｢オレはブローノ･ブチャラティ。お互い頑張っていこう。｣
｢私は名前。そうね、同期って貴方しか居ないから頼りにしてるわ。｣


試験が終わり晴れてギャングの仲間入りした私達は、笑顔で自己紹介して握手を交わした。

ギャングの家庭に生まれた私は、家系からかスタンド能力に目覚めてポルポの試験を受けたのだ。
受けたと言うか……受けざるを得なかった。
ギャングだった父も母も対抗していたギャングの襲撃により亡くなって、残された私はギャングになるしか道はなかった。

なんとか試験をクリアしポルポの元へ戻れば、案内された部屋に彼、ブチャラティが先に居たのである。
第一印象は、男の人にしては中性的で綺麗に切り揃えられた珍しい髪型だなと思った。
だが、初めての世界で心細かった私は、少し大人びた雰囲気を持ちつつ気さくな彼に安心して心を許したのを覚えている。


｢ブチャラティは護衛チームなんだ。……私は暗殺チームだから緊張しちゃうな。｣


ポルポから振り分けられたチームを聞けば、心底残念そうに小さく呟いた。

何で私が暗殺チームなんだろう……。

私のスタンドがとびきり暗殺に向いている訳では無いのだが、"暗殺"という言葉だけで少し怖くなってしまった。
まるで死と隣合わせのような印象だ。
隣で同じく説明を聞いていた彼は、そんな私に気付き温かい掌で頭を優しく撫でて安心させてくれた。


｢大丈夫だ。離れてても、何かあったらオレに言ってくれ。名前の頼みなら、すぐにでもおまえの元へ行くから。｣
｢ありがとう、ブチャラティ。｣
｢可愛いおまえの頼みなら、いくらだって聞くからな。覚えておいて……。｣


小さな約束だったが、私にとっては大きな約束だった。
ギャングの世界に放り込まれた私は、この約束にどれだけ支えられただろう。





私はうっすらと瞳を開ければ、今のが夢だった事に気付き同時に見た事を後悔した。私も彼もまだ幼かったし、今更思い出したくもなかった。


｢これも全部、ブチャラティのせいよ……。｣


私は毛布の中で寝返りを打ち、目覚めの悪さに眉を寄せて小さく毒付いた。昨日はなんとか家に帰り、シャワーを浴びれば濡れた髪を乾かさないまま倒れ込む様にして柔らかいベットに沈み込み眠ってしまっていたのだ。

ああ、昨日の事も夢であってほしい。

暖かい布団の中で、私は祈る様に心の中で呟いた。
私は暗殺チームの名前。もう女の私は捨てたのだ。

ピピピピ……。


｢もう！今日は休みの筈よ！？｣


携帯が鳴ればまだ名残惜しいとばかりに毛布の中から手を伸ばし、悪態付きながら探す。手に触れれば急いで取り上げて、文句を言いながら画面を見れば身体が固まった。

リゾット･ネエロ

暗殺チームのリーダーである。
休日に上司からかかってくる電話程、出たくないものは無いしリゾットからの電話なんて珍しい。
私はまだ電話の内容を聞いていないのだが嫌な予感しかしない為に、深い溜め息を吐いた。


｢はい、名前です。｣
｢名前……休みの日に悪いな。おまえに伝えたい事があるんだが……、今平気か？｣
｢ええ、平気です。任務ですか？｣
｢急なんだが、明日からおまえは護衛チームに移動になった。｣
｢え……。｣


護衛チームに移動？

リゾットの言葉に疑問しか抱かなかった。
私は上司に対して失礼の無い様に、混乱する頭の中で必死に考えつつ質問を投げ掛ける事にした。


｢移動ってどういう事ですか？私……何か大きなミスをしたでしょうか？｣
｢いや、おまえは良くやってくれている。ただ……上の命令でな。｣
｢上の……。｣


と言うことは、断ることは許されないと言うことか……しかし、なぜブチャラティのチームへ？

昨日の事もあるが、何より私を育ててくれた上司であるリゾットと離れるのは心苦しい。昔から兄の様に、静かに落ちこぼれの私を支えて見守ってくれていた。


｢リゾット……貴方と離れるなんて……。｣
｢おまえなら何処へでもやっていける。オレが育てて来たんだからな。｣


電話越しでもわかるリゾットの低い声で淡々とした物言いなのだが、優しく伝えてくれる言葉1つ1つはいつだって私の背中を押してくれる。


｢ありがとう。……いつも貴方の言葉で勇気が出ます。｣
｢ただ、何かあれば話を聞いてやる事は出来る。…………応援しているぞ。｣


再度感謝を伝えれば、じんわりと胸に広がる切なさに泣きそうになり悟られない様に電話を切る。
暗殺チームは変わった人達が多いけれど、私を成長させてくれた今となっては大切なファミリーだった。しかし一体なぜ……？

とにかく上の命令ならば、今日のうちにアジトへ行って私物などを整理しなくてはならなくなったので予定変更である。
私はベットから出ると目覚ましと気持ちを切り替える為にも、熱めのシャワーを浴び素早く身支度を整えて最後のアジトへ向かった。



be continued