。ブチャラティ…これじゃあ全部…。

    「ぇ…キミ達付き合ってるの?」

    バレますよねー!?
    ミスタは自身の失態に声を震わせ、私は皆の驚いた視線を浴び、ブチャラティは何故か笑みを浮かべて肘を着いた。

    「内緒にしてて悪かったな。……だからミスタ、これ以上オレの恋人に変な質問は止めるんだ。オレなら答えてやれる。」
    「ブチャラティも答えちゃだめなの!」
    「この前だって寝ている時に「ちょぉぉっと!?」

    こうして内緒のお付き合いもバレて、ブチャラティの溜まっていた惚気話しは止まらないのであった。
  • 失恋の扱い方 ブチャラティ

    20220828(日)22:30
    「アバッキオ…今日元気ないね。」

    彼女がそう言った横顔はすごく儚くて、今すぐにでも泣き出してしまうんじゃあないかって思う程だ。
    オレから見たらいつもと変わらない態度と表情のアバッキオは、彼女にはどう写っているんだろうか。

    「……キミにしか気付けないのかもな。」
    「そう…かな?ブチャラティにはそう見えない?」
    「ああ、オレにはキミに言われても解らないくらいだ。あいつが好きだから…そうだろ?」
    「っ…。」

    まずい…泣いちまうか?

    まるで禁忌な事へと足を踏み入れてしまったのを叱られる子供みたく、悲しさと動揺で入り交じる表情を浮かべる。そう、彼女は解っているのだ。

    叶わない恋心とそれでも諦めきれない惨めさ。
    アバッキオからも彼女の事を聞いていた。部下としての大切な気持ちと、そして恋人とは見れない男としての自分。

    幹部として彼女をアバッキオの下へ付かせた身としては、恋愛事まで視野に入れていなかった自身への不甲斐なさを痛感する。ブチャラティは泣きそうな彼女の膝の上で微かに揺れる拳に気が付いた。爪が食い込んでしまいそうな程に握った手は、ひと息吹いたら消えてしまいそうなろうそくの炎に似ている。
    もしもオレが選択肢を変えていたら、彼女を傷付けなかったのか?

    「ごめんなさい。恋愛は禁止…とかだよね?」
    「いや、そう言う規則は無いさ。だから…気にするな。悪い事じゃあないんだ…あまり責めるな。」
    「うん…。でも私もう…フラれちゃってるから。」

    それも聞いていた。アバッキオは応えてやれない苦しさや接し方に悩んでいたし、お互いを傷付けない様にする優しさをブチャラティは見ていて行き場の無い感情が渦巻いて沈着した。もやもやするな…どうしたもんか。
    するとアバッキオが此方へとコーヒーを手に向かってくるではないか。
    隣同士は気まずいだろうと腰を上げて、彼女をソファの角へと促して隣へ座り直した。気付いてない彼女は「ブチャラティ?」と袖を掴むから、少し…ほんの少しだけ可愛いと思った。

    「…いいか。キミの気持ちが落ち着くまでは、オレが傍で力になってやる。」
    「え…。」
    「悪い…あんたもコーヒー飲むか?」
    「否、オレは大丈夫だ。それよりアバッキオ、明日の任務の事だが…。」

    自身の気持ちだけ伝えれば、敢えて彼女に背を向けてアバッキオへと話を投げる。アバッキオよりも身長はないが、それなりにオレだって背丈もあるから彼女を隠すくらいは出来る。
    すると「ありがとう…。」と言う小さな感謝と、背中に体温の温かさと重みを感じた。それは彼女が身を寄せた証であり、同時にブチャラティの集中力は長く保たない気がしたのであった。

    失恋の傷はどうやったら癒してやれるのだろうか。
  • 彼の甘え方 ブチャラティ

    20220713(水)23:09
    キキーッと鋭い音と共に歩く歩道のすぐ横に止まった1台の車に、私も足を止めざるを得なかった。アルフォロメオのエンブレムが光り、丸みのある可愛らしいフォルムなのに気品のある車体は見覚えがない。だが開いた扉から現れたのが恋人だからである。

    「え…ブチャラティ?あ、あれ?!?今日仕事だったよね!?」

    今日も仕事で遅くなるって昨晩電話で連絡してくれたから、化粧も仕事終わりで直してなかったし洋服だって適当に選んだから何だか恥ずかしい。
    私は会えて嬉しい筈なのにしっかりと顔が見れなくてソワソワしていると、いきなり彼の香りに身体中が包まれてそんな考えも消え去った。

    「ブチャ…。」
    「ちょっと補充させてくれ…。」

    高身長の彼の頭は普段触れないのに、今日は私のすぐ傍で頬に黒髪が触れてくすぐったい。なのに耳に届く声は掠れていて言葉にはしないが疲労が伺えて、私はその広い背中へソッと手を回してみる。
    この広い背中に沢山のモノを背負ってるんだ…そりゃあ疲れちゃうよね。

    「…待ってるね。ブチャラティのパジャマも用意しておくから。」
    「あー…それは頑張れるな。」
    「ふふっ、私もブチャラティが一緒に寝てくれたら幸せな夢見れちゃうもの。」
    「バカだな、夢で終わらせるかよ。」
    「もぉ、何言ってるの?」

    漸く見れた彼の顔は笑みを浮かべいて、私も嬉しくなってコツンと額を合わせながら笑みを浮かべた。するとプップーとクラクションが弾けて目線を向ければ車の窓が開きアバッキオが何処か退屈そうにしている。

    「おい、ブチャラティ!タイムオーバーだっ。」
    「ああ、ワガママ言っちまって悪いな。」
    「まあ、あんたがの調子がこれで戻るなら、お安いご用だぜ。」
    「じゃあ後でな…逃げるなよ、可愛いcucciola。」

    アバッキオへ感謝を述べた後で私の頬へ甘いキスと共に砂糖菓子の様な言葉を残してブチャラティは車へと戻っていった。

    「もう、かっこいいのに可愛いんだから…。」

    私はと言うと、恋人を送り出すと色々と準備をするべく家路へと急ぐのであった。
  • 世話を焼きたい3 ブチャラティ

    20220531(火)21:09
    「……なんだその髪は。」
    「はい?」
    「だから、その髪は何だと聞いているんだ。ちゃんと鏡見たのか?」
    「見ましたよ!だから化粧だってしてるんじゃあないですか!」
    「いいか、ここ…すごく跳ねてるぜ。どんな眠り方したら外方向くんだ。」
    「えー…後ろは流石に見えませんよ。」

    ブチャラティは彼女の背後に立ち、反抗期みたいに跳ねている毛先を弄り指先でくるくる絡めながら呟いた。「寝方は普通なんだけどなぁ…」と眉を寄せながらいまいち身嗜みに興味の薄い彼女に、今日も朝から頭を抱えた。
    否、身嗜みをバッチリと決めて男を魅了して歩いては困るが、こうも髪を弄らないのも気になるしもっと可愛くしたくなる。折角長い髪なのだから、編んだり結んだり又は煌めくピンで止めても可愛いと思うからこそ弄りたい。
    ブチャラティはそのまま無言で天辺の髪を取り分けると器用にさささっと編み始める。毎日やっているからこその慣れた手付きは最早早業である。するとビクッと身体を跳ねさせた彼女から「ちょーっと待った!」と大声で制されたではないか。

    チッ、バレたか。

    「それ!お揃いにしようとしていません!?」
    「可愛くして何が悪い…。」
    「いや可愛いのは有難いんですがお揃いは恥ずかしいですって!ブチャラティだって嫌でしょう!?」

    嫌かと問われると、ブチャラティは今まで見せた事のない心からの笑みを浮かべた。だって好きな人とお揃いって何でも嬉しいだろ。

    「嫌じゃあない。」
    「うわ!すっごいいい笑顔!」
    「ほら、いいからじっとしていろ。余計時間が掛かる。」
    「やあ…せめて他の髪型にして下さい~っ。」

    髪を手中に納められた彼女は逃げる事が出来ず、子供みたいに駄々を捏ねてブツブツ文句を言っているが知るか。
    結局同じ様に後ろから編んだ髪を前でこれまた同じピンで止めておく。ピンの予備は何個かある。必ず2つはポケットに入れておいているのが役に立ったな。
    こうしてブチャラティとお揃いの彼女を見た仲間に散々弄られたが、最後まで髪型を変えない姿を見てもっと好きになった。