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マスカレードを壊したい
名前変換
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写真でしか見た事が無かったが、40代にしては若い顔付きに金髪を後ろに流しスーツ姿の男は明らかに標的だと解った。
狙われていると知ると半年近くも雲隠れしていたが、もともと派手な生活な故に痺れを切らした様だ。
息を潜めて物陰に隠れている私はどうしたものかと脳内で考えを纏めて、口をゆっくりと開きギアッチョへと目線を向ける。
「とりあえず後を追いましょう。」
「バーカ、おまえはもう暗殺チームじゃあねぇだろうが。さっさと帰れ。」
「だってこの状態で無理でしょう!?アイツがどっか行っちゃう!」
「……この件で組んでるプロシュートを呼ぶから待て。って、おい!」
「でも!私とギアッチョの任務だったでしょう!?」
ギアッチョの言い分も解る。私はもう護衛チームだ。
だが、任務遂行の為にもこの状況での判断は譲れない。噛みつく様に頑なに譲らない私に対して、またかとギアッチョは盛大な溜め息を漏らしてから私の頭を少し乱暴に撫でた。
「ほんと、強情だよなぁ。……オレも何で惚れたんだか。」
「わ、私が知りたいよ。」
悪態付きながらも満更でも無さそうな笑みを浮かべているギアッチョの発言に、恥ずかしさに思わず先程の噛み付く勢いも怯んでしまった。
惚れたって直球に言わないでよ、もう!調子狂う!!
内心叫びながら心を一旦落ち着かせる為にも長く息を吐けば、再度男の行動を見据えて隙を探る。
多分愛車で帰る筈…。狙われている身としてはそこには運転手がいるだろうし……。うん、今の所ボディーガードは居なさそうね。
優雅に知り合いの女性とキスを交わし耳元で愛を囁く男の周りには、それらしい影は一切無い。
ボディーガードなど居たら、女性を口説く隙も無くなるからだろう。
「女に弱いみたいだから、私が先に接触するわ。」
「その代わり殺すなよ。」
「解ってる。アイツの命はギアッチョにあげるわ。」
簡単な作戦を立てお互いに頷き合えば密着していた身体を離して、人混みをすり抜けつつ男へと慎重に近付いていく。
未だ女性と親しげに話す様子を見つつ、私は化粧ポーチを取り出して真っ赤な口紅を取り出し乾いた唇へと塗り直す。
潤いが増し発色した唇は女性の武器になる。
女性と名残惜しそうに身体と絡めた指が離れると、待ってましたと私は足を進めヒールの音を奏でる。
前から何も知らずに歩いてくる男へと熱い目線を送れば、色男は直ぐ様食い付いてきてお互いに自然と足が向き距離が近付く。
「やあ、素敵なお嬢さん。何処かでお会いしたかな?」
「私もそんな気がしたの。貴方の宝石の様な緑色の瞳は、1度見たら忘れる事が出来ないもの。」
任務の時は捨てていた"女"が役に立つ事もある。特にスタンド使いでは無い一般人には嫌でも必要だ。
普段の私ならあり得ないであろう甘い声で囁き、男の肩へと手を置き顔を覗き込んだ。
男の瞳が完全に此方を見ている事を確認すれば、私は男のスーツ越しでも解る逞しい腕に自身の腕を絡めて寄り添った。
よし、このまま人気の無い所へ…。
ポツポツと道標の様に灯りが照らす薄暗い道へと他愛もない話をしながら歩くと、わざと躓くフリをしてバランスを崩ししがみつく。
か弱い女性に心を緩ませない男が何処にいる?
「おいおい、大丈夫かい?キミみたいな綺麗な人が怪我したら大変だ。」
「あら、ありがとう。……貴方こそ怪我しない様に気を付けた方が良いわよ。」
予想通り過ぎて思わず笑みが浮かびそうになる。
支えてくれた男に向かって吹き始めた風に掻き消されそうな声で呟くと、突如として足元から旋毛を巻いて地面の葉が舞い荒れる。
「ヴェ…」
「ホワイト・アルバム!!」
「!?」
男が目を細めて身構えた所で本格的に攻撃を仕掛け様とスタンドの名前を呼んだ瞬間、ギアッチョの声と共に男の顔はあっという間に氷の膜で覆われた。
その表情は先程まで私へ向けられた心配したモノで、綺麗な彫刻の様に鮮明に残ったまま。
悲鳴すら上げさせない仕事ぶりは見事だ。
だが事の状況を悟った私は溜め息を漏らして背後へ振り返ると、仏頂面で立つギアッチョに睨みを効かせた。
「ちょっと、少しは私にも攻撃させてよ!」
「あ?テメーが攻撃しちまったら、報酬を渡さなきゃけねーだろーがっ!」
「ギアッチョにしてはキッチリしてるじゃあねーか。」
「!」
固まったままの男の横で私とギアッチョが顔を見合わせて普段通り言い合っていると、空間を切り裂く低い声に驚いた。
思わず身体が鞭で打たれた様にビクッと1度だけ跳ねた後に硬直する。警戒な革靴の音を響かせながら灯りの下に現れたのは、煙草の煙を纏うプロシュートだ。
「ギアッチョが呼んだのね?」
「ああ、今回の件はコイツと組んでるからなぁ。呼ばねーと後がうるせぇ。」
「オレに貸しがあるから、コイツも素直で良いぜ。……名前とデート楽しめたかぁ?」
「え?」
「テメー!!プロシュートォッ!!」
ニヤニヤと煙草の煙を口から漏らしながら話すプロシュートに、ギアッチョが顔を真っ赤にし声を荒げ勢い良く掴みかかる様子は普通の女性なら驚くだろう。
だが、見慣れている私にはいつも通りで何だか微笑ましくなった。
「ほら、ここで騒いでたら任務は失敗になるわよ!」
私よりも背の高い2人の肩へと手を伸ばすと、笑いながら万が一の事も考えてこの場を離れる様に促す。
護衛チームとも違う懐かしい雰囲気に心が満たされながら広場へと戻ると、前を歩く2人が立ち止まったので思わず背中に顔がぶつかり走る痛みに鼻を押さえた。
その瞬間に各々違う香水の香りが鼻に残り、思わず眉を寄せる。
「わっ!ちょっと何よ!!」
「おいおい、アイツも呼んだのか?」
「オレが知る訳無いだろ。おい、名前。随分Belloはお前に惚れているみてぇだな。」
「へ?」
呆れる様に話す2人を不思議に思い背後から顔を出し視線の先へ向けると、漆黒の髪にキラッと光る髪飾りを付けたブチャラティが此方を見据えていた。
怒りでも無く、ただただ此方を表情を消して見据える姿。それは少し飼い主を忠実に待つ凛とした犬の姿を彷彿させる。
あれ、私、家に行くって言ってたよね?
昨日の約束を思い出しながら何故此処に居るのか考えていると、私の背中へと腕が回りソッと前へと押し出すギアッチョに驚いて見上げた。
するとその表情は今までの中でも柔らかいモノで、言葉は無くとも感謝を告げている事が伝わってくる。
不器用なギアッチョなりの伝え方。
「ギアッチョ、……気持ちに答えてあげられなくてごめんなさい。…でも、こんな私を好きになってくれてありがとう。」
それは本心だった。言いながらもまだ下っ端の私を支えてくれた感謝も入り交じり胸が切なくなる。だが、恋心とは違う。
この長年私の中で育っていた恋心は、ブチャラティだけなのだ。
今度こそしっかりと、眼鏡の奥の瞳を見つめて自身の素直な気持ちを伝える。
最後まで聞くと何も言わずギアッチョがクイッと顎を動かし行けと促すので、私は頷いてヒールを前へと進めて静かに待つ彼の元へと向かう。
いつもなら口を挟んでくる彼も、デートが終わるまでは見届けているつもりの様だ。
全て彼の選んだモノに包まれている私を見られるのは何だか気恥ずかしいのだが、目の前に立てば差し出された手へ自然と自身の手を重ねた。
「ブチャラティも、ありがとう。こんな私の事、ずーっと待っててくれて。」
「名前。おまえが待てと言うならいくらでも待つ。……ただ、迎えには行くけどな。」
返ってきた彼らしい言葉に思わず笑みを溢せば、お互いに気持ちが解れて漸く心も寄り添えた気がした。
be continued
狙われていると知ると半年近くも雲隠れしていたが、もともと派手な生活な故に痺れを切らした様だ。
息を潜めて物陰に隠れている私はどうしたものかと脳内で考えを纏めて、口をゆっくりと開きギアッチョへと目線を向ける。
「とりあえず後を追いましょう。」
「バーカ、おまえはもう暗殺チームじゃあねぇだろうが。さっさと帰れ。」
「だってこの状態で無理でしょう!?アイツがどっか行っちゃう!」
「……この件で組んでるプロシュートを呼ぶから待て。って、おい!」
「でも!私とギアッチョの任務だったでしょう!?」
ギアッチョの言い分も解る。私はもう護衛チームだ。
だが、任務遂行の為にもこの状況での判断は譲れない。噛みつく様に頑なに譲らない私に対して、またかとギアッチョは盛大な溜め息を漏らしてから私の頭を少し乱暴に撫でた。
「ほんと、強情だよなぁ。……オレも何で惚れたんだか。」
「わ、私が知りたいよ。」
悪態付きながらも満更でも無さそうな笑みを浮かべているギアッチョの発言に、恥ずかしさに思わず先程の噛み付く勢いも怯んでしまった。
惚れたって直球に言わないでよ、もう!調子狂う!!
内心叫びながら心を一旦落ち着かせる為にも長く息を吐けば、再度男の行動を見据えて隙を探る。
多分愛車で帰る筈…。狙われている身としてはそこには運転手がいるだろうし……。うん、今の所ボディーガードは居なさそうね。
優雅に知り合いの女性とキスを交わし耳元で愛を囁く男の周りには、それらしい影は一切無い。
ボディーガードなど居たら、女性を口説く隙も無くなるからだろう。
「女に弱いみたいだから、私が先に接触するわ。」
「その代わり殺すなよ。」
「解ってる。アイツの命はギアッチョにあげるわ。」
簡単な作戦を立てお互いに頷き合えば密着していた身体を離して、人混みをすり抜けつつ男へと慎重に近付いていく。
未だ女性と親しげに話す様子を見つつ、私は化粧ポーチを取り出して真っ赤な口紅を取り出し乾いた唇へと塗り直す。
潤いが増し発色した唇は女性の武器になる。
女性と名残惜しそうに身体と絡めた指が離れると、待ってましたと私は足を進めヒールの音を奏でる。
前から何も知らずに歩いてくる男へと熱い目線を送れば、色男は直ぐ様食い付いてきてお互いに自然と足が向き距離が近付く。
「やあ、素敵なお嬢さん。何処かでお会いしたかな?」
「私もそんな気がしたの。貴方の宝石の様な緑色の瞳は、1度見たら忘れる事が出来ないもの。」
任務の時は捨てていた"女"が役に立つ事もある。特にスタンド使いでは無い一般人には嫌でも必要だ。
普段の私ならあり得ないであろう甘い声で囁き、男の肩へと手を置き顔を覗き込んだ。
男の瞳が完全に此方を見ている事を確認すれば、私は男のスーツ越しでも解る逞しい腕に自身の腕を絡めて寄り添った。
よし、このまま人気の無い所へ…。
ポツポツと道標の様に灯りが照らす薄暗い道へと他愛もない話をしながら歩くと、わざと躓くフリをしてバランスを崩ししがみつく。
か弱い女性に心を緩ませない男が何処にいる?
「おいおい、大丈夫かい?キミみたいな綺麗な人が怪我したら大変だ。」
「あら、ありがとう。……貴方こそ怪我しない様に気を付けた方が良いわよ。」
予想通り過ぎて思わず笑みが浮かびそうになる。
支えてくれた男に向かって吹き始めた風に掻き消されそうな声で呟くと、突如として足元から旋毛を巻いて地面の葉が舞い荒れる。
「ヴェ…」
「ホワイト・アルバム!!」
「!?」
男が目を細めて身構えた所で本格的に攻撃を仕掛け様とスタンドの名前を呼んだ瞬間、ギアッチョの声と共に男の顔はあっという間に氷の膜で覆われた。
その表情は先程まで私へ向けられた心配したモノで、綺麗な彫刻の様に鮮明に残ったまま。
悲鳴すら上げさせない仕事ぶりは見事だ。
だが事の状況を悟った私は溜め息を漏らして背後へ振り返ると、仏頂面で立つギアッチョに睨みを効かせた。
「ちょっと、少しは私にも攻撃させてよ!」
「あ?テメーが攻撃しちまったら、報酬を渡さなきゃけねーだろーがっ!」
「ギアッチョにしてはキッチリしてるじゃあねーか。」
「!」
固まったままの男の横で私とギアッチョが顔を見合わせて普段通り言い合っていると、空間を切り裂く低い声に驚いた。
思わず身体が鞭で打たれた様にビクッと1度だけ跳ねた後に硬直する。警戒な革靴の音を響かせながら灯りの下に現れたのは、煙草の煙を纏うプロシュートだ。
「ギアッチョが呼んだのね?」
「ああ、今回の件はコイツと組んでるからなぁ。呼ばねーと後がうるせぇ。」
「オレに貸しがあるから、コイツも素直で良いぜ。……名前とデート楽しめたかぁ?」
「え?」
「テメー!!プロシュートォッ!!」
ニヤニヤと煙草の煙を口から漏らしながら話すプロシュートに、ギアッチョが顔を真っ赤にし声を荒げ勢い良く掴みかかる様子は普通の女性なら驚くだろう。
だが、見慣れている私にはいつも通りで何だか微笑ましくなった。
「ほら、ここで騒いでたら任務は失敗になるわよ!」
私よりも背の高い2人の肩へと手を伸ばすと、笑いながら万が一の事も考えてこの場を離れる様に促す。
護衛チームとも違う懐かしい雰囲気に心が満たされながら広場へと戻ると、前を歩く2人が立ち止まったので思わず背中に顔がぶつかり走る痛みに鼻を押さえた。
その瞬間に各々違う香水の香りが鼻に残り、思わず眉を寄せる。
「わっ!ちょっと何よ!!」
「おいおい、アイツも呼んだのか?」
「オレが知る訳無いだろ。おい、名前。随分Belloはお前に惚れているみてぇだな。」
「へ?」
呆れる様に話す2人を不思議に思い背後から顔を出し視線の先へ向けると、漆黒の髪にキラッと光る髪飾りを付けたブチャラティが此方を見据えていた。
怒りでも無く、ただただ此方を表情を消して見据える姿。それは少し飼い主を忠実に待つ凛とした犬の姿を彷彿させる。
あれ、私、家に行くって言ってたよね?
昨日の約束を思い出しながら何故此処に居るのか考えていると、私の背中へと腕が回りソッと前へと押し出すギアッチョに驚いて見上げた。
するとその表情は今までの中でも柔らかいモノで、言葉は無くとも感謝を告げている事が伝わってくる。
不器用なギアッチョなりの伝え方。
「ギアッチョ、……気持ちに答えてあげられなくてごめんなさい。…でも、こんな私を好きになってくれてありがとう。」
それは本心だった。言いながらもまだ下っ端の私を支えてくれた感謝も入り交じり胸が切なくなる。だが、恋心とは違う。
この長年私の中で育っていた恋心は、ブチャラティだけなのだ。
今度こそしっかりと、眼鏡の奥の瞳を見つめて自身の素直な気持ちを伝える。
最後まで聞くと何も言わずギアッチョがクイッと顎を動かし行けと促すので、私は頷いてヒールを前へと進めて静かに待つ彼の元へと向かう。
いつもなら口を挟んでくる彼も、デートが終わるまでは見届けているつもりの様だ。
全て彼の選んだモノに包まれている私を見られるのは何だか気恥ずかしいのだが、目の前に立てば差し出された手へ自然と自身の手を重ねた。
「ブチャラティも、ありがとう。こんな私の事、ずーっと待っててくれて。」
「名前。おまえが待てと言うならいくらでも待つ。……ただ、迎えには行くけどな。」
返ってきた彼らしい言葉に思わず笑みを溢せば、お互いに気持ちが解れて漸く心も寄り添えた気がした。
be continued