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マスカレードを壊したい
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胸が弾けて、触れ合う唇が熱く蕩けてしまいそう。
それはシナモン、クローブ、バニラ、オレンジピール等のスパイスを沢山使って焼くピパレッリの様な弾ける刺激と甘さだ。
思考すらもぼんやりと蕩けてしまいそうになりながら、私はほんの少し残る意識の中で以前徴収に行った店先の奥さんの言葉を思い出した。
『女性は愛を通じて至福に至ると言う思考があるのよ。だから貴方は、これからブチャラティさんにいっぱい幸せにしてもらえるのね。』
あの時は付き合ってもいなかったし、恥ずかしいのとで笑って聞き流していた。
だが、確かに今までに感じた事の無い幸福感が、胸いっぱいに広がり何だか切なくて苦しい程だ。
ちゅっ…ちゅっ…と甘いリップ音が耳を擽る。
何度も角度を変えて愛撫する様なキスに、私の心音が大きくなり鼓膜で鳴り響いている。
「は…ん……は…ぁ。」
「名前……試験を受け終わったあの時から、ずっとおまえの事ばかり追いかけていた。」
お互いの唇が離れると、そのまま首筋に顔を埋めて抱き締める彼の呟く声と唇は、どこか震えていて緊張しているのが伝わってきた。
この人の事が好き…。
それが愛おしくて、私もすぐ傍にある彼の黒髪を鼻先で掬い露になった白い耳へと軽くキスを落とす。
自分でも自然にした子供がするみたいなキスに気恥ずかしくなっていると、目の前の耳がみるみる赤くなるので思わず笑みを溢してしまった。
「ふふっ…。耳が真っ赤よ。」
「っ……、煩い。」
言われて気付いたのかバッと私から身体を離してキスした耳に触れれば、恥ずかしいのか睨み付ける彼に尚も笑みは止まらなかった。
「貴方にも可愛い所があるのね、ブチャラティ。」
笑顔で話す私に対して更に眉を寄せて不服そうな表情をするも、彼も本気で嫌ではないのか手を引いて中へと連れて行かれる。
室内は必要最低限の家具、整理もされていて清潔感もある彼らしい部屋。
白と黒、落ち着きのある青で統一されている。
やはり何処にも女性を連れ込んだ気配も無く、心の何処かでホッとした。
「……好きにしていてくれ。名前、腹空いてるだろ?飯にしよう。」
「あ、何か手伝うわよ!」
「平気だ。実は買い出しに行った時に店主が色々とサービスしてくれてな。お祝いだとピッツァやオーブン焼き…沢山あるんだ。」
「お祝い?……もしかして、彼女とって?」
「ああ、それしかないだろ。」
以前に付き合う前から付き合っていると彼が店主達に言っていた事を思い出し、益々出歩くのが恥ずかしくなりそうだ。
私は促されるままテーブルと同じ木製の椅子へと腰掛けて、ジッパーから複数の紙袋を取り出してキッチンへと向かう彼を見送った。
さっきは怖いとか思っちゃったけど、私の為に色々と準備してくれたんだもんね。
買ってきた愛用しているブランド店の下着や化粧品やパジャマなどの数々を見ながら、彼が買い物をする姿を思い浮かべては口元が緩んでしまう。
何故か今日は何から何まで、ブチャラティが愛しく見える。
「おい、今度は何に笑っているんだ?」
「あ……ううん、内緒。」
「オレに隠し事か?……まあいい、後でベットで聞くだけだ。」
「!!」
私は羽織っていたトレンチコートを脱げば横の椅子へと掛けて、食事を運んで来てくれた彼の台詞に言葉を失った。
そっか、そうだよね…。泊まるんだった…!!
先程の余裕は何処へやら。
頬に熱が宿り緊張と恥ずかしさから額が少し汗ばんだ。
もう!せっかく美味しい食事が運ばれて来たのに、味が解らなくなっちゃいそう!
私が1人世話しなく心と葛藤しているといつの間にかテーブルは一気に華やかになり、マルゲリータやイカのマリネにアボカドとエビのオーブン焼きが並ぶ。
自分でも移り変わりが早いと思うが、瞳で味わった私は葛藤よりも喜びが勝り表情が輝いた。
「わあ……本当に沢山!」
「ああ、あの店主はオレが下っぱの時からの付き合いでな。…息子みたいだと言って、今回も自分の様に喜んでくれたんだ。」
「そっか……素敵な人なのね。」
「暖かくて参っちまうくらいさ。オレがギャングって事、向こうは忘れてるぜ、きっと。」
向かい側に座った彼は少し照れくさいのか、苦笑いを浮かべてワインボトルからグラスへと注いでいく。
だが声が何時もよりも明るい。きっと父親を失っている彼にとっても大切な人であり、この街から離れず護り続けている理由。
「私も貴方と居ると、自身がギャングって事を忘れてしまいそうになるわ…。」
先程感じた幸福感を思い出して、まだワインに口を付けていないのに頬にフワッと熱が帯びた。
「オレと2人きりの時くらい、忘れちまってもいいだろ。どんな業界に身を置いていようが、恋人と居る時は皆忘れてるさ。」
「そう言うものかな?」
「好きな女の前で理性なんか役に立たない。それだけだ。」
そう言いながらワイングラスを差し出す彼の瞳は、まるで月明かりしかない闇夜で獲物を静かに狙う獣の様に私を見据えている。
まさに理性など無いと瞳でも訴えていて、男の顔になるブチャラティに心がざわつく。
理性など、この先何回失っていくんだろう。
考えるだけでゴクッと喉を鳴らした私は、ワイングラスを受け取ると1つの疑問が頭に浮かんだ。
あれ…。ブチャラティが私との食事でビールを出さないの珍しいな。
私がビールを好きなのを知っているので、大体食事の時は頼んでくれるのだ。
珍しいと思い芳醇で深みのある赤いワインを見つめていると此方の心意に気付いたのか、綺麗な指先を伸ばして私が手にしてるグラスをつつく。
まるで、ワインからオレを見ろとでも言わんばかりだ。
「いいか名前、今日はビールは無しだ。」
「え…何で?」
「おまえはビールが好きだがすぐに酔う。オレの前でいくらでも酔っていいが…今日はダメだ。」
「だから何でよ。」
「酔っちまったらセックスを覚えてないだろ。」
「なっ…!!」
私は受け取ったワイングラスを思わず落としそうになる程、彼の発言に動揺してしまった。
それを映す様に大きくワインがグラスの縁ギリギリまで波打つ。
やっぱり私が意識し出したのに気付いてるんだ!!
恥ずかしさのあまりキッと睨み付けると、彼は口角を上げ手にしたワイングラスを揺らして香りを楽しんでいる。
「こ、今度はビール買ってくるもの!」
「ああ、いくらでも買ってくるんだな。……だが、飲む前に抱くだけだぜ?」
ガチンッ-!
それは久しぶりに再会し彼に口説かれたバールの時を彷彿させるやり取り。
こうしてお祝いを告げる乾杯の音はムードのある上品なものではなく、まるで戦いが始まる合図の様にグラス同士がぶつかる大きな音に変わってしまった。
口へ含むといっぱいに広がる葡萄の渋みと後から甘さが追いかけてきて、美味しさから上質なワインに違いない事は詳しくない私にも解る。
きっとこの一杯だけでは満足出来なくて、2人ならすぐに空にしてしまいそうだ。
だが、ワインでは酔えない私にとってはこれほど酔って記憶を失いたいと思った日はない。
be continued
それはシナモン、クローブ、バニラ、オレンジピール等のスパイスを沢山使って焼くピパレッリの様な弾ける刺激と甘さだ。
思考すらもぼんやりと蕩けてしまいそうになりながら、私はほんの少し残る意識の中で以前徴収に行った店先の奥さんの言葉を思い出した。
『女性は愛を通じて至福に至ると言う思考があるのよ。だから貴方は、これからブチャラティさんにいっぱい幸せにしてもらえるのね。』
あの時は付き合ってもいなかったし、恥ずかしいのとで笑って聞き流していた。
だが、確かに今までに感じた事の無い幸福感が、胸いっぱいに広がり何だか切なくて苦しい程だ。
ちゅっ…ちゅっ…と甘いリップ音が耳を擽る。
何度も角度を変えて愛撫する様なキスに、私の心音が大きくなり鼓膜で鳴り響いている。
「は…ん……は…ぁ。」
「名前……試験を受け終わったあの時から、ずっとおまえの事ばかり追いかけていた。」
お互いの唇が離れると、そのまま首筋に顔を埋めて抱き締める彼の呟く声と唇は、どこか震えていて緊張しているのが伝わってきた。
この人の事が好き…。
それが愛おしくて、私もすぐ傍にある彼の黒髪を鼻先で掬い露になった白い耳へと軽くキスを落とす。
自分でも自然にした子供がするみたいなキスに気恥ずかしくなっていると、目の前の耳がみるみる赤くなるので思わず笑みを溢してしまった。
「ふふっ…。耳が真っ赤よ。」
「っ……、煩い。」
言われて気付いたのかバッと私から身体を離してキスした耳に触れれば、恥ずかしいのか睨み付ける彼に尚も笑みは止まらなかった。
「貴方にも可愛い所があるのね、ブチャラティ。」
笑顔で話す私に対して更に眉を寄せて不服そうな表情をするも、彼も本気で嫌ではないのか手を引いて中へと連れて行かれる。
室内は必要最低限の家具、整理もされていて清潔感もある彼らしい部屋。
白と黒、落ち着きのある青で統一されている。
やはり何処にも女性を連れ込んだ気配も無く、心の何処かでホッとした。
「……好きにしていてくれ。名前、腹空いてるだろ?飯にしよう。」
「あ、何か手伝うわよ!」
「平気だ。実は買い出しに行った時に店主が色々とサービスしてくれてな。お祝いだとピッツァやオーブン焼き…沢山あるんだ。」
「お祝い?……もしかして、彼女とって?」
「ああ、それしかないだろ。」
以前に付き合う前から付き合っていると彼が店主達に言っていた事を思い出し、益々出歩くのが恥ずかしくなりそうだ。
私は促されるままテーブルと同じ木製の椅子へと腰掛けて、ジッパーから複数の紙袋を取り出してキッチンへと向かう彼を見送った。
さっきは怖いとか思っちゃったけど、私の為に色々と準備してくれたんだもんね。
買ってきた愛用しているブランド店の下着や化粧品やパジャマなどの数々を見ながら、彼が買い物をする姿を思い浮かべては口元が緩んでしまう。
何故か今日は何から何まで、ブチャラティが愛しく見える。
「おい、今度は何に笑っているんだ?」
「あ……ううん、内緒。」
「オレに隠し事か?……まあいい、後でベットで聞くだけだ。」
「!!」
私は羽織っていたトレンチコートを脱げば横の椅子へと掛けて、食事を運んで来てくれた彼の台詞に言葉を失った。
そっか、そうだよね…。泊まるんだった…!!
先程の余裕は何処へやら。
頬に熱が宿り緊張と恥ずかしさから額が少し汗ばんだ。
もう!せっかく美味しい食事が運ばれて来たのに、味が解らなくなっちゃいそう!
私が1人世話しなく心と葛藤しているといつの間にかテーブルは一気に華やかになり、マルゲリータやイカのマリネにアボカドとエビのオーブン焼きが並ぶ。
自分でも移り変わりが早いと思うが、瞳で味わった私は葛藤よりも喜びが勝り表情が輝いた。
「わあ……本当に沢山!」
「ああ、あの店主はオレが下っぱの時からの付き合いでな。…息子みたいだと言って、今回も自分の様に喜んでくれたんだ。」
「そっか……素敵な人なのね。」
「暖かくて参っちまうくらいさ。オレがギャングって事、向こうは忘れてるぜ、きっと。」
向かい側に座った彼は少し照れくさいのか、苦笑いを浮かべてワインボトルからグラスへと注いでいく。
だが声が何時もよりも明るい。きっと父親を失っている彼にとっても大切な人であり、この街から離れず護り続けている理由。
「私も貴方と居ると、自身がギャングって事を忘れてしまいそうになるわ…。」
先程感じた幸福感を思い出して、まだワインに口を付けていないのに頬にフワッと熱が帯びた。
「オレと2人きりの時くらい、忘れちまってもいいだろ。どんな業界に身を置いていようが、恋人と居る時は皆忘れてるさ。」
「そう言うものかな?」
「好きな女の前で理性なんか役に立たない。それだけだ。」
そう言いながらワイングラスを差し出す彼の瞳は、まるで月明かりしかない闇夜で獲物を静かに狙う獣の様に私を見据えている。
まさに理性など無いと瞳でも訴えていて、男の顔になるブチャラティに心がざわつく。
理性など、この先何回失っていくんだろう。
考えるだけでゴクッと喉を鳴らした私は、ワイングラスを受け取ると1つの疑問が頭に浮かんだ。
あれ…。ブチャラティが私との食事でビールを出さないの珍しいな。
私がビールを好きなのを知っているので、大体食事の時は頼んでくれるのだ。
珍しいと思い芳醇で深みのある赤いワインを見つめていると此方の心意に気付いたのか、綺麗な指先を伸ばして私が手にしてるグラスをつつく。
まるで、ワインからオレを見ろとでも言わんばかりだ。
「いいか名前、今日はビールは無しだ。」
「え…何で?」
「おまえはビールが好きだがすぐに酔う。オレの前でいくらでも酔っていいが…今日はダメだ。」
「だから何でよ。」
「酔っちまったらセックスを覚えてないだろ。」
「なっ…!!」
私は受け取ったワイングラスを思わず落としそうになる程、彼の発言に動揺してしまった。
それを映す様に大きくワインがグラスの縁ギリギリまで波打つ。
やっぱり私が意識し出したのに気付いてるんだ!!
恥ずかしさのあまりキッと睨み付けると、彼は口角を上げ手にしたワイングラスを揺らして香りを楽しんでいる。
「こ、今度はビール買ってくるもの!」
「ああ、いくらでも買ってくるんだな。……だが、飲む前に抱くだけだぜ?」
ガチンッ-!
それは久しぶりに再会し彼に口説かれたバールの時を彷彿させるやり取り。
こうしてお祝いを告げる乾杯の音はムードのある上品なものではなく、まるで戦いが始まる合図の様にグラス同士がぶつかる大きな音に変わってしまった。
口へ含むといっぱいに広がる葡萄の渋みと後から甘さが追いかけてきて、美味しさから上質なワインに違いない事は詳しくない私にも解る。
きっとこの一杯だけでは満足出来なくて、2人ならすぐに空にしてしまいそうだ。
だが、ワインでは酔えない私にとってはこれほど酔って記憶を失いたいと思った日はない。
be continued