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マスカレードを壊したい
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男の中で背筋を伸ばし使命を全うするギャング。
あまり女性が居ないのが珍しいのか、裏の世界では血を撒き散らすtifone〈台風〉の異名まであった。
そんな私が幼い頃に絵本のシンデレラが乗るカボチャの馬車に憧れてたなんて言ったら、きっと笑われるに違いない無い。
現実、私を迎えに来た青いボディが光るアルフォロメオの車に乗る彼なら、そんな願いすらも叶え兼ねないと思う。
「来てくれて嬉しいけれど、今回は私が家に行くって言ったのに…。もしかして、私って信用されてない?」
「信用と、心配は別だぜ。大事じゃなきゃ、オレは迎えに来ないさ。……それに、おまえはオレの家を知らないだろ?」
「あ!」
確かに知らない!!
あんな大胆な事を言ったにも関わらず、指摘されて気付いた私に一気に羞恥心が襲った。
何で知っていると思ったのだろう?
寧ろ彼の事を"知っている"と思っていたけれど、まだまだ知らない事も多いのでは無いだろうか。
両想いになれて舞い上がってたのかも…。変な自信が生まれていた自分が、本当に恥ずかしいっ!!
「ほらな、迎えに来て正解だったろ。」
今すぐ消えてしまいたい程の羞恥心。真っ赤になって色々脳内で自問自答している私に、いつの間にか身体を寄せ頬に軽くキスした彼に促されて、私は車内へ乗り込んで気付いた。
後部座席に詰め込まれた、色鮮やかなブランド物の沢山の紙袋。
「ねえ、すごい荷物ね。どうしたの?貴方がこんなに買い物するなんて珍しい。」
「ああ、名前の気に入って使っている化粧品やシャンプー、パジャマやランジェリー。……オレの家に泊まるから必要だろ?」
「!?」
泊まる!?いやいや、その前に"気に入って使っている物"を知ってるの!?
自身の問い掛けに対して当たり前の様にシートベルトを着けながら話す彼に、驚きのあまり言葉が出なかった。
「……も、もしかしてランジェリーって…。」
「La Perlaだろ?」
「やだ!何で知ってるの!?私、教えた事も見せた事も無いでしょう!?」
「そんなの…見なくても調べたら解るぜ。」
「何でも調べちゃダメ!デリカシーの問題よ!て言うか、何処で情報漏れてるの!?」
ギャング怖い!!
長年仕事をしていて麻痺でもしているのだろうか。解らない事は許されない、情報は正確に徹底的に調べあげる。
ギャングとしては基本中の基本。私も1番最初にリゾットに教えてもらったから解るのだが、恋人にしていい事と悪い事がある。
そう言えば私、家も教えてなかったのに勝手に居た……しかも鍵掛けてたのに勝手に入ってた…。それも!?
あの時は部屋に侵入していた事に驚いて気付かなかったが、思い出せば思い出す程に色々思い当たりそうで呆れてしまった。
私は横で格好良くハンドルを操作するブチャラティに対して、盛大な溜め息を漏らす。
きっと彼のファンが知ったら、ガッカリする事間違いないわね…。
惚れた弱みって言うか、長年の付き合いがあって想いが募っている私だからこそ許せるけど……これ、ブチャラティの外面だけで付き合った女性は気味悪く思うだろうな…。
「今まで付き合ってた人も、さぞ驚いたでしょうね。」
「おい。名前…それ、本気で言っているのか?」
「だって、噂では女性が尽きないって聞いてたけど?……わっ!!」
いきなりの急ブレーキに、身体は前のめりになりシートベルトがキツく食い込むので苦痛に顔を歪めた。
乱暴な運転から驚いて顔を上げると、いきなり狭い視界に彼が映り込むものだから胸がキュッと切なくなった。
だってあまりにも苦し気な顔してるんだもん…。
「ブチャラティ…?」
「本気なら尚更怒るぞ。」
「も、もう怒ってるじゃないっ。」
「おまえが変な事言うからだ。……オレは任務状でしか女性と接近した覚えはない。」
「え…。」
じゃあ、私が昔に見掛けたのも……任務で情報を得る為だったの?
偶然に街中で見掛けた、親しげに密着して話すブチャラティと女性の姿が脳裏を霞めた。
この狭い車内で、助手席の背凭れに腕を回して接近する彼の苛立った口調は尋問とは違う緊張感が漂う。
"目は口ほどに物を言う"と、日本人は上手い事を言うものだ。
優しい年老いた日本人から教えてもらった言葉だが、今まで私も色んな人物を見てきたから解る。
ブチャラティの濁りの無いその目は、嘘など付いていない。
私も大人だ。任務ならば"そういう事"は多少目は瞑れる。
「仕事……そう、徹底している訳ね。……もう解ったから離れて。嘘は付いていないって事、私は汗を舐めなくても解るから。」
「舐めてもいいんだぜ?」
「っ……!!結構よ!!」
舌先を唇の隙間から悪戯に見せる彼に、思わず林檎みたいに真っ赤に熟れた頬を隠す様に顔を伏せて手で胸を押し返せば笑い声が耳に届く。
信号は青に変わったのか再度車が進み、私は気を紛らわす為にも擦れ違う風景を見つめる。
否、風景を見たいのにガラスに映る彼の横顔が視界に入ってしまい自身の恋心に参ってしまう。
まさか……解ったらこんなに安心するなんて。
あの時は目にした瞬間に胸の奥から沸き上がった醜い気持ちと、体から血の気が引く感覚。
約束もしていないのに、勝手に裏切られたと思って尚更仕事に打ち込んで彼に嫌悪を抱いていた。
本当に人生とはいつ覆るか解らないものだ。
暫くして車が駐車場へと入ると、目に前にはオレンジ色の壁に各部屋にゆったりとコーヒーを楽しむ程の広さのベランダのあるマンション。
車から降りると彼は後部座席に積んだ複数の紙袋をスーツの内側へと入れ込んでいく。
彼のスタンド能力は何かと便利だ。買い物の多い女性ならば、誰しも羡ましがる能力に違いない。
私は感心しながら車を降りマンションを見上げると、徐々に実感が湧いてきたのか速まる心音にキュッと唇を噛む。
ブチャラティの家に来ちゃったんだ…。
付き合った男性の家に行く事の意味を知らない年齢では無いし、初めてでは無いのに彼の事になると初恋をした時の様に緊張感と共に淡い気持ちが広がる。
エレベーターに乗り込み狭い空間に2人きり。
妙に距離を空ける私には、こんなにも最上階まで辿り着くのが長く感じた事はなかった。
何でだろ…。ブチャラティも会話してくれないし……余計に緊張しちゃうじゃない!
黙ったまま顔色を変えない彼を盗み見て、なんだか頬が熱を持つ。
カツカツと彼と私の靴音が廊下に響き、同時に止まった先には1つの扉。
彼はポケットから革製のキーケースを取り出し鍵を開けると、漸く口角を上げて私を捕らえ中へと促してくれた。
「Benvenuta…名前。」
「Grazie。」
玄関へと足を踏み入れると、ふんわりと甘い香りに包まれた。
それは私の好きなブチャラティの香水の香り。
扉が背後で小さな音を立てて閉まったのを告げた時には、もう私は彼の腕に大事な物を扱う様に包まれていた。
「名前…キミがオレの家に来てくれた事が、こんなにも嬉しいなんてな。」
「ブチャラティ…。」
「さっきの話だが…例え任務でキミ以外の女性と触れたとしても、そこには気持ちなんて1つも無い。帰ったら何時もの何倍も愛させてくれないか?」
「そ…それって…。」
「沢山キミに触れて、キスさせてくれ…。嫌な気持ちにさせてしまった分も、オレで消し去りたい。」
「んっ……んっ。」
顔が見えないのに耳元で唇から紡がれる言葉は、私の身体を切なげに震わせ自然と甘い声が漏れてしまう。
まるで掌に抱かれた小鳥が小さく囀ずる様に、耳朶や首筋に唇が触れる度に紡がれる。
「名前、返事は?」
「解った…から。そこ止めて…。」
「なら……ここなら良いのか?」
「ぁ…、ふっ……ん…。」
こんなの頷くしかない。
きっと私の顔は酷く赤い。悟られない様に頷いたまま下を向いていると、顎を捕まれそのまま背後から簡単に唇を奪われてしまう。
一瞬にして長い睫毛を伏せる彼しか見えなくなるも、敏感な舌先に感じる感触に私も瞳を伏せるしかなくなった。
玄関先で…こんな事…。
扉1枚隔てた先で人が歩く靴音が微かに聞こえたが、直ぐ様絡め取られた舌が擦れるとそんな事を気にする余裕は私の中から消え去っていく。
be continued
あまり女性が居ないのが珍しいのか、裏の世界では血を撒き散らすtifone〈台風〉の異名まであった。
そんな私が幼い頃に絵本のシンデレラが乗るカボチャの馬車に憧れてたなんて言ったら、きっと笑われるに違いない無い。
現実、私を迎えに来た青いボディが光るアルフォロメオの車に乗る彼なら、そんな願いすらも叶え兼ねないと思う。
「来てくれて嬉しいけれど、今回は私が家に行くって言ったのに…。もしかして、私って信用されてない?」
「信用と、心配は別だぜ。大事じゃなきゃ、オレは迎えに来ないさ。……それに、おまえはオレの家を知らないだろ?」
「あ!」
確かに知らない!!
あんな大胆な事を言ったにも関わらず、指摘されて気付いた私に一気に羞恥心が襲った。
何で知っていると思ったのだろう?
寧ろ彼の事を"知っている"と思っていたけれど、まだまだ知らない事も多いのでは無いだろうか。
両想いになれて舞い上がってたのかも…。変な自信が生まれていた自分が、本当に恥ずかしいっ!!
「ほらな、迎えに来て正解だったろ。」
今すぐ消えてしまいたい程の羞恥心。真っ赤になって色々脳内で自問自答している私に、いつの間にか身体を寄せ頬に軽くキスした彼に促されて、私は車内へ乗り込んで気付いた。
後部座席に詰め込まれた、色鮮やかなブランド物の沢山の紙袋。
「ねえ、すごい荷物ね。どうしたの?貴方がこんなに買い物するなんて珍しい。」
「ああ、名前の気に入って使っている化粧品やシャンプー、パジャマやランジェリー。……オレの家に泊まるから必要だろ?」
「!?」
泊まる!?いやいや、その前に"気に入って使っている物"を知ってるの!?
自身の問い掛けに対して当たり前の様にシートベルトを着けながら話す彼に、驚きのあまり言葉が出なかった。
「……も、もしかしてランジェリーって…。」
「La Perlaだろ?」
「やだ!何で知ってるの!?私、教えた事も見せた事も無いでしょう!?」
「そんなの…見なくても調べたら解るぜ。」
「何でも調べちゃダメ!デリカシーの問題よ!て言うか、何処で情報漏れてるの!?」
ギャング怖い!!
長年仕事をしていて麻痺でもしているのだろうか。解らない事は許されない、情報は正確に徹底的に調べあげる。
ギャングとしては基本中の基本。私も1番最初にリゾットに教えてもらったから解るのだが、恋人にしていい事と悪い事がある。
そう言えば私、家も教えてなかったのに勝手に居た……しかも鍵掛けてたのに勝手に入ってた…。それも!?
あの時は部屋に侵入していた事に驚いて気付かなかったが、思い出せば思い出す程に色々思い当たりそうで呆れてしまった。
私は横で格好良くハンドルを操作するブチャラティに対して、盛大な溜め息を漏らす。
きっと彼のファンが知ったら、ガッカリする事間違いないわね…。
惚れた弱みって言うか、長年の付き合いがあって想いが募っている私だからこそ許せるけど……これ、ブチャラティの外面だけで付き合った女性は気味悪く思うだろうな…。
「今まで付き合ってた人も、さぞ驚いたでしょうね。」
「おい。名前…それ、本気で言っているのか?」
「だって、噂では女性が尽きないって聞いてたけど?……わっ!!」
いきなりの急ブレーキに、身体は前のめりになりシートベルトがキツく食い込むので苦痛に顔を歪めた。
乱暴な運転から驚いて顔を上げると、いきなり狭い視界に彼が映り込むものだから胸がキュッと切なくなった。
だってあまりにも苦し気な顔してるんだもん…。
「ブチャラティ…?」
「本気なら尚更怒るぞ。」
「も、もう怒ってるじゃないっ。」
「おまえが変な事言うからだ。……オレは任務状でしか女性と接近した覚えはない。」
「え…。」
じゃあ、私が昔に見掛けたのも……任務で情報を得る為だったの?
偶然に街中で見掛けた、親しげに密着して話すブチャラティと女性の姿が脳裏を霞めた。
この狭い車内で、助手席の背凭れに腕を回して接近する彼の苛立った口調は尋問とは違う緊張感が漂う。
"目は口ほどに物を言う"と、日本人は上手い事を言うものだ。
優しい年老いた日本人から教えてもらった言葉だが、今まで私も色んな人物を見てきたから解る。
ブチャラティの濁りの無いその目は、嘘など付いていない。
私も大人だ。任務ならば"そういう事"は多少目は瞑れる。
「仕事……そう、徹底している訳ね。……もう解ったから離れて。嘘は付いていないって事、私は汗を舐めなくても解るから。」
「舐めてもいいんだぜ?」
「っ……!!結構よ!!」
舌先を唇の隙間から悪戯に見せる彼に、思わず林檎みたいに真っ赤に熟れた頬を隠す様に顔を伏せて手で胸を押し返せば笑い声が耳に届く。
信号は青に変わったのか再度車が進み、私は気を紛らわす為にも擦れ違う風景を見つめる。
否、風景を見たいのにガラスに映る彼の横顔が視界に入ってしまい自身の恋心に参ってしまう。
まさか……解ったらこんなに安心するなんて。
あの時は目にした瞬間に胸の奥から沸き上がった醜い気持ちと、体から血の気が引く感覚。
約束もしていないのに、勝手に裏切られたと思って尚更仕事に打ち込んで彼に嫌悪を抱いていた。
本当に人生とはいつ覆るか解らないものだ。
暫くして車が駐車場へと入ると、目に前にはオレンジ色の壁に各部屋にゆったりとコーヒーを楽しむ程の広さのベランダのあるマンション。
車から降りると彼は後部座席に積んだ複数の紙袋をスーツの内側へと入れ込んでいく。
彼のスタンド能力は何かと便利だ。買い物の多い女性ならば、誰しも羡ましがる能力に違いない。
私は感心しながら車を降りマンションを見上げると、徐々に実感が湧いてきたのか速まる心音にキュッと唇を噛む。
ブチャラティの家に来ちゃったんだ…。
付き合った男性の家に行く事の意味を知らない年齢では無いし、初めてでは無いのに彼の事になると初恋をした時の様に緊張感と共に淡い気持ちが広がる。
エレベーターに乗り込み狭い空間に2人きり。
妙に距離を空ける私には、こんなにも最上階まで辿り着くのが長く感じた事はなかった。
何でだろ…。ブチャラティも会話してくれないし……余計に緊張しちゃうじゃない!
黙ったまま顔色を変えない彼を盗み見て、なんだか頬が熱を持つ。
カツカツと彼と私の靴音が廊下に響き、同時に止まった先には1つの扉。
彼はポケットから革製のキーケースを取り出し鍵を開けると、漸く口角を上げて私を捕らえ中へと促してくれた。
「Benvenuta…名前。」
「Grazie。」
玄関へと足を踏み入れると、ふんわりと甘い香りに包まれた。
それは私の好きなブチャラティの香水の香り。
扉が背後で小さな音を立てて閉まったのを告げた時には、もう私は彼の腕に大事な物を扱う様に包まれていた。
「名前…キミがオレの家に来てくれた事が、こんなにも嬉しいなんてな。」
「ブチャラティ…。」
「さっきの話だが…例え任務でキミ以外の女性と触れたとしても、そこには気持ちなんて1つも無い。帰ったら何時もの何倍も愛させてくれないか?」
「そ…それって…。」
「沢山キミに触れて、キスさせてくれ…。嫌な気持ちにさせてしまった分も、オレで消し去りたい。」
「んっ……んっ。」
顔が見えないのに耳元で唇から紡がれる言葉は、私の身体を切なげに震わせ自然と甘い声が漏れてしまう。
まるで掌に抱かれた小鳥が小さく囀ずる様に、耳朶や首筋に唇が触れる度に紡がれる。
「名前、返事は?」
「解った…から。そこ止めて…。」
「なら……ここなら良いのか?」
「ぁ…、ふっ……ん…。」
こんなの頷くしかない。
きっと私の顔は酷く赤い。悟られない様に頷いたまま下を向いていると、顎を捕まれそのまま背後から簡単に唇を奪われてしまう。
一瞬にして長い睫毛を伏せる彼しか見えなくなるも、敏感な舌先に感じる感触に私も瞳を伏せるしかなくなった。
玄関先で…こんな事…。
扉1枚隔てた先で人が歩く靴音が微かに聞こえたが、直ぐ様絡め取られた舌が擦れるとそんな事を気にする余裕は私の中から消え去っていく。
be continued